第三話 「ジャンプとかサンデーとかマガジンで百合」

第三話 「ジャンプとかサンデーとかマガジンで百合」

61 作

ジャンプとかサンデーなどで百合


サンデーちゃんは自室で読書中、そわそわしていた。
もう夜も遅い。
そわそわ、そわそわ時計を見る。
・・・・・隣の部屋はコロコロだ。でも、あの娘、落ち着きないから眠っちゃったらすぐ分かる。漫画でも読みながら寝ちゃったのかな。大声で笑っていたのが、無音になってきてからもうずいぶん経つ。

ち、違うんだよ?もしもベットに入ってなかったら、あのコお腹出して寝るかもしれないし、確認なんだよ・・・?

サンデーは自分に言い訳をしてから読んでいた本を机に置いた。
自分の部屋を出て隣のドアを小さくノックする。
「・・・寝たの?」
返事はない。
もう一度ノックして
「ちゃんとお布団に入りなさいよ?また床に転がってる、なんてお姉ちゃんはやだからね?」
と小さな声でドアに注意して、サンデーはよし、と頷く。
根回しはオーケー。後は・・・


サンデーのこんな行動は妹思いな心遣いとして家族・書生・みんなの信頼を得ている。
・・・・・が、実はそれの正反対なのは誰も知らない。
知ってるとしたらジャンプちゃんだけか?
自分の部屋に戻って、ふう、と扉を閉める。
自分もベットに入って・・・やだな、私、やっぱり落ち着ききってないよ。さっきまでかけていた眼鏡をサイドテーブルに置く。
スタンドを消して・・・・・・

・・・もぞ、と動く。
ジャ、ジャンプちゃんすごかったな・・・・
きゅ、と目をつむる。シーツを頭までしっかりかぶる。根回しも十分なのに。
この娘の性格だろう。
ジャンプちゃんがあんなになる所なんて・・・私だけしか見てないよね。だって・・・・キ、キスだって・・初めて、って、言ってたし。


ファーストコンタクトの後。
サンデーはきつく念を押された。約束させられる。
「オレが、タチ。で、あんたネコ。
リードする側が号令かける。あんたは」
そこで切って、あの時、えもいわれぬ、みたいな表情された。
「はっきりと言っとく。
あんたは危ない。危険だよ、あんた自分をコントロール出来ない、だから、とーうぶん、もう一生ってくらいにあんたがリードされる側。オレがみんな、号令もなにもかもをかける。で、あんたはそれに合わせる。
ラジオ体操、第一~、ってオレが号令をかけるから。
その号令どおりに動く。
それ以上はしない。フライングでもしたらなお更、これ、確定だから。
分かる?
何故ならあんたは自分をコントロール出来ないからだ。だからオレ、号令係り」
・・・・・私、自分をコントロール出来てないかな。
割と自信あったのにな。
なんだかショック。


でも美味しい果実はきちんと食べられたからサンデー的にはそう望まない。
そもそも両思いになれて・・・・・サンデーはそこで頬が熱くなるのが自分でも分かった。え、えっちな事を二人で出来たんだし・・・・・

なので、毎晩のおかずもずいぶんと豪華なメニューが揃った。
もそもそ、と下腹に手を這わす。
す、すごかったな・・・ジャンプちゃん・・・・・


二人は大変な素人なので、自分たちルールでえっちな事に及んだ。
これがストレート同士の恋人ならまだしも、更には二人ともほとんど知識もない。なので

    「・・・・・うぅー・・・・・ん、んーー~~・・・・」
    ユニットバス内で声が反響。サンデーは達してから荒い息を一生懸命に手のひらで抑えた。
    何度目かもしれないが、このムスメは大変に我慢強い。
    「・・・っ、はい、じゃ、じゃあサンデーの番」
    代わりばんこに体を触りあっこ、に落ち着いた。
    二人同時に気持ちしあえる、なんてどれだけ先になるのやら。

    でも二人としては一生懸命だ。二人で一緒に頑張る。
    「ん、・・・・わ、私の・・・番、ね?・・・・」
    ジャンプが落ち着きを失って口走ったお風呂だが、そんなに都合悪い流れでもなかった。
    むしろ好都合? 二人で一緒に入って、洗いあっこしてそれから・・・・・

サンデーはその時も思った。
タチっていいな。

    さっきジャンプの耳を舐めたら・・・すごい気持ちよくなる声を上げられた。
    なのでもう一回サンデーは舐める。
    「ふあっ」
    手のひらは自分が触っていて気持ち良かった所を撫でだす。
    太ももの内側から、そーっと上の方へ手を・・・・

いいな、タチって。
 
    「ふぁ、サンっ、・・・・デぇー・・・・・・・・・」
    こんな声とか顔とか見た後にえっちな所触ってもらったら・・
    ・・・気持ちいいに決まってる。サンデーは声だけでぽーっとなった。
    目の前のジャンプの表情だけで・・・・・触られてなくても


「んっ、・・・・ジャ・・・ぁ・・・・・」
現在の自分と同じになった。自分の部屋で思い出しながら触るだけで、その時みたいに・・・・・ぬるっとしてくる。
ああ・・これが・・・・・。サンデーは更に顔を染める。これが・・・・えーと、その、あれだよね、うん、あの気持ちいいよ、って状態。


   「・・・・・・サン、っ・・・・・・・・・」
   「ふぁー・・・ジャンプちゃ・・・・ぁん、気持ちいいよお・・・・・」


サンデーは思い出し、思い出しで現在進行で指を動かす。


   「やだ・・・よぉ・・・・・・・・・」

サンデーちゃん、布団に丸まってそろそろクライマックスになってきたが・・・・・・・。


   「こ、これっ・・・・・ダメ、ダメ、もう・・・」
   「・・んぅ~・・・・・?」
   「ここ・・・はっ、・まで・・・っ・・・・・・・・・・・・」
   「んうぅ~」
   「約束だろ?」

・・・でも現実ではめいっぱい駄目だしを出された。
そりゃあもう、たくさん。
なのでサンデーは一人で布団の中で編集しだす。
「・・・・・・はぁっ・・・・・・・・・・んぅ・・・・~・・・」
一番好物のおかずに繋げる。


「・・・はっ・・・ぅん、んう、ジャンプ、ちゃ・・・ぁ・・・~・・・・・・・・」
サンデーちゃんはあの日、そりゃあたくさんおかずを手に入れたが・・・・・・・・・・・・・・・・でも更なるとっときの『ごちそう』があった。
もぞもぞ動きながら、サンデーはもっともっと記憶をたぐる。
昔からお世話になったおかず。
そりゃあもう、覚えたての頃からずっと。
毎回、最高潮に達しそうな時に使うおかず。

・・・それは幼少期にさかのぼる。

ジャンプちゃんとサンデーちゃんはほぼ時を同じくして授かった娘だ。
両家は幸い、とばかりに二人を引き合わせた。
里帰りしたら、ジャンプはサンデーと遊ぶ。まるで託児所。子供同士で遊んで、大人は大人で談笑でもしながらお茶、とか段取りにまでなっていた。

その頃から二人の関係は奇妙で、サンデーよりもすべての優先順序が外孫のジャンプだった。
一族、ジャンプの家はもちろんの事、サンデーの家だろうとジャンプの方が上座だ。サンデーはその次。
サンデーの家であってもジャンプは王女さまのように扱われた。

・・・・・・・・・・・分かってるんだけど。
サンデーちゃんは察しの良い娘なので、なんで又従姉妹がそんな手あつい待遇を受けるか理解できていた。
ジャンプちゃんは・・私とは違うもんね。
成績はそこ頃からもう周りの誰をも凌いでいた。・・・・・この間、アメリカにまで進出する、なんて聞かされてもサンデーにとって何度目の駄目押しか分からないほどだ。駄目押しなんて、生まれてこの方、何度も何度も味わっているし家族内ですらそれは常識だ。
・・・分かってるんだけど。

それよりもこんなにすごい少女が自分の血縁という事の方が誇らしいかもしれない。

隣の少女を見た。
元気いっぱいの瞳と、自信に満ちた笑い声。
こんなすごい少女。輝かしい、おおらかに駆け回って、なんでも成し遂げて、世間の誰もが認める少女。今じゃアメリカまで。そっか・・もう世界レベルなんだ。
・・・自負がないでもないが。あの活躍に、自分だって担っている。ジャンプちゃんがあんなに活躍できるのは、この私だって頑張ってるからなんだよ!私もあの活躍の一端なんだよ!
みんなに胸を張って宣言したいくらいだけれど・・・それも、きつく止められている。厳しく、あの人は競争相手なんだよ、と。
だけど、集英家の邪魔だけはするな。
実に奇妙。邪魔さえしなけりゃいいんだから。あんたは邪魔にならないようにテキトーに頑張ってたらいーよ、それよりもジャンプちゃんだよねぇ~。・・・・・

だから、実家にジャンプ達が遊びに来るのはサンデーは楽しみでしょうがなかった。
あんなにすごい又従姉妹をひとりじめちゃう!
・・・いつから二人に溝が出来たのかな。サンデーにとっては肩を落とすしかない。
だからあれが・・・最後に遊べた記憶かも?
サンデーの大事なおかずの思い出。

 「これはね、タイアップしてる企業がくれたんだよ」
 二人に知育おもちゃが与えられるのは頻繁だ。
 それはもしかして二人だけで遊んだ最後かもしれない。

 「わー、新しいゲームだあ」
 ジャンプが嬉しそうだ。
 「ジャンプちゃんの好きなカードゲームっぽいのくれればいいのにねぇ~。
 新作の人生ゲームなんだって。いろんな職業を体験できる」
 サンデーは盤をのぞいてなんとなく納得だ。
 ウチの書生さんのイラストじゃない。これなら無難。

 知育おもちゃは数え切れないほど遊んできた。ジャンプと一緒に。
 サンデーは・・・実はその時の匂いまで思い出せる。
 ・・・大事な大事なおかずなので。


 わくわくしたようなジャンプに向かって、父親がご機嫌をうかがう家臣の様だ。
 「二人だけで遊べるかなぁー?」
 「もっちろん!」
 で、ジャンプが銀行役をやってくれて、二人で遊びだした。

リビングは大人の声がうるさいよ、とジャンプはサンデーの手を引いてきょろきょろうろついてサンルームに目星を付けた。
 ジャンプはここが我が家のように、どこだろうが好きに行き来する。
 物心ついた頃から、それはもう約束事だ。
 で、これも物心ついてからの約束事だが・・・。
 どんな知育おもちゃに付き合った時もジャンプには負けてあげる。
 そう小学館家内のルールがあった。
 ・・・本当に奇妙な関係だ。



・・・・・・・・・・・・あの時も。本当は負けなきゃいけなかったんだよね・・・・・・・・。
「もう・・・ジャぁ~・・・・・・・んぅ・・ふっ・・・・」
サンデーの指がだんだん絶頂のために奥の方の、感じる部分を擦り付けるってほどになる。くちゅっ、と立った音も漏れないように更にシーツをもそもそ被る。


 最後の二人きりで遊んだ記憶の、そのゲーム。
 途中で、私が有利になって来たんだよね。
 マズイ!サンデーは、負けなきゃ、とジャンプの顔をちらっと見上げた。

「・・・・・・・・・・・ふぁ・・・・、やん・・ジャンプ・・ちゃ・ぁ・・・・・・」
サンデーの目がどんどん蕩けてきた。
絶頂に向かう事、一心のために。


 ・・・・・・・思い出の中で・・・ジャンプは、明らかに面白くなさそうな顔をしていた。
 当たり前だ。負けた記憶があまりないんだろう。
 サンデーは、その時に、表現のしようがないものがこみ上げた。
 どきどき。心臓が早くなる。小さな心臓。
 
 ・・・まだ、性にも目覚めてないだろう、幼女からようやく少女になる頃。

 幼いサンデーは気付かないフリをして顔を伏せた。
 たぶん、これ、私、勝っちゃうよ?
 気付かないフリをして、ゲームを続けた。
 「つ、次、ジャンプ・・・・・ちゃん・・・ダイス、振る番・・・・・・・・」
 ジャンプはひったくるようにサイコロを取った。
 明らかに不機嫌に放り投げる。
 「・・・・・」
 「・・・・・ぅ、ツ、ツイてないね・・・・・・・・・」
 「・・・・・・・」
 どきどきどき。サンデーはまたジャンプをそっと見た。
 うわ、更に不機嫌。どうしよ、そろそろ負けてあげないと・・・・・・。
 自分の駒を進めるのを忘れた振りをするだとか。ジャンプの駒を有利な位置に間違えてあげる・・・
 ・・・・・とかが、その時のサンデーの頭からなくなってきた。

「ジャ、ジャンプ・・ちゃん・・・・・・・・一回休み?・・・」
 ど、どうしよう・・・。

 どきどきどきどき。
 こ、これ、私が勝ったら・・・ ジャンプちゃんはどうなるのかな。
 そう思ったら、サンデーはいつもの自分の役目も忘れた。
 サンデーには分かっていた。どうすれば、これ大差で勝てるかも。
 もしも・・・大差で私が勝っちゃったらジャンプちゃんはどんな顔するんだろう。
 ちらちら、ちらちら様子をうかがう。その度に高揚する胸。

 たかがゲーム。しかも二人きりでやってる程度だ。
 子供同士のお遊び。
 でもサンデーの胸は早くなる一方だった。
 そして大人が見たら、様子がおかしいのも分かるだろう。
 サンデーの頬は高潮して、時々、もじもじと足を動かす。
 ああ。どうしよう、どうしよう。
 負けなきゃ、負けなきゃ。
 でもどんどん差が付いてくる。
 当然、ジャンプは面白くない。不機嫌さが増してくる。
 実家に来た時でもここが我が家、ってほどに大声で走り回る彼女。
 うんともすんとも言わない。
 で。そわそわ、そわそわしながら続けながら終了してみたら・・・・・
 「あ、あは・・・今日、私、ラッキー・・・・・?」
 ・・・ジャンプの不機嫌さは、これ以上ないってほどになっていた。


「・・ふぁん・・・ふあ~・・・・ん、すご、すごいよお・・・・・ジャ・・・ぁ、んっ、んっ・・・っ」
現在のサンデーもベットの中でどんどんクライマックスへ。

 幼いサンデーはどきどきとそれを見ていた。
 どうしよう・・・・・今、すっごい気持ちいいよお・・・・・・・・・・。
 なんだかふわふわしてる気持ち。こんなの初めて。
 ・・・ちょっといけないことしてるみたい。当たり前かな。負けなきゃいけないのに、私・・・・・・。
 ジャンプはむすっと盤から顔を上げずに、無言だ。

「ふあ、ふぁっ、んっ、ぅんっ、ジャ・・ん、プちゃ、ジャ・・・っ」

 後、一押しなのに・・・っ!
 まだ性にも目覚めてないのに、サンデーはこのむずむずをどうすれば最高!って場所まで押し上げるか本能で悟った。
 ジャンプちゃん、もっと、もっと・・・・・・・
 なので自ら一押しする。
 「あ、あのさ!私、ジャンプちゃんが大好きだから、この財産、みんなあげるよ!」
 う、うわ・・・!きゅ、と自分のソックスを握る。
 ジャンプちゃんの顔がゆがむ。怒った目が、更にうるんできて・・・

    ・・・・・サンデーちゃんの、幼少期からの一番のごちそう。

 ジャンプちゃん、もっと、もっともっともっと・・・・・・・・・・・・・・・・っ
 「で、さ!私、ジャンプちゃんが大好きだから連帯保証人にももちろんなるよ!
 当然だよ!だったら私、みんな借金を肩代わりなんだよ。
 すごい、ね、ジャンプちゃん、見て!
 ジャンプちゃんがいっぱいお金持ちなのに、私、借金だらけぇ~。
 すごい、これってジャンプちゃんがさ・・・・・・・・・・・」
 やった!泣きそうな・・・・・!


で、毎回、サンデーはこの辺りで・・・・。
最高のご馳走を頭に思い浮かべながら
「・・・やん、やっ、・・やっ、んっ、んっジャ・・ンプちゃ・・、ジャンっ、プちゃ、ジャ、ちゃぁ・・・・・・っ」
シーツをぎゅ、と握り締めた。


 思い出の中でジャンプはいきなり立ち上がった。
 「いらないもん!」
 差し出した札束を手で払う。おもちゃなのに。
 目の端からにじむ涙。
 ・・・・・・・・・・実は・・・この瞬間の幼いサンデーは・・・・・
 息を驚きで飲んだんじゃなかった。その反対の
 「いるもんか、なんだい、いらないもん、バカ!!!」
 「きゃ!」
 サンデーに殴りかかる。
 ジャンプは叱る者がいないので、やりたい放題で感情のままに殴りかかる。
 小さな拳で、ぽかぽかと。泣きながらなので力がこもらないのか・・・・
 「バカ!バカ!バカ!!!あ、あんたなんていっつもオレよりも下なくせに、なんだい、いっつも、いっつもオレよりも成績悪いくせに!駄目なくせに、オレよりもぜんっぜん駄目なくせに・・・・・!」
 ちっとも痛くない拳。
 「う、うん、うん・・・」
 ぼろぼろ、ぼろぼろジャンプの目から涙がこぼれる。どきどきどき・・・
 「バカバカバカ!!!あんたなんて大嫌い!いっつも一緒に遊んであげてたのに、なにさ、あんたなんて大嫌い、もう遊んであげないもん、あんたなんてもう知らないもんね!!!」
 そう怒鳴って、後はわんわん泣き出してしまって、大人達が駆けつけてきた・・・・・。

 後で家の大人、全員に「なんでもっとジャンプちゃんが気持ちよく遊べるように出来なかったんだ!」と叱られたが、サンデーはちっとも後悔なんてしていなかった。
 どころかぽーっとしっぱなしで耳にも通らない。・・・はぁ。すご・・・すごお・・・・・。
 わんわん泣いちゃった時も・・よかったなあ。気持ちよさが満足~って感じでぽわーんってなっちゃったな。ふわふわ~って・・・・・・・


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・う・・ん~・・・ふ、んぅ、んぅ~~・・・・・」
ふぅ~、と現在のサンデーも一緒に満足そうにため息をついた。
ずっとずっと子供の頃からお世話になっているおかずだ。
幸せにうっとりとした目でご馳走への舌鼓のように、ほぅっ、ともう一度、ため息をついた。
しばらく陶酔したような目で息を整えた。
はっ、と気付いて指をどうしようかな、とサイドベットのティッシュで指をぬぐっておく。
後で、お手洗いに流しておこ。
満足そうにシーツに丸まって、サンデーは今夜の眠りに付くことにした。
大事な、大切なおかずに浸って。
これからもお世話になるんだろうな、という思いと一緒に。


・・・・・でも、これって十分に異常だよね。
「おーっす、サンデー」
「あ、おはよう、チャンピオンちゃん・・・」
サンデーは自分が正常ではない事は割りと自覚している。
女の子同士って事はもうその前段階なので、あのご馳走についてを特に。
コントロール出来ないってこんな感じかな?
この間、本で読んだ事が頭をよぎる。
へ、変態性欲・・・ってのだったらどうしよう・・・・・・・

「?」
頭をぶんぶん振ったサンデーにチャンピオンちゃんはいぶかしげだ。
「どうした?サンデー」
「え?!は、はい!なんでもだよっ?!」
「・・・?」
どうしよ、どうしよ、チャンピオンちゃんも今、私をヘンなものを見るみたいな目だ・・・どうしよ、どうしよう・・・・・もう、他人には相談できない。
・・・・・あの時も、私を異常者を見るような目だった。
マガジンちゃんに相談した時を思い出す。ぎょっとした顔してた。当たり前だよ、当たり前だよ!
サンデーは泣きたい気持ちだった。
でも私、放火して興奮、とかじゃないよ!・・・い、言えないような事で興奮?とかないもん。どこまでが正常なの?盗癖もないよ、どうしよう、どうすればいいんだろう・・・・・・・・

なのでジャンプから切り出してくれたのは、渡りに船ってタイミングだった。
図書館の地下でジャンプが開口一番に
「あ・・・あんたさあ、オレに隠してる事ない?」
「・・・」
「こ、こないだ一緒にえ・・・・・・えっちな事したじゃん?」
「!」
サンデーは
「その時もさあ?・・・・・・・・・・・・・・・・ガッカリ・・・みたいな表情してなかった?」


サンデーはあまりの幸運さにびっくりした。なんて好都合!
なのでサンデーはジャンプちゃんに打ち明けだした。
「ガッカリなわけないよ!あのね・・・・・
・・・・・」

マガジンちゃんに相談した内容をそのまま。
途中からジャンプの表情がどんどん変わっていくが・・・。
どうしよう。でもこの人なんだよ、解決してくれるは!マガジンの言っていたことを思い出す。すべての悲しみがこの人からはじまってこの人に帰る、かあ。すっごく分かる、それ。


「・・・・・・ははは」
ジャンプちゃんは、驚いた。驚いたって、そらもう驚いた。
「あ、あんたさ・・・」
サンデーが不安そうに表情を曇らせたので
「あ、うん、まあ、そんな事を?」
サンデーはこく、とうなずく。
「その・・・まさか前言ったおかずって・・・」
サンデーが不思議そうな顔をするのでもう誰かに泣き付きたい。
「・・おかず・・・?」
ああっ、もう嫌!!
「あ、うん、まあ・・その、その擬似恋愛?とか言ってた・・・」
サンデーは瞬間で真っ赤になってすぐにうつむいた。
ああー~~!もうなにこのムスメ!!

・・・マガジンにまず相談しておいてよかった~。
こんなの誰ぞに聞かれでもしたらマジ、嫌われる以前の問題だったよ、やっぱあのオンナは使えるわ。うん、あんま縁切れないようにしとこ。
「あ、あのさ・・・?まず質問」
「・・?」
「あんた、ほら、泣くまで・・・とか」
ジャンプは錯乱しそうなのを必死に抑えながら、
「泣くってそれは辛いって事じゃん!オレまず嫌だろ常識的に、そんな、あんた・・・!」


「うん」
サンデーはここで顔を輝かせて、更に複雑になる。
ただでさえ、複雑な関係が更に・・・

「だから、本を読んだの」
サンデーはいきいきと答えた。
「ジャンプちゃんは当然、暴れちゃうよね。じゃ、手足を捕縛すれば・・・って」

驚きにジャンプの喉が鳴ったが、サンデーは違う意味として受け取ったらしい。
あわてて、
「ち、違うよ、だってジャンプちゃんを傷つけでもしたら大変だもの!暴れて、傷つけたら大変だもの、あ、方法だけど武道の中でも柔術は警察も熱心だものね。
ずいぶん詳しく知れたわ。だよねえ。せっかく泥棒さん捕まえても、逃がしちゃったら大変だし、かと言って犯罪者だろうが健康を損なっちゃても大変。
血流が止まらないように長時間捕捉しておける方法は警察が一番熱心だよねえ。だから安心して?安全な方法で、痛くないよう頑張るよ?」
「・・・・・」

ジャンプはあまりの事に口をぱくぱくさせた。
「ジャンプちゃんを傷つけでもしたら大変だもん・・・・・・・・・あんまり熱心になって、拷問史まで読んじゃったぁ」
「・・・・・・・!」
「歴史の本もさすがこの学校は豊富。地域の図書館なんてくらべものにならないよねえ」


くすくす笑うサンデーは、ジャンプの表情を見てはっ、と
「!ち、違うよ、違うんだよ、やだ、私、また言葉が・・・ご、拷問って・・・・・・・
拷問はもちろん良くないよ!」
「は・・ははは・・・」
「当然よ、自白は強制なんて改宗だって・・あってはならない事だし私、その、あの・・・・・・拷問・・・ご、拷も・・・・・」
慌てたように必死になって
「そう!「もう、これって拷問だよ~」って笑われちゃうほど、気持ちよくしてあげたいな、ってそれだけなの」


ジャンプの歯の根があわなくなりだす。
「・・・ひ・・」
「その、あんまり気持ちいいと・・・・・・・・・・・・・・お、お小水?を粗相・・・・・・し、しちゃう方もみえるんだよね」
だよね、って同意を求められても。
初耳デシタヨ、あ、あわわわわ・・・・・

ジャンプの動揺と平行してる。

「それじゃ、拷問だよ~って笑って叱られちゃうのも当然だよねぇ。ふふ。
それくらい、って意味だよ?ね?お・・・驚いてる・・?」

サンデーの目も必死。


お互いが、必死。
どっちも必死の中、ジャンプはいくぶん冷静さを保とう、とそっちにも必死になった。
不安そうにこっちを見つめるサンデーを前にジャンプは悟った。
ホテルでもピンチだと思ったが・・・・・・・・
「あ、あんた・・・・・その、いっつもそんな?」
サンデーがびく、とおびえてから視線がきょろきょろと落ち着かなくなる。

おいおいおいー!!
否定してよ、お願い、お願いだから・・・・・
「そ、それがフツウだとあんたはさあ?」
更にサンデーはぎゅ、と顔をしかめた。
「・・・・・・・ふ・・普通じゃないかな・・・・?」
あはは、それをフツウと言う人を拝みたいよ。

大人になったらイヤと言うほど拝めるが・・・・・二人は中等科の、各出版社の秘蔵っ娘。特に二人はクラス内でも幼い方。

「あ、あはは・・・あ、うん、怒ってるとかじゃないよ?」
「・・・・・」
良かったー!アドバイスもらっておいて良かった、マガジン、今度なんかおごる!
「叱ってもないしそんなに落ち込むことじゃ・・・あはは、そんなしょぼんって」


「・・・・・・・・・・・嫌っては?」
おそるおそる、と消え入りそうな声でたずねられて、
「私のこと・・・嫌いになっては・・・?」
「う、ううん・・・・・」
ジャンプは今日の密会でやっと美味しい恋の味を味わえた。
こほん、と咳払いして
「嫌いになったりはしないね。オレ、そんな器の小さい人間じゃねーしさ」
「ジャンプちゃん・・・!」


ああ~、分からん。ほんっと、何度目か分からないほど分からん、この恋人が分からない!
また例の目つきになった。尊敬と信頼の目。
ああ・・・もう、誰か助けて!
「・・・・・・で、あんたはそんな危険思想を図書館で仕入れたんだ?」
サンデーが真っ赤になってうなずいた。
意外な危険地帯っ!ジャンプは泣きたい気持ちだ。
「本読むの禁止!!!」
ジャンプは言ってから、サンデーの表情を見て、
「あ、いや、また落ち込まない。
あんたは読書大好きっ子だしね。じゃあ、その知識を仕入れる目的の本読むの禁止!
読むな!そのほ・・・・・ほ・・・」
「・・・・・捕縛・・?」
「ああっ、もうお願いだから危険思想の本、読まないで!読むな、オレがリードする側だから言いつけておく!
読むな、一切!オレがリードすりゃいいんだから、あんたは知識入れなくっていーの!知識は一切、入れるな、もう禁止だから!」
サンデーは・・・しゅん、と肩を落とした。


・・・・・家に帰っても、ジャンプは落ち着かなく部屋をうろうろした。
激マズっ。
部活は休んだ。「今日は気分が・・」とコーチに言ったら、疑う様子もなかった。
・・・相当、オレ、弱ってたのか。
でもあれで弱らずに、どこで弱れと?!
ジャンプちゃんは初のえっち後、これではマズい、と帰りの新幹線に乗る前に知識を仕入れる本を買いあさった。ヤンジャンに「あんた、何買ったの~?」とニヤニヤして訊ねられたがジャンプはそれどころじゃない。
ああ・・自分の家の本買っちゃったよ、だってエロい本だけだと店員にそれ目的ってバレバレじゃんフェイクに、ほら、さ?店員、ニヤついてた気がする、もう泣きたい・・・。

でも、どうやら事態はそれ以上にシャレにならないらしい。

ヤバイよお~・・・。
なに?あのイキモノ。なに?なに?この世のイキモノ?つかあれが・・・・・
ジャンプは赤面したい気持ちになった。
あれが長年オレが・・・・・その、まあ、ねえ?
あの娘がひ、ひとりえっち?も、まあ、その、オレ以上ではないだろ~、とかそりゃあタカをくくって・・・
でも、ちょマズ!!これはマズイ、このまま放置しておけば大事になる。必ずなる。


「あ、そだ」
ヤンジャン姉ちゃん、エロい本持ってたりして。

こっそりと姉の部屋に入り込んだ。
姉はオープンな性格なくせにソツを出さない。ちっ、あのオンナいつひとりえっちしてんだよっ!
自分の事を子供と思い込んでいるのか、部屋に無断で入ってもなんにも言わない。
・・・・・ジャンプは家でもたいがいの事は許されたが。
なので、こっそり入り込んでエロ本捜索。
本棚、本棚・・・・・。
見える場所に置いてあるわけもないのでジャンプは自分の隠し場所をさぐった。
並んでる本の裏側に手を入れて・・・
ビンゴ!
並んでる本の後ろに空白を見つける。
「~♪あのオンナが見るエロ本は~♪」
ここで机、クローゼット、ベット下・・等々を点検しないところがこの少女の性格だ。卑怯な事、大嫌いな。


・・・・・・・・見つけたエロ雑誌を開いて、ジャンプはごくっと唾を飲んだ。
す、すげー・・・。
うそ、だってあの姉ちゃん、オレとそんなに変わるかあ~?
すご・・・大人の世界ってこんなんなんだ?
ど、読者の体験コーナーとかないかな?
雑誌をめくる。
す、すげー・・・こんなすげー事してんだ。
すごいけど・・・
でもこれってされて気持ちよかった事なんだよね?オレ達の場合はどうすりゃ・・・ああ、そっか。
気持ちよかった事なんだから・・・これをサンデーにしたらいいのか。そしたらサンデーはこんな風な・・・・・

ジャンプはこくっ、と唾を飲みこんだ。
す、すげー・・・。
むずむず、もぞもぞと足が動く。
あんまりに夢中になっていたのか。
そわそわと手が浮いた辺りで・・・・・・・・・


「『ふっふっふっ、ジャンプたん、お兄ちゃんのえっちな本でおにゃにぃかな?』」

耳の後ろでささやかれて、ジャンプはびくぅっ!と飛び上がった。
わたわたと雑誌をかたづけだす妹の首根っこを捕まえて、ひとつ上の姉はそのままずるずると
「『おっ、お兄たま!』
 『勝手に部屋に入ってイケナイ子だなあ~』
 『お、お兄たまぁ、だってだってジャンプ、興味がぁ』
 『じゃあおにゃにい出来るかジャンプたんの身体検査をしてあげよう』」
妹を部屋の外までひきずっていって、蹴りだした。
「・・・と、エロゲならこんな展開じゃぁ!!!
色気づいてるんじゃないわよ、このマセガキぁ!!」
怒鳴られついでに、ばたん、と扉を閉められる。
「私の部屋は出入り禁止!あんたは乳首の影の有無にハアハアしてるくらいがお似合いよ、このエロムスメ!!」
荒々しく鍵までかける音が続く。
うわ、最悪・・・
ジャンプは放り出された廊下にうなだれた。一番の味方、失った・・・・・。

とぼとぼ歩いてるのには、気分と併せて理由もある。
返却する本の中に、一冊お気に入りのシーンの本があって手放したくないのだ。
おかず本。
す、すごいな・・・あんな事をもしジャンプちゃんに出来たら・・・・・。
サンデーは内容を自分とジャンプに当てはめた。
うわ、すご、過激だよお。もしもジャンプちゃんにあんな過激な事出来たらどうしよう。
もう一週間借りちゃっていいよね?シーンが好きなだけで、知識のためじゃないもん。

・・・家でも買ってくれないんだよね、これ。過激だからかな?
カウンターまで歩いて真剣勝負、ってほどの目つきで司書さんに目を据える。
「こ、こちらの本はもう一週間借りられますか?」
サンデーは本をしっかりと離さずに言った。

「ふふ、やっぱサンデーちゃんは勉強熱心になるわよねぇ」
もう一番目ってくらいに常連の中等科の制服を見て、司書の口調はくだける。パソコンの画面を見ながら
「江戸川乱歩借りるコはほとんど文庫だもの。空き状況なんて私たちよりも詳しいんじゃない?」
くすくす笑いながら言う司書にサンデーは真っ赤になった。
い、いつもならお話、たくさんしたいけど・・・・・
「もちろんいいわよ。でもこれ、お家にないの?サンデーちゃんのお家なら・・・」
笑って雑談に入ろうとする司書にサンデーは姿勢を正して、
「こっ、今度はコナン・ドイルだって借ります!」
「?」
「ほ、本当です、べ、勉強です、勉強なんです、読みきれなかったんです、家に持って帰って読みたいんです!!」
真っ赤になりながら司書に向かって早口で言って「ありがとうございますっ」と頭を下げた。
本を奪うようにしてきびすを返す。
司書さんの意地悪ー!サンデーは恥ずかしさに顔が上げられない。バレだらどうしよう、か、顔から火が出るよー!

・・・・・と、なんともユカイに、二人がそれぞれに試行錯誤していたが。
そんな中、解決にはまず課題があるのだ・・・密会の、方法。
ジャンプは腕を組んでほとほとため息をついた。

二人きりになれて・・・ほんのちょこっとのえっちな事が出来る場所は確保できた。
でも・・もう、それだけじゃ、足りないよなぁ。
つか、もっと、歩み寄りが必要だし。
ジャンプはちょっと怒ったように頬を染めた。主に、えっち部分で。これは二人のこれからに非常に重要な課題だ。
ああーっ、もう、あのムスメわけ分からん!
ただ放置しとけば取り返しのつかないことになる!それだけは避けなきゃ!ヒミツの関係をこれからもずーっと続けなきゃいけないんだよ!

この間の方法を、2度目3度目と繰り返すのは危険だよな?
どーーーう考えても怪しまれる。あれは本当、皆さん、記憶の彼方にやっちゃって!
じゃ、どーすりゃいいんだよ!


ジャンプが頭を抱えていたら。意外な所から手をさし伸ばされた。
「・・・親睦会?」
「そうよ。クラスの皆さんで観劇でもしましょって。趣旨の親睦の催し」

目の前で微笑んでいるのは、ガンガンちゃん。

「私達ってこれから将来までお付き合いしなきゃいけない間柄よね」
言いながらプリントを手渡す。
「じゃ、皆さんで親睦会を開きましょ!って思いついたのよ」
幹事は不肖、わたくしスクゥエア・ガンガン・エニックス。副幹事はマガジンちゃんよ、と付け加えられた。
親睦会・・・。
ジャンプがプリントに目を落とした。
刮目する。こ、これ・・・

「一応、候補は帝国だったかしら?オークラ?お披露目がある・・・えーっと歌舞伎座でどこぞの何代目の襲名かな?
それのお披露目。
・・・・・で、おおまかなスケジュールは観劇後、お食事して一泊して、親睦を深めようって」
なんつー、ナイスタイミン!ジャンプはすぐに食いつきたかったが・・・


「・・へ、へぇー・・・」
「好みの演目とか・・・オペラのがいいのかしら?希望があったら教えてくれる?」
目の前の笑顔を見て、ジャンプは違和感を感じないでもなかったが・・・まあ、親睦が主だから中身はどうでもいいって?
「プランも一通り調べたから希望があったら併せて教えて?・・・・・オークラはマズイ。いや、帝国はもっとマズイ、実家とツーカーだしぃ~、とか?」

ガンガンが何か言ってるが、ジャンプの耳に入らない。
い、一泊・・・。しかもクラスのみんなが参加。親睦を深める。まっっったく不自然じゃねー!願ってもないシュチュエーションだ。
ジャンプはガンガンに目を上げた。
このオンナ、使える!もう拝みたいくらいだ、グッタイミン!!
「当然・・・!」
そこまで言いかけて・・・
「ま、まあ?みんなが参加するってなら参加しないわけにはいかないかな~」
そして一番聞き出したいことも・・・
「で、それはサ・・いや、そ、その・・・クラス全員?」
「うふ。今から全員にお話しに行くのよ」
グッタイミン!!あー、もうお前、グッジョブだよ、この手があった!横の繋がりを利用とは。


「・・・・・私たちはね、親睦を深める必要があると思うの」
プリントに釘付けになってるジャンプに、言って聞かせる声色もトーンも一定で優しい。
「だって、将来、私たちは助け合わなきゃ。だから」
ジャンプも笑顔を返そうとして・・・・・

「だから、ジャンプちゃんはマガジンちゃんの前でヒロ君のお話はしない。声高にはしない。
ね?私もジャンプちゃんのお家が抱えてるゴスロリがお好きなの?お方についてはなんにも言わないの」
目の前の笑顔の、笑みも声色も変わらない。一定だ。でも笑顔のその目だけは・・・・・
「マガジンちゃんもチャンピオンちゃんのエイケン?花右京?については言及しない。こうやって相互に助け合うのよ」
でも笑顔なのに安心できない。反対だ。目の色が穏やか、とかではなくって・・・・・
「私には・・・見えるよう。
マガジンちゃんがジャンプちゃんにありがとね、って頭を下げる将来が。
イノタケ追い出してくれてありがとうね。おかげで大助かり~。
ジャンプちゃんもマガジンちゃんにごめんね、って謝るの。
表紙に小畑使ってごめんね、文庫界でズルイよね、ごめんね、って。
・・・・お互いに握手してるのよ。見えるようだわ、そんな未来・・ステキよね!」
うふふ、と笑う、その笑顔の目が・・・安心出来る、とは正反対だ。


「じゃ、クラスのみんなに配らなきゃ。検討、お願いね~」
笑って手を振るガンガンにジャンプは冷や汗ものだ。
あのオンナ・・・な、なんか底が知れねー・・・!


・・・・・でも、まあ、過程が怪しげ、とかは恋人同士にとってはどうでもいい。
ついでに観劇だか、お食事うんぬん・・とかもいい。
個室だー!密室でーす!携帯の電源を切った理由までが自然でーす!なにもかもが自然なのでーす!!


二回目のえっち・・・
なので、だいぶん、二人にぎこちなさはない。
「・・・・・っ、ど?・・・・・・ふっ・・・・」

流れ的に、お風呂に入って寝る準備して、で、そわそわとみんなが落ち着くのを待って、サンデーがジャンプの部屋に寝る前のおしゃべりに来る・・・と、設定。
これって不自然じゃないよね?二人で確認しあった。
子供の頃は、お泊りのしあっこもしていたし。

「・・・・んっ、・・・・・・・・ふぅ~・・・・んぅー・・・・・・・・・・・うん、気持ちよかったぁー・・・・」
・・・と、サンデーはうなずいたが・・・
「・・・・・・・・・・・・ガッカリ?」


ちょっと・・・不安そうに訊かれて、サンデーは不思議だ。
ヘンだな。気持ちよかった、って言ったし・・・あ、そっか。あ、あの言葉言わなきゃ駄目なのかな・・・
「・・・・・・・そ、その・・・」
「・・・・んっ、なに・・っ・・・・・・?」
「・・・・・・・・・い、い、い・・・・・・・・・・」
「・・・・?・・・っ・・・」
「い・・・・・いっちゃ・・・・」
恥ずかしくて、真っ赤になりながら小さな声になったが伝えた。

・・・それでもジャンプの表情が晴れない。なんでだろ。

「ねえ・・・・」
サンデーも我慢強いとは言え、さすがにじれてきた。
催促する。
「・・・・んっ。おっけ。次・・・は、サンデー・・・・の番・・・・・っ」
パジャマは脱いでくれてたが、下着だけはまだ付けていた。

なので、サンデーはしかたなく、まずキスをしてからちょっと触った。
・・・うわ、か、感触で分かるけどこれって・・・・・・・。
自分の唇を舐めた。よ、様子見たいな・・・・・・・・。

どうしよ。ストップかけられても嫌だな。
でもジャンプちゃんがした事までさせてくれなきゃズルイ。
サンデーは自然さを心がけて、キスしながら出来るだけナチュラルにかがんだ。

濡れてぺとっと張り付いた下着にどきどきした。
うわぁ・・・すご・・・・・。

改めて、サンデーは思った。
タチっていいな。
これ、え、えーと、その、うん、あのえっちな気持ちだよ、って状態。

ぺとっと張り付いた下着を指先で撫でながらサンデーは思った。
いいなあ。早く役、換わってくれないかな?
下着をつけたままなので、仕方なく、舌も下着越しに。

「・・・・・・・・ふぁん、やだ・・・っ、やだ、サン・・・デぇ・・・~~」

すごいよお・・・。
すごいよお、なんかひくって動いた。これってあれだよね。うん、気持ちいいって合図
だよね、わ、私だって・・・・・・・・・・・・その・・なるよ?
「ふぅ・・・・・ん・・・・・・・・ジャぁ~・・・・んっ、プちゃあ~・・・・・」
「ふぁん、んっ、んっ、やだ、やだ・・・・・・・っ」


あ、ここ・・わ、私も触ると気持ちいい・・・・・・うん、その、えっと・・・・ちっさい、あれ。
ここ、いっぱい舐めたらどうなるかな?
すごいな。下着越しなのに分かる。

「・・・・・・・・・・・やぁ、やあ、やだったらぁ・・・・・・・」
ためしに指でいじってみてから、大丈夫そうなので・・・・・・ちょっとやってみよう、と舌先で舐めてみる。うまく出来なかったので、舌を固くして、軽く唇も使って・・・・・・・


「ひゃ・・・・っ・・・・・!」
予想しなかったほどだ。びくんっ、とジャンプの体が跳ね上がる、って言っていいほどの反応。
声もすごくて・・・・サンデーはもう我慢できない。


「ふぁ~ん・・・・・んん~・・・・・・サンデぇ・・・―・・・・も、もう交たい・・・・・」
「なんでぇ・・・?」
「・・・・・っ?・・・」
「ずるいよお、ジャンプちゃん、脱いでくれないのに・・・・・・」
「あ・・・・・」
ジャンプはそうか、という顔をしてから下着をよいしょ、と足元に引き下ろした。
・・・・・なんともビギナー。



す、すごー・・・・・!
サンデーの胸がどきん、と鳴った。
下着からぬとーっ、ってあれ・・・あれ・・・・・・!
ごくんっ、と唾と息を一緒に飲み込んだ。
あれ、うん、あれなんだよ、すご・・・・・・・・・・・・・・・!


「じゃ、じゃあ・・・・・・・・ジャンプちゃんがやったとこ・・・・・まで、ね・・・・・・・?」

 サンデーのどきどきが止まらなくなってきた。
 あれ?なんだかこれ・・覚えあるな?
 なにか甘いものがこみ上げそうで、サンデーはこの甘い気持ちなんだっけ?と頭のすみで思った。なんか覚えがある。

サンデーはさっきすごい声をあげてくれた、あの声をもう一度ききたくて、今度は直にした。
「ふ、ふぁ、ふぁ、やだ、やだ・・・・やめ・・・ろ・・・っ、たら、サン・・・・・・・・っ」

す、すご・・・・・・・・・
すごい、ジャンプちゃん、なんだか・・・・・・

舌でなんとか転がして一生懸命なのはサンデーは・・・試したかったからだ。
吸ったらどうなるのかな?サンデーは思案した。ひとりえっちしていたときに指を舐めたりするみたいな・・・・・・


サンデーは思案ながら舐めて、なんとか吸える、ってほどになったので・・・軽く・・・・・・・・・・・・

「ひぁあああーーーーーーっん・・・・・・・・・・・・・・っ」

す、すご・・・・・・・・・!
ジャンプちゃんのこんな声、初めてだよ!


「・・・・・・さ、サンデ・・・・・・ぇ・・・・・・・・・っ」
何かを言われそうなので、サンデーはその前に言ってしまう。
「つ、次、指入れるね、ジャンプちゃんの・・・・・やったとこまで・・・・・だ、よ・・ね・・・っ?」
「ふあ、だめ、だめ・・・・・・・・・っ」
「ジャ、ジャンプちゃんの・・・・通りね?ね?・・・・・・・・・・・・」

振り払うみたいな手付きするけど、そんなのズルイ。
タチってだけでズルイのに、サンデーはジャンプのした所まではきちんとさせてもらうつもりだ。
出来れば、声、もっとあげてもらって。

 そして思い出した。
 そっか。あの時と似てる。
 どきどきしながら、思い出す。
 とっときのおかず。

サンデーは指を入れた。
うわ・・・・・すご、今、きゅっ、て指を締め付けられたよお。
それと思った。この体勢、好き。
ジャンプにキスしながら、サンデーは指を動かす。向き合いながら、って一番好き。
そしてそのまま感じてくれるように一生懸命に撫でたり探ったりする。
このムスメは気持ちが優しいので中々手付きがいい。

・・・・・しかも勤勉。

自分が感じて、気持ちいいところ・・・・・。
・・・・・本を読んじゃ駄目、と駄目だしを出されたので、もう自分で試すしかない。
自分の体のあちこちを触って・・・・・中でも一番に熱心に研究したのだ。

「ふあっ、ふあ、・・・・・・もう・・・・やだ・・・・・っ、てば・・・・・!」
「ふぅ~・・・・ん・・・・・・・・・・ジャンプちゃぁ~・・・・・・ん・・ん~・・・・・・・」
自分を押し返そうとするけど、力が入ってないみたいだ。
子供のときもそうだったな。泣いていたから、殴る力も入ってなくって・・・・・・

更に。
「・・・・・・・・・・・・・・やらぁ・・・・・やだったらぁ・・・・サン・・っ、も、やぁ、駄目ぇ・・・・」
「!」
泣きそうになりながら、力なく自分の背中を叩く。
うわぁ・・・・
サンデーは止まるわけがない。

「ジャン・・・プちゃぁ・・・・・・・・・いいよお~・・・・・・・・・・」
「だめ・・・っ、・・・・・だめら、っ・・たら・・・やら、だめ、だめ、らめ・・・・・・・・・・・」

だんだんろれつが回らなくなってくる。
しかも、これ、あれが・・・うん、あの一番気持ちいいの。近くなってきた。
ジャンプの殴る力が、ぽこぽこってほどに弱まった。
きゅーきゅー締め付けるし、ジャンプちゃんの呼吸だって・・・・・・・・


「ふぁっ、ふぁ、ふあん、だめ、だめ、もう、や、もう、も・・・・・・・・・・・・・・!」
サンデーも・・・・・・・・・・実は、もうとろとろだった。
だからある意味、『同時に気持ちよくなれる』は達成していたかもしれない・・・・・・・・・

荒い息のジャンプを前にサンデーはちっとも収まらない。
気持ちの盛り上がり、最高潮。
なのにジャンプ、更に燃料投下。・・・よせばいいのに。

「ジャ、ジャンプちゃん・・・・」
「っひ、ひっく、ふ、、ひくっ・・・・・」
しゃくりあげだす。
サンデーのどきどきは・・・・・もう無理かと思ったのに・・・・・・まだヒートアップする・・・・・・・さっきから緩んでたブレーキも・・・・・・・・・・・・

「バカバカバカ!!」
「ご、ごめ・・・・・」
ジャンプがぽかぽかサンデーの肩を殴る。
ど、どうしよ、ストップかけられた所でやっぱり止まるべきだったんじゃ・・・・・・・
「バカぁ!あんたなんて、あんたなんて・・・・・・!」
う、うわ、どうしよう・・・・・む、胸がどきどきするよう・・・・・・・・
自分の胸に顔を埋めて、ぽかぽか殴る。力が入らないのか、ちっとも痛くない。
どうすれば・・・・・・
「ご、ごめんね、嫌だった・・・?」
「ふ、ふぁー、ふあ~ん、やだ、やだ、やだぁ~」


・・・・・子供の時と違うのは、自分に抱きついてぎゅーぎゅーしがみついてくる事だ。
き、嫌われたりはしてないのかな・・・?
「ごめんね、もうしないから、しないから、痛かった・・・?」
ジャンプがかぶりを振る。
「い、言っていいよ。嫌だった?ごめんね、ど、どこが嫌だった?お願い、教え・・・・・」


ジャンプは・・・まるで子供帰りだった。
むずかるようにかぶりを振り続ける。


「やだよお~」
サンデーにしがみ付いてしゃくりあげ続ける。
「やだよお~。やだよぉ、サンデーを取られたくないよお~」
子供のように、手放しでしゃくりあげだした。
サンデーはごくっと唾を飲み込んだ。どきどきどき。


「いやだよお、サンデーは性格いいし、誰にでも好かれるよお。・・・本当は優秀なんて知ってたよお、誰だって欲しがるよお」
泣き付くジャンプの肩を受け止めるサンデーの手に力がぎゅ、とこもる。

「・・・・・」
どきどきどき。
この開放的な少女はあまり我慢とかしない。
吐き出したくなったんだろう。泣き喚きだす。そして長い付き合いのサンデーには推測できた。・・・・・これはおそらく、ジャンプちゃんの心のひだに、触れちゃったんだ。
止めた方がいい、と賢い娘だから分かる。
でも、サンデーの・・・・・胸のどきどきが更に・・・・・・甘さまでともなってきた。どきどきが甘くなってきて・・・・・・・・・ジャンプを止めることが出来なかった。
うわ、すご、すごい、これ・・・・・・・・・・!


「やだよお、サンデーを取られたくないよお、初恋だもん、初恋でお互いが好きなんて・・・・・そんなの取り上げられて我慢なんて無理だよお。
オレさぁ、オレ、全力疾走するよお」
「・・・・・・・・」
「全力疾走するもん、どんな手を使ってでも一番でいるもん、家でもトップでいるよお、誰も文句なんて付けられないようにするよお。
希望通りを収め続けるよお、だからやだよお、オレの事も、サンデーの事だって自由に出来る奴らに自由にされたくないよお。一番でいるからやだよぉ。無理だって一杯するよお、やだやだやだ~。
サンデーだって・・・オレ、目いっぱい頑張るよお、だからオレ以外を見な・・・・・・・」


ジャンプは涙で曇る目を上げて・・・息を呑んだ。
驚きの息。
・・・もっと早く気付けば鎮火できたのに。
「!!!」
「へへ・・・・・」
「・・・・!・・・!!」
「すごお~・・・・・」
・・・・・・でも結果は・・・・・・・・・・・・・・・・・
ジャンプが顔を上げて・・・合った目は、見たことがなかった。
人間でも、動物でも。
「えへへ、すごお、ジャンプちゃ・・・ぁ・・・・」


なので、ジャンプは見たこともない動物を表現に借りることにした。

酔っ払った、ジャコウネコ。

ジャコウネコを見たことないけど、クラスの昼放課に誰かが教えてくれてみんなでゲラゲラ笑った。
ジャコウ科っつー動物がいて・・・そういやネコ役って語源とかあるのか?
でもこの娘は現在、役割がネコなのでジャコウネコ。
ジャコウ科は発情期になると、エロい香りでお互いに交尾に誘うらしい。媚薬にも使われたとかで「どんだけエロい動物だよ~」ってみんなで笑っていた。が・・・・・


「ふぁ~・・・・・・・ジャンプひゃん~・・・・・・・」
「ひ!」
「すごお~・・・・・・・・すご、やっぱジャンプひゃんは・・すごいよぉ・・・・・・・・・」
しかもこれは・・・・・・・・あれだ、酔っ払ってる。猫も酔っ払うと・・・猫はマタタビか。薬がキマると・・・・・・・・こんな感じだ。だらしなく・・・・・

ジャンプの発言はもうおしまい、と判断したのか。
くて、とサンデーがジャンプの肩にのしかかって来た。
あ、あんな自制心の固いムスメが、これ・・・・・・・・・・・・・・・・
「ひぃ!」
首をぺろぺろ舐められる。かかる息が・・熱くて・・・・・
「・・やっぱジャンプひゃんはすごいよお・・・・・・・・・こんらの初めれ、すご、やっぱ・・・・・・・・・・・・・
ね~え~」
あわわわわ。
そんなジャンプの右手を取った。
「見れ~。すっごい・・・・・わたひ、今ので・・・・・・・・・・・・・・・・」
「!!!」
くちゅ、と押し付けられて・・・・・ジャンプは恐ろしさに歯の根が合わなくなってきた。
押し付けられた・・・そこは熱くて、ひく、ひく、ってこ、こんな、こんな、これっておもらしとかじゃないよね?だって、ぬるっと・・・・・・・・・・・・・・
改めてサンデーを見た。
目がとろんとろんで・・・酔っ払った、としか表現のしようもない。
驚きを付け加えたいので、少々大げさに。
あのエロいって大笑いしてた・・・見たことないけどジャコウネコ!発情するとエロくなる猫!
ジャコウネコが酔っ払った!
「・・あ、あわ・・・」
「ねへぇ~・・・もっかいさあ、えっちな事、しようよお~」
「あわわ、あわわわわ・・・・・・」
「もっろもっろしよおよお~ねへ?うふふぅ~」

こ、これは・・・・・・
「ラジオ体操第一ぃ~~~ッ!!!」
ジャンプはわめく、ってほどに号令を叫んだ。
サンデーがちょっとだけはっ、と我に返ったように背筋を正す。

相変わらず上下しっぱなしの胸で「なんで?」って問うような目だが。なんで止めるの?と。
「・・・・・って号令かけたら、はじめだよね?」


ジャンプは・・・なんでオレ、えっち場面で違う意味のどきどきばっかなわけ?!と泣きたい気持ちはあったが。
とりあえず、乗り切らなきゃいけない。
「って約束だったよな?違うか?違うのか?」
サンデーがスネたように口を尖らせて・・・こく、とうなずく。
「だから、どう、どう、どう」
落ち着かせるように、サンデーの肩をぽん、ぽん、と叩く。撫でるように、優しく。
「どう、どう、どう~」

「んぅ~」
「あんた、さっき、なにした?」
サンデーが更に残念そうに口を尖らす。
「オレのリードではじめる、って約束だよな?」
「・・・・・」
「じゃあ、きちんと号令に合わせる!
今の、これ、なーんだ!」
押し付けられて、べとべとの手のひらを見せる。
「・・・・・・・」
「・・・・・はは」
「・・・・・・・・・」
「こ、こりゃさ、更に当分はオレが号令役だよなあ~」
「・・・・・・・・・でもぉ・・」
「でも、じゃねー!あんたフライング、一回!」
もう一度、ジャンプは指を突きつけて心を込めてサンデーに怒鳴りつけた。

「もう一生ってくらいにえっち場面ではオレがリードしなきゃ・・・
ヤバイだろ、この、場合・・・・・!!!」


さて。翌日。
これも最初に設定してあったが、サンデーはジャンプと話し込むうちに眠くなりました、と言う設定の下、二人で朝食のために部屋を出た。
えーっと、一階のカフェでバイキングなんだよね。
エレベーターに一緒に乗りながら、昨夜の事を思い出す。
ちょっと振り返る。実は・・・おそるおそる。
「?」
サンデーは・・・いつもの清潔感あふれる、知的な少女、そのままで優しい笑顔で首をかしげる。
昨夜の事なんて、頭にないみたいに。
これは・・たぶん今、オレに預けきってる状態だな。
ああ・・・ジャンプは泣きたいような気持ちになった。ああ、なんか相手の事が色々分かってきたけどさ、泣きたい気持ちだよ。どうにかこのコはコントロールしなきゃいけないよ、オレがしなくって誰がするんだよ、この暴れムスメを誰が、誰が、誰が!!


まあでも・・・ちょっとふくれたように顔を頬を赤くしてジャンプは前に向き直る。
このコがバーサクになるきっかけもその収集も・・・今のところ、オレ?
うん、助言以外は全部オレだ。
昨夜は不安になって泣き喚いちゃったけどさ・・・
もしかして、これってあんま心配無さ気なカンジ?
困るんだか・・・ジャンプは目をつむる。・・・・・・・嬉しいんだか。

サンデーちゃんはそんな様子のジャンプちゃんを見てにこにこと嬉しそうだ。
だんだん、だんだん相手のことが分かってきた。
私、すごくない方がいいみたい。
あんまり頑張ると・・・この少女が不安定になるのが分かった。
ジャンプちゃんの方がすごい、が一番いいバランスなんだよ。私はちょっと駄目、くらいで。・・・・・思う所がないでもないが。
でも。サンデーは、堅実なムスメだ。
名よりも、実。そうだよ!実!
実・・・・・・・・・・
そこで顔が熱くなる思いだった。・・・・・おかず、かあ。そっか、うん、なんだか理解できる。言葉を作った方はお上手ね。
ご飯だけじゃあ食べられない。
じゃあ・・・・・ちょっと口を尖らせてジャンプの背中を恨みがましく見た。
・・・・・もうちょっと、くれてもいいのに。その、おかず。

カフェに入って、一番にオムレツを注文するジャンプと、カップをふたつ持ってジャンプを待つサンデー。
二人の少女を眺めながら、ふぅ、と夜明けのエスプレッソを傾けるのはガンガンちゃん。朝の一服、と大変に満足そうだ。
「・・・・・他人の春は、大変に美味よねえ」
傍らのマガジンちゃんに話しかける。
「やっぱりなによりもの美味だわ。他人の春」
「・・・・・・その言い方、止めれ」

朝起きて、何事もなかったように身支度をすませて、何事も無かったように身奇麗に座っている。
しかもベットから起きようとしないマガジンを立たせて、最初から着付けてあげて髪の毛もといて顔もぬぐって・・・も、すべて彼女なので、マガジンにも乱れはない。
されるがままのマガジンは・・少しぐったりしてるのと・・・目のふちがちょこっと赤いぐらいか。
こちらの設定は、幹事の相談してたら、だそう。


「じゃ、なによりもの媚薬?ドラッグ、かいしゅ・・・・・」
「わあーーーーー!!!」
やっぱりマガジンの体力は半端ない。途中から腹に力を込めて叫ぶ。
カフェ中の人が注目したが、どっちも文句の付けようのないお嬢様二人なのですぐに関心を失う。
「他人の春を見せ付けられると、なんだか、こう、やっぱりね」
「・・・・・」
「他人の春あっての我が充実!」
「~~あんた、いくつよ」
「永遠の17歳?」
「はは・・中等科で、デスカ・・・」

・・・ガンガンちゃんは満足そうにジャンプちゃんとサンデーちゃんを見やって、やはり満足そうに大きくため息をついた。
テーブルで向かい合わせの従姉妹同士。仲良さそうに笑いあう二人に目を細める。
「・・・・・いいわねえ」
心からのように
「可愛らしい・・・二人。心が洗われるよう」
「・・・・・・・」
「本当に。心が洗われるみたいな・・・」
言いながら微笑ましいような・・・表現できないような目をさらに細めてから・・・・・


でも、マガジンに振り返ってすぐに明るい声に戻った。
「ね。思わない?我々にはない爛れのない春ぅ~」
ひとくくりにしないで・・・なに、それ何故にオレ、爛れ側?!


「あら、メール」
ぴろぴろり~ん♪
携帯に目を走らせてから、ガンガンはおしとやかに
「やだあ。初等部さんがおマセなんだからあ~」
ころんころん笑う。
「おマセさんな質問の回答は恥ずかしいなぁ」
ああ、なんとなく誰からで、内容も分かるオレが悲しい件。
「・・・・・」
「グ、グ、れ、カ、ス・・・・・」
「!!!」
いきなり立ち上がったマガジンは
「なんちて、なぁ~」
うふふっ、と活きの良さを笑ってもらえて、現在、目の前のお姉さまにお客様満足度、ナンバーワン!
・・・・・気持ちのやりどころも失って・・マガジンは力なくはは、と笑った。
あれ?4大少年誌のもうひとりのチャンピオンは?なに?なんで世間はスルーしてるの?軽いイジメだよ?イジメ、かっこ悪い!声高に語ろうよ、チャンピオン信者、高く拳を振り上げて叫ぼうよ、チャンピオンかっけー!ってさぁ?
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・



                              


     各雑誌女子への応援メッセージを巻末アンケートにぶつけよう!
               キミの熱い語り、お待ちしております!!

第三話 「ジャンプとかサンデーとかマガジンで百合」

第三話 「ジャンプとかサンデーとかマガジンで百合」

2007年ごろpink-bbsにて投稿されていた作品の転載です。 スレッドの更新が滞ってから長年経つので、作者の方の許可を得ておりませんが、好きな作品なので勝手ながらここに転載させていただきました。 作品シリーズの一部は18禁となっております。18歳以下の方、ご了承ください。 http://pele.bbspink.com/test/read.cgi/lesbian/1172759176/ ※リンク先は18禁掲示板となっております。

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  • 青年向け
更新日
登録日
2015-01-10

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