第二話 「ジャンプとかサンデーとかマガジンで百合」

第二話 「ジャンプとかサンデーとかマガジンで百合」

61 作

Sunday 編

マガジンやガンガンなどでも百合


ここ最近の、マガジンちゃんのご機嫌はいい。


「・・・本当はね、すっごく嬉しかったの」
集英ジャンプは胸がどきどきしっぱなしだった。

現在、二人きり。
誰も来ない。音もしない。・・・ちょっと薄暗い。明り取り窓があるから、そこからの明かりでなんとかなる程度だ。

サンデーと和解・・・というか和解した勢いでキス、告白、イイ仲、恋人・・・で、密会。
現在、この地点。
和解してからの自分たち仲のスピードときたらない。


・・・・・密会できる場所については、ジャンプちゃんは散々、迷った。

家は、絶対に、ダメだ。
サンデーと話し合って分かった。
自分たちの手綱を握ってる大元に、なんにも知らされずお互いがお互い相手にあがき合ってのを。
サンデーが話してくれることは、ジャンプには驚きの連続で声もない。
自分たちのために、お行儀を絶対に崩さなかった事。
厳しい躾も。下ネタ言っただけの書生のために教育係りたちが集まって会議?しかも下ネタの基準まで作るってオカシイだろよ、それ。ゲロまでは良くってそれ食ったらダメ?はあ?別に良いだろ、ゲロ食ったって。

でも、みんなのお手本になるよう、道だけは踏み外しちゃいけないらしい。
我が家、全員の動きが楽なようにも。
お留守番はしっかりと・・とでも表現すればいいのか。
だからうらやましかった、と笑顔で言われた時は正直、自分たちに押し付けられた物に寒気がしたくらいだ。
みんなが期待に仰いで、なんでもやっていいよ、って・・・誰もが従う、すべての自由を許された特別な存在なんだ、決して届かない存在なんだ、って憧れるしかなかったの。
そう打ち明ける笑顔が痛みを殺してるような気配を感じたからだ。・・・・・この少女は本当に我慢強くて、そんな気持ちなんて知りもしなかった。もしかしたら・・その関係が一生続いていたのかも知れかなったのだ。寒気も覚えるってもんだ。

・・・今はなんでも分かるけど。
「ジャンプちゃんの隣になれた時ね、本当はすっごく嬉しかったの」
「・・・・・」
「本当に幸運な週の、そこから更に幸運が起こらないとそんな幸せなかったんだけれど」
ジャンプの胸はさっきからどきどきしっぱなしだった。
明り取りからの光に視線を置くことでなんとか分からないように出来るくらいで・・・あ、映る木陰も目線で追うのに便利だな。


密会するのに、これは実家は絶対にダメ、と分かった。
しかも自分たちの実家はモロお隣同士、ってほどだ。
実家の近所もダメ、かと言って学院の近所もダメ。
誰に見られるんだか!
部室?ダメダメ、そんな所にサンデーがいるのが不自然だ、見つかりでもしたら質問の嵐だよ。じゃ、用具室?そっちのが不自然だろ。どうしよう。
・・・・・どこか、どこか二人きりになれるところ・・・。

そういうわけで今、二人はここにいる。
密会に絶好の場所。教えてくれたのはサンデー。
現在、なんでも分かる仲なのは、なんでも話し合える仲だからだ。
・・・まだぎこちない所は多々あるが。素直にサンデーに相談すると、
「それなら・・」
と、連れてきてもらった。
図書館の地下。

ジャンプはちらっと目を上げた。
廃棄に決まった本をプールされる場所とのこと。
本館のすぐ下にずらーっと並ぶ本棚。
薄暗くて上を見たら天井近くに明り取り窓があって、夜には電灯をつけないと作業できなさそうなそんな場所。
「もちろん来るのは私ぐらいよ。でも・・・お別れにもう一度、って」
はにかんだように笑ったサンデーは話してくれた。
誰も来ないし、音もしないからついつい読みふけってしまうそうだ。時間も忘れて。
サンデーの内面をまた知ることが出来てジャンプは嬉しい。
最高の密会場所ゲットだぜ!という気持ちと一緒に。

「ジャンプちゃんは気にもしなかっただろうけどね。私が隣なんて気付きもしなかったんじゃない?」
くすくす笑われて、ジャンプは木陰を目で追う。
ううん、それ、身に覚えあるんですけど。声が心地いい上に、サンデーのする告白の内容にジャンプの胸はどきどきしっぱなしだ。
しかもなんだか頭までじんじんして来た。
「ジャンプちゃんは朝のホームルームで司会役じゃない?・・・月曜の朝礼なんて全校生徒代表の挨拶もするし」
うわ、どうしよ。分かるよぉ。

「でもね、水曜は図書委員からみんなに連絡があるの。ホームルームで。
・・・・・本当に時々なんだけどね、隣同士になれる時があったの」
どきどき、どきどき。
ああ、頭がじんじんする。嬉しくてじんじんする。
「担任の先生がジャンプちゃんを自分の席に着きなさい、って帰しちゃうとダメなんだけど。
・・・そこから更にマガジンちゃんも。マガジンちゃんの報告も水曜なの。体育委員だしね。
先生はね、マガジンちゃんの方が成績いいから必ずマガジンちゃんをジャンプちゃんの隣に並べるの。私は・・・3番目。
しょ、しょうがないんだけれど・・・・
でもね!でもすっごく、すっごくラッキーな週があるの!先生が並ばせる順番に気を付けるの、面倒なのかな。毎週だものね、毎回、毎回は注意できないよね」
ああ・・・どうしよう。頭がじんじん、じんじんする・・・・・!
じんじんするのが全身にまで回ってきた。ああ、指先にまで来る。
「すっごくラッキーだと、ジャンプちゃんの隣に並べる週があったの。
水曜日に。
・・・すっごく、すっごく嬉しかったの。ジャンプちゃんはそんな小さい事、気にするわけないって、知ってるのにどきどき、どきどきしちゃっていっつもうつむいてたの。
隣にジャンプちゃんがいるってだけで、あんなに届かないって思ってる存在が隣なんて、もう袖とか触れちゃったりしたら・・・死んじゃうくらい。
こんなのじゃ分かっちゃう、ってみんなにも分かっちゃったらいけない、って一生懸命うつむいてたの。
あんまりどきどきしちゃって、心臓がどうにかなっちゃうんじゃないかって・・・・・本当に、本当にラッキーな週しかダメなんだけれど」

ああっ、もう、ダメ・・・!
ジャンプはサンデーの手をひったくった。
このじんじんしてるのが伝わればいいのに、と思ったからだ。
サンデーがこっちに顔を上げるのが分かる。
音がしないから、衣擦れや驚いた息までも分かる。
全部の気配が分かる。
ああ、何もかもが分かる。


ジャンプはどうにも収まらなくて、部屋の一番奥の角までサンデーを引っ張ってきた。

薄暗さがぐんと増す。

ジャンプはサンデーのほっぺたを手で包んで、自分に向けさせて、上も向けさせて唇をつけた。
背はどっちのが上だっけ?でも自分のが行動的だし。
「ん・・・・・」
サンデーは突然なのでびっくりしたようだが、すぐに順応する。
ジャンプが自分の背中をぎゅっと抱いて、ちょっとまさぐるように動くのにもすぐに。

本当に、このムスメは従順で我慢強い。


突然の上に何にも言わずにキスされても、すぐにジャンプの背に腕を回し返す。
しばらく、ジャンプはサンデーの唇を吸ったり舐めたり、もう夢中だ。

サンデーもおなじ。
もう、何度もキスを重ねてきたから二人の息がぴったりだ。
初回のぎこちないキスが可笑しいくらい。

ジャンプは気持ちの遣りどころがない。
「ね・・サンデー・・・・・」
「・・・・んぅ・・?・・・」
サンデーが漏らしていた声の最後をちょっと上げる。
「んっ・・・は、え・・・えっちな場所、さわっていい・・・・?」
サンデーがキスの邪魔にならないくらいにかすかにうなずく。


うわ、どうしよう。
頭がじんじん、じんじんする。
この娘も一緒だったら良いのに。


二人はすでにそこまでの関係になっていた。
ジャンプは大好きなサンデーの胸をまずさわった。
・・・・・抱きしめられた時の、嬉しさとか心地よさ、なにもかもが再び、頭へ波のように押し返す。
サンデーは「オラオラ!」ってタイプじゃないから、あまり気付かれないがけっこう豊かな胸をしている。
ああ・・・・・。
ジャンプはキスをしながら自分に不思議だ。
「・・・・ぅーん・・・・ジャンプちゃぁ・・ん・・・・・・・」
胸なんて自分だってある。
サンデーより控えめかもしれないが。母親だって、この学校の生徒だって。
「ぁ・・・・・・・・んう、やぁ・・・・・・・・・・・」
なのに、サンデーの胸を触ってると頭がじんじんする。嬉しくて、なんだか頭がヘンになりそうだ。
「やぁ・・・・・やあ・・ジャンプちゃぁ・・・・・・・・・・・ぁん」

しかもサンデーの声がどんどん艶っぽくなる。
これ、オレだからだよね?
他の誰かにおんなじ事されても・・・こんなにはならないんだよね?
ああ、どうしよう。どうしよう。

しばらくジャンプは夢中にまさぐっていたら、サンデーはあがる息の合間に言った。
「・・・・・わ、私も・・・・・・・・・・・ジャンプちゃん・・・の・・っ」
「・・・・ん?はっ・・・・」
「え、・・・・・えっちな所・・・・・んっ、触りた・・・・・ぃ・・よぉ・・・・・」
さあ、この二人、盛り上がって参りました!
ジャンプが軽くうなずくと・・・・・・・


「!」
サンデーの手が背中から離れてするっと、ジャンプのスカートの中に入った。
「・・・?!」
そのまま、太ももの内側をなでる。
この気持ちの優しい少女らしく、優しく、そっと、柔らかく。
しかも・・・

「ちょっと・・っ、待た・・、・・・・・・・!」
ジャンプは正直、かなり息が上がっていたがなんとか叫んだ。なかなかに積極的な手付きじゃん。いくら人がいないとはいえ、これ以上はマズい。
サンデーを引き離して、目を見据える。
サンデーを真正面に据えて、呼吸を整えて・・・。
「・・・っ、・・・・・?」
サンデーの息も上がって、相当、夢中になってるらしい。
潤んでいる目で不思議そうにジャンプを見る。

なので、自分が落ち着かなきゃな。
「ここ、・・・っ、どーこだ!」
「・・・・・ん、学校?」
「っは、そ、そー。
ま、お互い、落ち着こう」
そう言って、サンデーの肩を落ち着かせるよう、叩いた。撫でるように、ぽん、ぽん。


「こ、こないださあ?人、来なかった?」
「・・・・・ん、はぁ、うん、来たね」
「あん時さあ?どうした?」

サンデーの目の色が尊敬に染まる。
「ジャ、ジャンプちゃんが・・・っ
・・・・機転を利かせて、本棚と柱の間に隠れたんだよ」
そしてうっとりとジャンプを見る。
「私・・・。
私、どうしたらいいのか分からなかったのに・・・・。
声も、息の音もしないように、私ごと抱きこんで丸くなったの」
尊敬の目でジャンプを見つめる。
そしてため息混じりに
「やっぱり・・ジャンプちゃんはすごいよねぇ。
聡明で、判断が早くて・・・・私とは頭のめぐりが違うのね」

・・・・・ジャンプは・・・。
しょーじき、この目がたまらなく好きだ。
サンデーのしぐさの内、どれが好き、と訊ねられたら即答するくらいに。
自分に向けられる、尊敬の目つき。
ほうっ、とため息もまじるとタマらない気持ちは最高潮に達する。
自分を信じきって、頼りきっている目。
すべてを任せる、みたいな。

「・・・こほん。
じゃ、これ以上はマズいのは分かるよね」
「でも・・・」
ジャンプはこの目が見たくて、ちょっと背伸びもする。
「うん、オレならなんとか出来る、って今、そう、思ったでしょ。
その疑問に、こっちから質問。それ、ここじゃなくても大丈夫だよな」
「え・・・・・」

「あんた、週末に京都に家族旅行するでしょ?」
「う、うん・・・」
「オレもヤンジャン姉ちゃんと京都旅行するんだ。ヤンジャンお姉ちゃん、京都の友達に会いに行くんだって。じゃ、社会見学を兼ねてこのコも連れて行くわ~、って二人して」
「え・・・」
「・・・・・って、事にしておいて?って頼んだ。
姉ちゃんに」
サンデーはおろおろと、
「それって・・・」
「あんたは、なんか理由を付ける。こないだ京都現代美術館がうんちゃらかんちゃらって一生懸命聞かせてくれなかった?今調子いい?画家?のうんちゃらかんちゃら」
「うん」
「それ、一人で行くってみんなには言う」
「うん、うん」
「ゆっくり鑑賞したいしぃ~、でもなんでもいいよ。理由をつけて」
「うんうん」
「・・・・・で、現代美術館には行かない。あんたの行き先は・・・」
サンデーの顔がこれ以上ないってくらいに晴れた。
「まさか!」
「そのまさか!
あ、その時だけあんたは集英って名乗ってな。フロントには姉ちゃんの名前で。
計画一通りはオレが立ててあるから、細かい事を二人で打ち合わせしよ?」
「うん、うん!」
「だから、ここではココまで。
ホテルの防音なんてばっちり!
カーテン閉めたら、どんな格好だろうがどんなコトしようが誰にも見えない、分からない!
・・・オーケー?」
サンデーのこの時の尊敬の眼差しも最高潮に達した。
「さすが、さすがジャンプちゃん・・・!」
ジャンプを見る目は蕩けんばかりだ。
・・・お医者様でも草津の湯でも、宗教だってこうはいかない。
相手を信じきって、疑いもせず相手の言いつけを守ることしか考えてない、そんな目つき。

で、週末。
ジャンプはお姉さんが手配してくれた部屋に、先に着いてそわそわしっぱなしだ。
ああ、どうしよう。
何をしゃべろう。ううん、部屋なら手をつないだって誰にも見られない。キスだって、なんだって・・・。
ジャンプはそこで思わず赤面する。
え、えーと、サンデーは夕ご飯、食べてくるんだよね。


周りの何もかもが安心できないから、メルアドだけは交換してあるがメールの交換はしてない。
サンデーの話だと、家に帰ったら携帯を取り上げられるそうだ。
うわ、サイアク。
携帯に電話すら出来ないじゃん。

パソコンは家のパソコンで自習用に使う程度。
インターネットの接続すらされてないらしい。
学校よりも厳しいだろ、それ。


・・・・・まあ、ヘンな知識入れない方がこっちとしても有難いんだけど。


でもオレも似たようなのはかなりマズい。
お、女同士ってどうやって・・・?
あー!教育係はキスまでしか教えてくんない。
それ以上のえっちな事は書生達が個人でコソコソやってる。そういや、こないだみんなが集まって乳首の影が・・・とかなんとか騒いでたな。

いいだろ、んくらい!
こっちはそれどころじゃねぇ!

近所の書店・コンビニは絶対に目立つ。
なのでさっき現地のコンビニにてちょこっと立ち読みした。

ああ、でも、どれ読んだらいいんだよ!
それらしき雑誌を読んだら、あんまりにすごい内容でジャンプは読み終えるのにすら苦労した。
あ、いやいや、違う。今、この現状のオレには過激なんだ。
落ち着け、オレ。落ち着け、オレが慌ててどうする。
あー・・でも、そっかぁ。他の女の子ってあんなコトしてんだぁ・・・・・?


その時、部屋の電話の呼び出し音が鳴ってジャンプは飛び上がるほどびっくりした。
おおげさな表現じゃない。飛びつくように電話に出る。
「はい!」
「フロントでございます。76ろ・・・」
「そうです、そうです!766だよ、オレだよ!」
「お、お姉さまがご到着されました。キーカードを今、お渡ししたのですが・・・」
「で?!」
「あの、一応、入っていいか集英様にお伺いして欲しいと・・・・・」
「もう、いいから、いいから!!」
ああっ、あの娘はこんな時までなんで心配りを欠かさないんだよっ!
ジャンプはもどかしい気持ちで受話器にわめいた。
怒鳴りつけられるように返事された、受話器の先はちょっとかわいそうだったが。

何を話そうか、とか二人っきりなんだ、手もつなげる、うんぬん・・・・・
・・・とかはすぐにジャンプの頭から消えた。

「んぅ~・・・・・・」
「っは、サンデぇー・・・・・・」


サンデーが入ってきた瞬間から、もう抱きついて、そのまま二人で床に座り込んでお互いの唇をむさぼった。
ああ、どうしよう。
ああ、どうしよう。胸がいっぱいで、頭がじんじんする。
じんじんするのが全身に回りきってる。
サンデーが切なそうに漏らす声は、はじめて聞く声だ。
当たり前か。
今までお互い、慎重に慎重に密会を重ねて、キスも触るのも本当に・・・。もしかしたらあれが世に言う寸止め?


「ジャンプちゃぁ・・・・・・・・・・んー・・・・んっ、はっ」
すご・・・・。
ジャンプはサンデーをまた理解できた気持ちだ。
このコは本当に我慢強い。
その代わりに我慢しなくってもいい時は・・・こんなになるんだ。
そういや図書館の地下でもなんどもあった。
積極的にジャンプの唇をむさぼって。いつもはあんなに固い自制心で、どんな急ぎの用事にも誰に対しても・・・。
なのに・・・・・。


あ。
でもまだ抑えてるかも。
「サン・・・デぇー・・・・・・・」
「はっ、・・・ぅ、・何ぃ~・・・・・・・・大好きぃー・・・・・」
「こ、ここ、・・・・んっ、誰も来ない・・・・・・・よぉ・・・」
サンデーの手が、何かが切れたようにジャンプをまさぐる力も速度もあがる。
「声もね・・・・ぇ?いっくら・・・・・ん、上げても、大丈夫・・・・だから・・・・」


ああ、どうしよう。
サンデーがこんな声をそれこそ人目も気にせずに上げたら、オレ、どうしよう。
それだけでもう、どうしよう。


それがスタートの合図のようだ。
また何かがプツっと切れたように、サンデーの手が下の方に移動する。

「!」
ジャンプのジーンズの空いてる背中から手をちょっと入れてから、太ももを摩る。
もう際ぐらいまで。
な、なんか積極的だな、この娘・・・。
図書館地下でも持て余したっけ・・・この積極さ。
普段から想像も付かない。
じれたようにジャンプの太もも際をなんどもなんども摩る。
「それ・・・っ、ん・・・・・・・て・・・」
「・・・ん・・・?・・・」
「・・・・・・・ふ、・ジャンプ・・・ちゃんもぉ・・・・?」
もどかしいように、指でジーンズの寄った際をはじく。

「・・・・・?・・」
「ジャンプ・・ちゃんも・・・?
ジャ、ジャンプちゃん・・・も、・・ふっ、すっごい声を上げても・・・・ん、いいって・・・・・・・・?」
「!!」
サンデーが唇を離してジャンプの顔を手でつつむ。
前髪の生え際辺りに唇を這わせて、そのまま耳をペロペロ舐める。
「ジャンプちゃ・・・も上げていいの・・・?」
ジャンプの胸のどきどきが違う意味を込めてきた。
は・・・。
「ジャ・・んっ、・プちゃ、が、泣いちゃうくら・・・・・?・・んっ」
「!!!」
「ジャンプちゃあ・・・・・・ぁん。早く、ジーンズ・・・・んっ、上も・・・・脱いでよぉ・・・・・・・・」
自分を見上げるサンデーの目はもう潤みきって、
「早くぅ・・・・・やだよお・・・こんなのぉ・・・・・・」

ジャンプは・・・盛り上がってる気持ちから、一気に現実にかえった。
自分を見る目。
すごい、欲情に染まりきってる。
潤みきって・・・。
こ、この恋人は、この恋人は・・・・・・・


ジャンプはすぐに提案した。
「ま、待って!」
本当に、待て、をされた犬のように素直にジャンプの言葉を待つ。
「・・・・・?」
「そ、そう・・そう、まず、風呂!お風呂に入ろう!」
「・・・なんでぇ・・・・?私、ジャンプちゃんの体なら・・・・・・」
「いや、まず、風呂だよ。そうだ!一緒に入ろう!それならオーケー?」
サンデーの目が喜びと、また例の目付きになった。
尊敬の、相手を信じきって、疑いもしない目つき。

ジャンプはサンデーの手を引きながら、自分に言い聞かせた。
・・・考えろ、オレ。

何度目かもしれないが、ジャンプちゃんは決して頭が悪くない。
勤勉、とかじゃなく・・・センスが抜群なのだ。
天才肌、と言うのかもしれない。なんでもセンスで理解できる。

なので、今、現在の違和感が分かった。
おいおい、これってオレが夢見てた甘っちょろいモンなんかじゃなくって・・・


サンデーをちょっとだけ振り返る。
自分を信頼しきってる目。


・・・・この娘は、普段めちゃめちゃ我慢強い。
オーケー。それは周りの誰もが認める。自分で言っちゃってたな。言われ慣れているんだろう。
で、今・・・・
これ・・メーター振り切れて・・・?
サンデーのとろっとろに蕩けきった目。
ん?バーサク状態?

しかも、オレにみんな任せてる目。
なーんにも考えてないみたいな・・・・・。
オレの言葉を待つような視線。なにもかもをオレに任せてて・・・。
今、このコの自制心も頼れるのか?

ジャンプは自分で自分の頭を引っ叩きたい勢いで考えた。
考えろ、考えるんだ、落ち着け、オレ、オレ・・・。

そもそも・・・前フリなくえっちぃ事とか、どんだけ無謀なんだよ!泣きたくなった。
こ、この娘の普段の我慢強さ・・・・
で、今、振り切れたバーサク。
ジャンプの頭の中がぐるぐる回った。


もしかしてこれ、ものすっごくヤバい状態だぁ・・・。
ジャンプは今さらのように自分たちのピンチを悟った。
あ、あはは・・・オレら、現在、大ピンチ?
あはは、本当、大爆笑したいくらいのピンチっぷりだよ、この現状。


しかもあまりジャンプちゃんは冷静になってないらしい。
あはは、ピンク度、上がってるし。
密室、その中の更に声が反響するユニットバス。の、脱衣カゴ、バスローブ、その他もろもろ。何?このいちご100%。

サンデーが当然、期待するような目でジャンプを見る。
「・・・・・・ぬ、脱がっこ?」
しかもさっきから豊かな胸が上下しっぱなしてる。


ジャンプはまずは振り返って、考え付いた事をサンデーに叫んだ。
「あんたさあ、タチとネコって分かる?!」
ジャンプも実はそんなに知識があるわけじゃない。
が、このさい、なんでもいいので知ってる事すべてにすがる事にした。所々、声が裏返ったのはご愛嬌。
ここでオレがなんとかしないと二人はヤバイんだ!頑張れ、オレ!
「・・・・・タチ・・・?」
だからサンデーが不思議そうに自分を見て言葉尻が疑問調に上がるのに内心、泣きたくなるほどだった。


ここでジャンプちゃん、リバースカードオープン!
バーサーカーソウル。はじかれたようにまくしたて出す。
「知らない?知らないでしょ。
あっははー、やっぱね。あんた、本ばっか読んでるけど、知識無いのよ。
うん、ナイ、ナイ。
そもそもあんた、女の子同士ってどうやってえっちな事するか知ってんの?」
「さ・・・触りあっこ・・・・・?」
せわしない息の合間に、サンデー。
「あ、あはは・・・だからさっきから・・・。
で、でもさ、どこをどうやって触ればいいか、あんた、分かんの?」
サンデーは血が昇っている頬から、更に首まで染めた。
「・・・・・わ、私・・・自分が触って気持ちいい所を・・ジャンプちゃんにおんなじ気持ちになって欲しくて・・・」
ああ、もう分からん。このムスメが分からん。
「あ、あははは・・・」
「あ!で、でもジャンプちゃんの事は想像しないよ!
本当だよ、そんな・・・絶対にしちゃだめだよ、テレビで見た・・・・モデルのコとかを切り貼りしたような・・・?なんだかね、ぎ、擬似恋愛なのかな、作り上げて・・・・・」
「あ、あははは・・・・・」
タイヘンに清純そうに言われたが、彼女のしているその想像、とやらは、なんとなく聞かない方がいい、とジャンプのセブン・センシズが告げている。
「・・・・・想いを告白しあうまでは」

やっぱねー!これ以上はこのムスメにしゃべらすな!
バーサーカーソウル、発動しろ!!
頼むからオレのターン、オレのターン、ずっとずっとオレのターン!このムスメにターンを回すな!!
「あっはは~。
あんた、タチとネコも知らないでしょ?」
サンデーがうなずく。
「女の子同士の恋愛の用語なんだぞ?
こんな基本も知らないとはなぁ~。じゃあ・・触りあっこ?とかの順序とか分かるわけもないっかぁ~」
ジャンプも似たようなものだけど、とにかくまくしたてた。
「・・・?」
「女の子同士の恋愛だから、一般の恋愛と違うのは分かるよね?」
「・・・う、うん。同性愛?って言うの?」
ジャンプは深くうなずいた。
「そ。
だから、タチとネコって存在するの。
恋愛になにかと順序、決まりはあるよねえ~。
タチは男役。
オーケー?で、ネコは女役。こーやって恋愛しあうの」
サンデーは不思議そうに聞いていたが・・・

「・・・・・共同参画なのに?」
ああっ。誰か助けてくれ!
「男女が共に貢献する社会なのに?
そりゃあ・・子供を産む能力は女性しか持ってないわ。だからこのお仕事だけは女性が分担するとして・・・でも同性なのに?なんで?」
分からん!
確かに字面だけ聞いてりゃ、冷静で知性あふれる言葉デスネ。

でも・・・それを言ってる本人の目はさっきから潤みっぱなし。
息はせわしなくて、ヒートダウンしてくれない。
しかも・・・時々、可愛らしいワンピから見える左足が隣の足にぴったりくっついてそわそわ、くるくるとじれたように・・・・・

ああっこの恋人がサッパリ分からん!


「あ、いや。それは正論だねぇ~?うん、正論。
正論・・・。あ、そうだ、あんた、歌舞伎好きでしょ?由緒正しき世界」
「う、うん・・・」
「歌舞伎には様式美がある。
違う?」
「うん・・・」
「勧進帳で大見得切らない歌舞伎?あっははー、ナニソレ、喜劇?
どう?これも正論。歴史が築いた古くからある正論。様式美、型」
学校の体育館で見せられた歌舞伎の演目を一生懸命思い出してジャンプは続ける。
ほとんど寝ていたので、知ってるのは名前だけだが。
なんでもいい、それらしい事をこの場さえ・・・・・

「ね?劇にもある形式っつーの?形式なの、形式・・・・・
そう!宝塚も!
そうだよ、そうそう、宝塚って女だけの劇だよね?!」
ここで天啓が味方。
「宝塚だよ、宝塚を連想してみ!ほらほら。
あれって男役と娘役?がある。
違う?」
「うん・・・」
「それはなんで?簡単すぎて幼稚園児でも分かるよなぁ~。
女しかいないからだ。
それが、今現在のオレたちの関係。分かる?」
ジャンプの頭は忙しく回転する。
サンデーがうなずいたので、
「で、さ。
男役、女役が分かれなきゃ、色々、問題なわけ。ワルツだってそう。男パートがあって、女パートがある。
オーケー?様式美。形式。型。なきゃ、なーにも出来ない、はじまらない」
サンデーが考え、考え、うなずく。
「男役が、リードする。女役はリードされる。
タチがリードする。ネコはリードされる。
ほら!理屈、完成ー!
合ってる!やっぱオレ・理論に狂いなし。理論通り」
「・・・うん!」
ここでサンデー、ジャンプを尊敬の目つき。

「で、オレがタチ」
「え・・・」
案の定、サンデーの目が不満に曇った。
「当たり前じゃん~。
タチってなんだった?」
「男役・・・?」
「そ。リードする側。で、あんたはリードされる側」
自分とジャンプを交互に指す、ジャンプの指先からサンデーは目を上げて・・・
「おーっと。
みなまで言わない。オーケィ。分かる。
目を見れば分かる。
質問したいんだな。なんで?って。
じゃあこちらが問いたい。あんた、タチ、ネコ、知ってた?」
サンデーが残念そうにかぶりを振る。
「はは、そりゃ、話になんねーな。
じゃ、当然、オレがリードしなきゃヤバいだろ?
マズいだろ、この、場合!!
ラジオ体操、第一~、ってオレが号令をかけてはじめる。オレ、リード。で、あんたはオレの号令に合わせて体を動かす。リードされる。
オレのをマネして、オレの号令通りにすればいーから。
それ以上はするな。
いい?するな。
オレがリードする側だからだ。オレのリードにまかせろ。それ以上はするな。
絶対にするな、フライングもなし」
サンデーはちょっと残念そうに口を尖らせた。

ジャンプは説得されろ~されろ~、とサンデーを見守る。
さっきとは打って変わったどきどきなのが、もう泣きたい気持ちだ。
ああ、ピンチな時ほどその人物が評価されるって言うけどさ・・・・
なんかオレ、すごくね?
すっげえピンチの乗り切りっぷりくね?さすがオレ。オレ、ブラボー。


サンデーは・・・しばらく考えていたようだ。
大分考えた後に・・・・・こくん、とうなずいた。
ジャンプは安心に涙が出るかと思った。よっしゃあああ!これでターンエンド!!!
なので、やっと抱き寄せたサンデーが、すねたような声色で言葉を添えた時は、ジャンプはいろんな物がない交ぜでなにがなんだか、もう。
「その役割って・・・いつまで?」

で、ここで話の先頭に戻る。
ここ最近の、マガジンちゃんのご機嫌はいい。
最近の自分のツキの良さは上々だね。実に悪くない。

この間、ちょっとツツいたらジャンプがゲロった。
その後の二人を聞いてないが、あの様子じゃあヨロシクやってる。
それに続いて、放っておいてもちゃおちゃんがやって来た。高等部の少女コミック付きで。

だからみんなの頼れる相談役のポジションの美味しさに気付いた。
何もしてなくても、あっちからやってくる。
大変に美味なヒミツを持って。
あー・・・でも。
置いてあるポカリに口をつけてマガジンは雑誌をめくった。
あれから少コミもちゃおも来てないな。
ま、仕方ないっか。オレがうっとーしくなって突き放したし。あれだけ厨房に手痛い扱いされたら、そりゃ近寄りたくもないわ。
しまったな。惜しかったか?
ま、いっか。素材は欠くことないでしょ。
・・・と、思っていたら、今日も素材がやって来た。
悩める子羊ちゃん。

このコは子羊ちゃんって言ってあげてもなんら差し支えないわあ。
小学館サンデーは、マガジンの前に来て深々とため息をついた。
可愛げ純度、100%。このムスメのほとんどが可愛げで出来ております、大人しい、素直、性格もいい。
「えっと・・・今、忙しい?」
「ん?なんで?」
マガジンは簡単に返事。
「マガジンちゃんに相談したいことがあるの。・・・マガジンちゃんはとっても頼れるし・・とっても大人だし」
「どーぞ。なんのおかまいも出来ないけど」
腰掛けている、その横を譲った。
と、言うわけでマガジンの横にサンデーちゃんが座った。


座ってからずいぶん経ったのに、ため息しか吐かない。
でもマガジンは辛抱強く待った。雑誌があるし、たいくつはしない。ポカリあるから、のどもかわかない。
「・・・・・あ、あのね?」
ようよう、サンデーは顔を上げた。
「あのね、恋愛の悩みなんだけど・・・いいかな」
マガジンは可笑しみをかみ殺しながら
「ん?いいよー」
「・・・・・はぁ・・・」
サンデーはまた深々とため息を吐いた。
おっもしれ~。

「あ、あのね、あのさ、マガジンちゃん・・・恋愛の事で悩んだりする?」
「あはは、しょっちゅうじゃない?」
軽く言って、サンデーの顔を覗き込んで「ね?」と首をかしげる。
「だって年頃の女の子だし?」
「!」
サンデーの目が、まるで光臨した天使を見るようになった。


「じゃ、じゃあ、聞いてくれない?
あ、でも・・・
でも、これは私の友達の悩みなのよ?
お友達に相談されて、でも私、知識そんなにないからどう答えたらいいのか・・・
お友達よ?お友達の悩み」
「うんうん、お友達、ね」
それから、またサンデーはあれこれ言葉を選んでいるようだ。
さっきからの指を組んだり、離したり、はっきりしない態度に戻る。
なのでマガジンも自分の爪を点検する。

「あ、あのね・・・
あのね、友達、悩んでるの」
「へぇ」
目だけサンデーに移す。
「・・・すごく、すごく・・・・悩んでいるの。
あのね!マガジンちゃん!」
「はいはい?」
サンデーは恥ずかしいのか、顔を真っ赤にしてきゅ、と目をつむった。
「あのね!
キスって・・・あの・・・・、いっつもあっちから・・・・えっと・・・あちら側・・殿方・・・・・
そ、そう!殿方の方から女の子にするものかな?女の子側からしちゃ・・ルール違反かなっ?」


この時、マガジンは爆笑した気持ちだった。
分かる!言わんとする事は分かる!
サンデーの、必死のすがるような目を見ながらマガジンは拍手してあげたい気持ちだった。
なんとか肝心な事はボカして・・・で、質問してる、必死な目。
あははー、でもこれ、なんてギャルゲ?
しかもカワイイ目でオレを見上げちゃって。必死で頼るような。カっワイイわぁ~。
可笑しすぎて、爆笑をこらえるのにこっちが苦労する!

マガジンはサンデーの検討に答えるべく、サンデーの必死の質問に答えようとして・・・

「だって・・・・・
友達は、お相手のことを最高に気持ちよくしたいの!」
「・・・・」
「・・・・・気持ちよくしてあげたいの、会ってる間は、会える時間だけ、もしも・・・一緒に一晩中いられたら、夜中じゅう・・・
もう、これ以上、無理ってくらいに気持ちよくしてあげたいの!」
「!!」
「悲鳴上げるくらい。なんべんも、なんべんも・・・もう、勘弁して、ってくらいに何べんも天国に連れて行ってあげたいの!
一緒に行きたいの!
泣き出しちゃって、子供みたいに、子供時代みたいにバカバカってぶって返すくらいに、もう忘れられない、ってくらいに気持ちよくしてあげたいの!
・・・・・気絶しちゃうくらい」
「サ、サン・・・・・」
「一晩一緒にいられる時なら・・・気絶しても大丈夫よね。何度だって。
なんべんだって気を失うくらい。そりゃあ・・気絶されちゃったらお話も、気持ちいい事も出来ないけど・・・。
アレコレ触っていたら、もしかしたら目を覚ますかもしれないじゃない?」
「~~~」
「しかも・・・その、気持ちよくって気を失っちゃった所をデジカメで撮れちゃうのよ?・・・えっと、その、どどど、どんな?角度?からでも・・・。
気持ちよくなっちゃって気を失っちゃう顔なんて撮れたら、いっつもいっつもは会えない相手でも、家に帰ってもそれを見て、うふふ、って嬉しいじゃない?
その時の事を思い出したり・・・で、その、あの、えっと、えーっと・・ここからはとってもとっても言いにくい事なんだけれどね、えーと、その撮ったす、すが、姿・・・・・・。
!やだ、マガジンちゃん、そんな顔しないで・・・ダメなの?恋愛のお作法から外れているの?お願い、お願い助けて!!」

マガジンは・・・。
今、過去最高のピンチが目の前で起こっているのが分かった。
サンデーの悲痛そうな訴えの途中から・・・冷や汗が背中をなんども伝っていくが分かる。


こ、これは・・・・・
「ス、ストップーーー!!!」
「・・・?」
自分でも可笑しいくらいに自分が動揺してるのが分かった。
サンデーはいつもの清潔感あふれる様子で、すがる様な目で自分を見ている。
なんで遮られたか分からないような・・・
「あの・・・違うのよ?」
「だ、だから・・・」
「声までは・・・・だ、だって!そんな誰に聞かれるか・・・」
「だから!ストップってば!」
あまりのピンチっぷりに呼吸が整わなくなる。
なので自分をも落ち着かすよう、
「オーケー。
まずは落ち着こうじゃないか、マイ・フレンド」
「・・・」


相変わらず、自分を頼るようにじっと見つめる目。
マイ・フレンドなんて今言ってしまったが・・・
~~~このムスメ、訳分からない!
なに、コレ?なにこのイキモノ。
はい~?これギャルゲじゃなくって・・

「ま、まずは質問させて?」
「うん!」
「言葉から察するに・・・恋人とは・・あ、サンデーちゃんのお友達のね?
お友達と恋人はけっこう深い関係?」
消え入りたいくらいに恥ずかしいのか。
肩をきゅ、と狭くしてから・・・こく、とサンデーはうなずいた。伏せた顔は見なくても真っ赤と分かる。
あははは・・・。

おいおい。そんな設定、エロゲだけにしてくれよ。
このムスメが分からない。
過激なコト言いながら、なに?その恥ずかしくて死にそう、みたいな。おいおい。エロゲと現実の区別くらい付けろよ~。


マガジンは自分を落ち着かせるためにもゆっくりとした口調でまた訊ねた。
「えーっと・・・サンデーちゃんは雑誌とか読む?」
「・・?」
「ティーンズ向けって言うの?ちょうどオレらの、それこそその手の悩み相談室、みたいな記事のある」
サンデーはもじもじと手を組んだり、離したりしながら
「・・・い、今並んでる雑誌は過激だから・・・・読むなって、家の人に・・・・・・」
あはは。あんたトコの娘さんの方がよっぽど過激では?

「じゃ、じゃあさ、どうやって知識を・・・う~んと、友達の相談にのってあげられるような?」

サンデーは嬉しそうに顔を上げた。
「私もね!あれから・・・
あ、相談されてからね、図書館中の本を読んだの!」
「あー、なるほど、二次元ドリーム文庫みたいな?」
「?」
「ん?フランス書院文庫?いやあ、まっさかあ~フランス書院文庫は置かないかあ」
「・・?
マガジンちゃんの言っている文庫はうかがった事が・・・。
ごめんね、今はもうなくなってしまった文庫で名作、たくさんあるのにね。手に入らない作品はどちらかの文庫で再版して欲しいくらい」
「あ、あははは・・・・」
「あ・・あのね?芥川賞を受賞されるような作家の方でも、その・・・
私たちには刺激が強すぎる内容を発表される先生もいらっしゃるじゃない?」
そっちかーっ!!
「・・・・旧かなづかいや古典なら・・・リアリティ無い気がして・・・・いいかな?って思っちゃう事もあるんだけど・・・・
やっぱりいけないよね、いつもは飛ばしちゃうの。
でもね!友達から相談受けてから・・・やっぱり読もう!っていけないコトなんだけれど・・・・・。
・・・け、軽蔑する?」
頼むから、もじもじ指を組んだり真っ赤になってうつむいたり・・・
「・・・・・・・・・・・・・どんなに過激だろうと。例えば・・・・そうだ。マガジンちゃんはマルキド・サドってお方、聞いたことある?」
ひぃぃぃーーーっ!!
「ち、違うの、違うのよ、人名なのよ?・・・俗語の・・え、えっちな言葉とは違うの、どうやらとってもお詳しそうな作品を・・・」

ダメだーーー!!
この時点で、マガジンちゃんのライフポイント、ゼロ。
ダメだ、このムスメ相手は、オレにはキツすぎる、ダメっす、ムリっす!!!
逃げたい。
今、マガジンちゃんの心がその一心に染まった。逃げたい、逃げたい。


「オーケィー・・・」
・・・・・逃げよう。
マガジンの頭がこの瞬間からフル回転する。
この場を逃げ切るために。
「そうだよねえ、誰もが悩むよねえ」
「!そうなの!!」
「オーケィ。
それはね、誰もが、なの」
「・・・」
「うん、アダムとイブの時代から。
愛の神秘に魅せられて・・エゴとエゴとでシーソーする。野獣と化すの」
「・・・・・」
「・・・・・だって世界中の誰もが業の深い生命体」
知ってる単語がどんどん出てきて、サンデーの表情は不安に曇る。
・・・マガジンが歌うような口調になってる事も気付かずに。

「・・・過ちを繰り返す。
そこに富裕層なんてないの。貧困層?信仰している宗教?
みんな、一緒。
みーんなが上を見上げれば・・・ほら、空しかないの。
違いなんて、そこに、ない。
・・・おっと。今、オレを夢想家なんて思ったかい?」
サンデーはかぶりを振った。
不安そうな、すがるような目つきで。


マガジンは逃げ切るためにどんな手でも使う算段だ。
自分が何を言ってるのか自分でも分からないのは承知だ。覚えてるセリフ、みんな使ったれ。
己の可笑しさ承知で大げさにため息を吐いて、かぶりを大きく振った。
「そう・・・世界中の誰もが恋愛には野獣な生命体。
それに違いなんて、ない。誰もが一緒。カンタンなコトさ。
だから・・・CHA-LA」

マガジンは人差し指を立てて、チチチ、と振る。
「チャラ・・・?」
「HEAD- CHA-LA」
へっちゃら・・・と口の中でつぶやいて、サンデーの顔がだんだん晴れる。


「みんなが一緒。世界人類、みなが思考回路はショート寸前。
サンデーちゃん・・・のお友達だけが特別じゃないの。
そして、その苦しみを一緒に分かち合って、さらには解決してくれる世界唯一の相手がいるの」
「相手・・・・・」
「・・・例えば・・・・サンデーちゃんはひとりぼっち?」


「私・・・ひとりぼっちなの・・・・・?」
「イメージして下さい」
歌うように言いながら、大きく手を広げる。
「・・・」
「いい?イメージして下さい
目を閉じて。」
マガジンは自分でも何を言ってるのかサッパリで大声で笑い飛ばしたかった。
自分を。なあ、誰か笑ってくれよ。
「誰の姿が見える?
誰の声が聞こえる?」

サンデーは目をつむってから、すぐにマガジンに顔を上げた。
「・・・今、姿が見えたのね」
サンデーはうん、うん、と強くうなずいた。
「おぼえていますか?
目と目が会った時を。おぼえていますか?手と手が触れ合った時・・・
・・・・・もうひとりぼっちじゃない」
「ひとりぼっちじゃない!」
「そう!サンデーちゃん・・
・・・の、お友達にはお相手がいる!
ほぉーら、カンタンな事だった!
よくよく考えて。
すべて悲しみはそこから始まって、すべての愛しさがそこに帰らない?」
サンデーはうんうんうん、とうなずく。
「だからCHA-LA!ひとりぼっちじゃない、HEAD- CHA-LA!」
「うん、うん!」
「いいぞお~。何が起きても気分は?」
「へのへのかっぱなんだわ・・・!」
元気良くあいの手入れてもらえて、この時のマガジンちゃんの気持ちは・・・単勝のマキバオー。
逃げ切れたーーーっ。

「だからお友達にはこう言ってね?」
サンデーは今頃、はっ、と気付いたように居住まいを正した。
きちんと手を膝に組む。ちょっと気まずそうだ。そわそわとスカートの乱れを直す。
マガジンはその様子を見て、満足そうにうなずいた。
「オレに相談してる場合か?」
「・・・・・」
サンデーは真っ赤になってきょときょと視線をうろつかせた。

「あんたには相手がいるんでしょ?相手にまず、相談。
で、オレはその恋人とやらが目の前にいたら、まず怒鳴りつけるね。
あんた、自分のカノとえっちしたんでしょ。
じゃあ、ほっとくな!
お前が一番知ってるんだろが。
カノの事、一番知ってるんでしょ。じゃあ、ほっておくのか、と。
ほっといてエライこっちゃになるのは一番あんたが知ってんでしょ?
もしかしたら不安なカノは周りに相談するかもしれない。
相談された相手は吹聴しまわるかもしれない。
どれだけ被害が及ぶかを想定しているのか!どれだけ、どれだけ、どれだけ!おまいらは苦境に立たされるかを想像もしてみてくださいよ、何?オレ、難しい事、言ってる?言ってるの?!」


サンデーがおろおろしたように立ち上がった。
「ち、違うの!お相手は・・・その、お友達のお相手は悪くないの!」
あせった様に手のひらを見せて振る。
「私が・・いけないの、相談なんてしちゃって・・・」
マガジンは柄にもなく取り乱したのに、我に返った。
大きくかぶりを振る。落ち着け、オレ。
「私が悪いの、その・・・・大事な秘密を・・・・・。
マガジンちゃん」
「・・・・・」
「お願い!
・・・・・一生のお願い、この事は・・・」
オーケー。
考えるな、オレ。
今、サンデーちゃんから受けた相談も、内容も忘れたいのは・・・

「こちらの方こそ。
この事は誰にも言わないわ」
サンデーを見る。


このお話はノン・フィクションです・・・、か。
実在の人物が目の前にいるよ、おなじクラスだよ、親しいよ、ああ、もう泣きたいよ、しかも二人ともね、トホホホホ。
「マガジンちゃん・・・!」
しかもこのコ、感動したように声詰まらせたよ。
もうこのムスメ、なにがなんだかサッパリ・・・・・

「・・・・・だからサンデーちゃんも誰にも言っちゃダメ」
・・・だけど、野放しにしてはいけない事だけは分かる。
なので強く言い聞かす。
「うん!」
「周囲には漏らさないで?
・・・と、お友達に伝言お願い」
「うん、うん!」
「お相手にだけよ?もう誰にも言っちゃダメよ」
「うん、ありがとう!」
「じゃ、お互い、この事は墓場まで、って事で・・・」
「ありがとう!」
サンデーはすっかり元気になってマガジンの手を取った。
「これからも友達でいてね!
私はいつでもマガジンちゃんの味方よ!」
ぶんぶん振られても、マガジンはされるがままにしておいた。
あー・・・どうしよ。明日からどーゆー面下げて登校しろってのよ・・・・・。

と、マガジンちゃんがユカイな目にあっている間。
こちらは初等部。
あいも変わらずにピヨピヨ、ピヨピヨとヒヨコの飼育箱をひっくりかえしたようなにぎやかさ。
・・・の、中でコロコロちゃんは納得が行かない。

「うっふふふ~♪」
この間。つい、この間のことだ。
親友のスクウェア・ガンガン・エニックス・・・そうそう、ボク、本名、やっと全部言えるようになったんだよね。この並びで良かったっけ?なんだか不思議な響き。どこが苗字なんだろ?
その、年上の親友にちゃおを紹介してから、ちゃおのご機嫌がいい事この上ない。
そりゃあ・・・元気ないより、ずっといいケドさ。
なーんか違うんだよね。
コロコロちゃんはちゃおちゃんをじーっと見る。
様子が、って言うか・・・上手く言えないけど。

だからツツきに行った。
コロコロは家でも末の方の妹だし、幼さが抜けきってないのか。あまり考えずにちゃおに近づく。
「ねー、ねー、ちゃお~」
「ん?なに?」
うわ。この目付きもヤ~なんだよね。
なんだかボクをカワイイ妹を見るような・・・アンタのがおこちゃまじゃん!
「ねーねー、ちゃお~。なーんか最近、ご機嫌だよね」
「うふ」
その笑顔がなんだか腹が立った。
あ、待ってよ?なんかこの笑顔、見覚えが・・・。
「なーんかさ、ボクのおねーちゃんも最近、様子ヘンなんだよね」
「?」
首をかしげるしぐさも・・・
「なんて言うのかな、なんか・・・なんか。
なーんか、前と違うんだよね。
ボクと喋ってても、なーんか。なーんかが、なーんか、ヘンなんだよ・・・」
「あは、可笑しい、コロコロちゃんったら」
「あ!もしかして!」


コロコロが顔をぐいっと近づけた。
「もしかしてちゃおがそれを知ってるんじゃな~い?」
「?」
「ボクに隠れてなーんかコソコソさ・・・
そうだ!きっとそうだよ、なんかちゃお、オカシイもん!ぜーったいオカシイもん!」
大げさに自分を覗き込んだ友達にちゃおはうふ、と笑った。


「恋でもしたんじゃない?」
軽く返事する。本当、相手にされてないような・・・。
「!するもんか!・・・あーんな世話の焼ける、なんでも手を引っ張ってあげなきゃいけないおねーちゃん、ボクが面倒見てあげなきゃ、一体どうするのさ!」
「・・・・・」
「ボクのがずーっと大人だし!でしょ?」


ちゃおちゃんはその様子を見て、ちょっと考えて
「でもね、女の子はね、恋をすると変わるのよ?」
そう、これ!
この目つき!この目つきがイヤ!最近、このコこんな目つきばっか。
「・・・・・」
「魔法みたい!
コロコロちゃんも恋をしたらとっても変わるよ、きっと」
「・・・!」
「そしたら見てみたいな」
楽しそうに笑うちゃおに・・・


「するもんか!」
コロコロは勢いつけて立ち上がった。
「こ、恋なんてしないもんね、そんなの、フケツだもんね!
ぜーったいにしない!しないもん、なんだよ、ちゃおそんなコトばっか考えてるの?」
やっぱり微笑ましい物を見るような目つきが終わらなくって、
「!
なんだよ、恋、恋ってさっきから・・・
分かった!アンタさ、だからフリルとかいっぱいの洋服着てるんでしょ!『あなた~ご飯にする?お風呂にする?』みたいなコト、したくって!」
コロコロは言いながら、ちゃおの目つきが変わらなくって、嫌がらせに
「あは~ん、うふ~ん、みたいにするんだ!
フッケツ~!!」
声まで作って言ってやったが、ちゃおの目つきは変わらない。
どころか、


「あ、今日は高等部と終業時間が一緒だ」
腕時計に目を落とす。
「やった!お姉ちゃんと一緒に帰れる。
?もしかして、コロコロちゃんったら、サンデーさんと一緒に帰りたいの?
もー、あんまりお姉さん困らせちゃダメだよぉ?手の付けられないやんちゃっ子!ってサンデーさんまで降参しちゃったら、それは相当に度が過ぎちゃってるワガママって事だよ~」
くすくす、困ったように笑う友人に、コロコロはなにをどうすればいいか分からず・・・
「~~~~~」
怒りでその場で荒々しく地団太踏みたいくらいだ。
もお、ちゃお、知んない!ガンガンおねーちゃんに言いつけてやる!


ここでもう一回、中等部に戻る。
・・・講談マガジンは自信が無くなってきた。
これってほんっとーうに美味しいポジションなのか?
頼れる相談役。
あ、いや。でも自分内成績を勘定してみたら今のところ楽しかった目の方が多い。
・・・・・精神的重圧は辛かったけれど。
ああっ、頼むからサンデーちゃん、もう来ないで!


ふかーく悩んでたら、
「・・・・・よぉ」
ふてくされたような声。
「お前さあ、なんつーか、相談?とか聞くの上手いじゃん?
経験も豊富だしさ。
オレのもちょっとさ、聞いてよ」
あー・・・今、一番会いたくない相手が来た・・・・・。


集英ジャンプが、返事も聞かずに隣に腰を下ろした。
こ、このオンナと・・・・・。
横を向いて、ふてくされたように遠くを見て考え込んでいる相手を見た。
こ、このオンナとサンデーちゃんは・・・いや、考えるな、オレ!
「なんだよ、イヤなのぉ?」
「い、いえ、別に・・・?」


マガジンは視線をそらした。遠くを見る。
「なんだよ、お前、こっちを見ろよ」
「あ、あはは、うん・・・」
見られねーんだよ!
「ちっ!分かった、あれだろ、ツンデレとかクーデレとかそんなだろ」
「はは・・ははは・・・」
「んな事やってる暇あるなら天才魔法先生のセリフなんとかしろよ、あれきらりんちゃんより棒だろ、ドラマのお前、なんだろよ」
が、ジャンプはちっとも空気を読んでくれなかった。
どっかりと腰を下ろして、帰ってくれそうにもない。こちとら、あんたの顔も見たくないのよ!
どころかやたらつっかかってくる。このオンナ、性格、サイアクだな。

あ、いや・・・。
ジャンプを観察する。
それだけせっぱ詰まってるとか?

「なに?あんたヘンじゃん」
本当に苦しい笑顔をジャンプに向ける。
目はあわせられない。サンデーの言っていた事は、考えないように、考えないように・・と念じながら・・・
「あ?」
「ん?相談?悩んでる人っぽくないじゃない。むしろ元気?」
ジャンプは怒ったように顔を下向けてた。


「・・・オレだって八つ当たりしたい時もあるよ」
ビンゴか。
サンデーとヨロシクなってからなーんか攻撃的なのが収まった、やれやれって思っていたら・・・・・。
「へえ、すっごい悩んでるとか?」
そら、悩むわ。
思い出したくない事を思い出しそうになってマガジンは頭をぶんぶん振った。
「?」

相変わらず、目だけはあわさずに
「き、聞かないでも・・・?ないよ?」
ああ、でも聞きたくない!
「本当か!」
ジャンプの顔が晴れた。
「恋愛の悩みだぞ?!お前、得意だろ!」
ああ~、悪い、今、それ、一番聞きたく話題な件について。

「あのさ!
え、えーとぉー・・・
そう!オレの友達な?友達の悩みだぞ?」
「へ、へぇ~」
ああ・・・もう爆笑したいわ、今のオレを。
「友達から相談受けてさ・・・・・
その・・・オレ、そんなに経験あるわけじゃないじゃん?
一番に、お前が浮かんだわけ。なんつーかあの手この手が使えそうなお前を」
その表現、止めれ・・・。
「・・・・・あ、あのさぁ・・・友達、恋人に対して悩んでるわけ」
聞きたくねえぇ~。
でも相談モードに入ったらしい。
深刻そうに俯いて、ふぅ、とため息を吐く。

まあ、いい。このオンナは全部が早い。
手堅く、とか辛抱強く、とかは無縁のオンナだ。
すべてがスピーディー。とっとと帰すぞお。
「あのさあ、相手が・・・その、エロすぎて持て余したら、お前ならどうする?」

ああっ、いきなり核心っ!
「あはは・・・・」
「その・・・ほら!男ってみーんなすけべな生き物じゃん?ちらっとパンチラでもしたら食いつく、みたいな。
お前知ってるだろ?
そんなカンジ。うん」
「あ、あはは・・・」
「・・・・・ふぅ。
オレの友達の恋人、すげーの!もう手に負えないんだよ!もう・・・今までがさ、抑えすぎ?っての?
いったん手綱とかなくなったらさ・・馬なら暴れ馬って言うじゃん。
ズバリそれだよ。あれは暴走だ。手綱がプツっと・・・・・切れたよ。
普段大人しいヤツがキレるとえらい事になる、って言うけど・・・もう・・・・・もうどーしたらいいのかほとほと困ってるんだよ・・・・・・」
ああ、言ってる内容をおぼろげに理解できるオレが悲しい件。
「へ、へぇー・・・」
「はぁ・・・・・・。どーすりゃいいんだよ。お前、コントロールの仕方とか分かるんじゃね?そういう相手にはこの手でいけ!いいや、この手!みたいに」
ふぅ・・・とふかーくため息を吐いたジャンプに、実はマガジンはちょっと救われた気がした。
あの手この手って、そっちの「手」か。

マガジンはさり気なく進言した。
「その友達はさ・・・言えばいいじゃん?
『これ以上はダメ!』とか」
言ってから、あわてて付け足す。
「今日は危険日なの!とか」
なんと言う自然さ。ピンチの時ほど評価が問われる、と良く聞くが・・・・サンデーちゃんと言い、今と言い、オレ、そんなに振り回されてない。オーケィ。さすがオレ。
「・・・・・違うんだ」
ますます俯く。
「・・・・・・・嫌われたくないんだ」
「・・・」


・・・マガジンは少しだけ改まった気持ちになった。ジャンプのこんな落ち込んだ声は・・・・そういやサンデーちゃんに殴られた日以来だ。
「もしも・・・もしもだぞ?相手の希望通りに出来なくってさあ・・・それで、嫌われるのがイヤなんだよね・・・・・」
「・・・・・」
「初恋だしさ、今までこんなに誰かを好きにな・・・」
言いながら、はっと気付いたように
「って、友達にすっげー深刻に相談されたわけ!
初恋で、すっごくすっごく好きで、嫌われたくないって。だからどうしよう、って」
もしかしてこれ・・・サンデーちゃんよりもくみし易しだったりして。
「で、お前は恋愛の達人じゃん!だからお前に相談してみようって」


「へえー」
マガジンは次を促す。
「で?」
「は?」
「悩みはそれだけ?その友達の悩み」
ジャンプはうん・・と元気なくうなずいた。


・・・・・あまり、嘘をついている表情ではない。
このオンナは嘘とか大嫌いだし、そもそもオレが他人の嘘を見逃す方でもない。そこは割りと自信がある。
それで、これだ。
洗いざらい吐き出して、で、これ。
これは・・・・
かな~りサンデーちゃんよりもくみし易し、だ。つかサンデーちゃんが異常だよ!

まとめてこのオンナになんとかしてもらおう。
マガジンはジャンプを観察してから、がしっ、と両肩を持った。
ジャンプが目を上がる。救いを求めるように見上げる両目。
そのまま目を据えた。
マガジンちゃんは言い聞かせるようにゆっくりと言った。

「オレならその友達に、こうアドバイスするね」
「うん!」
「『オレに相談してる場合か?』」
ジャンプの目が見開かれる。ごくっと唾を飲み込む。


「それって・・・!」
「オレに相談してる場合か?
今、この時にだって・・・その恋人は、誰ぞに相談してるかもしれない」
「!」
後はサンデーに吐き出した気持ち、そのまま、

「あんたは不安。
その不安が恋人に伝わらないわけがない。
で、その恋人も不安になる。不安な恋人は誰かに相談する」
「あ・・・!」
「相談する。
相談された人は「おいおい、こりゃいいネタだぜ~」って吹聴して回るかもしれない。
恋人は超・エロいんだよね?」
ジャンプはかぶりを振る。
「そーんな面白おかしい話題に、周囲が食いつかないわけがない。
さあ、周りは二人の話題で持ちきり。
そりゃ、誰だって恋愛話、大好きだもん。しかも、知ってる人。目の前にいる人。
知ってる人を肴にして、みんなで思う存分、噂話で楽しむ。わいわい、きゃっきゃっ。みーんなが大好きな恋のお話で。
ほおーら、出来上がり!二人にとって最高の苦境、第一段階出来上がり!」

「あ・・・あ・・・・・」
「嫌われる?ははっ、それ以前の問題になるね。
周囲がもう二人のいられない場になるね。だよね、みんながヒソヒソコソコソ二人の話題で楽しむ。誰だってそんな楽しいの、ほっておかない。
と、なるときっと両家のご両親だって黙っちゃいない。
嫌われる以前の問題だね。親に引き裂かれる。
もしかしたらもう一生会えないってくらい。
さあーて、その苦境はジャンプ的に何段階目?
言っとくけどこれで終わりじゃないわよ。芸能雑誌・・・が取り上げるかはその友達の知名度によるけど、ま、エロ雑誌読者欄には投稿されたりして。
面白おかしく尾ひれつき、今ってネットも怖いよね。ブログなんか付けてるコは書いたりして。しかも複数。こりゃ二人は一生その話題から逃げられないな~、更には・・・
と、フルコースってほどオレには苦境は考え付くけど?
どこまで話そう?」
ジャンプは聞きたくない、と言うように耳をふさいで顔を伏せた。


そのジャンプの肩に手を置く。
「だから、言え。
友達には言え。オレに相談してる場合か?と。
まず、恋人に相談だろ、と」

ジャンプがすがりつくような目で見る。
マガジンは満足そうな笑顔でうなずく。よし、乗り切れる!

「恋人に相談だろ?
恋人の悩みも、聞いてあげてね」
マガジンは言いようもないモノがこみ上げるが、なんとか抑える。
「恋人の悩みをよおーく、聞いてあげる。いちからじゅうまで聞いてあげな。
あんたが聞かずに、誰が聞いてあげるの?
で、二人で相談し込みな。心行くまで。
それともあんたらは隠し事しあっこしてる間柄?」


ジャンプは急に立ち上がった。
「違う!なんでも話し合って・・・」
「なら、無問題!
自分たちで解決しろ。じゃなきゃ、被害がそりゃあ、もう」
特にこのオレがな。

「サンキュ!」
きびすを返そうとして、気付いたようにマガジンに請合った。
「最上級に感謝!
お礼にあんたに将来、なにがあっても卒業文集だけは人に見せない!」
そうとうに気分が明るくなったらしい。
大声で笑いながら、もどかしいってほどに早口だ。
「あっははー、お前、ほんっとバカだったよな~。
何書いたっけ?
『先生!卒業したいです・・・!』?『お前はもう卒業してる』?あっははー!もう、ほんっとお前、バカ!」

手を振りながらマガジンは思った。
バカはおまいだ。

「ま、小学生なんてみんなバカばっかだけどな~。
これがお礼!一生、オレ、卒業文集だけは秘密!家の奥、ふかぁ~くに眠らせとくから!感謝しろよぉ~」
相変わらず笑顔で手を振っていたマガジンを置いてジャンプはきびすを返した。
来た道を飛ぶように駆けていく。


最初から最後まで笑顔で手を振りながらマガジンは思った。
バカはおまいだ。昨今、卒文に恐ろしい事、書けるか。オレは無難に書いたよ。
『講談マガジンは千代田女子学院を愛しています。世界中の誰よりも。』
句読点もきちんと付いてて、さらにあまりの愛校心に教師の誰もが感嘆してた。


ふぅ。
マガジンちゃんも立ち上がる。
少しだけ振り返った。
美味しいポジションかと思っていたけど・・・。
ふっ、と自嘲するように笑った。
オレには荷が重いわ。手放そ、相談役。
・・・・・ゆっくりとした歩調で、なじみの場所を後にした。疲れたように。

が、ここにその相談役をがっちり握って手放さない人物がいた。
スクウェア・ガンガン・エニックス。どこが苗字でどこが名前なのかはあまり知る者はいない。並びがこれで正しいのかも。まあ出版界の女子の名前がユニークで種類豊富なのは面白いが。


「でっさー、ほんっと腹立つんだよ!」
コロコロがガンガンの膝に頬杖をつく。
ガンガンちゃんは優しく髪を撫でた。
「ふぅん。ちゃおちゃんが?」
「そ!あのコなんてさ、ボクよりチビなのに。こないだしゅーんってしてた時に力になってあげたの、誰だよ、ってカンジぃ」
「そうねえ。
そうそう、あの時はコロコロちゃん、大活躍だったわね!」
「え?えへへ・・・?」
「驚いちゃった。さすがコロコロちゃんは頼りになる。
おねーちゃん、コロコロちゃんがいなかったらきっと途方にくれてたわ」
「はぁ~~~~にぁあああああ~~~ん~~」
「あ、ピンキー食べる?メロンソーダ味」
「はぁふぅ~~~~ん~~~~~ふぅにゃぁぁぁ~ん~~~」
コロコロはガンガンに懐きっぱなしだ。
もう疑うことないように指から直にピンキーを舐め取って、ゴロゴロ喉を鳴らさん勢い。
膝に頬をこすりつける。

そんなコロコロを眺めながら、ガンガンはふふっと笑った。
そおなのぉ。
ちょっと考える。
ちゃおちゃん、どっちが先かしら?
実技?
将来計画?
どっちを先に進めてるのかしら?


この間ちゃおが中等部にやって来て、やはりまんまとこの先輩に発表会をはじめた。
「私ね、一番の正念場が適齢期だと思うんです!」
勢い込んでキラキラ輝く目でガンガンに熱い口調の報告。

「・・・あ。その手前に思春期があるんですけれど。
これはまた別です。それは勝負のための大事な準備期間だし。
で、適齢期が一番の正念場だ、ってずーっと考えて思ったんです」
「そう?」
それを聞いてくれる、安心する優しい眼差しがいつも変わらない。
なのでちゃおはスルスル自分の考えを出してしまう。・・・目の前の相手がどんな人物かも分からずに。
「だって・・・私が17歳の時にお姉ちゃんは22歳なんですよね」
「そうね」
「で。やっと私が成人したら・・・お姉ちゃんは25歳。
ここらへん、一番、危険な時です」
「そうなるわねえ」
返事しながら、ガンガンは考えた。
あら?この姉妹って何歳と何歳だったかしら?


「この、一番危険な時期。
・・・先輩、私、勝負かけますよ?」
「そうなの?」
挑戦的な目で言われても、ガンガンは動じない。声色も変わらない。
「それまで、私、成長します。
どんどん、どんどん、成長します。お勉強だってしっかりします!オ、オベンキョは・・・その、お姉ちゃんが他の人とはしちゃダメって強く叱るからしないけど」
ガンガンの目の笑みが深くなる。

「思春期も危険だけど。でも私、思うんですよ。成人するまではここが私にとっては・・・我慢時です。
成人すれば、身長はほぼ一定」
ガンガンがうなずく。
「知識?えーっと・・・学力?もですよね。
調べました。成人までが人の成長。
全部の成長がそこまでで決まるんですよね。
じゃ、成人した時は、もう今みたいな差はないもん。なんでこんなカンタンな事に気付かなかったか不思議なくらいです」
ガンガンはただ、ただ聞いていた。
なんて可愛らしい宣言かしら。ぴーちく、ぴーちく、耳にも心地いい。
「違法かな?って迷ったときは成人まで待つ、って先輩の言葉も理解できました」
「まあ」
「成人するまでは、判断しちゃダメですよね」
「そうよ」
「いろいろ、いろいろ、成長して、世間を見て!」
「そうね、法律には要注意ね」

ガンガンは優しくちゃおを撫でながら思案した。
小学館家が雇える顧問弁護士なんてすごい先生方に決まってる。
まあ版権には強い先生だろう。いい先生、版権・・・きっと他はろくに扱わずに今に至れただろう。と、言う事は・・・
今気付いて、笑みがこぼれた。びっくり。私、嘘は言ってないじゃない。

コロコロちゃんはしばらくガンガンの膝に頬をこすりつけていた。
「・・・?」
何にも言わない。
なにかを考えてるような表情。あらま、可愛らしいお顔。

しばらく頬をこすりつけていたコロコロは、ようよう不満そうな声色で
「・・・・・おねーちゃん・・・恋とか・・・してるのかなあ」
考え、考え言う。
こすりつけるのは、もうぐりぐりと押し付けるぐらいにまでなってきた。
相当、考え込んでいるらしい。しかもちょっとふくれたような顔つき。
「それは・・・ちゃおもなのかなあ・・・・・。
・・・・・まるで・・すごく、すごく」
「?」
「甘くて、甘くて、美味しい・・・」
ガンガンは撫で続ける。


コロコロがやっと顔を上げた。
「美味しいお菓子を、こっそり食べてるみたい!
二人とも、そう!そんなカンジ!
ボクが食べたら、もったいない、隠れて食べちゃえ、みたいなそんなカンジ!」
「・・・・・」
「教えでもしたら取られちゃう、みたいな。そんな・・・いやしんぼだよ、教えてくれてもいいじゃん、食べちゃったって事すら教えてくんないなんて、どんだけいやしんぼなんだよ」

「隠れて食べるくらいなら、相当、美味しいんだよ、きっとお父さんとお母さんも禁止するくらいだね」
ガンガンちゃんはクスっと笑った。やっぱり賢いのね。
「ズルイ、ズルイよ、そんなに美味しいもの、自分たちだけで食べちゃうなんて。
ボクにも分けてくれてもいいじゃん!」

「ふふ。
そんなに食べてみたい?」
「え・・・」
「じゃあ、ガンガンおねーちゃんと・・・」


そこまで言って、ガンガンは止めた。
「・・?」
自分を不思議そうに見上げる、幼い目を見る。


・・・ダメだわ。
ちょっと惜しそうに、一度止めた手をまたコロコロを撫でるのに戻る。

もしも、ここでコロコロちゃんをつまみ食いしちゃったら・・・。
すると、当然、コロコロちゃんはサンデーちゃんには黙っていられない。
口止めしたって、このコがバレないように振舞えるはずがないもの。サンデーちゃんには確実に発覚するわ。
つまみ食いなんてはしたない事、バレちゃうだけでもヤなのに・・・。
・・・もしかしたら、サンデーちゃんの恋路の邪魔になるかもしれない。
やだ、そんな野暮な事、絶対にしたくない!
野暮な事、一番に嫌いよ。だってそんなスマートじゃない事、死んでもしたくない。


なのでコロコロに優しく話を続けた。
「・・・ガンガンおねーちゃんと、将来、誰かがそのお菓子、食べちゃた時はコロコロちゃんは祝福してね?」

「・・・えぇー?」
コロコロがすねたように、
「ガンガンおねーちゃん、取られるのぉ?ボク、祝福なんて・・・」
「その代わり、コロコロちゃんがどなたかと食べたら、おねーちゃん、断然、応援するわ」
「え・・・」
「誰が反対したってね!
だって親友だもの」
コロコロの顔が一気に晴れた。
「うん、親友!」

「親友だから、おねーちゃん、食べたらコロコロちゃんに必ず報告するわ」
「・・・え・・」
「どんな方とご一緒にいただいて、どんな味だったか、とか・・・感想をコロコロちゃんに教えるわ」
「う・・・うそ・・・そんな・・大事な・・・・」
「だって親友同士だもの!」
「うん、うん!」
「だからコロコロちゃんも教えるのよ?どなたかと味わったら」
コロコロの目が尊敬と信頼とに染まりきる。
「うん・・・!絶対に・・・!」
「必ずね。
・・・コロコロちゃんはどんな方と食べるのかしら。楽しみねえ」
ハーッとコロコロが幸せのため息をついた。やっぱりガンガンの膝にほっぺたを預けきって、さっきは不満そうだったのに今は満腹した子猫のようだ。うっとりと膝に頬を摺り寄せる。


なんとも軽やかな親友宣言に、もうおなか一杯、と言うように。


「はぁ・・・ガンガンおねーちゃん、どんなヒトと食べるのかなあ・・・」
胸がいっぱい、と言うようなため息と一緒にコロコロはつぶやいた。すりすりと膝に頬を摺り寄せながら。
「ガンガンおねーちゃんは・・・すごいおねーちゃんだもんねぇ・・・・。そんじょそこらのヤツじゃダメだよねえ・・・・・」
「?」
「そんなのボクだって許さない!すっごく、すっごくスゴイ人じゃなきゃ、ダメだよねえ」
語彙の可愛らしさにガンガンはついクスクス笑った。

「困ったな」
クスクス、笑いながら
「私、そんなに理想が高い方じゃないのよ?」
「えぇー?まさかあ」
すりすりと、頬ずりと一緒に幸せそうに、コロコロもくすくす笑う。
「本当。ちょこっと・・・理想が狭いかもしれないけれど」
「えへへ。狭いぃ~?」
コロコロが視線を上げる。
「ええ。だから理想が高い、よりももっと難しいのかもしれない。
狭いの。理想が」
「どゆいう意味~?」
「うーん。高くは無いつもりだけれど・・・・・」


恋愛話にわくわくしたような目のコロコロに、ガンガンは困ったように笑いながら・・・、


「(足手まといになったらそれは困っちゃう。それだけは避けて私に付いて来ることが出来るだけの力をかねそなえた)
おなじ歩調で歩いてくれる、でも、
(手のひらでころころ転がせないと、ちっとも楽しくもない。出る杭を叩きながら、じゃコスト悪いもの。持て余すくらいにキレるのはやっぱり避けて)
あんまり歩調の早いお方には付いていけないわ。
(私の歩調に付いて来れる、でもちょっとだけ、本当にちょっとだけ。難しいサジ加減ね。私よりもキレの冴えがすこしだけ控えめな)
ちょっとくらい、私の後ろを歩いてくださるようなヤサシイお方。それでね、
(一緒にこの世の頂上ってくらいに高い場所で下々をはるか見下ろしながらケケケって笑いあえる、そんな神経を持っていないとこれも困りモノ。下々を見下ろすのが大好きな、)
天国へも喜んでご一緒してくれて・・・でもね?
(歩調が付いて来ることが出来ても、慈善活動、だーい好き、なんて持っての他。寒気しちゃう!
地上にいる人間どもを、いかに引き釣り下ろすかその算段にやっぱりケケケって笑ってお付き合いしてくれなきゃダメダメ。
そんな趣味を持った、かつ、血の池をすすってでも生き延びてくれるような強靭な精神、体力をかねそなえた)
・・・・・地獄だろうと・・ずっと、ずっと・・・隣にいてくださる。
そんなお方。そんなお方と、一生を、共にしたいの・・・・・」

最後はささやき声ほどになった。優しく、優しくコロコロちゃんに語って聞かせて・・・最後にガンガンは小さな困ったような笑顔で、首をかしげた。「困るでしょ?」と共感を求めるように。
自分を見上げる、幼い透き通った目に。

コロコロはぽわ~っとガンガンを見上げ続けた。
息をするのも忘れてるらしい。
大きく、はぁーっとため息を吐いたのはずいぶん時間が経ってからだ。

すっかり感心しきった様子。
「すごー・・・やっぱガンガンおねーちゃん・・・」
「?」
「もう理想が決まって・・・やっぱ、大人の女性~、ってカンジぃ」
「あらら、困ったな」
ガンガンは本当に困ってしまったようだ。
「理想が高いよりも難しそうじゃない?」
「えぇー?」
「高いよりも、もっともっと・・・それこそ狭き門だわ」
ほとほと困ってしまったように笑う。
その様子は自分でも手を焼いているのがうかがえた。お手上げ、というような苦笑。


すりすりと幸せそうにガンガンの膝に頬を擦り付けながら、
「なんで~?
反対っぽいよぉ~」
「・・・?」
「そんだけ決まってたら、もう後はぴったり合う人を探すだけじゃん~」
自分に擦り寄る後輩をあやしながら・・・・・ガンガンは自分の目つきが真剣になるのが自分ですらも分かった。


「ぴったり合う人・・・」
つぶやく。コロコロを撫でる手にも力がこもる。
視線は手元の後輩にあるが、別の所を見てるような・・・。
とても、真剣に。


「でしょでしょ~?
イメージは固まってるんでしょ~?
後は、その理想に合う人を探すだけだよお~」
「・・・・・」
「ね!ぴったりを探すだけ!
しかも明日からでも出来るんだもん。やっぱすごいよ~」
ガンガンは目が離せない、と言うくらいに視点を据える。
考え込む目つき。
「・・・・・そうね・・」

「いいなあ~。やっぱガンガンおねーちゃんはウチのおねーちゃんなんかよりもずーっと大人だぁ!」
「・・・ぴったりを・・・・」
「おねーちゃん・・・あ、いっこ上のサンデーおねーちゃんね。ちゃおったら、ほんっと腹立つんだよ?サンデーおねーちゃんなんてさ、ボクよりも手がかかるのにさ、サンデーさんを困らせちゃダメだよー?なーんて・・・・
・・・・・
・・・」


コロコロを改めて見るように、ガンガンは見下ろす。
なんだかぴーちくぴーちく言ってるけれど、それはさて置き。
コロコロちゃん、ジー・ジェイ。
驚きの目が押さえられない。
こんな可愛らしいコに教えられるとは。子供の視点が大事って、本当なんだわ。

その通りだわ。
その通りだったわ、私、恋愛なんて一生ムリって思っちゃった。
でも、コロコロちゃんの言うとおり。
ぴったりを探すだけだったんだわ。
かなり、狭い。相当狭い、この理想。
針の穴よりも、まつげの先よりも狭いと思っていた。
それに気をとられすぎて・・・。


「コロコロちゃん!」
「ぴゃ?!」
ガンガンはコロコロをぎゅ、と抱きしめて力を込めた。
あぁ・・・なんて抱き心地のいい。きっと美味だろうに、サンデーちゃんの妹なだけが惜しい件!!
「ありがとう!
救われた気持ちよ。味わったらきっと、きっと感想は教えるわ!」
先ほどのように、色々伏せつつ、単語の変換も隠しつつ。
「お礼に何か作ってあげましょ。何がいい?なんでもリクエストして?」
「うわ、本当?」
「本当、本当。あ、ピンキー食べる?もうお口に残ってないでしょ」
「わーい!」


「・・・・・と、言う事なの」
「・・・・・・」
「きっとマガジンちゃんには残念な結果だろうけれど」
「~~~~~」

で、中等部、教室。
華やかな笑い声があがる、昼放課。

そんな中、本当に残念な報告のように深くため息を吐くガンガン。
さぞかしご心痛だろう、とマガジンをいたわしそうに見つめる。
なんだ?!オレ、厄日がフィーバー中?!
さもイヤそうに相手を見上げる。
視線が合うと、相手は嬉しそうににこっと笑った。


マガジンは相談役は荷が重い、と悟った。
ので、現在、教室に隠居している。
もう、誰とも会話も交わしたくなくて、「オレに触れたら怪我するゼぇ!」と言わんばかりにやぶ睨みし続ける。
サンデーが一度だけ心配そうに、「辛い事があったら、私はいつでもマガジンちゃんの味方よ・・」とだけそっと距離を置いて伝えてくれた。ごめん、あんたとも話したくないんだわ。つか、あんたが一番、話したくない。
・・・でも、まさかそれ以上に心臓に悪い、上に不快で耳をふさぎたくなるような事をつらつら、つらつら言う生き物がいようとは。しかも、顔色・声色、一切変えずに。

・・・・・どこまでオレ、アンラッキー?もう、誰か笑ってくれよ、笑い飛ばしてくれよ・・・。
自力で笑う事すら出来ない。ので、不愉快そうな低い声でぼそっと言った。
「・・・・・・日本語でおk」
それが体力の限界だ。


「やだ。一世一代の愛の告白なのに」
困ったようにころころと笑う。困らせるな、子猫ちゃんメ!と言わんばかり。
「じゃ、もう一回。
最近、学院は発情しっぱなしじゃない?」
「わーーーーー!!!」
言葉の途中でマガジンは立ち上がる。

いきなりの大声で教室中が驚いて注目するが、教室中の誰もが一目置いてるお姉さん的存在のガンガンが一緒なので、すぐに安心したようにおしゃべりに戻った。

「だから、当てられっぱなしで、もう辛抱タマラン!って今日この頃なの。
それでコロコロちゃんと会話しつつ、私、気付いたのよ」
「・・・・・」
「私、理想が狭い・・・もう、これ以上、ないってくらいに狭いけど・・・。
探せばいいって!」
「・・・・・・」
「本当、簡単な事だったのね。
で、ここの所、吟味に吟味を重ねたのよね。
私の理想にぴったりな方」
「・・・・・・はは」
「で、特定したのが、この目の前のカワイコちゃん!」
「あ、あはははは・・・・・」
「めでたく当選いたしました!カラン、カラン、カラ~ン!!」
町内会の抽選のアタリが出た時の様子を手でまねる。鐘を鳴らす手付き。

・・・・・もお。カンベンしてちょうだいよお~。
ライフポイント・ゼロ、ってほど疲弊しきってるのに。何、この仕打ち。

もうマガジンちゃんに運も福本もなかった。
一呼吸、飲み込んで腰を据えた。自力で処理だ。


「・・・・あはは」
「うふふ」
「ごめ~ん。私、宇宙人語、解読できないのよねえ~」
お手上げ、と言うように両の手のひらを天井に向ける。
「あらぁ」
「うん、あんたの言ってる事、さーっぱり分からないわ。これっぽっちも分かんない。
意思の疎通が出来ないって辛いわよねぇ」
このオンナ、中々見下ろせないのも嫌いなんだわ。オレ、人を見下すのがだぁ~い好きなんよ。
「うん、お互い、不幸。
だから、他、当たってくんない?ワタクシにはアタナは過ぎた存在。一生をすれ違い続けるのですわ」
皮肉たっぷり込めた声で言って、目を合わせて、どうだ!と目に力を込める。

ガンガンちゃんは残念そうに表情を曇らせた。
残念そうな・・・ちょっとスネたような顔付きで黙ってから・・・。
顔を晴らした。
「そうだ!じゃ、お昼の時間の放送で、今のを放送しましょ!」
ぱんっ、と手を合わせる。
ご機嫌な様子で


「全校生徒に聞いてもらうの!
それで、最後には皆さんにお願いするのよ。
『ですがこの告白は想い人にどうしても伝わりません。どうか翻訳くださる方は、この想いを彼女に伝えてください』
・・・みたいに。それがいいわ!」


ひぃぃぃぃぃーーー~~~~~。
「こんなに人がいるんだもの、一人くらい言語を理解してくれる子はいるわ。
よかった!放送委員で!
BGMはなんにしましょ、迷うなあ、甘くショパンなんて最高かしら」

きびすを返さん勢いのガンガンを押しとどめたのは、一番それをしたくない彼女。
「オーケィ!!」
再び、席に着いて、ガンガンの腕をぽんぽん叩く。
「オーケィ、落ち着け、マイ・クラスメイト」
「マイ・ステディじゃなくってぇ?」
「あはは、うん、アンタ、地球語のマイ・ステディを誤訳してるわあ~」
スネたような口振りと口を尖らせる、その動作にかわいげが見当たらない!誰か助けて!!
「・・・言語の違いって確かに辛いわねえ」
「~~~~~~~~!!!」
「でもボディ・ランゲージはどんな生命体でも共通言語だと思わない?」


教室中が一瞬だけ、注目する。なんだろ、立ったり座ったり・・・?
が、また自分たちのおしゃべりに戻った。
声の調子に荒さ、ないし。


「良かったあ。最近マガジンちゃん、元気なかったのに・・・さすがねぇ」
おしゃべりに戻った、一番最後がサンデーだった。
最後までマガジンを見た後に、ジャンプに感心したようにため息をついた。
「ガンガンちゃんに任せておけばどんな相手だって元気出ちゃう」
「う、うん・・・」
「将来、セラピストとか向いていそうよね。
私たちもいつまでも仲良くしたいわよね、一生の友達でいられるかな?」
ジャンプは・・・なんとなくサンデーの言葉に違和感を感じといた方がいいか?と迷ったが。
ま、いいや、恋人の笑顔の方が嬉しいし。
談笑に戻る。

マガジンは口が利けたら抗議をまくし立てただろうけど、それどころじゃなかった。
オレよりも豊かじゃね?そんな胸にぎゅーぎゅー頭を抱きつかれて息するのも苦労、だ。
・・・・・・・・・・もう・・・これ、なんてエロゲ?いや、鬱ゲ?
ミョーなバットエンド混じらすの止して、お願い、ナイス・ボートが世にあふれるよ視聴者的にソレどーよぉ・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・



                                                   



          出版界の女子の勇気が出版不況を救うと信じて・・・!
                    ご愛読ありがとうございました!

第二話 「ジャンプとかサンデーとかマガジンで百合」

第二話 「ジャンプとかサンデーとかマガジンで百合」

2007年ごろpink-bbsにて投稿されていた作品の転載です。 スレッドの更新が滞ってから長年経つので、作者の方の許可を得ておりませんが、好きな作品なので勝手ながらここに転載させていただきました。 作品の一部は18禁となっております。18歳以下の方、ご了承ください。 http://pele.bbspink.com/test/read.cgi/lesbian/1172759176/ ※リンク先は18禁掲示板となっております。

  • 小説
  • 短編
  • 青春
  • 恋愛
  • コメディ
  • 青年向け
更新日
登録日
2015-01-09

Copyrighted
著作権法内での利用のみを許可します。

Copyrighted