時計

時計

風船

高校最後の1年に彼は居た。

「人生は時計だ。」

高校生活最後の1年最初の日に出会った彼がよく言っていた言葉だ。

彼は不思議な人だった。

人離れしている雰囲気を纏いながら、
そのくせ、人の心に入り込むのは非常に上手かった。
私も彼に入り込まれた一人だった。

そして、彼は高校生のくせに死の話をよく私にしていた。
滅多に人の来ない少し埃っぽい図書室で、
彼は私に語った。
死がどれほどの孤独か、どれほど苦しいかを
時には泣きながら語っていた。
私は静かに聞いていた。

彼のおかげで私の高校最後の1年間は救われていた。
高校最後の日、彼に会うために図書室に行った。
いつも通り、彼はそこにいた。
他愛のない話をした後、
彼はまた時計の話をした、
でも、いつもと少し違かった。
泣いていない。
時計の話をするとき、彼はいつも泣いていたのに、
今日は泣いていないどころか、
心底穏やかな顔をしていた。

話終えると、彼は私の目を真っ直ぐに見て言った。
「僕の時計はとっくの昔に壊れているんだよ。」
私は彼が『時計=人生,生』で話をしていることを知っていた。
つまり、彼は自分の人生と生は終わっている、
死んでいると言っているのだ。
でも、驚きはしなかった。
今考えても驚かなかった自身に驚くのだが。
まぁ、話を戻そう。

彼は最初少し驚いた顔をした後吹きだした。
私はなにが可笑しいのか解らず、真顔だった。
少し落ち着いた後、彼は私に触れた。
1年間一緒に居たが、初めてのことだった。
私から彼に触ろうとした事は幾度となくあったが、そのたび、彼は華麗に避けていたからだ。

残念ながら初めて触れた彼の感触を私は覚えていない。
触れた瞬間、彼は消えたから。

でも、私は覚えている。
彼の話した死の話も、
彼が本が好きだったことも、
彼は話すことが好きだったことも、
彼が人を好きだったことも、
彼がこの世の者でなかったことも、
彼が最期に私に言った言葉も、
全部覚えている。

でも、私は止まれない。
まだ私の時計は動いているから。
私が勝手に時計を止めてしまったら
きっと彼、あーさんに怒られてしまうから。
だから、自然に時計が止まったら、
その時はあーさんに会いに行こうと勝手に決めている。
そしてまた話そうと思っている。
今度は私の時計が止まるまでの話をあーさんに聞かせてやろうと。

時計

初めてここで書いた物なので、拙いものが出来上がりました。
お目汚し申し訳ないです。
学生時代のメモ書きからネタをいただきました。
学生時代死についてよく考えてた気がします。

時計

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更新日
登録日
2015-01-09

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