俺たちの高校生活をつまらないとは言わせない

あらすじ 日々の日常。たくさんの人たちのくだらなく、そして笑える日常が高校には埋まっている。 昼


昼休み終了のチャイムが仮校舎に鳴り響く。少し経ってから廊下からドタドタと走ってきた僕たち5人組がドアを開けて教室にギリギリセーフとばかりに飛び込む。

教師 「コラァ‼︎お前ら遅刻だぞ」

僕は初めて先生に怒られた。


〜30分前のこと〜

ここは鷲鷹高校。偏差値は中の下で、軽音楽部とダンス部が活発な学校である。
来年から新しく建設中の新校舎に映る予定なので、今はまだ仮校舎での生活を余儀なくされている。
4時限目の終了のチャイムが仮校舎の校内に鳴り響くとともに生徒たちは我先にと購買に向かって走っている。

「バタバタとうるさい知能の低いホモサピエンスだなまったく。けしからんぞ‼︎」

と言いつつ一つ上の階にある購買に走っていく女子生徒のスカートの中を必死で血眼になって見ているこいつの名前は小宮。思春期真っ盛りの度が強い変態。
「お前の方が100%頭の悪いクソ猿だけどな」
階段下で消しゴムを落としたという演技を入れつつしゃがむ小宮を哀れんだ目で僕は頭をひっぱたいた。
「そんなんだから女子に嫌われんだぞ」
こいつは木戸。とにかく友達が多い。なぜこんなにも友達が多いのかというと、コミュ力が高いからだと僕は思う。ヤンキーからクラスの隅で本を読んでいる子にまで話しかけられるほどのメンタルを持っている。小宮が言うに木戸はドMらしい。
「え、?俺嫌われてんの?」
思いもよらぬ言葉にびっくりして木戸の顔をキョトンとした顔で見つめる。

そして、俺の名前は相模。 俺は現在この二人しか友達がいない。すごく友達が欲しい。
きっと。うん。頑張れば大丈夫だよね?

「由美から聞いたよ。階段下で必死こいてパンツを見るやつがいるって。それを俺がそれは小宮の仕業だなって言って補足してやったよ」
「なにしてんだてめぇ‼︎女子の俺へ対しての嫌われ度が加速したじゃないかゴラァ‼︎」
木戸の胸倉を掴み自分の精一杯の怖い顔で睨みつける。
それを聞いてちょっと前、階段下でうろうろしてた小宮の姿を僕は思い出した。

「あー、それなら僕も見たぞ!登校途中階段に頬を擦りつけてるやつの姿を笑笑 正直引いちゃったわ。というか汗の量はんぱないな」
僕はハンカチをそっと小宮に渡した。
小宮は焦りすぎると汗の量が尋常じゃないほど出るらしいと初めて知った。

「俺もそれなら何回も見たわ‥‥‥。そんなことより脇汗がすごいな」
後ろからさりげなく会話に入ってきた双葉という学年一位二位を争うんじゃないかっていうくらいのイケメン。
「俺、多汗症だからな」
「多汗症のレベル超えてんだろ。すでに中に着てるシャツビシャビシャでしょ?」
「ああ、よくわかったな双葉」
この人がクラス一のイケメンの双葉って人か。同じクラスで今日初めてお目にかかることができた。
「ほんと気持ち悪いな」
最後の一撃を木戸がはなったため、自身の脇汗をハンカチで拭きながら小宮はブツブツひとりごとを言ってひねくれてしまっている。小声で「お前には言われたくないわドMがっ」と、言ったが木戸には聞こえていなかったが、僕にはちゃんと聞き取れた。

「わかる。わかるよ‼︎男子たるもの学校の宝を一日一回は見ないと家に帰れないよな‼︎」

突然背後から見覚えのある声が会話が入ってきた。
こいつは確か入学式の時、生徒代表で学年全員の前ではなしていた人だ。確か名前は、相馬っていったっけ。

「相馬だけはわかってくれると信じてたわ‼︎」
むさ苦しく熱い抱擁をする小宮と相馬。
そんな中僕は一人教室に帰っていく。

今日のおかずは大好物のハンバーグ、スパゲッティ、ミートボールだ。
お母さんが久しぶりの学校だから丹精込めて作ってくれたんだなと思いながら、そっと弁当箱の蓋を机に置く。があまり食欲が進まない。
実は僕は入学式が終わった帰りに車と事故ってしまい2カ月入院していた。そのため初対面の人があんなに会話に入ってこられたら、何を話していいかわからない。いつもこんなことですごく心細い気分になる。
あいつらはいいよな友達が多くて人見知りじゃなくて。僕だって一回話せばグイグイいけるタイプだけど、その一回がなかなか現れない。さっきあったけど、次の言葉思い浮かばなかったしな。

「友達ほしいな‥‥‥‥」
「だからさっき勝手に帰ってたのか」
いつの間にか教室に帰ってきた木戸にひとりごとを聞かれてしまった。恥ずかしい。
その動揺で次に口に含もうとしたミートボールを小汚い机の上に落としてしまった。

「い、いや、なんでもないよ。お前らがいるだけで充分だよ。」
自分らしくない言葉を吐いてしまい顔を真っ赤になった。 否定の仕方を間違えたと、そう僕は思った。
そう慌てて返答をしたが木戸はその答えにちょっと微笑み、ふ〜んとだけ言って弁当箱を相模の机に置きタコさんウィンナーを食べ始める。

「お前にさっきの奴ら紹介してやるよ。」
「え‼︎?」
またミートボールを小汚い机に落としてしまった。
何てことだ、友達を紹介してくれると‼︎? ナイスだ木戸。こいつと初めに友達になってよかった。
僕はよろこんだ。素直に喜んだ。

「是非‼︎是非お願いします木戸様‼︎」
嬉しさのあまり机に手を思い切り打ち付けて立ち上がり、机にさっきほど落ちたミートボールが床に落ちる。だが、拾うという動作が僕の頭には全く浮かばず処理できなかった。そんなことよりも目の前の希望にすがった。

「2カ月もブランクがあるしかわいそうだからな、あと俺友達多いからな。」
自分を高評価したのがしゃくに触ったがこの際どうでもいい。
やっと友達が増やせるのだと感激する相模。少々涙をにじませる。

「だけどな、女子ならわかるけどもな、男にそれはあかんよ。まるでホモだよ。」
「じゃかましいわ‼︎何年も思い描いた高校生をたった2カ月休んだだけでむだにしたくないんだよ」
必死に反抗するが、新しく友達ができるということでにやけが止まらない。夢にまで描いた高校生活を灰色で終わらせたくないそう僕は思うからだ。

「わかったわかったよ。ちょうどあいつら中庭で遊んでるから紹介してやる」
と言い放って僕と木戸は箸を机に置き、すぐさま中庭に駆け出していった。

そこは仮校舎に囲まれた空間。人工芝で縦30メートル横15メートルくらいの幅しかなく、入口の右端には白くて丸いテーブルと6つの椅子がただ無造作に置いてあり、昼の時間は生徒たちはあまり使用しないらしい。そんな中楽しげに遊んでいる友達の友達といつの間にか体操着に着替えている友達の小宮。

「おう‼︎お前らもやるか?だるまさんが転んだ」
小宮がこちらに気づいて、幼稚な遊びをこちらに共有させようとしてくる。
「見たことない顔が一人いるな、誰だそいつ?」
「さっき階段にいたやつだな」
ぐいぐいと相馬と双葉がこちらに近づいて来る。まるで、このままカツアゲをされるんじゃないかというくらいまじまじと僕を見詰めてくる。
怖い。こんなに見られるとすごく怖い。木戸助けて。マジで。
僕は目線で木戸と会話するように下手くそなウィンクをしたりした。
「おう。紹介しよう。こいつは相模だ。入学式後に事故って二ヶ月間学校に来れなかったやつだ、仲良くやれよ」
上から目線の木戸に少々イラっときたがここは抑えておこう。こいつのおかげで今にもカツアゲしそうなやつとも友達になれるのだからな。
僕は「よろしくな」と言って双葉と相馬に握手する。

その手は緊張の汗でベタベタしていたらしい、それは後から聞いた話だ。

「そういえばさっきのパンツの話片付いたの?」
僕ははとりあえず小宮に話題を振った。
「そうなんだよ。おれがいかにパンツを見ることに高校生活かけてるかを熱弁してたのにさ、こいつがいきなり女子といちゃつき始めるから全然伝わらなかったんだよ」
と、小宮はごつい指で双葉に指す。
「いちゃついてなんかないよ。勝手に寄ってきたんだよ」
手で髪をかきあげクールに決めながらいった。
「腹立っぁ、こいつ腹立っぁ。無駄にかっこいいのがまたうざいな」
相馬も双葉のこういうところがいけ好かないと思ってはいるが、友達としてみるならば全然マイナスにはならず、もちろん、知らない奴にそんなことをされたら確実に嫌うだろうな。僕は分析した。

「まあ、そんなことよりさだるまさんが転んだの続きをしよう。親ぼく深めような、な?俺、鬼でいいからさ」
そうだった。小学生の時も一緒に知らない子でも遊んでいたらいつのまにか仲良くなってたな。どこいったんだ?その時のコミュ力は?

途端に空気が変わった。

「そうだな」

「やるからには本気でやるからな、」

「体に力がみなぎってくるぜ‼︎」

「言っとくけど俺まけたことないんだよな」
手をポキポキさせ首の関節を鳴らしストレッチをしながら3人は自信満々に答える。

「なんでだるまさんが転んだごときでそんなに血がたぎるんだよ」
どこに熱が入ったのかわからなかったが、僕はとりあえずツッコミを入れた。
「やるからには全力だろ?」
「罰ゲームとか決めとこうぜ」
相馬と双葉が相模に対して、初めて会話のキャッチボールを投げ返してきてくれた。体に鳥肌が立ちブルブルと震えたような気がした。

木戸がこちらの方を向いて「うんうん」と首を縦に振って安心してるかの目でこちらをみて、だるまさんが転んだのルール説明をする。
「じゃあ、ルール確認からな‼︎鬼が後ろを向いている間に進んでいき鬼にタッチをすれば試合終了。もし、鬼が振り返っている間に動いてしまったらアウトだからそこんとこよろしく‼︎」
一同よろしくっとヤンキー風に膝に手を置いて答える。なんとか、どういうノリなのかを理解してきた。
「もし俺を捕まえることができたらジュースをおごってやろう」
やる気がますますでてくる。高校生には最高の言葉である。

「絶対捕まえるからな」

「覚悟しとけよ」

「おう‼︎そーだそーだ」
熱い言葉で相模は言い返すと、続いて言い返すしてくれた。アホみたいにはもる小宮と相馬。
こいつらは意外に性格が似てるんだな。
その間に15メートルくらい離れていく木戸。


「じゃ、行くぞ〜」

「「「始めのイーンッポっ」」」

「下ネタ言っちゃったよ」
すぐさま下ネタに反応すし、突っ込めた。なんとかこの空気にも慣れてきたぞ。イケメンの双葉にはもったいない言葉だなとか思ったが男子高生はこんなもんだと割り切る。
「だーるーまー」と始まりの合図。それなのに小宮と相馬がふざけあっている。

「おい、馬鹿おすなって」
「おまっ‥ちょっ、ケツさわんなや、ちょっまてよ(キムタク風)」
「まじ、やめろって」

「そんなことしてたら全然進まないだろ」
「さっきのやる気どこいったんだよ」
僕と双葉はアホを見る目で2人を見つめる。
その時、何かに気づいた小宮。
「え、良いケツしてんな。弾力があって、なんか、、あれ‼︎?触りがいがあるな」
そんなこと言われて嬉しかったのか「え、まじで」と言って振り返った瞬間、いつの間にかだるまさんが転んだを言い終わっていた木戸に見られアウト宣言をされてしまった。

「ふざけんなや、しょっぱなアウトかよ。」

「お前頭良いのにアホだよな〜」

「死ね‼︎」
イラっときたが
「良いケツしてたのは本当だぞ」
という言葉でホッとした顔をする。
「な、……なんだ、、、それなら悪い気はしなかったぞ」
鼻を手ですりすりながら親指を上に向け照れながら小宮に笑顔をみせた。
うわぁ、、なにこれ?ホモじゃん。
正直これに関してはホモ発言があったため軽く引いてしまった。

「あいつ本当に宝の持ち腐れって言葉が似合うよな。頭良いのに」

「うん。こんなに鳥肌たったことないよ。どこかで道を間違えたんだろな」
双葉と相模は初めて意見があった気がした。いや、もしかしたらその前にもあっていたかもしれないが、あまりにも自然な突っ込みにこの空気に溶け込めてることに僕は気づきニヤつく。

「俺。もしかしたらそっち系にモテんのかな、」
ぶつくさと真剣に考える小宮を無視してつぎが始まる。

「お、はじまったな」

「だーるー、コッロ‼︎」
ギリギリでピタッと止まる。

「なに省略してくれとんじゃこのドMがぁ‼︎」
すぐさま怒ったが体は動かさない。相馬みたいに簡単にはいかないらしい。

「そんなこと言って全く動かないな、ジュースに対しての執着心。尊敬するよって‥‥‥えぇ‼︎?」
そんな中双葉が人間には絶対にできないであろう気持ち悪い形で静止していた。小宮もそれに気づいた様子だ。
どこかから聞いたこともないような擬音が聞こえたような気がした。

「なんだよあれ、もう神の領域だろ、ジョジョ立ちだろ‼︎?関節がどうこう言ってる場合じゃないだろ」


「あのイケメンチヤホヤされてたから少し動いても黙っててあげたとかっていうひいきをされてたんじゃなくて、ただ単純にこのゲームに関してめちゃくちゃ強いって事かよ」
こいつのほうが宝の持ち腐れだな。あれは元に戻るんだろうか?
双葉はこちらを向き、無駄なイケメンスマイルを見せてきた。

小宮はその時、不覚にもドキッとしてしまったらしく自分の感情を押し殺して下唇を血がにじむほど噛んでいる。
「俺はホモじゃない俺はホモじゃない俺はホモじゃない俺はホモじゃない」
ぶつくさと何か呪文のように唱えている。

その光景を見ていた木戸はみんなの執着心に気づく。
「口から血を垂らしながらも、関節を外しながらも純粋に勝ちを求めるあの子達。恐ろしい子‼︎」
相馬が言うにその時の木戸の目は白眼だけになっていたという。

「ムカついてきた‼︎次で決着をつけてやる」
小宮は一人そう言って闘志を燃やし、ゆっくりと鬼にばれないように姿勢をかえた。

「じゃーいくぞ〜、だーる」
今だと言わんばかりに小宮は走った。今まで、そしてこれからの人生で絶対にでないであろう速さで鬼に向かって走っていった。風圧で全く前に進めず、小宮のスピードに魅入ってしまう。

「な、なんて速さだ」
「ボルトよりはやいんじゃないか‼︎?」

だが、一瞬で15メートルを縮めることはできるはずもなく

「だーるーまろっ‼︎っと、小宮アウトな。お、大丈夫か?」
小宮は全力でこけた。今までにそしてこれからの人生でないってくらい思いっきりこけた。そして、半泣きになりながら
「もう、なんだよずるいんだよぉ。いてぇぞちくしょう。お前、反則使ったから俺に反省の色を見せてジュース奢れよ。」
木戸は罪悪感か苦笑いするしかなかったと見受けられる。
血をべったりと膝と人工芝につけトボトボと悲しそうに歩いてきて、ゆっくりと相馬が座っている横の椅子に腰をかける。

「今のは盛大だったね見てるこっちも痛くなってくるよ」
「あんたのよくわからないほうこうに曲がってる関節の方がいたそうですけどね」
すかさずツッコみ僕は椅子に静かに座って英単語張をみている相馬に気がついて思う。「こういうところに差が生まれるのか」と

「じゃ行くぞ〜、だー」

キーン コーン カーン コーン


と言い始めたあたりで昼休み終了のチャイムが鳴り始める。

「あ、やべ授業開始のチャイムじゃん」
「急いで教室戻るぞ‼︎」
「やべっ‼︎これ遅刻したら遅刻指導だ‼︎」
急いで自分のクラスに駆け出していく。小宮も痛みなど忘れて遅刻指導を恐れ先頭に立って走っていく。
なんて早さだ怪我を負っているのに。
そんな中、木戸は僕に何か言ってきた。

「意外とこいつら面白いやつらだろ?」
「小学生みたいな感じだね」
それもそうだなあ。アホみたいな連中だ。

まだ、夏は先だというのに妙に暑苦しさをただ寄せ廊下を走る僕たち。
あぁ、そうか雲一つないほどの青空にこいつらの焦っている顔、暑く感じるのはこのせいか。


昼休み終了のチャイムが仮校舎に鳴り響く。少し経ってから廊下からドタドタと走りこむ僕たちと本気で焦っている小宮。
ドアをバンっと大きな音をたて思い切り開け教室にとびこんだ。

俺たちの高校生活をつまらないとは言わせない

俺たちの高校生活をつまらないとは言わせない

  • 小説
  • 短編
  • 青春
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2015-01-08

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