緋の王女朽ちぬ
始めに
駄文です
それでもいいのならどうぞ
序章
昔のお話
その国を統治するは、幼き、わずか三才の王女だった
誇り高き、栄光の王女に従うは、わずか14才の執事
そんな彼女らが築いたのは、崩壊の国か、それとも
………
国王の血を流すもの
街は、ざわめく
甲冑の鎧を着た兵士が、町を練り歩く
「今から、新王女の即位式、並びにパレードを行う!みなのもの、静粛に!」
そう、長らく統治者のいなかったこの、フェレスト王国の王女が、決定するというのだ
「しかし、兵士様。」
1人の老人が、兵士に声をかける。
「なんだ。」
「亡き皇后様が、子供をお産みにならっしゃったのは、わずか三年前…….国王様の血を受け継ぐものは、その方しかおりませぬ。」
皆が疑問に思っていたことだ。後継者の名を名乗れるものは、マリと呼ばれた国王のご令嬢しかいないのだ。
すると兵士は当然の如く言った
「マリさまが、新しい王女だ。皆の者、無礼が無いように。」
老人は口をあんぐりと開ける。若者に至っては、クスクスと笑い声さえたてているのだ
パッパパパーパッパッパパパッパッパパー
遠くから、鼓笛隊のマーチが聴こえる
王宮から、赤、緑、黄色などの、色とりどりの風船が飛び散る
民衆は、兵士に連れられるがままに、王宮へと足を進めた
ガラス張りの部屋をくぐり、神殿の重い扉を開ける
ギイッ
「どうぞ。皆のもの。中へ。王女を待たせては、ならぬ。」
齢は14位だろうか。漆黒の髪を1つに結わえ、女にしては、随分と男らしい服装だ。黒のベスト、白のワイシャツ、黒のパンツと、執事と何ら変わらぬ服装だ。
「王女様。民衆をつれて参りました。」
ドアの前でお辞儀をし、民衆には一言も喋る隙を与えないこの執事。いや、少女
「入りなさい。ご苦労。リオ。」
幼くも力強い声。恐らく、声の主は王女だ。
中へ通され、改めて神殿の全貌を目の当たりにする
聖歌隊の歌声、パイプオルガンの音、王政関係者であろう人々、メイド。そのなかで、一際王女の次に存在感を放っているのが、女執事だ。
中央に鎮座しているのは、栗毛をティアラで纏め、重そうなドレスを無造作に着こなす、幼女。緋色の大きな瞳に、椿色の唇。大人びた顔立ちの少女は、女執事を呼んだ
「リオ。」
「はい。王女様。なんでしょう。」
リオと呼ばれた女執事。革靴の音を立てながら、王女に近づく
「この者たちを集めたのは、リオ、そなたか。」
すると女執事は、「いいえ。」と正直に答える
「民衆を集めたのは、兵士共でございます。私は、ただ、この者たちを案内した限りでございます。」
流暢な尊敬語だ。とても少女とは思えない
「そうか。ならば、リオ。後から、兵士どもに金貨をさずけてやれ。」
三才の王女らしからぬ、非常に大人びた言葉。恐らく、亡き国王の宮中での言葉を、丸っきり覚えたのだろう
誰もが考え事に耽っていた瞬間だった
「皆の者、跪きなさい。」
王女が一呼吸置いて、いい放った
皆が、互いに顔を合わせ、驚いた表情をする
「聞こえぬか。王女の命令だ。跪け!」
兵士が、刀を抜く
「お止めなさい!ディニウス殿!この厳粛な場で、刀を抜くとは、そなたの人格をも疑うぞ!王女様の目の前。恥じらいを持て!」
唯一跪かなくてよい存在の女執事が、兵士を怒鳴り付ける
「失礼しました。王女様、リオ殿。」
帽子を深くかぶり、兵士は最敬礼をした
緋の王女朽ちぬ