Why do they fight?〜第3章、前編〜

ついに第三章〜マッサージ師の陰謀編〜スタートッ!

「…おい!これは本当か!?」

報告書を届けに来た連絡員につい大声で聞き返してしまった。

「はぁ…自分には分かりかねますので、直接本部へお聞き下さい。」

確かにただの報告員では詳細は知らないだろう。
彼が部屋から出て行ったのを確認して電話を取る。

「声紋照合確認を頼む。第3大隊『トライアド』α部隊直属独立機甲中隊β部隊隊長、ソーマ・オックスフォード少佐だ」

すぐに反応が返って来る。ふむ…仕事が早いとは良い交換手だ。

『確認いたしました。用件をどうぞ。』

「マッサージ師男性死亡事件の詳細について内部捜査本部に聞きたいことがある。」

『担当者を呼び出します。しばらくお待ち下さい。』

「あぁ…」

ふぅ…。まさか、こんなことになるなんてな…。
ことの発端は数ヶ月前にさかのぼる。
新国連軍に務めていたマッサージ師のおっさん(こういう愛称だった。実は本名を知らない)が原因不明の死を遂げた。
俺は入隊以来、彼にずっと戦闘後の緊張で強ばった身体を解してもらっていたのだ。
隊員の中では『基地の親父』とまで慕われていた。
そのおっさんが死んだと聞いた時の隊内は酷いもんだった…。
そして彼の死因が最近になってやっと解明されたのだ。

彼の死因は………毒殺。

彼は、毒殺されたのだ。それを報告書としてさっき受け取った俺の心境は複雑だ。

『…担当のハミルトン准将だ。貴殿の所属と階級をもう一度教えたまえ。』

「第3大隊『トライアド』α部隊直属独立機甲中隊β部隊隊長、ソーマ・オックスフォード少佐であります。」

『コード確認。よろしい。聞きたいこととはなんだね?』

「先程、報告書を伝令から受理いたしました。毒殺とは事実なのですか?」

『あぁ、私も驚いている。使われた毒薬は『カルシウム』だ。』

「カルシウム…過剰摂取ですね?」

『あぁ、そうだ。腎臓が酷い状態だった。』

人体を構成する上で必要な物質の一つが『カルシウム』だが、実は人類に対して牙を剥くこともある。
カルシウムを過剰摂取すると腎臓を傷めてしまい、そのまま過剰摂取を続けながら処置を行わないと死に至る。

『そして…もう一種検出された。『モノフルオロ酢酸ナトリウム』だ。』

「…っ!」

モノフルオロ酢酸ナトリウムとは、害獣駆除用に第二次世界大戦中にドイツで発見された毒性の強い薬物である。
人類が摂取すると、過興奮・嘔吐・筋痙攣・呼吸抑制・心不全などの症状が現れるのが特徴だ。
オーストラリアやブラジル、アフリカなどでは、モノフルオロ酢酸ナトリウムを含んだ植物を40種以上発見している。
実は自然界の茶の葉から微量だが検出された例も存在する。

「検視ですぐに判明しなかったのですか!」

『あぁ…ありえないがな…。そこで…だ。長官より貴殿のチームに対して非公式任務がある。』

「秘密裏に犯人を特定、暗殺せよ。っという内容ではないですか?」

『なんだ、知っておったのか』

「いえ、感ですよ。了解です、承りました。この電話の盗聴の危険性は?」

『大丈夫だ。すでに極秘回線に切り替えているのでな。任務の途中経過は逐一報告するように。』

「了解です。それでは…」

電話を切って、少し考える。
極秘裏に調査…か…。当然だとは思うのだが…。なにか引っかかるな…。
とりあえず、ブリーフィングを始めようか。
そして、俺達は陰謀に巻き込まれていったのである。

〜ブリーフィング〜

「これで、口頭による非公式任務のブリーフィングを終了する。手元の資料を見て補足したまえ。」

男子隊員達が先程配られた資料に目を通す。女子隊員は今回、対象外だ。

「ソーマ、質問だ。」

「却下する。それでだな…」

「おいっコラッ!」

なんだ…?話を続けようとしたのに怒られてしまった。

「質問だっていってんだろうが!」

こいつはレイ・カーター、俺の副官だ。

「質問コーナーはこのあとに設けてあるからな。安心しろ。」

「うん、わかった。良い子にして待ってるよ…って、コルァ!」

「ナイス、ノリツッコミ。」

「うん、ありがとう♪…って、違う!」

そろそろからかうのも飽きたので話を聞いてあげよう。

「んで、どうしたんだ?」

「一つ、目撃情報だ。」

「一体、なんの目撃情報だ?バカみたいなことなら承知せんからな?」

そうだそうだ!と、隊員達から声があがる。
みんなだって、すぐにこの空気から解放されたいのだろう。

「美女の目撃情報だ。」

『詳しく聞かせろ!』

隊員達の声が重なる。もちろん、俺もだ。

「へっへぇ〜。そんなに知りたいのかぁ〜?ぷぅぷぅぷっ!」

なんだろう…すごくイラッとした。ぷぷぷって笑い方とか…。

「おらぁあああああ!」

ガッ!        ←レイの顔面に俺の右手が食い込む音

バタンッ!      ←レイが倒れる音

すると、隊員達が一斉にレイを取り押さえて縄をかける。

「ちょっ…!お前達っ!やめっ!アッーーーー♂」

一瞬の出来事だった…。
奴らは一瞬でレイの手足の自由を奪い、猿ぐつわをかませ、椅子に縛り付けた。


レイがなにかを言いたがっている。滑稽な姿だなぁ…。

「隊長、反乱分子を捕縛いたしました。」

「よろしい。褒めてつかわす。おい、レイ。なにか言いたいことはあるか?」

「んんんんんん!?んんっ!んんんーーっ!(おいお前達!これっ!外せーーー!)」

「おい、猿ぐつわを外してやれ。五月蝿い。」
隊員の一人がレイの猿ぐつわを外す。すると…

「んっはぁーー!ふぅふぅ…おぇ…!」

よほど苦しかったらしい。鼻で息をすることを母さんの腹ん中に忘れてきたのか?

「すみませんでした…。情報を提供させていただきます…。」

「最初からそうすれば良いんだっつーの。で?その女性の所属、出身地、名前、年齢、スリーサイズ、靴のサイズ、髪の長さ、国籍、その他全部教えろ!」

「さんなに詳しく知らねぇよ!俺はストーカーかっ!?」

「…………………………………………………………え?違うのか?」

「違ぇよっ!」

カルチャーショックとはこのことを言うのだろうか…。俺はレイがストーカーではないという事実を初めて知った。
「んで?5%の冗談はさて置き…」

「待てよ!95%は本気かっ!?」

俺は無視して話を促す。

「お前がそいつを見たのはいつだ?」

「昨日だよ…。俺が大浴場から自室に引き上げようとしたら彼女とすれ違ったんだ。」

「どんな格好をしてたんだ?」

「バスタオル1枚。」

「レイの格好を聞いてるんじゃない。その女性の格好だ。」

「だから、バスタオル1まいぃいいいいいいいい!?お前達!やめっ…!」

ガッ!            ←レイの鼻に拳が叩き込まれる音

ドガッ!           ←レイの腹に膝蹴りがクリティカル☆ヒットする音

「…っおぇ!」        ←レイが嘔吐く音w

バシッ!           ←レイのうなじにチョップが炸裂する音

しゅばばばばばばばばっ!   ←椅子に括り付けられる音

「離せええ!助けてぇええ!」 ←レイがなにかを訴えかけている声w

「で?それは事実か?」

「あぁ!本当だ!もし、嘘だったら一番酷い戦場に放り出してもらってもかまわない!」

レイが縛られた状態で訴えて来る…。そうか…。

「おい!こいつの言っていることは嘘だ。レイを戦地へ一人で送り込め!」

『サーッイェッサー!』

「おいおいおいおいっ!嘘じゃねぇって!信じてくれよぉ…!」

ここまで言うなら、信じてやろうか…。

「外見の特徴は?」

「巨乳…ちょっ!お前達!本当に死ぬから!それはダメだって!」

『巨乳美人がバスタオル1枚で外を闊歩してる訳ねぇだろうがぁあああああ!』

隊員達がレイを担いで屋上に連れて行こうとしている。そうか…紐無しバンジーでもやるのか…!

「やめぇええええええええええええええ!」

凄い勢いだなぁ…

あれ?隊員達の足が止まったぞ?なんだ?

「おい!どうした!?急げ!時間がかかるとアリバイ工作などが大変なんだ!」

すると、隊員の1人が報告に来る。

「隊長ぉ…辺境のぉ…基地の廊下でぇ…巨乳でぇ…バスタオル一枚でぇ…闊歩している美人女性にぃ…私達はぁ…出会った〜」

報告する部下の一人がショートを起こして世界ウル◯ン滞在記みたいな話し方に!

屈強な我が部隊の隊員が壊れた!いったい、どんな破壊力(エロさ)なんだ!?俺も確かめなくては!
廊下に向けて室内の最短距離を自己新記録と言えるスピードでダッシュ!固まっている隊員達をかき分けて廊下に出る!

そして、目の前に広がる幻想郷!

「痛ぁああああああ!?(ブシャァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!)」

なんだ!?目がっ!目がぁあああああああああああああ!眼球が燃える様に痛いっ!
俺は痛過ぎて廊下をのたうちまわる!そして、鼻血も噴出っ!鼻が痛いっ!
いったい、どんな破壊力なんだ…!?目で見ただけでこの破壊力だと!?

「…ねぇ、ソーマ…。あんたは巨乳が好きなの?」

ひぃっ!冷徹な沙織の声が耳に響く…!

「ますたー…あたしだっておっぱいありますよ?」

これはルカちゃんの声っ!

ちぃっ!この目の痛みは沙織の目潰し!
鼻の痛みはルカちゃんのグーパンチかっ!

なんとか痛みを堪えて、目を開ける。すると、そこには沙織とルカちゃんが仁王立ちしていた…。
怒髪天をつく…。彼女達の髪が天井に向かって逆立っている気がするんだ。
その二人の後ろにバスタオル美人がいた!

「(たらたらたらたらたらたらたらたらたらたらたらたら…)」

なんだろう…これは心地よい鼻血だ…。

「あらあら…w鼻血が出てますわよ?」



彼女が、この陰謀に関係あるとわかるのはこの後である…。

Why do they fight?〜第3章、前編〜

毒薬を調べるのが大変でしたw
また長編の予感です…。

Why do they fight?〜第3章、前編〜

  • 小説
  • 短編
  • 青春
  • アクション
  • SF
  • 青年向け
更新日
登録日
2012-02-13

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