お嬢様を教育します(仮)
佐藤了悟と土野葵 高校1年生
「佐藤君、もう上がっていいよ」
「わかりました。これ終わったら上がります」
店長の言葉に元気よく返事する青年、とあるスーパーでアルバイトしている高校1年生、名前は「佐藤了悟」(さとうりょうご)、まだアルバイトを始めて数ヶ月しか経っていないが、彼の人柄の良さを気にいられ彼に会いにくるお客さんができるくらいだ。店長や従業員の人にも気にいられている。
性格の良さだけでなくルックスもなかなか良い、身長は175cm、顔はキリッとしていて栗色ショートヘアー、少し細身の体つきだがなかなかのイケメンだ。お客さんからの人気は人柄だけでなくこのルックスの良さからもきている。
「よし、これで終了」
閉店後の明日の開店作業を終え2階の事務所に向かった。事務所にいる店長に閉店作業を終えたことを報告する。
コンコンコン
「失礼します、店長、閉店作業終了しました」
すると40歳の雰囲気がおっとりした店長が優しい声で佐藤に話した。
「おお、ご苦労さん、もう仕事には慣れたかい?」
「はい、週5でバイトに入れさせてもらっているので作業も早く覚えれました」
「本当助かるよ、夜のアルバイトの子が大学進学でやめちゃって、週5が大変だったら言ってね」
「いえいえ、週5も働かしてもらって逆に感謝しています」
コンコンコン
店長と話しているとドアのノックが聞こえた。すると1人の女性が入ってきた。
「失礼しまーす。レジの閉店作業終わりました」
「ご苦労さん、土野さん」
事務所に入ってきたのはレジ係の土野葵(つちのあおい)、佐藤了悟と同じ歳で学校のクラスも一緒だ。見た目は大人しい感じで、黒髪のロングヘアー、身長は160cmくらいで普通の女の子より高い、眼鏡をかけていて顔立ちも良くスタイルも出るとこは出て美人だ。学校でもそのルックスと性格で男女関係なく人気がある。
事務所に入って佐藤の顔を見ると驚いた顔で佐藤に尋ねた。
「あ、佐藤君早い、もう作業終わったの?」
「うん、ついさっき終わったとこ」
「いいなー、私はまだ金額チェックがあるから」
すると、店長が話に割り込み土野葵に話しかけた。
「土野さん、今日から僕が金額チェックするから上がっていいよ」
その言葉に土野は申し訳ない顔をした。
「そんな、金額チェックまでが作業なので私がします」
「いいよいいよ、もうこんな時間だし、僕もまだ作業があるからついでにやっとくよ。」
おっとりとした店長が優しい声で話すのでつい甘えてしまう。
「じゃ、じゃーお言葉に甘えて」
土野葵は手に持っている売上金の入った入れ物を店長に渡した。
「よろしくお願いします。お疲れ様です」
「はーい、気をつけて帰ってね。佐藤君もお疲れ様、土野さんをよろしくね」
店長は笑顔で2人に挨拶した。佐藤も笑顔で挨拶を返した。
「お疲れ様でした」
2人は事務所を出て更衣室へ向かった。すると、土野葵が申し訳なさそうに佐藤に話しかけた。
「ごめんね、いつも一緒に帰ってもらって。私を待たなかったら早く帰れるのに」
佐藤は申し訳なさそうな顔をして話している土野に微笑んだ。
「いいよ、帰り道一緒だし、土野さんと話して帰るの楽しいし」
「ありがと、佐藤君は本当に優しいね。じゃ、着替えてくる」
「うん」
土野葵はロングヘアーをなびかせ、小走りで更衣室に入っていった。
「僕も着替えよ」
佐藤もエプロンの紐を緩めながら女子更衣室の隣にある男子更衣室へ入っていった。
更衣室に入ると、佐藤は鞄の中にあるスマホを取りだしラインのチェックをした。ラインを見ると妹からきていた。
22:14「:何時くらいに帰れそう?カレー作ってあるから自分でよそって食べて」
「お、今日はカレーか~、」
佐藤は微笑みながらラインを閉じ、私服に着替え更衣室を出た。
更衣室を出たがまだ土野葵はいなかった。女子更衣室から光が漏れているので、どうやらまだ着替えているみたいだ。佐藤は男子更衣室で土野葵の着替えを待とうと更衣室へ戻ろうとしたとき、
「パチン、ガチャ」
女子更衣室の灯が消え、私服に着替えた土野葵が出てきた。
「あ、ごめんなさい、待った?」
土野葵は、ベージュの花柄ワンピースを着ていて、手に小さめのカバンを持っていた。私服姿もまた可愛らしい。
「いや、自分もさっき出てきたとこだから」
「よかったー、私着替えに少し時間かかったから」
2人は1階に降り、従業員出入り口を出て左の自転車乗り場に向かった。
佐藤了悟と土野葵~~バイト帰り
佐藤は黒色の自転車を取り出した。佐藤の自転車は色が剥げてきている所もあり、見た感じボロボロだ。土野葵は白色の自転車を取り出した。
2人の家はアルバイト先からそんなに離れていない、なので2人はいつも自転車を押しながら会話をする。
「この前の数学のテストどうだった?」
「僕は90点だった」
「へー、すごい私78点だったよ」
「まあ、入学して2か月くらいしか勉強していないのに、突然確認テストだったから皆も慌ててたけどね、だから78点は良いほうだと思うけど」
すると、土野葵は佐藤の顔を覗き込んだ。
「佐藤君て、かっこいいよね」
土野葵の突然の発言に佐藤は顔を赤くした。
「な、何言ってるのですか、テストの話じゃなかったのですか」
「佐藤君、女の子から評判いいよ」
すると、土野葵は何か思い出したのか、佐藤の腕を指でツンツンして、ニヤニヤしながら話し出した。
「この前、女の子から告白されてたよねー、どうだった」
佐藤は3日前に違うクラスの女の子から告白された。学校の人気のない庭に連れていかれ、
「入学式のときに一目見て好きになりました。付き合ってください。」と言われた。
佐藤はこういうことに慣れている。中学生の頃からモテており、1ヶ月に約2人から告白されている。
しかも、1年生ながら2年、3年の先輩からも告白されるくらいモテていた。
2年生に進級すると後輩からも告白された、しかし、佐藤自身あまり恋愛には興味はなく、今まで告白を断ってきた。
そうしていると、女の子の中で誰が早く佐藤の最初の彼女になれるかで競争が始まり、3年生に進級すると毎日女の子からアプローチや告白をされる始末、もうゲーム感覚になっていた。
「やっぱり、誰か見てると思ったら、土野さんだったのか」
「私だけじゃないよ、クラスの半分は見に来てたかな」
「見世物じゃないんだから」
「へへ、ごめんね」
土野葵は舌をペロッと出して笑った。
「で、あの子と付き合うの?」
「気持ちは嬉しいけど・・・、付き合えない」
すると、土野葵は驚いた顔をした。
「えー、あの子可愛かったのに、佐藤君のストライクゾーンて狭いんだね」
「僕、あまり恋愛に興味ないし、今までも告白されたけど全部断ってきた」
佐藤の恋愛に興味がないと言うのを聞いて、土野葵は渋い顔をした。
「もしかして・・・」
土野葵は言葉を途中で切って佐藤の顔を見つつける、佐藤は急に土野葵が顔を見続けるので疑問に思った。
「どうしたの?」
土野葵は言葉の続きを渋い顔のまま話した。
「ゲイな・・・」
「ゲイじゃないよ!」
佐藤は土野葵の発言にかぶせるようにして否定した。
そして、土野葵は渋い顔がはれて安堵の顔をした。
「よかったー、でも、佐藤君がアッチの人でも私は佐藤君の友達のままだからね」
土野葵は胸のあたりでグットポーズをしてニコッと笑った。しかし、その笑顔は、まだ佐藤がゲイではないかと疑っているように見える。
佐藤は少し悲しい気持ちになった。
「土野さんて、ときどき傷つくこと言うよね」
すると、土野葵は笑いながら話した。
「ごめんね、冗談だから、佐藤君とこうして話していると楽しくって」
土野葵が笑っているのを見て、佐藤も微笑んだ。
そんな、話をしているとあっという間に土野葵の家についた。土野葵の家は一軒家で3階建ての立派な家だ。玄関の入る道の横には小さな庭がありプランターがある。1階の窓から光が漏れていた。どうやら家族の人がまだ起きているようだ。
「今日もありがとう、楽しかった。じゃ、また明日」
「うん」
佐藤は自転車に乗り自分の家に向かった。後ろを振り返ると土野葵が手を振っていた。佐藤は自転車を止め手を振り返した。
佐藤了悟~~寂しい晩御飯
佐藤の家は土野葵の家から自転車で3分くらいのところにある。
「キキーー」
佐藤の古い自転車は錆びた音を出してアパートの前に止まった。
そのアパートは、昔の映画に出てきそうな古びた2階建てのアパートで、門みたいなものがあるが錆びていて開いたままだ。門の横の壁にマンションの名前が書いてあるが、汚れていて何が書いてあるかわからない、
佐藤は門を入って右の駐輪場に自転車を止めた。駐輪場のトタン屋根も端の方が壊れている。
アパートは、1階に4部屋、2階に4部屋ある。
佐藤は2階に上がり一番奥の部屋に向かった。ドアのカギを開け、物音を立てないように中に入った。
部屋に入ると、小さいダイニングがあり、左に3畳ほどの畳の部屋が2つある。手前の部屋の襖が開いている。中に誰もいないので、妹は奥の部屋で寝ているようだ。
家具や電化製品も最小限の物しかなく、何とも殺伐とした部屋だ。
佐藤は、ダイニングにある足の長い長机の横に並ぶ4つある椅子に鞄を置き、キッチンに向かった。
コンロの上にある銀色の鍋があった。鍋も相当使い込まれたのだろう、鍋の下が焦げていて、新品の鍋みたいに輝きがない、
鍋を開けると、いい匂いのカレーが入っていた。
「うん、よくできてる」
コンロに火を点け、おたまでかき混ぜるといい匂いが増してくる。
佐藤は皿を取出し、冷蔵庫の中にある朝の残りご飯を取り出した。それをレンジで温めお皿の端に盛り、いい匂いのしたカレーをご飯の横に流した。
よそったカレーをダイニングのテーブルに置き、冷蔵庫から朝の残りのサラダを取り出した。
椅子に座りカレーを1口食べた。
「うん、うまい」
佐藤は静かな部屋で、ただ、スプーンがお皿にあたる音だけの静かな空間で食べていた。
カレーを食べ終わると、流しで食器を洗い、お風呂に入った。
お風呂から上がると、バイトで相当疲れたのだろうか、開いている部屋に布団を敷き、倒れこむように睡眠についた。
お嬢様を教育します(仮)
いかがでしたか。
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