フォーエバー フレンド

みつき

ただただ一途でありたかった少年のお話。

失踪

「君のことが好きだったのかもしれないな・・・」



ギアをバックにいれ、ミッション車特有の音をだしながら車庫に入る。
サイドブレーキを引き、エンジンを止めてからギアをサードにいれた。こうしないと不安なんだ。
車から降りると冬の風が僕の全身をなぞる。もうすぐサンタクロースが子供たちを想い夜中走り回るというのに、昼間からこの寒さは過酷すぎるな。なんて考えながら、もう十数年住み続けた実家の玄関をくぐり、足早に自分の部屋へと向かう。
一人がけのフラットソファに座り電気ストーブをつけて、トラックボール式のマウスに手をかけた。常時起動させてあるパソコンは、ブラックスクリーンを一瞬にして、待ち受け画面に変えてくれた。音楽再生ソフトを起動させ、電子の声が特徴的な音楽を流す。結構大きい音で。特に検索したいこともなかったのから、タバコをとりだし、火をつけた。
「スゥーー・・・ハァ・・・・・・。さてどうするかな。」
25歳になったら死のう。そんな考えを昔から抱いていた。
でもまさかその時がこんなにも早く訪れるとは、僕自身でさえ予想もしていなかっただろう。
部屋の中を見渡し、何を持っていこうか悩む。きっと結構な量になるから大きなかばんが必要だと思ったところで、灰皿に700℃の棒切れを押し付けた。
家の押入れを探し回り、目当てのものがなかったから荷物の整理をすることにした。
「下着、靴下、服・・・あとはなにがいいかな。」
ファッションに詳しいわけではないけれど、どこに出かけるにも服装には気をつかったほうがいいと思う。これから漫画喫茶での寝泊りもあるだろう。2日間続けて同じ服装の客なんて不快なこと極まりない。ここまできたら他人など気に留めることもないけれど、僕はそういう人間なのだから。
あらかた持っていくものが決まり、最後に思い出の品々を見つめながらため息をついた。
「うわぁ・・・懐かしいな。」過去に耽りきったあと、心の中にしまったら燃やしてしまおうと結論をだした。持ち物を車に運ぶ途中でばぁちゃんに声をかけられた。
「どこいくのそんな荷物もって。」言葉と表情の中に本当に言いたいことが見えている。いつもだったら軽く流すだけなのだけど、今回ばかりは馬鹿正直に答えてみる。
「旅行だよ。一週間帰ってこないから。」にっこりと笑いかける。
「旅行?!あんた仕事はどうすんの?」
「休まなきゃいけんやろうに」
これ以上続けると面倒なことになりそうなので半ば強引に話を切り上げて、足早に車へとむかった。
最後の荷物を積み終えて、部屋へと戻る。前日に引き出しにしまった遺書を確認してソファに座り、おそらくここで最後に吸うタバコに火をつけた。部屋をぐるっと見渡して、たくさんの時間を遡る。夢中になりすぎたのか、気づけば700℃の棒切れから煙はでていない。
「最後くらいゆっくりするつもりだったけど、まぁそんなもんかな。」
名残を惜しみつつ、ドアを閉める直前に
「さようなら」とつぶやいた。
車に乗りエンジンをかける。一秒後にはエンストをしていた。あぁそういえばサードにいれていたんだっけ。いつもならこんなミスはしないのに。もしかしたら行くなと車が言ってくれているのかな。とカ〇ズも顔負けなファンタジーを想像しつつ、家を後にした。

知っている土地

クラッチから脚を離し、ライトを消してからエンジンを止めた。外に出ると空は真っ暗で、コンビニからもれた光がただただ眩しい。店に入って店員の気だるそうな顔を横目にカフェオレをホットコーナーから取り出し会計を済ませた。外の喫煙所でタバコを吸いながらカフェオレを飲む。とりあえず見知った道を東へと向かってきたけれど、まだまだ知っている場所だ。行きたい場所なんてないけれど、なるべく実家から離れたかった。いろいろ思考錯誤した後に、漫画喫茶で暇をつぶすことにした。携帯で漫画喫茶と検索するといくつかヒットして、シャワー室があるところに決めて車に乗り込む。冬といえどもシャワーはなるべく浴びておきたい。
「♪~♪~~~」
自分の好きな音楽をうたいながら数十分、今夜の宿先に到着した。トランクから下着類が入っている鞄を取り出して受付に向かう。
「ご希望のブースはございますか?」
弾んだ声と笑顔で愛想良く接してくれる女性スタッフは、さきほどコンビニ店員の対応とはまったく別物だ。
「えっとじゃあ、このシアタールームって一人で使えますか?」
「お一人様だとプラス500円余分にかかっちゃうんですけどそれでもいいですか?」
すごく申し訳なさそうに話しかけてくるものだから”かかっちゃう”という言葉より、その思いやりに心で微笑んでしまった。
「あぁいいですよ。すこし落ち着いて横になりたいので・・・。」
はにかんでみる。
「そうですか!ではすぐ準備しますね!」
あぁなんて素敵な人なのだろうか。こんな接客ができたら僕的にはどこへいっても満足だけれど、そうもいかないんだろうな。
「ありがとうございます。」
今出来る最大限の笑顔をむける。もちろんスタッフも笑みを浮かべてくれる。
「ではお部屋へご案内しますね。」
「あ、はい。」
漫画喫茶でそこまでのサービスはいらないんじゃないかと思ったが、その疑問はすぐに解けた。ここの漫画喫茶は三階建てで、さまざまなブースがあるからだ。女性の後を追いつつ、館内を観察する。しばらくして女性がこっちを向いた。
「こちらのお部屋になります。」
「あぁどうもです。」
「いえ。ゆっくりお休みになってくださいね?」
なぜ疑問系なのか。
「あはは。ありがとうございます。あ、あとシャワー使いたいんですけど・・・。」
「あ、やっぱりそうなんですね!わかりました。さっきまでは空いてたのでたぶん大丈夫ですよ。」
なぜそこまで考えているのか。
「すぐに入られます?」
「うーん空いていたらいこうかな。」
「わかりました。じゃあ伝票預かりますね。一度電話しますので、でてくださいね。」
「お願いします。」
そういい残して彼女は去っていった。なぜあんなにフレンドリーなのだろう。仕事熱心なのか、下心なのか。まぁ考えたところでなにがわかるわけでもないからそこでやめた。
案内されたシアタールームはちょっとしたパーティーに使えそうなほど広く、これなら追加料金がかかっても悪くないなと思えるほどの設備だった。エアコンにリクライニングチェア、今までに見たことないほどの大型テレビに、加湿器まで設置してある。隣の部屋はカラオケルームになっているのか、男女の美声(笑)が聞こえてくる。静かな空間でないと睡眠ができない性質だが、一般ブースでかならず一人はいる親父のいびきよりかはだいぶマシだ。
荷物を部屋の一角に置き、暖房に電源をいれて、椅子に腰掛けタバコを吸う。ここ数年の習慣になってしまった喫煙は働いていないと10分に一度は口にくわえている。ニコチンがほしいというよりかは、口が寂しいというやつだ。そのおかげで、一日に一箱以上は吸うようになってしまった。お財布にも身体にも優しくないことこの上ない。けどやめない。
吸い終わるころに受付からの電話が鳴った。シャワー室が空いていたようだ。必要なものだけもって、フロントへと向かう。やはり先ほどのスタッフが対応してくれたので、ご丁寧にシャワー室まで案内してもらった。入ってみると漫画喫茶にしては綺麗なシャワー室だ。清潔感が漂っている。一応利用時間というものがあるらしく、あまりゆっくりしている暇はなさそうなので早めに切り上げた。荷物をまとめてフロントに出向き、ありがとう。とだけ告げてルームに戻り床で伸びをしてしばらく休止状態になる。8時間ほど運転していたからさすがに腰が痛い。ちょうどいい睡魔が襲ってきたのでこのまま寝ることにした。明日は何をしようか。とくにやらなければいけないことなどないはずだが、何かがしたくてたまらない。やりたいことリストを頭の中で浮かべ、意識はフェードアウトして、眠りについた。

何かしらの不快感に目を覚まし、携帯に目をやる。午前3時を示す文字列はこの空間だと信憑性は皆無だ。喉の乾燥具合に咳き込み、寝ぼけながらドリンクバーまでのそのそと歩いていく。迷わずメロンソーダのボタンを押してその場で一気に飲み干した。
部屋に戻り、もう一度携帯を開く。家からでる時からSNSは全員ブロックして、携帯本体の設定も電話やメッセージが受け取れないようにしてあったから、連絡を取り合える人もいないけれど現代人にとっては”携帯を開く”という行為が日常化している。昔、バイト先の後輩が携帯をトイレに落とすという珍事があったのだが、一日携帯が使えないだけでこんなにも不安になるものなのか。といっていた。
そのクセと言い訳して、結局SNSや着信履歴を見てしまう自分はなんなんだろうか。いろいろ心をきめてきたはずなのだけれど。やはり寂しいものは寂しいらしい。かまってちゃんとはこのことだ。まぁそのうち嫌でも連絡がとんでくるだろう。1日目で異変に気づく人などいたら怖い。
ため息をついて、備え付けのパソコンに電源をいれた。今日の曜日を確認して、毎週みているアニメを見ることにした。”これはゲームであっても・・・”というやつだ。小説もチェックしているのでアニメ分の展開や落ちなどはなんとなくわかるのだが、せっかくなのでみておきたい。厨二病を患った僕にとって、アニメや小説の中のファンタジーでドラマチックな世界観は癒しになる。現実に起こることはないという出来事が当たり前のように繰り広げられていく。行けるものならこんな世界に行ってみたいと何度思ったことか。エンディングに差し掛かったので、ブラウザを閉じて椅子に背を預けた。
ここで僕の厨二病を具現化してみよう。ちなみに自分で馬鹿にしているけどこんな自分は割りと好きだったりする。

他人の行動、言動全てが馬鹿らしく見える。否定して、自分は違うんだと心の中で満足する。
高校時代から始まったソレは今でも強く根付いている。
夜中、散歩をしながら世界はどうあるべきか、人はどうあるべきかなんて考えたり、愛とはなんだと自分自身に問うこともある。
考えても意味のないことを考えぬいたところで、行動をするわけでもないし、何が得られるわけでもない。けれど考えること、疑問を持つことをやめたまま大人になることがどういうことかわかっているから未だに変われない。
要するに、クズなだけ。主張するだけして、あとは世間のせいにして嘆くだけ。変わろうともしない僕のぶりっ子ぶりは、そこらへんのニートより厄介だろう。変わりたいのも事実、変わりたくないのも事実だが、如何せんどうしたらコレが治るのかわからないので、便利な薬でもあればいいなぁと思ってしまう。
あまり長々してもいけないからここら辺で区切りをつけよう。

フォーエバー フレンド

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更新日
登録日
2015-01-05

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