彼女との約束

永田 憲治

     彼女との約束
高校生になった時に、彼女ができた。名前は昌子といい、ちょっと背の高い、笑顔の可愛い子だった。何事もきっちりしていて、嘘が大嫌いのちょっと性格のきつい女の子だった。
ある日曜、彼女とデートの約束をした。10時に阿倍野駅改札の前での待ち合わせだった。
私の家からは1時間あれば着くのだけれど余裕を持って1時間前の8時30分に家を出た。
先ずは私鉄に乗り、その後地下鉄に乗り換え後2駅で到着するという所で電車が突然止まった。車掌からのアナウンスでは前の駅で人身事故が発生したとのことであった。その時は時間に余裕を持って出て良かったと思っていた。しかしながら、30分待っても電車は動かなかった。車内放送では、ホームと電車の間に少女がはまってしまっており、救助が難航しているとの事だった。これは時間がかかりそうだと思ったが、電車が駅と駅の間で
止まっており、下車して彼女の待つ阿倍野駅まで走っていくこともできず、悶々としながら電車の中で待っていた。今みたいに携帯のある時代ではないので、彼女と連絡を取る手段はなかったのだ。そして1時間が過ぎた。彼女との待ち合わせ時間はとうに過ぎている。時間に厳しい彼女はもう怒って帰ってしまったかなあと考えていた所、車掌からのアナウンスが流れた。電車にはさまれていた少女が助かったとの知らせだった。その時いままで静かだった車内からぱちぱちと拍手があがり、やがて大拍手となった。私もその時ばかりは彼女との待ち合わせの事をわすれて拍手を送っていた。やがて電車は動きだし彼女の待つ駅に到着した。
駅から待ち合わせ場所まで、急いで走っていった。結局1時間の遅刻である。彼女は怒ってもう帰ってしまっているかもと思いながら
待ち合わせ場所に着くと、不機嫌そうに待ってくれていた。時間に遅れたことを詫びると
理由を聞かれ、地下鉄の中の一件について一部始終を話した。すると彼女はにっこりしながら
「よかったね無事助かって」
と言った。
私の遅刻について怒っていないのか聞くと
「けんちゃんが悪くて遅刻したわけでもないのに怒ってなんかないよ」
といい言葉をつづけた
「それにけんちゃんとの約束は時間じゃなくてデートすることだったから、きちんと約束を守ってデートをするので、いいよ」
と言ってくれた。その後、私たちはデートを楽しんだ。
あれから30年経った。彼女とは理由は覚えていないが1年ほどたって別れてしまった。
いまではお互い別々の家族を持って年に一度
正月にお互いの家族写真で近況を知るだけと
なってしまったが、年賀状を見るたびにあのころのこんな出来事を思い出してしまう

彼女との約束

彼女との約束

  • 随筆・エッセイ
  • 掌編
  • 青春
  • 恋愛
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2015-01-05

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