キノコ狩り(7)
七 人間キノコ
それからというものの、俺たちは小人のまま(もちろん、前の大きさと比較してのことだが)生活を始めた。それぞれが、小人王国で、役割を持った。王国と言っても、お姫様とじいちゃんたち七人の小人だけだ。俺はじいちゃんと一緒になって、持ち前の脚力とこの公園に詳しいということで、食糧調達班に任命され、どんぐりなどの木の実やあじさいの花の蜜などを集めた。以前にもまして、健康的な生活だ。
ある日、久しぶりに、キノコの店の近くを通りかかった。小人になって逃げ出してから、初めてのことだった。
「のぞいてみませんか」
俺の前を歩くじいさんを誘った。
「そうだな。見てみるか」
俺たち二人は、草むらに隠れながら、裏口の戸に回った。ちょうど、俺たちの体の大きさの穴が空いていた。
「俺がこの前、お前たちを助けに来た時に開けたんだ」じいさんは胸を張って答えた。
中に入ると、驚いた。俺たちの頭に生えていたキノコは、天井に届くまで成長していた。まるで、この建物の大黒キノコだ。その数、ちょうど六本。そして、その周りを、俺の数倍の、人間大のキノコたちが、忙しそうに料理を作ったり、テーブルに座って、バーベキューをしていた。隠れている俺たちの前を横切ったキノコたちも成長していた。
座っていたキノコが立ち上がり、檻を突き破った巨大なキノコの周りに立ち、手を伸ばし何かをもぎ取ろうとしている。俺は、その何かを確認した。巨大なキノコからは、俺を拉致した店主や店員たちが、小人の大きさで生えていた。
客らしきキノコは、店主をつまみ取ると、籠の中に入れ、テーブルの上の網の上に乗せた。店主は、火に焙られて、ウギャアと叫び声を上げると、くるくるっと胎児のようにちじこまった。キノコは、箸で店主キノコを掴み、焼き具合を確認すると、醤油につけ、ポイと口の中に入れた。
「美味しい。新鮮だ。やめられないな」
キノコの満足そうな声。俺とじいさんは、互いに顔を見合わせ、無言のまま、その場から逃げるように立ち去った。
キノコ狩り(7)