教団X

2014年 中村文則著

新年初読み本です。
中村文則さんの作品の中では最長篇になる。
何せ単行本で500ページを超える作品、長かった。
だが、その分濃厚な作品になっている。
絶対的な闇と圧倒的な光を持つ作品だと言えるだろう。

物語は高尚と性に溺れる低俗さが混沌と混ざり合っている。
その世界観はまさに淫らで赤裸々だ。
性描写もエロティシズムというよりエグさが前面に出ているくらい淫蕩なのだ。
まぁこれがこの作家の持ち味だと言えるのだが。

絶対者によって支配される謎のセックスカルト集団。
信者たちは男女乱れ合い、教祖の見守る中でセックスに明け暮れる。
ここは最早性の無法地帯と言ってもいいだろう。
このような宗教団体を軸に、物語はこの世の不条理を炙り出していく。

匂い立つのは革命の匂いだ。
4人の男女が主な登場人物だが、彼らの運命が交錯するとき、この世は根底から揺さぶられる。
それはこの世の終わりの啓示なのか、はたまた限りない未来への暗示なのか。
このことは物語における大きなテーゼと言える。

フィクションの名を借りて放出される世界へのメッセージ。
神とは何か、運命とは何かという強いメッセージ。
人類を滅ぼすのも救うのも宗教なのだ。
優れた宗教は肉体的にも精神的にも快楽をもたらすと言ってもいいだろう。

この世は決して綺麗ごとではすまされず、裏には必ず悪が潜んでいる。
しかし、たとえこの世の本質が悪だとしても、必ず希望があるということを示している。
中村文則さんはほの昏い中に一筋の光を差し込むのが上手い。
だから私たちはこの世を肯定して生きていかなければならないのだ。

読み終えたとき心にズンとしたものが残り、体に痺れが貫くのを感じた。
本当に完全な小説は体の感覚すら麻痺させてしまうのだろう。

教団X

教団X

  • 随筆・エッセイ
  • 掌編
  • 青年向け
更新日
登録日
2015-01-02

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