伝えたくてツタワラナクテ

ダレンシャンの夢小説です
静かな、しかし切なく熱い師匠と弟子の禁断の関係を書きたかった
だけなので、不適切すぎる発言はのっていないつもりです

シルク ド フリークのみんなは、もう広場にあつまっている、早く仕事を終わらせないと…

「ダレン、こっちはもう荷物積み終わったぞ。よかったらそっちも手伝おうか?」
「ありがとうエブラ、けどこっちももう直ぐ終わるからいいよ」
「オッケー、んじゃ先に広場に集まってるからな」
「うん、分かった」

今日はこの街でショーを開く最終日だったから、今は荷物をまとめて次の街へ向かう準備をしているところだ
小高い丘の上にシルク・ドフリークのみんなが集まってきているのが見える。
もうすぐ打ち上げパーティーが始まるのだ

「よし、これで最後だな」

僕は最後の荷物をトラックに積んで急ぎ足で広場へ向かった
その途中、見覚えのある人影が広場から少し離れた場所で椅子に座っているのが見えた
今は夜だが、月明かりのせいなのかバンパイアの視力がいいからなのか、その人物が誰なのかすぐ分かった

「クレプスリー!」

僕の声が聞こえたのか、クレプスリーはこっちを見て、僕が自分のところまで来るのを待った。クレプスリーはショーの赤い衣装のままだった

「クレプスリー、みんなもう広場に集まってるよ、行かないの?」
「あぁ、もう少しここにおるつもりだ、先に行っておれ」

何故だかわからないけど、クレプスリーから離れたくなかった…

「うぅん、僕もクレプスリーと一緒にいる」

クレプスリーは以外そうに僕の顔を見ると左頬の傷を小指でポリポリとかいてから、またワインを口にした。照れた時に左の傷をかくのはクレプスリーの癖だ。グラスに注がれた赤ワインは月明かりに照らされてキラキラと輝き、反射した光はクレプスリーの喉を紅く染めている。その視線に気づいたのだろうか、クレプスリーはグラスを口から離して僕をちらりと見た

「お前も飲むか?」
「えっ?いいの?」
「今日だけだ」

クレプスリーはそう言うとそばのパイン材のテーブルに置かれていたワインのボトルを手に取り、さっきまで自分が飲んでいたワイングラスのワインを飲みほしてからその中に注いだ。

…静かだ
遠くで笑うシルク・ド・フリークの仲間達の声、風の吹き抜ける音と虫の声、そしてワイングラスにワインが注がれるトクトクという音以外に聞こえるものはない

「ねぇクレプスリー…」
「なんだダレン」

クレプスリーはワイングラスを僕に渡しながら僕を見た

「うぅん…なんでもない」
「なんだそれは」


クレプスリーはククッと笑うとおもむろに月を見上げた

「美しいな…」
「うん…」

そう僕は言ったが、僕がそのとき見ていたのはクレプスリーの横顔だった。

鮮やかなオレンジの髪、白い肌、相手を魅了してしまうような紅い瞳、鍛え抜かれた肉体…

あぁ、僕はおかしくなってしまったんだろうか?ここ最近、特にそうだ。
食事をする時も掃除をする時も寝る時も、いつもクレプスリーのことを考えてしまう。クレプスリーと一緒にショーをしている時なんて、胸の中で黒い糸がモヤモヤと動いているような気持ちになって、ちっともショーに集中できない…(そのせいでマダム(毒蜘蛛)を操る笛を落としてしまいクレプスリーがマダムに襲われかけたことが何度かあった)


「おい、おいダレン」
「あ…あぁ、どうしたのクレプスリー?」
「どうしたのではない、ここ最近いったいどうしたんだ?よく虚空を見つめるような目でボーっとしとるぞ?!」
「なんでもないよ…」
(そう、なんでもないんだ。)

僕は自分でも知らないうちに下を向いていた

「…別に、話したくないのであれば話さなくてもよい、だがな、ダレン、世の中には吐き出してしまった方がよいものもあるのだぞ?話したくなったときは、我輩でも、エブラでも、誰でもよい、話してスッキリしてしまえ」

クレプスリーはそう言い残すと席を立ち、みんなのいる広場へと歩いていった。僕はクレプスリーの広い背中を、ただぼんやりと見つめていることしかできなかった…

(あぁ…できることなら吐き出してしまいたい、けど、この気持ちがいったいなんなのか、僕にはわからないんだよ、クレプスリー…)
I'll no longer know anymore what the flame of the ... Crepsley(もう何がなんなのか分からなくなったよ…クレプスリー)

############



我輩は椅子に座りながら先ほどハイバーニアスからもらった最高級の赤ワインを飲んでいた。今夜は月が綺麗だ、白く輝く月は林の木々を、草を、全てを優しく包み込むかのように照らしている…

「クレプスリー!」

聞き覚えのある声が左手の坂から聞こえてきた。我輩はその人物がこちらに向かって来るまで見守ることにした。

「クレプスリー、みんなもう広場に集まってるよ、行かないの?」
「あぁ、もう少しここにおるつもりだ、先に行っておれ」
「うぅん、僕もクレプスリーと一緒にいる」

ダレンが以外にも一緒にいたいと言い出したものだから、我輩は一瞬ためらいながらも照れを隠すように赤ワインを飲むことにした。
ふと、ダレンからの視線に気づいた。
ダレンもワインが飲みたいのだろうか?体はまだ子供だが、中身はもう酒を飲める歳になっているのだ、興味がやはり沸くのだろう…

「お前も飲むか?」
「えっ?いいの?」

ダレンは少し驚いた顔をしながらも目を輝かせた

「今日だけだ」


我輩は机に置いておいた赤ワインを手に取るとグラスに入っていたワインを飲み干し、そこにワインを注いだ。

「ねぇクレプスリー…」

ダレンはおもむろに口を開くと我輩をつぶやくように呼んだ

「なんだダレン」

我輩が答えると

「うぅん…なんでもない」

と、少しはにかみながら笑った

「なんだそれは」

我輩もその笑いにつられて笑った
そして我輩はおもむろに月を見た。
今宵は三日月、しかし雲がひとつもないのと空気が澄んでいるからなのか、月は周りを相変わらず白く照らしている

「美しいな…」
「うん…」

しばし時が流れるのを忘れるかのように月をながめていたが、気が付くとダレンがいつものようにボーッとしていることに気づいた。
最近、いつもこんな感じだ。今日のショーでも、マダムを操り切れずにいつもよりショーの時間が長引いてしまった。
(何か、悩みでもあるのだろうか…?)

「おい、おいダレン」
「あ…あぁ、どうしたのクレプスリー?」

案の定、今までずっと心ここにあらずの状態だったようだ

「どうしたのではない、ここ最近いったいどうしたんだ?よく虚空を見つめるような目でボーっとしとるぞ?!」
「なんでもないよ…」

何もない訳が無い、この年頃であれば、悩みの一つや二つ、あるに決まっておるのだ。しかし、執拗に悩みを聞き出すのもダレンにとっては迷惑なものなのだろう…

「…別に、話したくないのであれば話さなくてもよい、だがな、ダレン、世の中には吐き出してしまった方がよいものもあるのだぞ?話したくなったときは、我輩でも、エブラでも、誰でもよい、話してスッキリしてしまえ」

我輩はダレンにそれだけを言って、その場を去ることにした。
席を立つ時、ダレンは下を向いていて顔は見えなかったが、唇をギュッと噛み締めているのが見えた。
これなら、誰かに悩みを打ち明ける日も近いだろう…しかし、これは我輩のわがままだが、誰かではなく我輩を頼ってほしいものだ…

############

「エブラ、ちょっといいかな?」

ダレンが、次の街へ行く途中の荷台の中で急に俺に話しかけてきた。
ダレンは俺の親友であり、家族であり、相棒だ。

「なんだよダレン、あらたまったりして」
「悩みがあるんだ…」

おぉ!これがお悩み相談っていうやつか!

「おう!なんだってきいてやるぜ!俺たち親友だろ?」

そう言うと、ダレンははにかみながら笑い、荷台からさっき通った道を見つめながら話だした。

「僕、最近おかしいんだ。なんだが胸の中のモヤモヤした感じのものがザワザワするというか…なんというか、すごく変な気持ちになるんだ」
「それが悩みか?悩みがあるとそんな気持ちに誰だってなるぜ、問題は、その悩みの根源だ、それを話してくれよ」

俺がそう言うと、ダレンはうつむいてしばらく黙り込んだ。そして顔を上げたかと思うと、今度は空を見上げて、またいつものようにボーッとし始めた。(いつもと言っても最近まではこんなではなかったのだが…)

「クレプスリー…」
「?…クレプスリーがなんなんだ?」
「うぅん、なんでもない…」

ダレンはそれだけ言うと、次の街へ着くまで、ただ手に持ったオニオンピクルスの瓶を見つめながら黙っていた。
しかしその時、ダレンはぼんやりしているのではなく、その目には何かしらの決意の色がうかがえるようだった…

############

伝えたくてツタワラナクテ

どうでしたか?まぁ、最後まで読めたものでなかったかもしれませんね。
そもそも夢小説ってありなのか?と思いながらこれを書いてしまったものだから、
ある意味私はハラッハラしました
最後まで読んでくださった方はありがとうございました!

伝えたくてツタワラナクテ

ダレンシャンという半バンパイアの少年とその師匠ラーテンクレプスリーの禁断の恋物語です。ズバリ、夢小説です。原作ではこのような内容ではないので、ぜひ、そちらも読んで頂けるといいかと思います。 夢小説といっても、私なりに世界観や細かな描写をしたつもりです。その世界の空気感がつたわればいいなぁーと思います。

  • 小説
  • 掌編
  • ファンタジー
  • 恋愛
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2015-01-01

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