左手

プロローグ


最初から手を出しては犯罪になること、わかっていました。

けれど頭ではわかっていても、心では理解したくない事、あるでしょう?

あなたにはないかもしれない。

少なくとも、私にはあった。



「シホリには俺がついてるから、大丈夫。」

大丈夫じゃなかった。

大丈夫になれなかった。

後悔とかはしていない。

けれど、これでよかった、なんてとても思えない。

きっと過去に戻れていたとしても、私は同じ道を選び、同じ答えを出す。

私はあなたの手が大好き。

でも、左手の薬指で光る、それは。

就職


専門学校をでてから、就職した先は美容室。

美容師の学校を出たから、あたり前と言ったら、そうなのだけれど。

就職して半年。

学生の頃からしてだいぶ生活は変わった。

自分の時間はとても短い。

特殊な職業だからってのもある。

早朝の練習から営業、そして深夜までの練習で一日は終わる。

やめたい、と思ったことは正直、何回も、何十回もあった。

もしかしたら、何百回も、かもしれない。

周りの友人がすでに数名脱落した噂を聞いた。

それくらい続かない職業なのだ。

けれども、私は環境に、というか、人間関係に恵まれていた。

だから、辛くとも楽しいと感じることも多かった。

左手

左手

  • 小説
  • 掌編
  • 恋愛
  • 成人向け
  • 強い言語・思想的表現
更新日
登録日
2014-12-31

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