チカちゃん

「ねえ井村どうしよう、俺チカちゃんが好きだ」
なんてこった。


 ***


アヤに「真島に好きな人いるのかどうか聞いてきて!」とゴリ押しに近いお願いをされたのがつい昨日。
さっきの真島の突然の告白を聞いたのが今日、いま丁度。
どんまいアヤ、お前の好きな人は好きな人がいるそうだ。

 アヤとは家が隣同士で、中学までずっと一緒だった。高校からは別々だけど、家族ぐるみで仲が良いから未だにお互い家を行ったり来たりする付き合い。幼馴染みたいなものか。真島が好きらしい。卒業して顔を合わせなくなった今でも、だ。

中学では卒業までもだもだして、結局は何もなかった。真島と違う学校になるのは残念がってたけど、でもどうしようもない。
 俺と真島は中学から知り合って今は同じ高校にいる。同じ中学からここに来たやつは結構いた。近いからかな。



「なあ井村聞いてる?」
「ああ聞いてるよ、何の話だっけ」
「全然聞いてねーじゃん! まぁいいや、でさぁ、めっちゃかわいいんだぜ!特にご飯食べてる時がヤバい。この前いっしょに食べたんだけど、ヤバい。肉噛みちぎれなかった時とか口に餌の入れる量間違えちゃったねこ並にかわいい。ヤバい」
「はぁ」
「チカちゃん背ぇちっちゃいからさあ、あのヒヨコとかウサギが可愛いみたいな小さいものが可愛いアレかと思ってたんだけどさあ、あのほら清小納言も言ってたじゃん? 小さいのは可愛いっていうの! でもやっぱよく考えたら俺そういうの無しでもチカちゃんのこと好きだわー。あっ、ちっちゃい所も好きだよ? なんかこう、サイズ的に抱き締めやすいし」

アヤは小学校から続けてるバレーのおかげか、女子ながら身長は170センチを越えてる。大体俺と同じぐらい。アイツ勝ち目なくないか。

 
ていうかチカちゃんて誰。


「ところでなんで俺お前のノロケにつきあわされてんの」
「えー、いやぁチカちゃんが可愛すぎてヤバいってことをとりあえず井村にも伝えておくべきかと思って」
「いやいいよ別に……そもそもチカちゃんて誰だよ、あの向こうの学校の人?」
「えっ」
「えっ、て、いや、えっ?」
「何言ってんだよ、チカちゃんっていったらお前のクラスのチカちゃんしかいないじゃん」


なにそれ。



「……もしかして鉢賀(はちか)のこと?」
「当たり前だろ」
「え、じゃあ、お前、」


なんてこった。



だってここ、男子校だろ? 

チカちゃん

2012年 1月 ももつづり

チカちゃん

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2014-12-30

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