例えばの話だけど

アネモネの花が揺れる。

ほんの出来心だった。――陳腐な表現。
出来心で人を殺す人なんて、きっと存在しないだろう。
あるのは、殺す理由か殺される理由、若しくは、その両方。
ぺたりと座り込んで花冠を編む那月は、幸せそうに笑っている。
例えばの話だけど、その先に崖があるとすれば。
例えばの話だけど、その崖に那月が気付かないすれば。
例えばの話だけど、那月が偶然、凛と咲いている一輪のアネモネを見つけたとすれば。
例えばの話、だけど。
「…那月、」
声を掛けると無邪気な顔で振り向いて、おねえちゃん、と。
ああ、わたしはその顔が、その声が。
どうしようもなく――
「那月、見て。綺麗な花だね」
立ち上がって顔を輝かせる妹を見つめるわたしは、笑って――いたのか。

例えばの話だけど

アネモネと姉でかけてるとかじゃないです。

例えばの話だけど

お姉ちゃんと妹のはなし。

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2014-12-28

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