FalleN GoD Ⅱ

FalleN GoD 6~10話です。

そこは町外れの廃墟の集まり、ヤクザ等の荒くれ者達が集まる場所。たまり場であった。
 たまり場付近の町外れには、他とは違う電柱。磁場発生器の組み込まれた電柱が立てられている。ここらに集まる者達がグループを組み、街へと侵入する可能性があるとの報告を受けて、ここに派遣された男が一人。昼のたまり場へと足を踏み入れた。

「ここか……」

 彼はボロボロになった家等を見上げそう呟いた。
 夜になると何かがでそうな廃墟を見渡し、彼は苦い顔をする。
 一人。彼から見て奥にあるガラスのない窓から、スナイパーライフルを構える者がいる。それをいち早く察知した男は気が付いていないフリをする。
 そして、小さな声で「いきなりかぁ?チィッ」と呟いた。
 男は二の腕に付けられた機械のスイッチを押す。
 その後、男が足で地面を力強く踏むと、それはなにか念動力(サイコキネシス)で持ち上げられたかのようにアスファルトが砕け、浮き上がった。
 だが、その浮き上がったアスファルトで彼が身の回りをガードした時にはもう、スナイパーから銃弾は放たれてしまったいた。
 スナイパーライフルから放たれた銃弾は、そのアスファルトに当たり滅速する。

 彼は魔術を使うことができる。

 この街では、科学的に人間の体内にある『魔力』(マナ)を自在に具現化、あるいは物理的衝動に置き換えるため、学校や施設などで開発が行われている。さまざまな機械を駆使し、この町で生まれたのは、

『魔術師』

 だが、その開発を行わなくとも、一の状態から『魔力』を自在に操ることができる者『天然術者』(クローサス)と開発され、いろいろな事を身体に施した者の2種類がある。
 彼が使っている機械はその補助であり、二つの魔術を使用する体質の彼には必要な物である。『魔術補助機』と呼ばれる。彼は二つの魔術を使用するので、その『魔力』配分が体質的に難しいため『魔術補助機』

 そして、彼が使う魔術「力面力与(パワーポイント)」は、物に力を加えることができる能力である。
 先程は足を通じて岩・コンクリートに浮力を与え、地面が持ち上がる。という現象だ。
 スナイパーライフルを手に持っていた者は、それが通じないことに気が付き、それを捨てて逃げ出す。
 彼は余裕だと思いながら辺りを見渡す。やはり人影がある。丸見えだった。足元にあった小石をポンとその人影に向かって蹴った。それは軽く蹴ったのか?と思わせるくらい早い、たとえるなら銃口から放たれた銃弾のように飛んでいった。それが肩に直撃した人影はそのまま後ろに倒れる。
 その人影が再び襲ってこないことを確認すると、そのまま彼は商店街のように並ぶ廃墟の道を進んでいく。
 途中、遠距離武器を持つ者に出くわしたが、それも「力面力与」の能力でアスファルトを浮遊させ身を守っていた。
 彼の名は天徒(あまと)。そして、魔術グループ「オリジン」のリーダーでもある。
 『オリジン』とは、この街で結成されたグループで、この街の不審な動きをする者、街を荒らす者、危険だと思われた者を排除するという役割のもと、魔術を駆使して戦うグループだ。
 彼はなんで俺がリーダーなんかやんねぇといけねぇんだ。などと戯言を口にしながら歩いていく。
 『オリジン』の主力メンバーは4人。そしてなぜか、天徒以外女しかいないというこの状況。
 普通の男子なら「ヤッホー!ハーレムだぜぃ!」などと叫んでいるところだろうが、天徒はそういう男ではない。そもそもそういうことに興味を示さない。そのため冷静を保っていた。だが、彼も一応高校生だ。男子が居てくれたほうが活動しやすかっただろうと、そう思っていたところだった。
 彼が廃墟の道の奥までたどり着くと、そこには待っていたかのように男が、豪華な椅子に座っていた。

「待っていたぞ。小僧」

 男は豪華な椅子から立ち上がり、懐から黒い武装するナックルを装備する。男はムキムキな体格で、一撃殴られただけでかなり遠くまで吹っ飛びそうな印象を与えた。

「いきなり戦う気満々じゃねぇか、おっさんよぉ」

 天徒も、「魔術補助機」に手を添え男を挑発する。彼は男の情報を回想する。
 奴は魔術を使用しておらず、ここら町外れのグループの長。大きな体格をしておりながらもスピードは早く、一撃ノックアウトも考えられる。

「何を言う小僧。派手に仲間を痛めつけておいて……」

 天徒が先ほど派手にやったのは全て男に知らされていたようだ。おろらく、途中見逃した奴が伝えたのだろう。奴はこちらの魔術の一つを知らされていた。その後も男は続ける。

「俺たちはここでやられるわけには行かないのだよ。うえが「龍の紋様の男」について探っている間はな」
 男は左手の甲を右手の人差し指で指差しながら天徒に言う。

「お前らも探っていたのか……それに、うえだと?」

「詳しいことはこれ以上はなせないな。お前にはここで死んでもらう」

 男は、手に武装したナックルで天徒に殴りかかろうとする。その迫力に天徒は一撃ノックアウトのビジョンを脳裏に浮かべる。だが、彼の『力面力与』の前にはその動きは遅いとしかいえなかった。

「遅い、遅いぞおっさん!」

 天徒は、ポケットに手を突っ込んだ状態で、右足を横に踏み出す。すると、その踏み出した右足からの跳躍は素早く、一瞬で男の背後に回りこむ。

「そうくると思ったよ。お前の能力、「力面力与」の能力効果も知っている!」

「あぁン?調子コいてんじゃねぇぞぉ!くそじじぃ!」

 天徒は右手で男の背中を殴ろうと振りかぶり、それを放った。「力面力与」の効果により、その殴撃の効力は2倍だ。彼が内心「決まった」と決め付けた。――――――だが、
 男は、懐にある機器のスイッチを押す。すると、周りを囲むように立てられた電柱……、磁場発生機の電源が入る。
 「魔術補助機」は外部からの魔力支援を協力する機械であり、あるネットワークでつながれている。それを磁場によって阻止されれば、協力は途絶える。
 そして、それが切れることにより、二つの魔術にまわされる筈だった魔力配分の動きが混乱し、体調を崩す。

「ウぐぅゥァ!?」

 天徒は心臓部を押さえひざから崩れる。体内で『魔力』が暴れる。魔力配分がバグった状態により、魔術を使用は愚か、今は立ち上がることもできず、話すことだけで精一杯だった。

「テメェ、何しやがった?」

「ふふ、はっはっは!ただここに磁場を流して、お前のそれの効力をなくしただけだ~」

 そういわれると天徒は左腕に装着された「魔術補助機」を確認する。電源のランプが消えている。男の言っていたことは本当だったらしい。

「ちくしょぉ……。クソがぁぁぁぁぁああ!!!!」

「終わりにしよう。これで――――――」

 天徒の側を通っていたソレは、男の肩に命中する。だが、男はそれの威力で吹っ飛ばされ、磁場発生機にあたり、倒れる。

「それでも、リーダー?双術師(デュアル)だから仕方ない部分もあるけど」

 ここに来て助けてくれた女が天徒にそう言いながら肩を貸してくれる。
 彼女は茶髪ロングのけっこうな美人で、『オリジン』の主力メンバーの一人。そして彼女の魔術、『術式』は雷型の属性だ。
 魔術の『術式』には種類があり、主に雷型・炎型・水型・氷型などの種類があり、その『術式』により使える魔術は異なる。彼女は雷型の『術式』のため、さっき男にはなったのは、まるで電気が槍のように突き刺さる、『電撃の槍』を放ったのだ。

「チッ。やつらは龍の紋様の男------獅龍について嗅ぎまわっているらしい。あと……、奴らにはまだ上がいるようだ」

 天徒も、女に肩を貸し立ち上がる。男の大きな腕に殴られた身体はわずかながらも軋みを感じていた。攻撃を受ける瞬間、身体にその拳が当たる瞬間に少量の攻撃力を反射させ、ダメージを減少させたが、やはり男の攻撃は重かった。

「そういえば、姫。琉花(るか)は天事書(てんじしょ)から何か手掛かりを見つけたと言っていたか?」

 天徒は姫と呼ばれる彼女に、「オリジン」のグループの者らしい名前、琉花という女性の人物名を口に出し、聞く。
 天事書とは、過去に悪魔と天使が出現し、悪魔は破壊。天使は加護の施しをした時代、888年に起きた出来事、悪魔・天使の出現方法などが記された文書である。

「そのこと。やはりあの子が関わっているそうよ」

 彼女は、「あの子」という不確定要素の詰まった者の名を出す。

「ふぅ。ならやっぱりアイツとは一戦交えなければいけないのか……」

「それと、天使は光の祝福。悪魔は闇の破壊鬼の効力を持つ〈翼〉を持っているのよ」

 天使の光の祝福の〈翼〉は、悪意を持つ心を浄化する光を放出する。悪魔の闇の破壊鬼の〈翼〉は、破壊の心を強化し、戦場での効力を発揮する。だが、心が蝕まれ、次第に「死」へと近付いていく。

「アイツに悪魔の翼を召還されたら……全てが終わる。俺等が下についていた事も、今まで調べてきたことも……」

 天徒は拳を強く握り締め前を見る。彼らは、悪魔を召還することができる者の下について、動いていた。だが、たまたま通りかかった『オリジン』のメンバーが上のリーダーの話を聞いてしまった。

『あいつ等は使い終わったら早々に排除する。ただの駒だよ』 と……。

「えぇ。それと、琉花はこんなことも言っていたわ」

 姫は天徒に肩を貸した状態で左手の甲を指す。それは龍の紋様が刻まれている場所と同じ部位を示していた。

「無……の紋様が刻まれた者もいるみたい。その男はそれの異能力に気が付いていないみたいだけど」

「ソイツの名前は……?」

「佐久間 蓮」

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蒼空等4人その男はあの場所を抜け、『追跡者』に見つからぬよう少々遠回りをしながら歩いていた。

「あぁ、そういえば僕の名前を教えてなかったよね。僕は武瑠。愁導胤武瑠(しゅうどういんたける)」

 彼は自分の名前を名乗るだけの簡単な自己紹介をし、そのまま続ける。

「それと、君らがさっき戦っていたのはやはり新型だね。今までの『追跡者』より装甲や移動速度など、一般的なパラメータが上昇している。奴らはあの『追跡者』をver.2と読んでいるらしい。」

 武瑠は自分の知っている知識を話出す。だが、4人は疑問に思っていた。なぜこの男はこんなにたくさんの情報を知っているのか。蒼空は何度も『追跡者』に出会っているが、あんなver.2に出会ったのは今までで初めてだった。そんな希少なのかもしれない存在について、なぜそんなことを知っているのか? だが、その疑問も次の彼の発言により消される。

「今君たち。なぜ僕がそんなにたくさんの情報を知っているか?そう思っただろう?」と彼は何もかもを知ったような口調で見事に彼らの疑問をあてた。そしてそのまま続ける。
「僕はあるグループと交流している。そして彼らの役割は、この街への不審な侵入者の拘束・聞き取り・および排除と、上の依頼というか指令をこなす。だが、もうそこも上への反逆心を持っているけどね。そうなったのはまぁ、僕の仕業だけども」

 そのグループの名は『プロテクト』。この街を統制している『大政主義者』の配下グループで、今は内に秘めた反抗心に活動している。だが逆らっているわけではない。影で、いつか反抗を行動に移そうと決めただけで、表では奴らの配下に付いた状態だ。

 話をしながら歩いている間に、瀬弩も復活し、いつの間にか武瑠の家に着いていた。

「さぁ、ここが僕の家だ。まぁ一人暮らしだから少し狭いかもしれないけど我慢してくれよ。あそこよりはマシだと思うから」

 そう言うと彼は後ろを振り向き歩き出す。「中に入っていいよ」そう言い残し。

「何処行くんだよ?」

 蒼空は率直に彼の行き先を問う。まさか彼は敵で此処にいる事を上に知らせようとしているのか?などという想像や思考を行う。

「『プロテクト』の基地に行ってくるよ。君たちは家で休んでいて」

 今日は土曜日で休日だ。そして今の時間はもう午後6時。小学生などはもう家で休んでいる時間帯だ。
 暗い夜道を一人。武瑠は闇へと消えていった。


「やぁ、凪覇(なぎは)。なんか指令を受けてはいないかい?」

 武瑠が来ているのは、『プロテクト』の地下本部。ここは『戦闘強化ルーム』、『指令ネットワークルーム』。大きな部屋はこの二つに分かれた基地で、彼は今『指令ネットワークルーム』に来ていた。
 そして彼が呼んだ名前の男は凪覇(なぎは)、萩根凪覇(はぎねなぎは)で、『プロテクト』のリーダーで、かなり上級の魔術師だ。

「武瑠。あぁ、来ているよ。零奈(れいな)例のやつを画面に移せ」

 零奈と呼ばれた女性はPCを操作して大きな画面、スクリーンに『例のやつ』と呼ばれたものを映し出す。
 まずはじめに映ったのは人間の死体。そしてその側に男が一人立っている。男は片手に何かを持っている。なにか、携帯のような。おそらく通信するため機械だろうと想像できる。男の口はなにかを話しているようだった。その現場は街の少しはずれにある自然公園だった。さらに夜だったため、人通りが少ない場所だ。
 
「これにおかしなところがあるんだが、気がつかないか?」

 凪覇は画面の一部を指さす。彼が指さした場所、死体の手の部分だった――――――はずだった。

「な……なんだ?コレ。手が消えている……」

 その死体の手がなにかデータのように消えていくように見えた。画像のため、それが本当にそうなのかは分からない。

「俺らが分析する限りでは、それはおそらく『座標移動』(ムーブテレポート)だと思うんだ。おそらくこの男の仲間か何かだろう。どこか遠くから死体を回収するためだと思う」

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日曜日。とある一人の高校生が蒸し暑い、窓を見れば陽炎が見えるほどの熱気に包まれた部屋で一人、学校から出された宿題と向き合っていた。少年の額から汗が流れる。彼は、部屋の暑さと宿題の問題を解けない事に苛立っていた。そして遂に、少年の頭で何かがプツンと切れる音が聞こえた。

「うがぁぁぁあ!!!こんなモンわかんねぇよ!俺術式使いこなせねぇし!ちくしょぉ!」

 そう嘆いた後に宿題を放り投げる。もう11時半だ。

「もうこんな時間だし、どっかのレストランでも行って飯でも食うかな。うん、それがいい」

 彼は蒸し暑い部屋を何とかしようと、窓を開け、風通りのいいようにしたあと、財布を持ち靴を履く。そしてドアを開け外へとでる。
 風が気持ちよかった。太陽からは紫外線がギンギンに照りつける中、風が当たり丁度よい心地だった。
 彼の寮は2階にあったので、階段を下りてそのまま行き着けのレストランへと向かって歩きだした。


 もう一人の高校生も、空腹に耐え切れずレストランへと向かっていた。その男は自在に風や空気を操ることができる『空力使い』の蒼空だった。彼は腹をさすりながらトボトボ歩いている。
 だが、そんな彼は周辺の空気の異変に気が付く。
 辺りに誰もいない。人が一人も居ないのだ。

「な……オイ。また昼間だぞ!?なんで誰もいねぇんだよ!」そう彼が呟いた後、急に後ろからさっきを感じ取った。「なっ!?」
 危険を察知し、後ろへ回避する。彼の目に入ったのは、軽く青みがかった髪、紺色の髪をした男だった。明らかにその男からさっきが放たれている。

「テメェ、一体何モンだ?」

「少なくとも、この町の人間ではないとだけ言っておこう。まぁ『プロテクト』の連中が何故動かなかったのかは知らないがな」

 蒼空は『プロテクト』という言葉を聞いて回想する。たしか『プロテクト』はこの街の侵入者の取締役のようなものだ。なのになぜそれをしなかったのか?と。

「俺はお前みたいな『神』に用があってきたんだ」 男は蒼空を指差しそう話す。「用とは何だって?それはな――――――死んでもらいにきたんだよ」

 男はそういうと右手を蒼空へと向け呟いた「水よ……」
 男の発言と同時に蒼空の身体を丸ごと水で囲んでしまう。

「ぐぼぉぁ!?」

 水の中では息をすることはできない。蒼空をこのまま殺そうと男は考えていた。

「自分を殺した奴の名前くらい知っておきたいよな。俺の名はレイトって言うんだ。そして『神』でもある。よろしく……っと、これから死ぬんだからよろしくなんて挨拶いらないか」

FalleN GoD Ⅱ

FalleN GoD Ⅱ

  • 小説
  • 短編
  • ファンタジー
  • アクション
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2012-02-11

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