目覚め

目覚め

「目を開けなさい。」

低いはっきりとした男の声で、あなたは目覚めた。

一本の蝋燭の明かりだけが部屋を照らしている。火が揺れると空間まで波打っているかのように感じる。目を凝らしても、彼の輪郭しか捉えられない。あなたは、その男の視線が合うのを逃れるように、視界を下げていく。すると、彼が手に縄を持っていること、そしてその縄があなたの体に繋がっていることに気づいた。

あなたは、体を動かすことさえ忘れていたが、どうやら手を後ろに組む格好で拘束され、床に横たわらされているようだった。

「わかっているね。ーー」

状況の把握に気を取られていると、不意に二度目の声が聞こえ、あなたはびくついた。この部屋は空調の音も聞こえないほどの静寂である。男の声は、まるであなたの耳の数センチメートル隣で発せられているかのようだ。

「再び眠るまで、おまえは私の玩具だ。」

理不尽で一方的な発言。しかし、正常に恐怖できない。あなたは、思考が鈍っていることを自覚していた。

「返事をしなさい。」

そっと、あなたの足の先を男は踏みつける。裸の足と足とが触れ合う。加重が線形に増えていくーー。痛みの直前で止まる。

この狭い空間には、あなたと、縄を引く男以外の存在は無いうえに、半分以上は男の欲望で満たされていることを、あなたは覚えた。

「返事は。」

男の右手の縄がすっと高く上がると、あなたの背の手首がグンと引かれる。と、同時にあなたは着衣の上半身に圧迫を感じた。

手首が捻れる、

二の腕が締まる、

肩が食い込む。


女性の象徴である乳房の上側が歪む、

乳房の下側が潰される。

乳房のくびれに沿って縄が擦れ、わき腹、背中に向かう。

息が少し苦しい。


足は依然、昆虫標本のピンを止めるように、踏みつけられている。男の体温を感じる。


あなたは、返事ができなかったことを忘れていた。

気づくと、あなたを見下した男は、腕を伸ばしーー。

目覚め

目覚め

愚かな貴女へ

  • 小説
  • 掌編
  • 青年向け
更新日
登録日
2014-12-24

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