「自由の女神」に誘われて。
ハドソン川沿いにあるリバティ・ステート・パーク。ニューヨークの自由の女神像を陸地から眺めるなら、この公園の一角からが最も女神様に近づけて、最も女神様が大きく見える。
今日もハドソン川沿いの冷たい風が吹き付ける寒い一日だったが、僕は女神様の見えるハドソン川の河口に向かって川沿いの遊歩道を歩いた。僕の歩く左手には、マンハッタンのビル群が川を挟んでパノラマ状に広がっている。僕の視界のフォーカスは、初めはエンパイア・ステート・ビルディングから南へ歩くにしたがってグラウンド・ゼロ辺りへと移っていく。そして、マンハッタンの南端からハドソン川の河口の女神様へと焦点を合わせていくのだ。
女神様は今日もでーんと沖に向かって立っていらした。右手には純金で作られた炎の大きなたいまつを空高く掲げておられる。その姿が目に入ってきた瞬間、いつもある映画のラスト・シーンが目に浮かぶ。それは、僕がまだ日本に住んでいた小学生の頃にテレビで観た「猿の惑星」第一作。チャールトン・ヘストン演じる主役のテイラーが、「ここは地球だったのか?」と大きなたいまつを掲げる自由の女神像を発見して思うシーンだ。
女神様が大きく見える遊歩道の先端に到着した。僕の視界の真ん中には、女神様の逞しく大きなヒップの後姿。それは、世界中からニューヨークを訪れる観光客がイメージするアメリカの象徴というよりも、僕にとっては母性を感じる癒しの象徴だ。
「自由の女神」に誘われて。