青春フォーティーンズ
この作品は主人公の目線になって見ていただけば幸いです
14の物語
アナタハコノセカイニナニカヲノコシマシタカ?
とある少年と少女
キーンコーンカーンコーン
「誠、ねぇ誠ってば」
あぁ僕を呼ぶ声がする
さっきはひどい夢をみた…って
「授業は!」
「まったく…先生言ってたよ『白石は1だな』って」
「まったく…白石言ってたよ『明美は1だな』って」
そう僕の前にいるこの人こそテストでワースト10をたたき出した小野寺明美である
「明美は進学大丈夫なのかよ」
「うん私、私立からもう声かかってるから」
そうだ明美は陸上部のエースで100mを12・4秒で走るらしい
ゲームだったら、知力1身体能力10ってとこだ
「推薦とれなかったらどうすんだよ」
明美がニヤリと笑った
「じゃあ勉強会やろっ?」
「はいはい、今度はどこで勉強会?」
「クスッ、ボウリング場で社会勉強!」
今は中2の12月。大きな休みの前の毎回のパターンだ
「社会勉強なんて知ってたんだ」
「なめてんの?」
「い、いいえ」
そしてたまに怖い
「じゃ、じゃあ漢字書いてみてよ」
僕は手のひらを差し出した
「オイオイ、今日も教室がお熱いですね」
「そんなんじゃねーよ」
別に好きな訳じゃない、言われたことにむかついたんだ。たぶん
終わりの始まり
この時まではまだ歯車は回っていた
後にどんな未来があるのかも知らずに…
約束の日はクリスマス=明日
明美はロマンチストで僕が何を言っても『この日がいい』って聞かなかった
本当ならこういう日に告るんだろうな~
好きなのか?好きならば?
まあいい、明日すべて解ることだ
僕はそこで眠りに落ちた
そして、明美は来なかった
それも、僕たちの物語の始まりにすぎなかった
まったく…風邪でもひいたら連絡くれればいいのに
僕は明美に電話をかけた
「明美!お前どうしたんだよ」
だが、電話に出たのは明美のお母さんだった
'あなたは誠君?'
「あっハイ」
'今すぐ病院にきて!明美が!'
そして歯車が壊れ始めた
静かな姫
なんで明美が?
今日やっと解ったのに
いや、明美の事だ、骨折でもしたんだろ
凍える空気をかき分け病院へ駆け込んだ
「明美!」
「誠、来てくれたんだ」
「どうしたんだ」
「ノロウイルスにかかっちゃって」
なんて事はなく、そこにはいつも活発な姿からは想像出来ないほど静かな明美が居た
「誠君」
明美のお母さんだ。授業参観で話しかけられたのでよく覚えている
「こんにちは。あの…明美は?」
「肝臓癌だって…」
僕は絶句した。つい5日前までなんともなかったのに…
いや、明美は何かサインを出していたかもしれない
「明美、ごめん」
情けなかった。なんでも知ってるつもりだった
そう思うと涙がこぼれた
「小野寺さん」
病院の先生だ
「話があるんですが…」
「ここでかまいませんよ」
えっ?
「いいんですか?」
「誠君も聞いていったらどう?」
明美のお母さんの目は真剣そのものだった
何かを覚悟しているようにも見えた
「それではここで…小野寺明美さんは…」
冷酷な真実
「残念ですが余命半年と診断結果が出ました」
僕はその結果に安堵した
と、同時に心が凍り付いた
病室が沈黙に包まれる中医者は続けた
「一般的な治療法は、抗癌剤などを投与する科学療法ですが、激しい副作用のおそれがあるので本人さえよければ代替治療も出来ますが」
代替治療というのは薬を減らそう、痛みを緩和させようといったもので、癌の進行を遅らせようという目的の治療らしい
ただ、医者の事務的な声がとても冷たく僕たちに現実を告げた
そのとき
「誠…」
僕は反射的に後ろを振り向いた
「明美っ!」
「私やるよ」
なんだ聞いてたのか。泣いてたのも!?
「ホントにいいの?癌は治らないんだよ?」
お母さんです↑
「うん、だって誠とまたどこか行けるでしょ」
こういう時にも元気づけられるなんて…
僕はどうすれば…
「大丈夫だー!」
しまったつい思ったことが…みんなの視線が…
「うん、そうだね!絶対やりきる」
満面の笑みの明美、ベットの上にいるのにいつもよりかわいく見えた
そうかこれは夢だ。そうも思えてきた
再びとある少年と少女
それからというもの何事もなかったかのように過ぎていった
そして再び教室にて
「誠泣いてたでしょ」
明美は自宅療養ということで運動していけないが退院を許された
それにしてもこれはまずい
「なんで起きなかったんだよ」
「だって起きようと思ったら誠いるし泣いてるもん」
反撃だ!
「あっれ~僕を呼んだのは誰だっけ?明美のお母さんに聞いたよ~」
「うるさい!だまれ!」
明美顔真っ赤(笑)
「図星なんだ」
「もう知らない」
「ごめんって」
「許してあげる。けどジュース一本ね!」
「分かったよ」
あれっ?何で僕が許されてんの?
「高校進学どうすんだよ」
一瞬明美の顔が曇った
「あ、ワリぃ」
「いいの、いいの」
僕のバカが
「明美、勉強会やらないか?」
明美は一瞬驚いた表情をして
「うん!じゃあどこがいい?」
「じゃあいっせ~の~で」
「ボウリング場!」
「…で言うんだよ。それにしても明美運動できないだろ?」
「でも行くのっ!」
こういうときの決定権は絶対だ
そして穏やかな日々が3ヶ月ほど続いたある日
君に伝えたい
明美はまた入院する事になった
今度はもっとひどかった
「もういいよ…精一杯やったって」
なに言ってんだ明美、まだやっていないことたくさんあるだろ
「なに諦めてんだよ!約束しただろ『絶対やりきる』って」
オイオイなに言ってんだ、無責任すぎだろ
一番きついのは明美なのに…それは分かってるけど…
「ごめん。無責任だよね、じゃあこれだけ…僕は明美が好きだ。だからつきあって欲しい」
自分を明美と関係を持つことによって正当化しようとしてたのかもしれない。けれど、これはずっと伝えようとしていたことでもあった
ところが明美の反応は
「えっ私たちつきあってたんじゃないの?」
こんなシリアスな展開でそんなこと言われると笑えてきた
「ハハハ…」
まあ苦笑いだが
「だから僕がいるから諦めんな」
「うん、そうだね」
「また勉強会やるぞ」
「うん、そうだね」
「帰ったらジュース一本だぞ」
「それは違うよ」
それは違うらしい
アナタハコノセカイニナニカヲノコシマシタカ?
セイイッパイアラガイマシタカ?
僕と明美の物語は何年も、何年も、ずっとずっと続くと思ってた
なぜなら、また明美も元気を取り戻し
勉強会?も出来るようになっていた
終焉の歯車
「明美」
「誠!来てくれたんだ~」
「当たり前だろ?今日は明美の誕生日なんだから」
明美はあの発作の後、当然の様に入院した
「これ、プレゼント」
「腕時計?」
「うん、似合うかなって」
今日は薄い茶色の腕時計を雑貨屋さんから買ってきた
(去年は誕生日をすっぽかした前科があるので奮発した)
「えっ、えっと、これ、明美に似合うかなと思って買ったんだけど」
「誠、何あわててんの?」
「僕が選んだの気に入らなかったかな?って思って」
「えっ誠が選んだの?センスが良かったから、私の知らない所で浮気でもしてるんじゃないか?って」
ほめられてんのかよく分からん
というかプレゼントの感想よりそれってどういうことだよ
「そんなわけないだろ」
「本当~?」
「じゃあ証明してやるよ」
自分で言ったのも何だけどこのパターンは…
もういいや!なるようになれ!
僕はベットで寝ている明美に覆いかぶさるようにkissをした
下手くそな短い短いキスだった
「誠がキスする勇気があるなんて知らなかったよ」
「うるせー勢いだよ勢い」
「あ~あ誠と一生一緒にいれたらな~」
「当たり前だ」
けれど明美はもう目を覚ます事はなかった
君のいない世界にて
余命半年
当たり前と言ったら当たり前だけどあの明美が…
涙は出なかった、むしろ心は落ち着いていて「どうせまた起きるだろう」と言う気持ちが大きかった
それでも頭では理解しようとして…
そんな時明美のベットから一冊のノートを見つけた
表紙には『誠へ』と『誰かに見せたら呪ってやる』の文字
僕はリアルだなと思いながらもノートを開いた
中には…
『誠がこれを見てるって事は私死んじゃったんだね
また君と勉強したかったのにな…
あっ誠今落ち込んでるでしょ~
当たり前だよね「一生一緒」って言ってkissまでしたんだもんね、あの下手なkiss(笑)
あっそうだ私が国語得意って覚えてる?
私、死ぬ気なかったから見せる気なかったんだけど、詩書いたから
じゃあね』
はっ?詩?あのバカが?まあ国語だけは僕といい勝負だったが…
ってか泣くポイントがあっても、ちょくちょくおちょくって来るから泣けない(まぁちょっと目が熱くなったが)
じゃあ自慢の詩を見ますか
そしてページをめくった
題名は『青春フォーティーン』
青春フォーティーン
『あなたはこの世界に何かを残しましたか?
精一杯あらがいましたか?
大切な人は見つけましたか?
やがて私と君の物語が終わるとき
私の声は届かない
君の物語が始まるとき
そこにはもう私はいない
なんで?私にはまだやることがあるのに
もう君のいる時間に戻ることは出来ない
でも大丈夫止まったままの私の時を
いつか君は進めてくれるから
君と私の青春は私がずっと忘れないから
君は前だけ向いて進め!
この14の物語がきっと君を未来へ導いてくれるから』
僕は何も言わず
だだ君のいない未来へ旅だった
青春フォーティーンズ
最後までご覧頂きありがとうございました
今回出した『青春フォーティーンズ』
これが僕の最初の作品なのですがいかがだったでしょうか
今回の作品はナレーションも主人公目線で書いてみました
なるべくスピーディーな話の展開を心がけました
次回はもうちょっと長いファンタジー系を書きたいかな…と
まだまだ未熟ですが精一杯頑張ります