FalleN GoD Ⅰ
FalleN GoD 1~5話までを一つにまとめました。
まだこれから先にも出す、(この話はⅠになっているから次はⅡで)とおもうので、よろしければ呼んでいただければうれしいです。感想などアドバイスなどももらえると更にうれしいです!
この世には、ただ平凡に人間として生まれてくる者とそうでない者がいる。普通に学校へ行き、大人になって仕事に就き、人生を楽しみながら生涯を終える者。もう一つは、存在しているだけで大いなる宿命に日々を追われる者。
ここは二つ目の世界。「Another world」とでも呼ばれるだろう。そしてこのAWにいるのは「神」。
彼らが自分の宿命を果たし、生き残ることができるか、それとも…。
一人。男が息を上げながら走っている。正確に言えば何者かから逃げている。
彼の名は玖珂裂蒼空(くがさきそら)。彼はこの世界に住む「神」の一人である。
髪は紺色で肩に軽くかかるくらいの長髪。目の色も髪と同様澄んだ紺色。身長も170近くある。
彼らはその宿命を果たすため、創造神シュペリアンスに「神」の称号と「能力」を与えられる。彼の能力は 「空力使い」(エアロハンダー)。空気や風を自在に操ることができる。主に竜巻を作り出したり、空気の圧縮砲を打ち出したりすることが可能だ。
「神」はこの街に集められた。
この街は世界で最も科学技術や商業・全てが発達した街で、人口200万人程の大規模さだ。
「科学都市」「化学都市」などと呼ばれていた。
だが、彼ら「神」はこの街で追われていた。
「追跡者」。彼らはこの街のどこかで大量生産されている。それは全て神を捕まえるため。
「あぁー!あんな所で能力披露なんてしてなければよかったー!」
彼が言っているのは、路上で3つの野球ボールを「風」に乗せて浮かせるという事をしていた。周りの人たちはおそらくマジックだと思ってみていただろうが、そんなことをしている内に追跡者が現れ、急いでやめて逃げてきた。そして今に至る。
だが、神とはいえ彼にも体力というものがある。いつまでも逃げていられるわけがない。そしてもし神に体力が無限大にあるならば「追跡者」などという人造人間は造らない。
「つーかもう無理!」
そう言うと、蒼空は立ち止まり後ろを振り向く。そこには6体の「追跡者」が追いかけてきていた。
全体的に黒色の装備。黒色のシルクハットをかぶっている。
こうなると「神」は戦って逃れるしかない。だが、それは「追跡者」を殺すということである。もちろん蒼空は殺したいはずなんてない。そのため始めは逃げる。もし撒けなかったら殺すしかない。
「はぁ。これで6体目になるのか……」
そういうと彼は右手の手のひらに目に見える小さな空気の玉を作り出す。原理は、空気・風を一部分に圧縮し、大きくしたものを飛ばす。名称は「空裂砲」(エアブラスト)。
その空気の玉は見る見るうちに大きくなり、蒼空と同じくらいの大きさになる。
「すいませんでした」
彼はそう言うと、手のひらに作られた空裂砲を2体に向かい放った。
一瞬だ。
一瞬でそれは追跡者にぶつかり弾けた。
『追跡者』は10mほど吹っ飛び再び立ち上がることはなかった。
「今日も殺ってしまった……。俺たちは……どうすればいいんだよ?」
そう嘆いている内に『追跡者』は消滅していた。
追跡者の体内には『消失原石』という人工の原石が埋め込まれている。それは埋め込まれたものの生命を感じ取れなくなったときに勝手に消失してくれるという代物だ。そのため、死体の回収は必要ない。
彼は2体とも消失したのを確認し、ゆっくりと歩き始めた。一日にそう何度も『追跡者』に遭遇したことはないため、自己の判断でもう会うことはないだろうと決め付けた。
彼は内心思っていた。俺達はいつまで逃げ続けなければならないんだ?俺達はいつまで殺しをしなければならないのか?……なぜ俺達は狙われているのか?
まだ彼らには分からない。だがいずれ分かることになるだろう。
そして、歩き続ける事15分。彼は町外れの廃墟にたどり着く。いつもの事のように地面にあった取っ手を掴み、それを開く。そこには地下へと続く階段があった。
彼は地下へと続く階段をゆっくり下りていった。
一番下までたどり着き、暗証番号を入力するとドアは開いた。
そこには人が居座ることが可能そうなものがそろっていた。椅子にテーブル、そしてその椅子に座っている3人の人間……『神』がいた。
「おそかったじゃねぇか? どこほっつき歩いてたんだ?」
そう言ったのは赤髪の男、参月璃尾(ざんげつりお)。能力は『豪火炎』(ブレイズ・ブレイズ)。あらゆる炎・熱量を操ることができる。身体の回りに高温の熱を纏うことにより、鉄や鋼などの熱・炎で溶けるものを自分に届く前に消失させることができる。
二人目。茶髪ロングの女、焔美華(ほむらみか)。能力は『物理強化』(プラスパワー)。身体の部位を一時的に強化することができる。脚力強化をして跳ぶ事により浮遊時間を延ばすことも可能。
三人目。片目眼帯黒髪の男、神裂瀬弩(かんざきせど)。能力は特殊で『瞬鬼』(バースト)。彼は念動力で作られた弾丸を銃、『神淵』で発射する。そして『神淵』は『瞬鬼』の効力で銃を放つことができるようになっている。
「路上で能力披露していたら追跡者にばれちゃってさ。急いで逃げてきたけど、殺してしまった」
下を向いたまま彼はそう呟く。彼らは逃げるしかない。『追跡者』を大量生産している奴の計画を阻止し、『追跡者』がいなくなるまで。彼らは『追跡者』を生産させているのは、この街の上の者「大政主義者」のやつらだと踏んでいる。なぜか?それはあんなものを大量生産するには広大な土地が必要だ。地下でやっているというのも考えられるが、上の許しを得ないとそんなことはムリであろう。
「まぁ、上を調べるしかないんだよ。やっぱり」
蒼空は今やるべきことを考えた。まず一つ……疲れたから腹ごしらえ。二つ……寝る。
まず一つ目のやるべきことを果たすため、彼はポーチの中から「イチゴパン」を取り出し頬張り始める。
「あ。またそれね?アンタ甘い物ばかり食べてると太るわよ?はい。それ没収」
と言いながら美華は手を差し出す。だがその手に「イチゴパン」が乗ることはなかった。
「やだ!この前も没収されたけど、美華こっそり食べてるの見たもん!」
とやんちゃな声を出しながら「イチゴパン」を必死に守りながら蒼空はそういった。
彼女は「バレてた?」と周りに聞こえないように呟いた。
「い…いや食べてないよ? …いや食べました。はい。でも賞味期限が切れそうでもったいなかったからなんだよ?」
彼女はあせってそんな言い訳をするが、そんなのは無駄だった。
「結局食べたんじゃん」
「よくそんな甘い物食べられるな?俺はムリだ……」
蒼空は満足そうに微笑みながらイチゴパンを頬張った。
彼は甘い物がとても好きだった。甘い物が好きなため苦いものなど食べる気にならないほどだった。
そしてその彼をじっと見つめる一人の女性がいた。いや、正確に言えば彼が頬張っているイチゴパンを見ている。その顔には不機嫌そうな表情が浮かんでいた。
「あんあお?あいあおんんあんおあお?」 (なんだよ?何か文句あんのかよ?)
蒼空はイチゴパンをじっと見つめる美華を問いただす。だが、口に物が入った状態でしゃべっても何を言っているか分からないため、美華には通じなかった。
「…………うだい」
「なんだって~?」
「ちょっと頂戴!」
彼女は顔を赤くしながら、いや隠しながらそう言った。なぜか?それはさっき彼女は自分で「イチゴパン」なんて好きじゃない。 と言ってしまったのだ。
「なんだよ~最初から言えば――――――」
ドゴォォォォォォオン!
彼が発した声は突然の爆発音によってかき消された。そしてドアの木の破片が飛び散ってくるため、彼らは顔を庇いながら煙が舞うドアがあった場所をみる。
今は視界はよくない。煙の奥に見えるのは体つきのいい男二人の姿。シルクハットの帽子をかぶっているのがシルエットで見えた。
「まさか!?蒼空、テメェ!」
璃尾は焦った口調で蒼空の名を叫んだ。彼はおそらく蒼空が遭遇した追跡者をしとめ切れていなかったと考えたのだ。だが、彼はしとめた。目の前で「消失原石」によって消滅していったのだから。
瀬弩は念動力で作られた弾丸を『神淵』に装填し『瞬鬼』の能力で撃ち放った。彼の念動弾の強さは、強く創造することによって変わる。彼は専制ばいいと思い、攻撃力の低い不安定な弾丸を撃った。
だが、その弾は『追跡者』の身体あたるが全くダメージを与えられなかった。
「俺じゃない!それと、瀬弩の弾丸が通じない!?」
瀬弩は先制するだけといえど、少しはダメージを与えるつもりで念動弾を撃ち放った。それなのにその弾丸は『追跡者』の装甲にあたり弾けた。
今までの『追跡者』と違う?という疑問を覚えながら無口な瀬弩が始めて叫んだ。
「コイツ等は今までのやつらと違う!装甲が硬くなっている!」
装甲もそうなのだが、やつらの肉体自体硬く作られていた。
瀬弩の叫び声を聞き、3人は緊張感により額から汗が流れる。
「今までと違う?新作か?」
璃尾はそんな戯言を発しながらも発火を始める。彼は両手を2体の『追跡者』に向けると、そこから炎の弾が発火、放火された。摂氏3000度ほどある弾は『追跡者』の装甲に当たる。さすがの装甲でも璃尾の炎の前では無力に等しく、あたった所が溶けて中が見える状態となる。
「これなら!」
璃尾はその炎弾を撃ち続ける。だが、2体の『追跡者』はそれをものともせずかわしてしまう。
「ちっ、蒼空あれだ!」
璃尾がそうでいる間に美華は脚力強化をし『追跡者』に接近していた。その後、足に装着された『刃靴』(ブレード)で『追跡者』の後頭部を蹴りつけた。脚力強化されているのでダメージも2倍与えられる。
さすがにその蹴りは通じたのか、後頭部を蹴られ身体がフラつく。
「美華、よけて!」
蒼空の叫び声が耳に入り、美華は緊急回避をする。
彼の両手には圧縮された空気の塊があった。だが、それは大きくはなく、手のひらを覆いつくすほどのものだった。それを両手に持ち、一体に二つを放った。
『空裂砲』小型ver.は『追跡者』に向かってまっすぐに飛んで行き、それがあたった身体は壁にぶつかり食い込むほどだった。そして、その追跡者は動きが停止した。
「悪いが、とどめはささせてもらう」
璃尾が炎弾を一発『追跡者』の頭に放つ。そして完全に動きが止まり、『消失原石』によりその身体は消えて言った。
「危ねぇ、璃尾!」
璃尾がとどめをさしているうちに『追跡者』は璃尾の方へと向かってしまった。
璃尾に向けて振り上げられた腕はまっすぐに彼に向かって振るわれてきた。
彼はとっさにそれに気が付き回避するが、軽く身体にかすってしまい、その重量感あふれる攻撃によって吹っ飛ばされてしまう。
「大丈夫か!?くそぉ!」
蒼空はもう一度『空裂砲』を作り上げようとするが、そこに『追跡者』が攻撃体制で近寄ってきていた。距離的にも『空裂砲』を作り上げる時間もなかった。
「ヤバッ!」
彼は側面に跳んで奴の攻撃を回避する。
瀬弩はゆっくりと片目の眼帯をはずす。その目は普通の眼であって、傷などしているようには見えなかった。彼曰く、これは『押さえ込むため』の物であるらしい。
「はハッ!後一体追跡者残ってるじゃねぇか!蒼空。こいつは俺がもらうぜ!」
そう言ったのは瀬弩だった。眼帯を取るとまるで性格が変わる。まさにこれが二重人格。
彼の能力、『瞬鬼』は特殊であり、眼帯モードの瀬弩が使うとき、それは念動力とそれで作られたものを瞬速で加速させ飛ばす能力。
眼帯はずした時の瀬弩が使う『瞬鬼』は、移動速度の加速と、腕や足などを振るうことにより、真空刃を放つことができる。だがその能力を使う際、なぜか背中から6本を『角』が生えてくるという症状が起きる。
瀬弩が言い放ったあと、『瞬鬼』の効力、移動速度上昇によって『追跡者』の側まで一瞬で動いた。
そして、その足で腰部分を蹴る。そして足が蹴られたことにより発生した真空刃の2連続の攻撃が与えられた。
それによって『追跡者』の身体はフラつく。
「……ラスト」
そういうと『追跡者』から離れ、そこから真空刃を放つ。ふらついて交わすことのできない状態の『追跡者』にその真空刃が当たり、上半身と下半身で真っ二つに分かれた。
「いいぜぇ、瀬弩。俺はもう降りる」
もう一人の瀬弩はそういうと眼帯をつける。この状態か本体にかなり疲労がたまるらしい。そのまま瀬弩の身体はひざから崩れ落ちた。
「よくやった。裏瀬弩」
彼等は襲撃してきた『追跡者』を撃墜し、なんとか事態を切り抜けた。といっても2体目は『裏瀬弩』が一瞬で倒してくれたというのもあるのだが。
隠れ家の中は砕けた木のテーブルの破片やら、椅子の背もたれなど、全てが破壊され転がっていた。何者か強盗でも入ったのか?と思わせるほどの光景が広がっていた。
瀬弩は『瞬鬼』の副作用のようなもので気を失ってしまっている。彼を移動させるために蒼空と璃尾は彼に肩を貸す。
「なんか瀬弩、雰囲気変わるよな。眼帯はずした瞬間。あれがまさに二重人格ってやつだよな?」
蒼空は瀬弩の顔をチラッと見る。眼帯をしている状態のときは静かで口が少ないが、はずしたら性格がガラッと変わる。破壊的で口調も荒い。そして何より彼の能力『瞬鬼』は、例えば中指をでこピンをする時のように弾いたとする。すると、普通ならば少しの風を切るだけだが、彼の能力ではその切られた風が真空刃になり真っ直ぐに飛んでいくというもの。もう一つは『移動速度上昇』。名の通り、移動速度が上昇する。
二重人格であり、能力も二種。彼は特別だった。何故だか分からないが、二重人格だと言うことに『能力』そのものが呼応したのだろうか?その本質は分からないが、他の『神』とは違うことだけは確かだった。
この、疲労が溜まって気を失うっていうデメリットさえなければ最強なんじゃないか?と思いながら蒼空は瀬弩のことを見ていた。
「んで、これから何処行く?ここが居やすかったからここ以上にいいところは思いつかないんだけどな。まぁこの街も広いからまぁ……なんとかなるだろうが」
璃尾は曖昧なことを言い放つ。だが逆にこの広い街だからこそ見つからない場所というものもある。
それか、『神』を狙っているのは『追跡者』だ。それさえ遮る事さえできればとこでもいいのだ。
彼等は今路頭に迷ってしまった。そして、考えるだけといえど、ここにいるだけでいつ『追跡者』に襲われるかも分からない。蒼空は今日一日4体との戦闘、他の3人は2体との戦闘のせいでかなり疲労が溜まってきている。次遭遇してしまえばもう逃げ切ることは愚か、倒すことなどで気はしないだろう状態に追い込まれていた。
更に瀬弩は気を失っている。往復ビンタで無理に起こすこともできない。彼を庇いながら戦闘するだけでかなりやりずらい状況になる。
「ん?誰か……来た……」
美華は入り口を指差す。その影は『追跡者』の体格ではなかった。細い体格で、絶対『追跡者』のソレではないと確信した後、璃尾はその者に声をかける。
「……誰だ!」
「待ってよ、僕は敵じゃない。君たちの味方だよ。それと、行く場所がないなら僕のところに来るかい?」
FalleN GoD Ⅰ