【掌編】00-Because I love you

 青い大きな瞳がこちらを向く。
 ふわふわの金髪がさらりと揺れる。
 それだけで、言葉が出なくなる。
 ああ、なんで出てこないんだ。
 なんで、言葉の壁はこんなに分厚いんだ。
 ほら、思い出せ。簡単じゃないか。

 ―貴女に会いたい、貴女が好きだから―

 いつもの言葉なら、こんなに単純じゃないか。
 何故思い出せないんだ。
 こんなことなら、蝶ネクタイのあの教師の言う事を少しはまともに聞くべきだった。
「あ……あ……」
 ほら、あれだ。
 よく、偶に歌詞とかで聴くじゃないか。
 この際、文法なんて気にしていられるもんか。
「あい……あいみしゅー!」
 そうだ、これだ。
 ああ、でもちょっと噛んだ!
 でも、いいんだ問題無い。
 言葉じゃ無くて心だって、あの七三分けの教師も言ってるじゃないか。
 気にするな、ほら次だ。
 あれだ。「…………だから」だ。
「び…………びかー!!」
 違う、何か違う!
 これじゃまるで怒ったピ○チュウだ!
 あの子の青い目も丸くなったぞ!
 ええい、でもいいんだ。
 言葉じゃない心だ!って金縁眼鏡の教師も言ってるんだ!
 さぁ、最後の言葉だ。
 こればっかりは、英語のできるできないなんて関係ない。
 誰でも知ってる、言い慣れた言葉じゃないか。
 あちこちで聴くあれなんだ!
 ほら、言ってしまえ。
 あの子の青い目が違うところを見る前に!
「あい、らぶゆー!!」
 …………言ってしまった。
 ああ、どうなるんだ。
 なんか、脳裏で薔薇を咥えた教師がブイサインとかしているし!
 せめて、せめてこの青い瞳を笑わせられたなら……


 ――I miss you Because I love you――

【掌編】00-Because I love you

【掌編】00-Because I love you

  • 小説
  • 掌編
  • 恋愛
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2014-12-19

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