僕の好きな人。
彼女
彼女が27歳だという事を、僕は今まで知らなかった。
知り合って半年。僕より年上なのはわかっていたけど、まさか7歳も差があるなんて。
彼女は小さい。150センチもないだろう。
体型も痩せてもいないし、太ってもいない。
茶色のボブショートで毛先が内側にくるんっと丸まっている。
洋服だって、ふわっとしているワンピースをよく着ている。
お人形さんみたいな彼女は、柔らかい雰囲気で思わず抱きしめたくなってしまう。
僕は池袋の大学に通う三年生だ。
どこにでもいる、普通の大学生。
見た目は良くない。
丸顔にメガネ。大木凡人という人に似ているらしい。
ちょっと太っていて、身長も160センチしかない。
おまけにオシャレなんてまったくわからない。
僕は彼女に恋している。
こんな僕だ。しかも7歳年下。
可愛い人だから彼氏だっているに決まっている。
僕になんて興味ないだろう。
それでもいい。
眺めているだけで満足だから。
出逢い
東京都K区。
電車は各駅停車しか止まらないこの街。
駅前のショッピングセンターの、小さな食品売場。
僕は大学に入学したと同時に、食品売場のレジ係のアルバイトを始めた。
ただ、お小遣いが欲しかっただけ。
流れ作業的に客をさばく。
お小遣いのために働いているのだから、やりがいなんてない。
家の近所だからそのお店で働いているだけなのだ。
アルバイトを始めて間もなく二年を迎えようとしていた、半年前の冬。
バックヤードで「そろそろ就活が始まるな」と考えていた、大学二年生の冬。
彼女は僕の前に現れた。
「田中はるかです。よろしくお願いします」
可愛らしいフワフワとした女性。
つい見とれてしまった。
あまりにも可愛らしくて、言葉が出なかった。
「あの…三谷さん?でよろしかったですか?」
僕の好きな人。