朝の七時を過ぎても男はまだ布団の中で目を閉じていた。しかし冷たい北風が台所の小窓をしきりに叩いてうるさかったので、頭はもう半分起きていた。ぼんやりとした意識の中で斜向かいに建つ空き家のことが気になった。この空き家は農林中央金庫に勤めていた山崎さん一家四人が八年前まで住んでいたのだが、長女の沙知子が歩いて十分ほどの森林公園で夜中に鞄と靴を置いたきり失踪し、次の日あとを追うように長男の翔(かける)もすがたを消した。

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2014-12-17

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