涼州詞※ほぼ創作

『涼州詞』を自分なりに小説化してみました。

※解釈でも無いため、本来の作品との意味合いと多少異なる点がございます。ご了承下さい。
また、本来の作品のイメージが損なわれる可能性がありますので、こういうものはちょっと…という方はお読みにならない方が良いかもしれません。お願いします。

起句

 ここは涼州。唐の甘粛省武威一帯にあり、西北国境守備の要衝である。


 今、私は兵士として辺境の砂漠地帯へと出征している。兵士といえども、たまには息抜きというものもしたい訳で、それは華やかな宴の最中だ。
 目の前には輝く硝子の杯。そしてそれに注がれる鮮やかな、しかし深みのある色合いをした葡萄酒。どちらも、息を飲むほどに美しい。
 涼州は、古くから西域との貿易が盛んである。その結果、ここにはこのように多くの西域からの伝来品がある。硝子の杯は西域で採れる白玉で作られ、この国ではかなり貴重なものと云えよう。葡萄酒は少し昔、漢代にシルクロードを通じてこの国へ入ってきた。私達には未だ、不思議に思える代物である。異国情緒と云うのだろうか、西域の文化はなかなか感慨深いものだ。
 葡萄酒が注ぎ終わったようで、私はそれを手に取るとゆっくりと持ち上げ月の光に燻らす。月光に照らされ光を放つ硝子の杯と、透き通りながらゆらりと揺れる葡萄酒。なんて綺麗なのだろう。綺麗、という言葉で形容して良いものなのかと思うが、それ以外に言葉が見つからない。
 しばらく、私はその輝きを楽しんだ。



葡萄美酒夜光杯
(葡萄で作られた美味い酒を、硝子の杯に満たして。)

承句

 杯を傾け、美酒を飲もうとすると何処からか琵琶の音が聞こえてくる。ジャラジャラと速いテンポで、胸の奥が踊りだしそうな、そんな音色だった。音のする方に視線を移すと、遊牧民族だろう。馬に乗り、琵琶を掻き鳴らしている。あの琵琶も、西域から伝わってきたものだ。西域のものは、粋なものばかりだと思う。
 宴は一向に盛り上がる。「飲めや飲めや」と云わんばかりに琵琶の音色は意気揚々と鳴り響き、兵士達も徐々に出来上がってきているようだ。私も、その雰囲気に便乗するように酒を口に含むと、夜空を見上げた。口には濃厚で、深みのある葡萄の味が一杯に広がり、鼻から抜ける良い香りに感嘆した。
 美味い。私は一気に酒を煽った。



欲飲琵琶馬上催
(飲もうとすると、さあ飲めと酒興をそそるように琵琶が馬上で鳴り響く。)

転句

 大分飲んだと思う。頬が赤いのかは分からないが、明らかに火照っているような熱を感じる。宴も先程までの賑やかさは落ち着き、兵士達はほとんど寝床へ戻って眠りについたようだ。どうやら、ここに居るのは私だけか。辺りを見回しても、琵琶弾きも居ない。残っているのは宴の余韻だけ、と云ったところだろうか。いや、それすらも感じないのではないか。自分の感性に疑問形なのは、酔っている故なのだ。勘弁していただきたい。
 月光を浴びながらゆっくりと杯に口を付ける。目を閉じ、静かに物思いに耽る。一般に、今の状況は何と云うのか。貴方に教えてもらいたいものだ。
 騒いでいた兵士も、ひたすら酒を飲んでいた兵士も、その顔に浮かべていたものは果たして。

 笑顔か、それとも……。

 少々飲みすぎたようだ。寝床に戻れるか、どうだろうか。ここは、砂漠地帯だと云ったが、もし、私が砂を布団のようにして寝そべってしまったとしても、飲みすぎだろうと、馬鹿だなあと、嘲笑はしないでくれ。
 誰に云っているかも分からないまま、砂漠の中にただ独り。



酔臥沙場君莫笑
(たとえ酒に酔って砂漠の戦場に寝そべっても、君よ、笑わないでくれ。)

結句

 宴は楽しいものだった。至極、楽しかった。
 ゆらゆらと、視界が揺れている。飲みすぎだろう、これでは本当に砂を布団にしてしまいそうだ。貴方に、嘲笑されてしまうだろうか。
 ゆっくりと瞬きをすると、揺れていた視界は途端に澄んだ。月光が眩しい。おや、と思い自分の顔を触ってみる。少し、手が湿った。

 嗚呼、そうか。これは……。

 元々、ここに出征した時から運命は決まったものであるから、未練など無い。故郷から出るときにそんな感情は捨てた、はずなのだ。不思議なものだと、自分でも思う。しかし、こんな楽しい宴を開いては、こう思わないのもまた、不思議なものであるのだ。どうせ、砂漠は寝床になるのだから。
 云い方を変えようか。
 辺境に出征した兵士が、今までどれだけ帰ってきたか。いや、ほとんど帰っては来なかったのだから。

 今宵は本当に月が綺麗だ。ここで一つ、貴方に問おう。

 私は今、笑えているか。



古来征戦幾人回
(昔から辺境への戦争に出かけて、どれだけの人が無事に帰ってきたというのか。)

涼州詞※ほぼ創作

いかがでしたか?
かなり難しかったです。
本来の作品がとても素敵なので、どうやったら現代の言葉で表現出来るか非常に悩みました。
結果、表現出来てはいないと思うのですが…。
本当に駄文で申し訳ないです、自己満乙wwwとでも笑ってやって下さいませm(_ _)m

読んでくださりありがとうございました。

涼州詞※ほぼ創作

涼州詞 著:王翰 出典:唐詩選 現代語訳と自己解釈と己の妄想が詰まった駄文になりました。

  • 小説
  • 掌編
  • 時代・歴史
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2014-12-14

Copyrighted
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Copyrighted
  1. 起句
  2. 承句
  3. 転句
  4. 結句