タバコとコーヒー

タバコとコーヒー

大沢アルマ

人に恋するのは生きてる明かし

ふとした日常が崩れる時

アタシは昨日の晩に涙を山程吸い込んだタオルを洗濯機に放り込みタバコに火をつけた。
朝からロクな食事も摂らず、コーヒーとタバコで一日過ごしている。

彼は会社の辞令で沖縄に転勤が決まった。
しかも、出発は2週間後。その代りと言ってはなんだが、それなりの地位と報奨金を
受け取って。アタシにそれを告げたのは一昨日の日曜日。

それを初めて言われた時は唖然として空いた口が塞がらず、何の文句も言えなかった。
昨日になって、ふつふつと怒りやら寂しさやらが湧いて来て、彼と電話で口論になった。

付き合って、早5年。お互い空気のような存在だったけど「空気」だから、無しでは
生きて行けない。アタシに彼は「2,3年の辛抱だから、待っててくれ」と言うばかり。
沖縄から帰ってきたら、結婚しよう、とか言ってたな。

紫煙の向こうに飼っているボスが心配そうにこっちを見ている。ボスは今年で3歳になる
ワンコだ。一人暮らしのアタシに良く懐いていて、彼が来ると、膝の上に飛び乗って来たな。

「おいで、ボス」でもボスはタバコを吸ってる時には近寄って来ない。
知ってるけど何となく呼んでみた。

「アタシ、これから一人でクリスマスもお正月も過ごすんだよ。お前が居てくれて良かった
よ。」にこりと笑顔を見せながら、タバコを灰皿で揉み消す。
ボスはこの時とばかり、アタシに飛び付いて来た。
「よーし、良い子だね」アタシはボスを抱きしめた。
ふと時計に目をやると、もうすぐ夜の7時。何て、無意味な一日を過ごしてしまったんだ
ろう、と、苦笑い。

食事の時間だがアタシは何も食べる気が起きなかった。
ついタバコに手が伸びる。
ボスはそれに気づいてサッとキッチンの方へと走って行った。

アタシには秘密がある。

それは彼の他に想いを寄せてしまった人が居るコト。
その人もアタシを好きだと言ってくれた。
でも「会いたい」の言葉にアタシは躊躇した。
もしも会ってしまったら、引き返せなくなるのは目に見えていたから。

結局アタシから幕を下ろした形になったけど、想いはまだ胸で燻ぶっている。
でもその人は割り切りの良い人なので、アタシを追ったりはしない。

数日前にその人から久しぶりに話しをしようか?とお誘いがあったのにアタシは怯えて
もう会おうって言わないって約束してと言ってしまったら、もう意味が無いから
俺からはそんな事は言わない、もう良い、と言ってその人はヘソを曲げてしまい
折角の声を聴けるチャンスは失われた。でもそれで良かったのかも知れない。

忘れる事が重要だ。最初はこっちの気持ちも分かって欲しい、何で辛辣な言葉を
浴びなきゃいけないの?と腹が立ったが向こうもプライドって物があったんだろう。
「もう言わないよ」その一言で良かったのに。

アタシは首を振りながら、もう考えるのは辞めようとコーヒーをあおる。
窓の外は暗闇が支配していた。カーテン越しに外を眺める。ガラス窓が冷たい。

嫌な事は続くもんだなぁとつくづく思った。
でもそれが人生。アタシの人生。
プカリと煙を吐きつつ、ずっとアタシはそんな風に考えていた。

まぁひと時の迷いもあるだろう。でも忘れる。全部嫌な事忘れる。
そうお星さまにアタシはつぶやいた。

タバコとコーヒー

短編を初めて書いてみました。お目汚し失礼しました。

タバコとコーヒー

彼氏とは別の人にときめく事もある。そんな時に彼が側からいなくなることになったら?しかも急に。

  • 小説
  • 掌編
  • 恋愛
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2014-12-11

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