ですとろいガール  脆い砂丘3

ですとろいガール 脆い砂丘3

犯人とは何だろう。

Aぱーと

被害者とは何か。
そして犯罪者とは何かを考えよう。
この世界の一般常識として、犯罪者つまり言うなれば加害者、害を加えた者が悪いのは当たり前だ。プラスにプラスを足せばプラスになるのと同じように。常識でありルール。分かっていない者は、それだけで、話をされない言わば部外者へとなる。しかし、どうだろう。実際のところ。世界では犯罪者が悪なのだが、例えば小説では。はたまた映画等の空想。そして実際という現実には。どうなのだろうか、考えてみてほしい。まぁだからなんだと言われれば困ってしまうようなことなのだが、そうだな。どちらかと言うと、犯罪者には犯罪者の中には犯罪者のくせに憎めない奴、つまりは<罪を犯しても仕方がない奴>つまりは同情を誘う奴の方が多いのではなかろうか。万引きをした、犯罪だ。しかし彼は親がいないので腹を満たす為にやってしまった。可愛そうだ。悲しい。哀れだ。殺人を犯した、犯罪だ。しかし彼女は愛する妹を守るため、妹を虐めていた少年を殺した。それに正当防衛は適応されないなら。あなたなら、彼らに対し、どういう判断を下すのだろうか。陪審員になった気持ちで考えてみてほしい。きっとあなたは彼らのことを知り、嘆き悲しむなら、彼らを擁護し無罪にしてしまうだろう。けれど、けれどこの話に、未だに登場していない<名探偵>ならどうするのだろうか。どう行動しどう考えるのか。否。
答えは簡単。
<名探偵>は彼らに等しく死刑を言い渡す。
犯罪に大きいも小さいも重いも軽いもない。
等しく罪で害で罰だ。
世界を誰よりも理解している名探偵はそう言い渡すだろう。名探偵はさも当たり前のようにマイナスかけるマイナスはプラスだと言うように何の躊躇いもなくまるで息を吐くかのように簡単に言ってのけるだろう。犯罪は罪だ。そこに過去があろうと正義はない。あるのは悪のみ。悪は滅しなくてはならない。それが常識であり世界だ。名探偵はきっとそう言ってのけるだろう。まるで正義のヒーロー宜しく。かっこよく、強く、性悪に。



長々と話してきたが、つまり何を言いたいか何をしめしたいかと言うと、石田かぐね今までに何度でも駐在所と言えど不法侵入してきたのでそれが名探偵にバレたとき、石田は死刑勧告をされるということだ。そしてぼこぼこにされる。死刑と言っときながら決して殺さない、名探偵にはそんな優しさがあった。
石田はそれに脅える。
=石田は名探偵に対し頭が上がらないのである。
プラス足すプラスはプラスだが、マイナス足すマイナスはマイナスだが、プラス足すマイナスは分からない。どれだけプラスが偉大か、どれだけマイナスが矮小かに限る。


さて最後にもう一度考えてほしい。
石田かぐねはプラスだろうか、マイナスだろうか。
それは砂丘が知っている。

Bぱーと

「…………何スか、いきなり」
林川という少年はいきなりそう言った。ボロい3階建てアパートの二階、105号室に住んでいるまだ高校生ではなかろうかという少年はダルそうに駐在さんを見る。上下灰色のスウェットで髪はボサボサ、右手で目を擦りながら、まるでさも今起きたばかり、だから起こしたお前たちにイライラしている。という表情だった。玄関から出てこず、チェーンロック際から動かないことから、部屋には入れるつもりのないことが分かる。二人は気にしない。
「いえ、先日御亡くなりになった、貴方のお隣さんの奈佐 来未来さんのことで。………あぁ、俺たちはこういう者です」
駐在さんは腕の腕章を見せる。石田もそれを真似するようにしたが、残念、石田の右手は空を切った。そして虚しく垂れる。少年は駐在さんの腕章を面倒臭そうに一瞥し、石田には一切目を向けなかった。居ないものと考えているらしい。石田はぶぅ、と頬を膨らませる。駐在さんは無視して続けた。
「何か、奈佐さんに変なところはありませんでした?」
「…………変なところ?」
「えぇ、例えば。そうですね…………何者かに追われていて困っていると言っていた。とか。様子が何かおかしかった、とか」
少年は首を傾げる。首に手をやり、退屈そうに欠伸をした。現在午後の4時。今まで一体何をしていたのだろうか。石田も首を同じく傾げる。
「聞いてないっスね。んていうかまず最近は会ってないッスよ。別に…………て、あぁ、奈佐さん死んだんスか。知らなかったッス。意外ですね、刺されたりしたぐらいじゃ死にそうにないのに。………………………………えっと、俺はそんなに仲良くなかったんで。廊下とかすれ違うときに挨拶する関係ぐらいしかなかったスから」
少年は退屈そうに欠伸をする。
へぇ。
石田は呟いた。少年は少しだけ反応したが、気にしていないようにまた欠伸をした。
「それにしても、本っ当ーに、こういう事件には駐在の人?…………でいいんスよね。えっと、そういう人達が来るんスね。それ、都市伝説かと思ってたッス。ふぅん。………あぁ、てことはやっぱりこの事件にはそういったクソ超能力者の奴らが絡んでるんスか」
………ふぅん。と自分で納得したかのように下を向いて呟く。何かを考えているように額にシワを寄せる。今まで何も気にしなていないかのような表情だったが、今は真面目な顔をしていることに石田は疑問に思った。
(何かあったですかね……)
しかし、ふと思い出したかのように少年は正面を向き、おどけるように言う。
「ぁあ。別にあんた達のことじゃないッスよ。えっと…………」
「あ、はい。俺の名前は呉河――――」
石田は急いで耳を塞ぐ。
(この駄人間っっ!!!!!!!!!!!!!)
一通り駐在さんの口が動き終わってから石田は両手を耳から離し、すばやく駐在の太ももを狙いローキックを放った。駐在さんは軽く右にずれ、石田の右足をかわした。ふんっ。と鼻で笑う。
駐在さんは何も無かったかのように少年へ向き直る。
「そしてこの子供は――――」
「石田かぐねと言うですっっ」
えへんっ、と両手に腰をやり胸を張る。無い胸を張る。虚しくなったのか、石田はすぐにそのポーズを止め、右手で胸を抑えた。哀れだ。
「あぁ、そういう学校もあったスね。やれやれ、今日は凄い日だ。剣呑剣呑」
「……………」
「もう、用はないっスね?俺、これでも疲れてるんスよ。寝させて下さい。関係ない話は嫌いッス」
二人はもう慣れっこのようで一切反応しない。
んじゃ、と言い。ドアを完全に閉めた。ガチャガチャと鍵を閉める音。
「とりあえず、離れよっか」
駐在さんは言う。

Cぱーと

「何て思った?」
「別に何ともなのです」
「うん、彼は犯人じゃないよね」
「ですです」
駐在さんはタバコを出し、口にくわえた。しかしチラと石田を見て思い出したかのように胸ポケットへとしまった。
「別に平気ですよ。気にしません」
「いや、駄目だよ。副流煙とかで。えっと、何でだっけ?」
「吸う人間は何とかっていう名前の抑えがあるため、ある程度は減らされるが、周りにいる人間には無いため、タバコの煙の何倍もの害を受ける。ですよ」
「ああ、抑え。フィルターのことだね」
「ですです。………それにしてもよく名前は覚えてますね」
「名前ぐらいは覚えておかないとね」
「……………………………嫌味ですか?」
石田は心底嫌そうに駐在さんを睨む。
「私はやりたくてやってるんじゃないのです。この駄人間」
はいはい、と駐在さんは手をヒラヒラあしらうように石田に向けた。
「んじゃあ、面倒臭そうだから、本題に戻ろう。さっきの少年だ」
「えっと、誰でしたっけ」
「林川クン。頭が良さそうな子だったね」
思い出したかのように石田はうんうんと頷く。
「えぇ、そうでしたそうでした。ハヤシカワクン。聞かれたことしか答えない少年――――といっても、私よりは年上そうでした。ゲロゲロッ。私達が彼をあまり疑っていないことに気づいていましたですからね」
駐在さんは欠伸をする。
「そうだね。俺が視たことに気づいたのかな?」
まさか、石田は肩をすくめる。
「気づいていないと思うですよ。駐在さんが過去を視たことなんて」
「…………思うって、いやねかぐねさん?君の仕事はなんだい?」
「子供は遊ぶことが仕事ですっ」
駐在さんは頭を殴った。
「ひどいっ。本当なのにっ」
「………………………いいかい、かぐねさん?」
諭すように優しく。
「君の仕事は読むことだ。心理を考えを、心を。それが俺や君の仕事だよ」
ぶぅ。
と石田はすねたように言う。
「だって、後の…………えっと、名前が思い出せないのですけど――――」
「副作用」
「――――そうっ、それですっ」
石田は指を指す。駐在さんはそれをいなし別の方向へと向けた。
「それが…………辛いのです…………」
「お互い様」
「…………」
石田は口をキュッと結び下を向いた。
現在午後の4時半。
あともう一ヶ所なら回れそうだ。





四体不満足事件現在参加者
町の駐在さん
石田かぐね
林川少年



犯人

第一の被害者 匂島 清流
第三の被害者 奈佐 来未来を含む
被害者6名。


以上10名。

ですとろいガール 脆い砂丘3

続きます。

ですとろいガール 脆い砂丘3

警察官になりたい何でもな女子高校生石田かぐねと疲れきっている町の駐在さんのお話。

  • 小説
  • 掌編
  • 青春
  • サスペンス
  • ミステリー
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2014-12-10

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  1. Aぱーと
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  3. Cぱーと