SS43 陰影の哲学
光が当たると影が出来る。それはなぜ?
「面白いよね。なんで光の当たった反対側は黒くなっちゃうのかな?」
夕日で赤く染まった身体をいくらターンさせても、影は必ず纏わり付いてくる。
”何にでも光と影はあるものなのさ”
「それって答えになってないじゃない」
”そうかな?”僅かな沈黙を挟んで言葉は続く。”じゃあ、さっき雄太が転んだお年寄りを抱き起してあげた時、財布を抜き取ったのはどうしてだい?”
「それは……、痛そうにしてたからかわいそうだと思ったんだけど、つい、いつもの癖でさ……」
悪かったと思ってるんだよ。そう言いた気な雄太の口は語尾が掠れるように小さくなった。
”ね、君の中にもちゃんとあるでしょ? 陰と陽。だから外見もそう見えてしまうのさ”
分かったような分からないような曖昧な顔で、雄太は自分の暗い部分を見詰めて項垂れた。
「影をなくすにはどうすればいい?」
”そんなことは簡単さ”
「ホント?」
”雄太が輝けばいい。そうすればもう影はできないよ。
だけど、今度は他人に影を作っちゃうけどね”
SS43 陰影の哲学