心変 第一話
私は私の幸せの為に彼を殺した――
(ハーッピバースデーィトゥーユー……)
バースデーソングを呟きながら、薄暗い部屋の中で独り、細いロウソクの火を消した。
今日は私の誕生日。そして彼の命日。
私は私の幸せの為に、彼を殺した。だがこの先、私が捕まることはない――。
今夜一緒に祝福してくれる筈だった親友の亜沙美は、数分前に部屋を出ていった。涙を流しながら去って行く彼女を、追いかけることはできなかった。やはり亜沙美には相談しておくべきだったのかもしれない……。しかし正義感の強い彼女の事だ、今の彼女では私の心は理解できなかっただろう。いつか彼女も分かってくれると信じて、今は時が過ぎるのを待とう。時間は十分にあるのだから。
いつも付きまとっていた清治という男は、もうこの世には居ない。これからは自分の行いを制限する必要も、誰に気兼ねする必要もなくなるだろう。それが少し寂しくもあり、嬉しくもある。
彼は私の兄のような存在であり、よき理解者だった。それも今日でお仕舞いだ。もう彼の姿を見ることはない。
彼と出会って十五年。これで私は解放される。
心変 第一話
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