継承される力
学校では栓抜きでポテトサラダを食べるのが流行っていたけれど、少年は全く気にしなかった。名前は「鹿」と言う。
鹿の家庭はいわゆる、ブルジョア一家と呼ばれる一族の家系で家の敷地面積はピーナツ8億個分を誇った。しかしながら鹿はそんな自分の境遇をそれほど喜ばしく思っていなかった。
「おい鹿」
声をかけてきたのは、クラス一いや、学年一、いや学校いや、宇宙一大きな体格をしているだろう、少年「鯨」だ。
「なに?」
鹿は不機嫌に返事をした。
「そんなふくれっ面しないでくれよな。飯食べようぜ」
鯨はいつも鹿の弁当よりもピーナツが七個程多く入りそうな弁当に胡麻二粒と味噌汁二滴だけ入れてくる。そう、鯨は貧乏な家庭に生まれたのだ。
「なんでいつも何も弁当に入ってない様なものなのに、そんなに大きくなれたんだ?」
「俺は窒素をあらゆる栄養に変えられるんだよ、だから呼吸してるだけででかくなった」
「窒素って空気の大部分じゃないか」
この時代、人々は皆何かしらの特別な力を持っていた。鹿はじゃがいもに手足を生えさせる力を持っていた。
こうしていつも鹿は鯨に飯を分け、鯨は鹿に面白い話をして聞かせてやった。
大学に入って、歴史の勉強をしていた私はこの物語を図書館で読んだ時、私の裏返しになった靴下を山の様に降らせる力もこの時代の原因かもしれないと思った。
継承される力