「少女達の旋律」
出逢冬夜・前章
冬の日だった。
時刻はとうに9:00を超えている。
私はピアノ教室を習っており、その教室も徒歩で十分な距離である為、こうして寒いなか歩くハメになっている。
徒歩で十分な距離といえど、家から1.5kmぐらいはある。私は小学生じゃないし、体力も並にあるハズだ。なら、徒歩でも十分だろう、と義理の姉である硝子さんに言われ、歩行かされているだけであり、ダイエットの為とか、そういうの、無いんだからね!
「――――あ」
すぐ近くに、交差点がある。
ここは意外と都会であり、人も多く、ご近所さん同士で仲がいい。
否、今はそれが問題で有る訳では無く。
交差点のど真ん中に少女が立っているではないか。
ブルル、と音を鳴らし赤い車が交差点で止まれず突っ疾走る。
「あぶな、いっ!」
私は声を出しただけだった。自分が轢かれるのが嫌だったからか。
だが、少女は無事だった。
まるで少女を庇ったかのように月を覆っている雲が増し、それに従うかのように彼女を轢きかけた車の前部を抉った。
幸い、運転手は軽い怪我で済んだようだ、が。
「ちょっとあんた、危なかったじゃない!」
他の人達が話をしだしたり、驚きの余りぽかんとしている中、私はその少女に声をかけてしまっていた。
「いえ、私は大丈夫、ですが」
その娘は横髪を残したポニーテールをしていて、黒いリボンで結んである。
そして、ミルキークォーツみたいな色の髪の毛が、月光に濡れている。
その姿は、男女関わらず皆の者が見惚れるで有ろう美しさだった。
それだけでない。彼女の瞳も、その美しい髪の毛によく合う赤色。
――――喩えるならば、暗闇を照らす太陽。
それらは、まるで西洋の絵画のような、美しさだった。
「私に、何か変なトコ、ありますか・・・?」
見惚れてしまったのだろう。私は彼女をじーっと見つめていた。
「え?あ、ごめんね、変なところは何処もないと思うわ」
なんでタメ口になっているのかは分からない。けれど、今意識が混乱しているのは確かだ。
「あのさ、あなた、さ、家とか、一人で、帰れる?」
「え、いいえ、私に家は無いですし」
「なら、私ん家に泊まるといいわ!私男の子じゃないし、そういう危険は無いし安全でしょ?」
「えっ?い、いいんですか?御邪魔になるのは迷惑ですし、結構ですよ・・・」
彼女は少し頬を赤く染めて遠慮する。
「いいの!私一人暮らしだし大丈夫よ。ほら、付いて来なさい!」
そう言って、私の家へと彼女を招いた。
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出逢冬夜・後章
私の家であるマンションに着いた。
あそこの交差点から2,3分の距離である。
「じゃあ、とりあえず、今晩は泊まるってことでいいわね?」
私が答えを再確認する為に彼女に問う。
「はい。御邪魔致します」
彼女は礼儀正しくお辞儀をしてくれた。
「はい、よろしい。あ、いきなりだけど、私たちこれから親しくなるかもしれないでしょう?自己紹介しましょ!」
そう、自己紹介。
私は今晩は泊めるという条件で彼女をマンションに連れてきたが、そんな気などない。
私は彼女をこれからも泊めるつもりなのだ。
「はい。じゃあ私から言わせて頂きます。
私の名前はリリアンドール・オースティンです、リリィとでも呼んでいただければ幸いです」
彼女はそう言って微笑んだ。
リリィは、百合の花と言う意味だ。彼女に”百合”という印象は余り無いが、リリィの両親は百合のような美しさを感じたのだろう。
「ええ。じゃあこれからはリリィと呼ぶわ。で、私なんだけど。」
深呼吸をする。
「私の名前は高槻玲って言うわ。私の事は”レイ”って呼んでね。よろしく、リリィ!」
そう言って私はリリィに手を差し伸べる。
リリィはちょこんと手をのせて、
「レイ、と言うのですか。素敵ですね。こちらこそよろしくお願い致します、レイ。」
と返してくれた。
リリィは優しい顔をしていて、こちらを向いている。
やっぱ、この子美人だなぁと思う。
明日の朝、髪型いじくりまわしたいなとか、そんなことを考えて居た。
◇◆
私は今日、聖霊の力を使ってしまった。
今日の9:00頃、私は交差点で横断歩道を渡っていた。
信号機、と呼ばれるモノをよく知らない私は、とりあえず白いラインがたくさんあるところを歩いていた。
そしたら、赤い車がなぜかこちらに突っ走ってきて、私は轢かれそうになった。
その時だ。
私の体に勢いのある風のようなモノが纏った。
その風のようなモノ。風ではない。でも、風のように勢いがあって、見えない。
その風みたいなモノは赤い車の前部を抉った。
その現象の正体は分かっている。
でも、人前に晒してはいけないのだ。
なぜなら、それは一部の者しか知らない、”聖霊”と呼ばれるモノの力だからである。
聖霊は、ユダヤ・キリスト教においては預言者や特別な人にだけ注がれ、神の働きを行ったモノ。
でもそれは聖書の中の世界。
わたしに宿る聖霊は、”普段は”ただの守護神とか、用心棒とかに過ぎない。
しかも、人や動物の姿に具現できない上、人の言葉もやはり使用できないし、直感で何かを判断してくれるだけのものである。
でも、私の身に何かあった時。私が危険に晒されているときには自動的に私を守ってくれる。
だがしかし、その姿は決して一般人には見られてはならないという矛盾。
そんな訳の分からないモノに、私は宿られてしまったのだ。
はあとため息を付いて、レイという少女に借りた部屋のベットに倒れる。
レイは、あの光景を見たのだろうか。
見てないことを願う。が、現実はそう甘く無いだろう。
とりあえず明日のことを考えて今日はもう寝ようと思い、瞼を閉じた。
「少女達の旋律」
これからお話頑張って行きます!
主人公とか銀髪の女の子とかの名前は次で出てきます!
一番最初に名前が出てこない小説って、他にあるのだろうか・・・・・
話進めすぎて名前出すタイミングが見当たらなくて、こうなりました!w
名前は決まってるんだ・・・・!