さくら咲くころ
桜の咲くころ、
僕たちは出会った。
向日葵の咲く頃、
僕たちは真っ青な海を泳いだ。
紅葉が真っ赤に染まる頃、
僕たちはあの夕日の中で誓った。
白い雪がしんしんと降る頃、
僕たちは泣いた。
そして、また桜の咲く頃…
君は僕の前から消えてしまった。
EP. 1 〜桜の咲く頃〜
今年もまた、桜が咲いている。
あの丘の上に1本だけある桜の木は、
毎年綺麗な桜の花を咲かせている。
1本だけ…堂々としているようにも見える。
しかし、どこか寂しそうな感じもするのだ。
毎日この木を見ているけれど、
こんな風に思ったのは今日が初めてだ。
何故だろう。自分でも全くわからない。
そんなことを考えていると、
台所から母の声がした。
「龍二!いつまで部屋にいるの!
新学期そうそう遅刻するわよ」
時計の針は7時42分を指していた。
そうだ。今日から中学3年生になるんだ。
遅刻するわけにはいかない。
急いで外に出て、自転車を走らせた。
あの桜の木を横目で見ながら。
さくら咲くころ