咲かなかった花

人から愛されることを諦め、

人を愛することをやめた花は、咲く理由を失った。

花弁を開く必要を無くした。

今にも開きかけていたつぼみは、瞬く間にしぼんでいく。

花壇に咲き、一輪挿しで飾られる夢を見ていた花は、まもなく力尽きようとしている。

「散ることを知りながら、咲くことを恐れない。」

そんな理想に憧れて蓄えてきた養分も、もはや意味をなさない。

誰にも知られることなく、静かに、そっと消えゆくその命は、寂しさと寒さに身震いしながら頭を落とした。

咲かなかった花

咲かなかった花

  • 自由詩
  • 掌編
  • 青年向け
更新日
登録日
2014-11-28

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