かぼちゃ

農夫が畑に向かおうと、荒れた道路を歩っているとどこからか、女の泣き声が聞こえて来た。普段はのほほんとした村には似つかわしくない、ほ乳瓶の底をスポンジで擦ったようなやかましい声だった。
農夫は、これは一大事だと思い、握りしめていた鉄道模型を三十分かけ完成させた後声のする方へ向かった。
「どうした?」
農夫が叫びながら、膝を額にくっ付ける動きをして女がいるであろう小屋に入ると、女はたった一人で、それもたった一つのかぼちゃを号泣しながら叩いていた。
「なにしてる?」
男が威勢よく言う。
「ごめんなさい、ごめんなさい!」
女はこれしか言わなかった。若い女は小屋の隅っこにちょこんと座り、丸々と栄養をこしらえた、かぼちゃをただ叩くばかりである。
「やめろ、かぼちゃが可哀想だ」
農夫が女を咎めても、女はやめなかった。ただ叩くばかりである。そしてこう叫ぶのだ。
「ごめんなさい、ごめんなさい」
農夫はとうとう、女に苛立ちを覚えてこの女をかぼちゃから引き剥がそうと女を後ろから引っ張った。けれども、女は全く動こうとはしなかった。
そうして気づくと、農夫は女と一緒になってかぼちゃを叩いていたのだ。それを見た女は泣き止むと、すっと立ち上がり、小屋を出て行く。扉を開けるとき女は農夫にこう告げた。
「ごめんなさい、次はあなたなの」
男の目に涙が溢れた。

かぼちゃ

かぼちゃ

  • 小説
  • 掌編
  • ファンタジー
  • ホラー
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2014-11-28

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