そら空 3
話が分からない人は1・2を読んで下さい☆(←宣伝です★)
【生きている意味が、分からない。
親がある宗教を信じていて、それを俺に押し付けてくる。俺は、必要ないんじゃないかって 時々、思うんだ。】
7月の、蝉の鳴き声が聞こえてくる頃。もうすぐ夏休みだ。
愛輝は開かれた本のページを見つめた。
周りには、誰もいない。
《誰かは分からないけど、力になりたい・・・・・・》
ペンケースから、シャーペンを取り出す。
【生きている意味なんて、私もだけど、ほとんどの人が知らないと思います。だから、大丈夫。自分が正しいと思うことをして、自分らしく今を楽しみましょうよ。】
「あきー!!!もうそろそろ帰るよー!!!!」
「あ!うん!!」
友達の声に慌てて本を閉じ、棚に戻す。
「友達が、出来たよ。」
本に向かってつぶやいた。
愛輝が図書室に通うようになってから、6ヶ月とちょっとが過ぎた。この本に出会ってから、愛輝は変われた気がする。
初めは話しかけるのも、授業で発表するのも怖かった。
《もし、うざいって思われたり無視されたら・・・》何度もそう思った。
けれど、そのたびにこの本を通じて勇気をもらった。
そして勇気を振り絞って声をかけたのが、今の親友だ。
発作も少なくなり、友達と遊びに行ったり出来るようになった。やりたかったことが、ひとつずつ叶えられていく。
部活は、まだ出来なさそうだが。
愛輝が図書室から出ようとしたとき、
ドン
ドアの所で人にぶつかった。
男子で、名札の色を見ると同じ2年生だった。
「申し訳ありません。」
丁寧な謝り方に、思わず一時停止。
「・・・あっごめんなさいっ」
謝ったが、すでにその男子は本棚の方に行ってしまっていた。
「あきー?まだー?」
「はーい!!ごめん!」
「なにみてんの?あ、崎原ね。」
愛輝の目線の先に気がついた友達の一人が、教えてくれる。
「あいつちょっと前までチョー暗かったんだよ!」
「ふーん?」
「なになに??ほれちゃった??」
「や、何言ってんの!謝り方が丁寧だったから」
「へ~!」
喋っている間も、愛輝は崎原を目で追っていた。
なぜなら、崎原が手に取ったのは、あの本が入っている灰色の箱だった。
《あ!!》
本を持ったまま、崎原はキョロキョロと辺りを見回して、棚の影に隠れた。
《もしかして・・・その、崎原君もあの本に書き込みをしてるのかも・・・》
なぜか嬉しくなった。
あの本では当たり前だけど、愛輝と同じように悩んで、一緒に解決してくれる人がいる。
《私ひとりじゃ、ないんだ。》
それだけで、心強かった。
そら空 3
新章に入ります!!