西洋正月、お正月

西洋正月、お正月

クリスマスという名称がまだ世間には知られず、しかしながらその祭り自体は知られていて、
西洋正月と呼ばれていた時代の話。

人々は、それを西洋の神様を大々的に祭るものだと、何となく理解していました。

このお話は、そんな少し昔の話。登場人物は、なっちゃんとお父さんと神社の御神木と、その他
大勢の人、では始まり始まり。


もうすぐクリスマス。

なっちゃんの通う小学校の午後の授業の時間のとき、先生はクラスの
生徒に、クリスマスの由来を尋ねました。

「皆さん12月25日は西洋の神様が誕生した日です。最近、西洋正月としてこの国にも知られて
きましたね。この神様はどんな方か知っている人はいますか?」

生徒の一人が答えました
「西洋正月は正式には、クリスマスといいます、先生。そして西洋の神様のお名前は、キリスト
といいます。」

先生は軽くうなずいて、そう、その通りねと、おっしゃいました。
更に、「この日は西洋の人々にとってとても大切な日です。もちろん、この国にも広がってきたのは
良い事です。皆さんも西洋の神様を12月25日は敬いましょう。
では、今日の授業はここまで、それでは日直さん号令をお願いします。」

こうして、その日の授業が終わりました。

なっちゃんは、西洋正月の事を今日初めて知りました。なので、その日に何をするのかが、
とても気になりました。
仲の良い友達にそのことを聞いてみました。
すると、ケーキを食べる日よ、と返ってきました。
なっちゃんは、仲の良い友達にありがとうと言って、家に帰りました。

家にいて、ランドセルの中に明日の時間割の教科書とノートを入れているときに、お正月の事を、
思い返しました。
お正月は、おせちを食べて、年賀状が配達されるのを楽しみにしているなと。
そうすると、西洋正月もケーキを食べて、年賀状を読むのが楽しみなのかなと、考えてみました。

夕食の時間、郵便局で働いているお父さんに西洋正月の事を聞いてみました。
するとお父さんは答えました。「確かケーキを食べる日だと聞いたことがあるなあ、そういえば、
大体その頃になると、ごく稀に郵便局に西洋正月の年賀状が出されてくるな、大半はお正月の
年賀状だけどな」

お父さんは更に続けました。
「よし、なっちゃん今年は西洋正月の日にケーキを食べるか」

なっちゃんは、それはそれは大喜びをしました。だって初めてのケーキなんですもの。

その夜、なっちゃんは西洋正月に書く年賀状について考えてみました。
お正月の年賀状は、仲の良い友達に、今年もよろしくお願いしますといった内容を届けるものだと、
だったら、西洋正月は誰に年賀状を書いたらいいのかな?と疑問に思いました。

次の日、学校でなっちゃんは先生に昨日の夜、疑問に思ったことを尋ねました。
先生はこう答えました。
「そうねえ、キリストという偉い人の誕生日だから、その人に送ってみたらどうかしら」
なっちゃんはそれは良い考えだと思い
「はい、先生そのようにしてみます」
と返事をしました。


クリスマスもあと数日と迫った年の暮れ、なっちゃんはキリスト宛に、西洋正月の年賀状を書きました。
それを書くと、郵便局員のお父さんに渡しました。

さて、なっちゃんに頼まれて、受け取ったお父さんは困ってしまいました。
「キリスト宛かあ、さてどうしたものだろう…そうだ」
お父さんは、八百万の神様を祀る神社へと、スーパーカブを走らせ、絵馬が飾ってある所に来ると、
そこに、なっちゃんの手紙も一緒に括り付けておきました。

そうして…西洋正月が過ぎ、お正月が来ました。

お餅を食べているなっちゃんに、お父さんは言いました。
「なっちゃん初詣に行こう」
「うん、分かった」となっちゃん

神社にたどり着くと、2人は賽銭箱の前で鈴をガランと鳴らし、2礼2拍1礼を行い、今年の祈願を行いました。

モミの木の代わりのスギの木、それはそれは大きなしめ縄を巻いてある御神木の近くにある絵馬を飾る台の中の
1つになっちゃんの年賀状が1枚まぎれていました。

「キリストさん、ケーキとっても楽しみです。生まれてきてくれて有難うございます」

ざわり、と風に御神木の葉が揺れたのでした。

西洋正月、お正月

西洋正月、お正月

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2014-11-24

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