ホロリと一粒。

ホロリと一粒。

いつからだったのだろう。何でもないはずだったクラスメートの修哉を意識するようになったのは。気づいたら心の奥が修哉を好きだと震えていた。意識していなくても心は修哉を求める。色恋沙汰にあまり興味のなかった私だが甘い甘い乙女のように星に願ったりもした。



季節は冬になり始めの頃だった。私に舞い降りた一つの転機。席替えだ。それは定番のくじ制で。だけど私は前の席と変わらなかった。運のない女だ。占いは一位だったのになぁ。と少し落ち込んだ。ため息をつきながら周りの席のメンバーを確認する。
後ろは、気が強くて暴力的だけど優しいサクラちゃん。前は、頭も春。なんて言われるほどノーテンキな遥ちゃん。左は隠れ面白いヤマモくん。私の隣はガリ勉学級委員長くん。はぁ〜。とさらにため息をつき机に突っ伏した時、斜めの、1番見つめやすい、ナイスなポジションに彼を見つけた。修哉だった。なんだか嘘みたいでむせて咳き込んだ。それを修哉はいつもの変に冷めたような視線でチラリと見てから前に向き直った。後ろのサクラちゃんが「大丈夫?」なんて優しい言葉をかけてくれる。前の遥ちゃんは「神無月だっせー笑」なんて笑っている。くそぅ。


席替えしてわかった事が沢山あった。修哉は実は物凄い頭のいい奴だったこと。そして彼もまたヤマモくんのように隠れ面白いこと。そして最大の注目すべき所は彼がお弁当に入っている野菜に一口も手をつけないことだ。どんなに小さな野菜でもお弁当箱の蓋の上に全て綺麗に避けておいていた。ちょっと面白かった。



しばらくたって私は友人の手助けを借り、修哉の連絡先をGetした。すると彼はあっさり私を登録してくれたらしかった。連絡先を交換してから一週間が経った頃、「今日の授業何だっけ?」という文章と共によくわからないスタンプが送られてきたり、「今日は数学のテストあり。」など少しではあるが連絡をくれたりする。それが嬉しくて私も変なスタンプを修哉と連絡する用に買ったりした。



だけど連絡を取り合うにつれ彼が大事に想う女の子の存在が浮かび上がった。名前は有香。友人を通して何度か話したことがる子だった。確か見た目は派手目で3年間付き合ってるという彼氏がいたはずだ。修哉は有香が好きらしかった。有香に対する気持ちが文章を見ればなんとなく伝わってきた。「変態の有香から笑」なんて滅多に使わない「笑」の一言がいつも文章に添えられている。私との会話にはないのに。気づいてはいたがどうやらこの恋は私の片想いらしい。修哉も同時に。



「神無月、テストどうだった?」なんて授業の終わりにニコニコしながら聞いてくるから胸がときめいてしょうがない。「いや。言えるような点数じゃない。」私の呟きをよそに彼は「へぇ、38点か。やばくね?」と目を細めてテスト用紙の裏に透ける赤い文字を見抜いたようだ。「おぅ。」と女子らしからぬ返事を返す。もともと女らしい方ではない。髪は短いし、普通の女の子なら10本以上ペンが入っているであろう筆箱にはミントグリーンの、シャープペンとボールペンが一緒になった、ペンをいちいち持ち変える必要のない質素なものを一本だけ持ち、冬のコートは真っ黒。女子力の欠片もない。髪を金髪にしてピンクのピンで前髪を止めている隣のクラスの袴田陽介の方が女子力に満ち溢れている。だけど今更かわい子ぶっても仕方ないから私は今日も女子を捨てた生き方をする。



それから1年。私の学校にはクラス替えという制度がないため修哉とはまた同じクラスだ。お互い、まだ片想いをしているらしい。修哉は有香を。私は修哉を。絶対に交わることのない二つの想い。でも奴は私に優しかった。テストの点はいつも悪くて女子力もない。そんな私に同情でもしてくれているのだろうか。その優しさが逆に痛い。胸をチクリと突き刺す。



神様。

私は修哉が好きです。

だけど修哉は私を好きじゃありません。

修哉は有香という私よりはるかに美人な女の子が好きです。

だから神様。

修哉と有香を両想いにしてあげてください。

修哉が幸せなら。

修哉が笑っているのなら。

私は他に何も入りません。


私は、一番星の神様にそう願う。
心からそんな事は願っていないくせに。



一番星の神様に願ってから3週間かたったあと、修哉は1年も前から有香と付き合っていたことがわかった。片想いをしていたのは私だけのようだった。どうして気づかなかったんだろう。いや、知ろうとしなかっただけだ。私は知りたくなかったのだ。修哉はいつも優しいから。馬鹿な私にも優しいから。彼なら私を愛してくれるとそう思ったから。


幸せ。私は修哉の幸せを望んだ。だけどいざ彼が幸せだとわかると涙が溢れた。
ホロリと。あぁやっぱり女子力が低いからかなぁ。とか ある日、遥ちゃんに言われた「神無月、カピバラにそっくり」と言われたことを思い出し、カピバラに似てるからかなぁとか。私の恋が実らなかった理由をたくさん浮かべた。


哀しかった。

こんなにも修哉を好きだったんだと驚いた。

悔しかった。







それと同時に愛しかった。


他人のために。

失恋した相手に。


愛する人のために流れたこの涙が愛しかった。





ぁぁ、私って人を想って泣けるんだな。ってまた

ホロリと一粒。

ホロリと一粒。

キラキラと光るような片想いストーリー。

  • 小説
  • 掌編
  • 青春
  • 恋愛
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2014-11-23

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