『 葡萄色の朝に 』
。
葡萄色の朝。
僕はこの色の日が一番好きで、気持ち良くて。
ついつい四度寝くらいしてしまう。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
「バスラル。君は何でいつもこうなんだ」
いつもの怒鳴り声で夢の中から引きずり出された。
彼女の音は頭に響くから嫌だ。
いや、別に嫌いではないんだけど。
「バスラル。使い魔にカエルを選んだ場合、絶対に気を付けなければいけない事は?」
瞼を閉じて必死に夢の世界にしがみつきながら、僕は古くさい教科書と茶釜のような頭をした教師の口調を思い出す。
「えん、あのなん。カエルをん、使い魔になん。選んで」
「……変な口調まで真似しなくて良いから」
やっぱりやっぱりな、呆れた声。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
「えー、と。使い魔にカエルを選んだ場合、何よりも気を付けなければいけないのは、銀時計の扱いである。カエルは銀色と時計が大好物であり、銀時計を見たら舌を伸ばさずにはいられない。知っての通り、銀時計は命力の塊。もし使い魔がそれを取り込んでしまったら」
そこまで言ってから、慌てて僕は瞼を開けた。
「おはよう、バスラル」
僕の首にかかっている銀時計に、ピンク色の可愛らしい舌が巻き付いてた。
「おはよ、クリミナルちゃん」
葡萄色の朝はいつも危なっかしい。
三度寝までは何とか我慢出来るみたいなんだけど、四度寝の時は我慢出来なくなって舌を伸ばしちゃうらしくて。
「銀時計をぺろぺろしてると、君まで美味しそうに見えるから困る」
彼女は銀時計に絡ませていた舌を僕の頬に移して、うっとりと顔を緩ませた。
『 葡萄色の朝に 』