『 カイロと保冷剤 』
。
それはそれは蒸し暑い夜。
団扇をぱたりぱたり。
エアコンもない部屋で、私は一人。
「あのさ」
あー、保冷剤が気持ち良いわ。
「俺、すっげぇ暑いんだけど」
我が家の保冷剤は、お喋り機能がついているのだ。
何となく人の形っぽくて、何となく男性みたいな奴。
「だぁぁぁ!幾ら俺が低体温だからって、まとわりつくんじゃねぇ!己の体温の高さを自覚しろ、そして今すぐ離れ……」
「……いやぁ、優美って本当体温高いよなー。人間ホッカイロじゃん。冷たいこと言わずにくっつかせろよー」
「……」
ボソリと私が呟くと、保冷剤は静かになった。
私はこの保冷剤が大好きなのである。
『 カイロと保冷剤 』