『 カイロと保冷剤 』

それはそれは蒸し暑い夜。
団扇をぱたりぱたり。
エアコンもない部屋で、私は一人。

「あのさ」

あー、保冷剤が気持ち良いわ。

「俺、すっげぇ暑いんだけど」

我が家の保冷剤は、お喋り機能がついているのだ。
何となく人の形っぽくて、何となく男性みたいな奴。

「だぁぁぁ!幾ら俺が低体温だからって、まとわりつくんじゃねぇ!己の体温の高さを自覚しろ、そして今すぐ離れ……」

「……いやぁ、優美って本当体温高いよなー。人間ホッカイロじゃん。冷たいこと言わずにくっつかせろよー」

「……」

ボソリと私が呟くと、保冷剤は静かになった。

私はこの保冷剤が大好きなのである。

『 カイロと保冷剤 』

『 カイロと保冷剤 』

極短小説。

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2014-11-20

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