春と桜と約束の木
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お付き合いお願いします!
三部
〜相談と今後〜
「あぁ、さっぶ、、」
俺は赤い自販機の前でジュースを二本買おうとしていた。桜が咲くこの時期でも早朝はやっぱり寒いのだろう。俺はあったか〜いの所にある、缶コーヒーを二つ買った。
「志乃怒ってるかな、、。急ぐか、、」
俺はアラームをかけた時間にきちんと起きたのだが、結衣菜を起こさないように静かに用意をして、さらにこの日に限ってリビングで寝ていた母さんを起こさないように神経を張りつめていたら、約束の時間に間に合わないようになってしまった。でも、今はそんなことよりも、一刻も早く待ち合わせの公園に行かないと、朝からそれも早朝から志乃の罵声を浴びないといけなくなる。
「志乃、、。頼むから怒らないでくれよ、、」
俺は半ば祈りながら、待ち合わせの公園まで急いだ。
「はぁはぁはぁ、あれ、、?」
待ち合わせの公園に着いたのだが、志乃の姿が見えない。念のために公園にある大きな時計を確認すると、約束の時間の十分後を指していた。
「あれ、、?時間は間違ってないよな?」
どうしたんだろうか?志乃のやつ。俺はもう一度あたりを見渡すと、さっき俺が走って通った公園の入り口を走って入ってくる志乃の姿が見えた。志乃は急いで俺の前まで駆け寄り、はぁはぁと息を切らしながらごめんと謝った。
「おぉ、志乃が遅刻するなんて珍しいこともあるんだな」
「ごめん、昨日なかなか寝付けなくてさ。勉強してたら春からメッセージが来て、おやすみって返信した後、すぐ寝たんだけど、朝起きれなくて、、」
「あぁ、そうなんだ、、。まぁ気にするな、全然待ってないからさ」
そう、俺も遅刻した側の人間だ。待ったと言っても1分程度のこと、全く問題がない。
「いや、今朝は寒かったのに十分以上も待たせちゃって、、」
志乃はさらに謝ろうとした。頭を下げようとする志乃を止め、俺は真実を話した。
「いや、志乃。俺も実は遅刻してしまってな、、、待たせたって言ってたけど俺もさっき来たばっかりなんだよ。だから、そんな謝らなくていいよ、、。お互い様だろ?」
俺は志乃の肩をポンポンと叩いた。これで、志乃も落ち着いてくれるだろうと思った。しかし、志乃はそれを聞くとさっきまでの申し訳なさそうな表情から険しい表情へと変えた。
「俺も遅刻してたって、、?」
「え??そ、そうだよ?俺も遅刻したから、お互い様だって、、。そ、そうだろ?」
俺はさっきと表情、オーラが違う志乃をビビりながらも受け答えた。
「うちは今日初めて遅刻したのに、、。春はいっつも遅刻してうちを待たせてるよね?だったら今日、うちが遅刻しなかったら寒い中、十分以上も公園で待ってたってこと、、?」
「え、、まぁ、そ、そうゆうことになりますかと、、」
次の瞬間、俺はこんな寒い中、ケツに蹴りをくらうだろうと予測し、受ける覚悟を取ったのだが、さっき自販機で買ったあったか〜い缶コーヒーのことをおもいだした。
「ちょ!待ってくれ志乃!だから、悪いも思って、あったか〜い缶コーヒーを、買ってきたんだよ!」
志乃は今にも蹴りあげようとする体勢から、あったか〜い缶コーヒーというのが耳に入り、一瞬にして動きが止まった。
「あったか〜い缶コーヒー?」
しめた!と思った俺は、缶コーヒーをポケットから出し、念入りに缶コーヒーで許してもらおうと必死になる。
「そ、そうだよ!あったか〜い缶コーヒーだよ!?志乃は、コーヒーが、好きだろ!?だからほら、志乃がいつも飲んでる缶コーヒー買ってきたよ!?」
俺はそう言って、取り出した缶コーヒーのラベルを志乃に見せた。思いっきり肘を伸ばし、これでもかというぐらい見せつけた。そのラベルをみた志乃は体勢を立て直し、今から蹴り上げますの準備はやめたようだ。俺は心の中であったか〜い飲み物を飲んでもないのにホッとした。
「おぉ、春にしては私の好み知ってるじゃん?」
志乃は俺が手に持っていた缶コーヒーを受け取ると、すぐに開け、ごくごくごくと飲み始めた。よかった、、。志乃は缶コーヒーを一気に飲み干し、ゴミ箱に投げ入れた。カランっ!ジャストゴミ箱に入る。
「おぉ、さすが中学時代、コントロールの魔女って呼ばれてただけあるな」
うるさいっ!と肩を叩かれた。結局、俺攻撃されるんじゃん、、。
「それは、ソフトボール部だった時の話よ~」
「ははは、腕は落ちてないみたいだね、、」
俺は苦笑いで話を終わらせ、俺も自分用に買っておいた缶コーヒーを開けて、一口飲んだ。 はぁー、やっぱ寒い時にはあったか〜いを飲むべきだな、、。んじゃなくて、目的忘れてた!俺は、相談のことを思い出し、志乃に話しかけようとするがさっきまでそこにいた志乃がいなかった。
「あ、あれ?志乃??」
俺はあたりを見渡した、すると志乃が遠くへ歩いていこうとするのが見えた。え?どこに行ってんだ?志乃が進む方向に目をやると、そこには鉄棒が三つ並んでいた。 おい、まじかよ。朝から元気だなほんとに、、。
「おーい!志乃ぉ!鉄棒とかやらなくていいから!俺の相談を聞いてくれぇー!」
遠くにいる志乃に聞こえるように、声を張った。声が届いた志乃は、遠くであまり確認できなかったが肩を落としたように、こっちへトボトボと歩いてきた。
「そんなに、鉄棒したかったのかよ、、」
俺は、トボトボと歩いてくる志乃を見ながら小さく呟いた。
志乃は歩くスペースを少し早め、俺の前に着いた。
「鉄棒したかったのになぁ、、。んで、うちに相談ってどんな内容なの?」
「相談し終わったら鉄棒してもいいから、、。そう、志乃に相談したいことがあって」
俺は真面目な表情を作り、コホンっと咳をし話を続けた。
「志乃には何回か話したと思うけど、あの約束の子の話、覚えてるか?」
「覚えてるもなにも、昨日その話をしたばっかじゃない?ちゃんと、覚えてるよ。確か、黒髪の似合う、大人しめの女の子でしょ?」
「そう、昔は黒髪の似合う女の子、大人しめの女の子だったよ、、」
「昔はってどうゆうこと?」
「その、約束の子が昨日この街に帰ってきたんだよ」
「え!?帰ってきたの!?」
志乃は帰ってきたと聞くと、さっきまで興味なさそうに話を聞いていたのが、嘘のように食いついてくる。
「え、昨日っていつ!?春はもうあったの!?」
「まぁ落ち着いて、会ったってか元々家が隣同士だったし、うちの家の隣に帰ってきて、志乃と別れてすぐだったよ」
「ど、どうだったの、、?」
「それが、、別人になってた、、」
「べ、別人!?どうゆうことなの?」
「髪は金髪で、大人しかった性格が大胆になってて、それに、、」
思い詰めた表情の俺に、心配そうに志乃は聞く。
「そ、それに、、?」
「めっちゃ、美人になってた、、」
「え?美人に?」
「うん、、。モデルっていっても通るぐらいの、、」
志乃の顔をみると、さっきまで心配そうにしてくれていたのに、今は呆れたような顔になっていた。
「美人になってたらいいじゃない!」
志乃はそうゆうと、大人しく閉じていた右足を俺の太ももに、クリーンヒットさせた。
「いってぇ!!ちょ、なにするんだよ!?」
「思い詰めてた顔してたから、心配してやったのに!別に思い詰める状況じゃないじゃん!?」
「いや、思い詰めるだろ!?俺の中にいた、あの子とは全く正反対になって帰ってきたんだぞ!驚くだろう!?」
「そりゃ、人は時が経てば変わるものやわ!」
志乃は、なんだそんなことか~と言って俺の相談話を終わらそうとしている。
「ちょ、終わらせないでくれよ!あれだぞ?でも、昨日は俺の家に泊まって、風呂まで入ってきて、俺のベッドまで入ってきたんだぞ!?」
俺は必死に大変さを伝えようとしたのだが、志乃は犯罪者を見るような目をして一言。
「変態」
「いや、違うだろ!なんで、俺が変態扱いなんだよ!」
「いや~、久々の再会だからってそれは無いわ~。ねぇ、春?それは無いわ~」
志乃は犯罪者を見るような目をやめない。
「二回もいうなよ!だから、大人しかったのに、大胆になり過ぎてるんだよ!あの子は!」
「はーいはい」
志乃は適当に返事を返すと、反対側へと歩き出した。どこ行くんだよって、、視線を向けた先は鉄棒。
「鉄棒大好きかっ!」
俺は渾身のツッコミを入れて、鉄棒の方へと向かっていく志乃を呼び止めることなく、近くにある木でできたベンチに腰を下ろした。
「はぁ、疲れたよ、、朝から、、」
俺は深く溜息をつき、公園にある大きな時計をみた、到着した時刻より一時間は経とうとしていた。
「もう、そんなに経ったのか、、。相談する前までが長かったしな、、てか、ちゃんと相談出来てないような、、」
俺は、鉄棒でグルグルと回っている志乃を眺めながら今後の事について考えた。とりあえず今日は結衣菜の引越しを手伝って、、そういえば昼から引越し業者が来るんだっけな。それなら、結衣菜はもう起きてる頃だろうな。俺を探しに来たりしないよな、、。まぁそんなわけないか~。俺は腕を頭の後ろで組み、空を見上げた今日は晴天と言っていいほどの天気だ。見上げていた視線をゆっくりと志乃が鉄棒に飽きたのか、こっちへと歩いてきていた。
「あれ?もう、飽きたのか?」
「飽きたってか、、朝からぐるぐる回って気分が悪くなっちゃった、、」
志乃は顔を青ざめていう。
「おいおい、大丈夫かよ!朝から張り切るからだよ、、」
俺はそう言って、先ほどまで座っていたベンチに横になるように志乃にいった。
「ベンチ固いじゃん、、膝貸して」
そうゆうと志乃は強引に俺をベンチに座らせ、俺の膝に頭を置き横になった。
「はいはい、、」
俺は動じることもなく、ただただ志乃の枕代わりになった。それにこんな事なんか中学の頃から多々あったので、志乃が困ったら流れ的に俺が助けないといけないようになっていた。
「はぁ、悲しいぜ、、」
「ん?なんか言ったー?」
「いえいえ、滅相も無いっす、、はい、、」
ならよし!と志乃は負担を全て膝にかけてきた、俺はこの重たさにとても慣れてきていて、なおさら悲しくなった。俺はさっきと同じように空を見上げる。晴天の下、志乃の重みを感じながらベンチに座っている俺、、。すごく平和だなと改めて思った。まてよ、でもこの状況って周りからみたら絶対リア充だと思われるんだよな、、。それって、、。くっそ、俺が志乃に逆らえずにこうなっている事を分かってくれる人はいないってことか!?俺は独裁下に置かれた平和なのか、、。完璧に萎えた俺は、周りに人がいないか辺りを見渡した。ジャージ姿で公園内を走っているおじさん、中学生が体操服姿で、自転車を漕いでいる。部活か~、、。若いのに頑張っているな。ん?パジャマ姿で公園に来てる人とかいるのか~、、結構美人だな。どこの奥様だろうか。
そんな事を考えていると、その奥様はこちらに気が付いたように俺らがいるベンチに向かって猛ダッシュで走ってくる。
「え、こっちにきて、、ちょ、まて、あれって、ゆ、結衣菜、、?」
そう、パジャマ姿の美人な奥様と思っていたのは結衣菜だったのだ。結衣菜は俺らの元へとすぐに駆けつけ、目の前で止まり、上がっている息を整えて言う。
「ちょっと春、、?なにしてんの?」
「え、なにって、、きゅ、休憩?」
「それじゃあ、誰この子?」
「えっと、、中学からの幼馴染の菊地志乃っ子なんだけど」
「その、菊地さんとなにしてんの?」
「いや、志乃が鉄棒回りすぎて気分悪くなったからって休ませてるんだよ」
ふーんと結衣菜は、腕を組み睨みをきかせている。こんな騒ぎに、寝ていた志乃も目を覚まし、目の前に立っている結衣菜に視線を向けた。
「え?ねぇ、春、誰?」
「えっと、、例の結衣菜だよ」
「え!?あの、結衣菜さん!?」
志乃は飛び上がり、結衣菜に自己紹介をする。
「あの、うち菊地って言います。えっと、、」
「菊地志乃さんでしょ?今、春から聞いたわ。私は笹野結衣菜って言います。あの春とはどうゆうご関係で??」
結衣菜は志乃に軽く喧嘩を売っているような口調で話す。
「どうゆうって、、中学からの幼馴染だけど?」
「中学からの幼馴染だけで、朝っぱらから公園で膝枕なんてするかしら?」
「おい、結衣菜、そんな喧嘩腰に言わなくても」
俺は喧嘩腰に志乃に質問をする結衣菜をなだめるように言った。
「春は黙ってて?ねぇ、菊地志乃さん?するのかしら」
この喧嘩腰の口調に志乃も黙ってはいなかった。
「するも、しないも結衣菜さんには関係ない事じゃないの?それに、これぐらいのことしょっちゅうある事だしねぇ?春?」
お、俺振るなよ、、と内心思いながら、俺はうんと頭を縦に振った。
「しょっちゅうある事なんだ~。それに関係ないことはないわ?」
「どんな関係があるの?」
ん?どんな関係があるんだ?俺もその質問には気になった。でも、結衣菜はその質問に迷わずに答えた。
「それは、私が春の事を好きだからよ?」
へぇ~、結衣菜は春の事が好きだからか、、。ってえ!?おいおい、春って俺の事か!?
「お、おい!結衣菜、春って誰だよ!?」
「何言ってるのよ、春。あなたの事じゃない」
「ま、まじか、、」
まじかぁぁぁ!なんだこの展開は!こんな展開、漫画でしか見たことないぞ!
「あら、結衣菜さんストレートに言うのね」
志乃は思いも寄らぬ答えに、少し赤面していた。この、ストレートな答えは聞いた本人も赤面してしまうほど恥ずかしいものだったのだろう。
「そうよ?だから、関係なくはないのよ?」
言った本人は、動じることもなく凛としていた。
「へぇ〜、それじゃあうちも関係なくはないのかな?」
「どうゆうことよ?」
ん?どうゆうことだ?俺もそう思った。
「うちも、春の事が好きだからよ」
へぇ~、志乃も春の事が好きだったのか、、。ってえ!?おいおい、志乃は何を言いだすんだ!?
「お、おい!志乃!?ど、どうしたんだ!?」
「え、なによ!うちが春の事好きだったら悪いわけ!?」
「い、いや、まじか、、」
まじかぁぁぁ!これまたどんな展開なんだよ!漫画か!?これは漫画か!?
「ふーん、菊地志乃さんも春の事好きだなんて悪趣味なのね」
「そうゆう、結衣菜さんだって、相当な悪趣味ですよ?」
「いや、ほんと君達、悪趣味だな、、。じゃなくて!変な言い争いは止めてくれよ!?そんな、冗談言い合ったりしてさ!そろそろ、俺も傷つくぞー?はははぁ」
俺は、精一杯の笑顔を作り、声を出して笑った。しかし、二人の視線はこちらへ向けたまま表情を変えない。
「え、、。二人ともガチなの、、?」
「「うん」」
二人は同時にうんと頷いた。これ、俺に春が来たんじゃね?
「いや、でも!そんな急に言われても、、ね?お互いさ仲良くしてよ、、?俺のせいで二人が啀み合うのは俺、嫌だなぁ、、」
俺はなだめるように二人に言ったのだが、二人の仲は変わる事なく犬猿している。
「とにかく!今日は帰ろ??そ、そういえば結衣菜は引っ越しの手伝いがあるだろ?俺も手伝うんだから、ね?志乃は今日呼び出したりして悪かったな、、。朝早くから来てもらって本当ありがと!鉄棒はほどほどにしろよ!?んじゃあな!!」
そう言って俺は結衣菜の手を取り、急いで公園から出た。後ろ振り向かず、ひたすら結衣菜の手を引き、走った。
「はぁはぁはぁ、疲れたぁ、、」
俺は必死で走ったため、息が上がっていた。その後ろで、結衣菜も息が上がっている。
「ちょ、春、、走りすぎでしょ、、はぁはぁ」
「ごめんごめん、でもあのままだったら、なんかヤバそうだったから、、」
「ヤバそうって、、」
結衣菜はゆっくりと息を整えていきその場にしゃがみ込んだ。
「ど、どうした??お腹でも痛くなったか、、?」
俺は結衣菜の側へ行き、同じようにしゃがみ込んだ。すると、結衣菜はぐすんぐすんと鼻をすすっている。
「え!?ちょ、泣いてるのか!?」
「だって、、春が他の女の子と仲良くしてるのなんて嫌だもん、、」
結衣菜は涙まじりに言う。
「嫌だって言われても、、泣く必要ないだろ!?な?結衣菜ってば」
「春、、。約束のこと忘れちゃったの、、?」
や、約束のこと!?結衣菜、覚えていたのか、、。
「約束って、、お、覚えてるよ。帰ってきたら付き合うんだろ!?」
「うん、、。わたし、帰ってきたよ、、?」
結衣菜は涙目をこちらへ向け、上目遣いで見つめてくる。そんな目で見つめられた俺は、、。か、かわいい、、。可愛すぎる。
「で、でもな!?結衣菜!?あれからすごく時間が経ってるだろ?それに、結衣菜もすごく変わってて、俺も正直、びっくりしてんだよ!?まだお互いに知らない事もあるだろ?だから、帰ってきて、すぐ付き合うなんて、少し難しくないかな、、?」
「わたし、、どう変わってるの、、?」
「どうって、、可愛くなってる、すごく、、」
俺は正直に言った。隠すこともなく、恥ずかしくもなくスムーズに言えたことに少し驚いている。それぐらい、結衣菜は可愛くなって帰ってきたのだ。
「嬉しい、、」
結衣菜はニッコリと笑った。そして、涙を拭うと立ち上がり、俺の手を取り再び歩き出した。
「結衣菜、、」
「春!今日は引っ越しの日よ!さぁ、いっぱい手伝ってもらうんだからぁ!」
結衣菜は俺の手を引き、家へ向かって走り出した。あれ、、めっさ元気なってるやん、、。
春と桜と約束の木