silver bullet
以前、書いて投稿した作品です。
改良したつもりですが、なってないかも知れません。
ですが、一生懸命に書きましたので少しでも、読んで
頂ける機会があれば嬉しいです。
毛利探偵事務所に一通の手紙が。差出人はなく、“江戸川コナン”宛てに届いた奇妙な手紙。
昨日の夜から風邪を引いたのだろうか、誰かに追い掛けられる夢に魘されハッと目覚めた。
額から伝う大量の汗と震え、無意識に手で胸元を押さえていたのである。
我に返り江戸川コナンは部屋を見渡す。
隣の部屋からは人の気配は感じられなかった。
コナンが寝ている時、小五郎は「大人しくしてろよ!オレ様は沖野ヨーコちゃんのコンサートが待ってんだからよ!」とか言っていたのを聞いた気がする。
ヲイ…ヲイ。病人放ったらかしかよ…小五郎のおっちゃん。
…ったく、とりあえず学校に行くか…。
因みに蘭は鈴木財閥の娘で鈴木園子と一緒に仲良く登校したようだ。
その証拠に、机には蘭からの手書きで書かれた置き手紙があった。
だが、食欲は湧かずそのままにし、コナンはパジャマから着替えを済ませる。
ボーッとする頭を押さえながら、眼鏡を掛け毛利探偵事務所のドアへ向かう。
ドアノブに手をかけた時だった。
ドアと床の隙間に一通の手紙が差し込まれているのに気がついた。
それを何気なく拾い上げ、コナンは差出人を確認する為裏を返す。
しかし、真っ白で何も書かれてはいなかったのである。
“江戸川コナン”宛と云うのが気にかかる点なのだが。
「…妙だな。普通なら名前くらい書くはずだが…コレにはないとなると悪戯が、若しくは…」
その違和感を感じる手紙の封を切り中身を確認する。
手紙の内容は“一人でジュエルマーメイドホテルに十六時までに来い!従わない場合はオマエが大切にしているヤツらを皆殺しにする。誰かに喋っても結果は同じだ”と書かれていた。
単なる悪戯や嫌がらせではないようだ。 ここ数日だが、何者かにずっと尾行されている節がある。
それと事務所に無言電話が度々あったが、それも犯人の仕業だろう。
他の誰かに見られるのを防ぐ為、ズボンのポケットに手紙を押し込み、コナンは静かに事務所を出て行く。
★ ★ ★
鈍よりとした雨雲が広がっていた。
予報では午後から雨らしい。
出る時に傘を持って来るべきだったと思ったが、今から取りに帰るのは面倒だ。
諦めてコナンは帝丹小学校へ向かい、スケートボードを走らせる。
灰原哀の所にも来ているのだろうか?という疑問が浮かんで来た。
彼女もまた組織を逃げ出す際に、新一と同じAPTX4869を服用し、幼児化した一人。言わばお尋ね者には違いはないが、もしコナン以外の誰かにも同じ内容の手紙が来ていたと仮定すれば、極めて危険な状況である。
灰原に確かめるべきかなのかどうか、考え込んでいると、曲がり角に差し掛かり聞き慣れた声が聞こえてきた。
…灰原も一緒…か。
コナンはブレーキを徐々に掛け、光彦達の横へと滑り込む。
そしてスケートボードを小脇に抱える。 いつもならそんなに重くはないはずだが、今日はヤケに重いと感じていた。
「あ~~!!コナンくんだ????」
「お早うごさいます…コナンくん!ボク達と一緒に行きませんか?」
「…ああ。そのつもりだけどよ…ってあれ?元太はどうしたんだよ」
「あら、小嶋くんならそこに居るじゃない…」
と灰原が指を指した方向を見ると、そこにお腹を押さえながら歩く元太の姿があった。
それを見て「ハハハハ…」と唇の端を吊り上げコナンは笑う。
また鰻重でも食べ過ぎた…か。
懲りねーな、元太は…。
不意に視線を感じ灰原の方へ向き直ると、「顔色悪いみたいだけど、大丈夫なの…工藤くん」と小声で呟く。
だが、コナンは「気のせいだろ…オメーの?」と誤魔化す。
前を歩く元太達は仮面ヤイバーの話題で盛り上がっていて、此方の会話には気付いてない様子だ。
「まさかとは思うけど…何かあったんじゃないでしょうね…工藤くん」
「…バーロ、そんなんじゃねーよ。それより良いのか?遅刻してもよ…?」
腕時計を見せ、コナンは話題を逸らす。 確かにゆっくり話している時間はないみたいだ。
灰原は歩美達にそれとなく急ぐよう促し再び走り出す。
★ ★ ★
午後の授業が終わるチャイムが鳴り、静かであった教室が一瞬で騒がしくなり始めた頃ーーー。
一人席を立ち鞄を背負い、スケートボードを小脇に抱え、誰にも告げず教室を出て行くところだった。
やっぱり変ね…。まるで心此処に在らずってところね。
本人はあーあは言ってはいたけど。
考え事をしていた灰原に「…あれ?コナンくんは?」と歩美が問い掛けて来た。
その言葉に元太と光彦も気が付き辺りを見渡す。だが、既にコナンの姿は何処にも見当たらない。
「江戸川くんなら…さっき出て行ったわよ…。急いでるみたいだったけど?」
「え~~~ッ!帰っちゃったのぉ~~!」「マジかよ!折角、遊ぼうかと思ってたのによ~~チェッ」
「残念ですね…」
ブツブツと歩美達は愚痴っていたが、灰原はコナンが居なくなった方向を、ただジッと見つめていた。
「……ワリィ」
コナンは教室から少し離れた階段を降りながら小さく呟く。
大きな溜め息を吐き、ズボンのポケットに手を突っ込む。
その表情は曇り、影を落としていた。
聞けるワケねーよ…。
それに手紙の事を言えば、危険だから絶対行くなって言うに決まってるし…な。
いざという時は阿笠が発明した道具で切り抜けるつもりだ。
それが通用する相手なら…の話だ。
今朝、出る前に道具のチェックは一応済ませてはいた。
指定されたジュエルマーメイドホテルは最近オープンしたばかりである。
地上二十階建てで様々な施設が完備されていると、確か園子が自慢げに話していた事を思い出す。
ようやくホテルの正面玄関まで辿り着くと、鞄を植え込みの中に隠す。
従業員は慌ただしく働いている様子がガラス窓から見えた。
コナンはホテル内に入り、近くを通り掛かったボーイに「…ねぇお兄さん!これから何かあるんですか…?」と訪ねる。
「…え?ああ…これからね、最上階でパーティーがあるんだよ坊や。ん~~確か、弁護士の妃って言ってたかな…」
「何ッ!ありがとうお兄さん!」
「って、坊やちょっと…!?」
後方でボーイの静止を振り切り、その場から走り去り、コナンは二十階へエレベーターを使い向かう。
もし、犯人が黒の組織ならーー妃にも危険な状況だということだ。
コナンは先程から妃の携帯に電話を掛けているが、電源が切られているのか繋がらない。
…くそっ!何でこんな時に出ねーんだよ叔母さん!!
何とかして知らせねーと…。
既にパーティーが始まったという事なのだろうか。
エレベーターの扉が開き、コナンは急いで廊下に飛び出し、妃らしき人物を探す。 行き交う人混みの中を掻き分け、辺りを隅々まで目を凝らしながら通り抜ける。
見付けるのに一苦労しそうだと、小さく溜め息を吐く。
だが、ここで悠長な事を言っている場合ではないのは、コナンも理解していた。
兎に角、ヤツらよりも早く妃を保護する必要がある。
最悪の事態だけは避けたい。
…何か嫌な胸騒ぎがしやがる。
頼む!!無事で居てくれ…!
急ぐ気持ちを抑え、コナンは廊下を走り抜けていく。
★ ★ ★
丁度曲がり角に差し掛かった時だ。
突然、後方から爆発音がし爆風でコナンは前に吹き飛ばされる。
「ーーくっ!!」
床に強く叩きつけられ、三回転ほど転がりようやく止まった。
頭を押さえながらコナンは体を起こす。 状況からすると、予め爆弾はこのフロアに仕掛けられていたのは間違いないようだが。
他にもまだ仕掛けられている可能性は十分に考えられる。
コナンはゆっくりと立ち上がろうとした瞬間、右足に激痛が走った。
やべッ!!さっきの衝撃で右足をやられたのか…くそっ!
壁に凭れるように立ち上がる。
不意に何か視線のようなモノを感じ、コナンは顔を上げた。
視線の先に見えた人影は、何処となく妃に背格好が似ている。
眼鏡で特定しようとしたが、彼女は階段を使い屋上へ向かった。
コナンも跡を追う為一人階段を上る。
痛みに耐えながらようやく扉の前に辿り着く。
大きく息を吐き、重たい扉を開け外へ出ると、辺りを見渡す。
だが、そこには妃の姿はない。
確かに屋上に向かった筈だが、コナンは眉を顰める。
居ねーみたいだな…
無事に避難出来たということかーーそう思ったコナンだったが。
ーー次の瞬間、嫌な空気が漂う。
コナンは咄嗟に車の影に身を隠し様子を窺う。
「ー今度は逃がしゃしねーぞ小僧ッ!」
「……やっぱ、オメーだったのかーージン…」
「兄貴、準備出来やしたぜ…」
もう一つの入り口から、ウォッカが姿を現す。その手からキラリと何かが光る。
眼鏡で拡大し確認した。
どうやらそれは時限爆弾のスイッチのようだ。
下手に手を出せばスイッチを押される危険がある。
やべッ!この状況じゃどうにもなんねー…!クソっ、やるしかねー…か。
コナンはベルトに手をかける。
同時に懐に仕込んでいたベレッタM1934を掴み、それを躊躇なくコナンへ銃口を向け発砲してきた。
車の至る所に風穴が開き、フロントガラスは割れ地面に残骸が飛び散る。
迷うことなくコナンは靴のボタンを回し前に飛び出すと、ウォッカ目掛けて思いっきり射出されたボールを蹴った。
「いっけえぇぇ~~っ!」
「チッ…」
ボールはジンの髪を微かに揺らし、ウォッカの顔面に当たりその場に倒れた。
そして直ぐにジンは再び発砲し、コナンは走って隣の車へ身を隠す。
麻酔銃が効かない相手だけに手強い。
…かなり危険な賭けだがやるしかねー。
誰かの置き忘れなのだろうか、両口スパナが床に転がっていた。
それを掴み左側へ放り投げる。
同時にそれとは逆に右へ回り込もうとした時であった。
ジンの放った弾は
左肩と右足に当たり、その衝撃で眼鏡が外れ、体ごと後ろへ吹き飛ぶ。
「これで最期だ…ガキっ!!」
ジンがコナンに歩み寄ろうと一歩踏み出した。
左側から何かがジンの頬を掠める。
それは地面に突き刺さった一枚のトランプカードだと気付く。
コナンは口から血を吐き、胸元を押さえフラフラしながら、立ち上がろうと起き上がった。
しかし、白煙が辺りに立ち込め周りが見えなくなる。
ーー次の瞬間、コナンは不意に浮遊感を感じた上へ視線を向けた。
「……お、おめーは…!!」
「それ以上は喋らない方がいいぜ、名探偵…。しっかり捕まってろよ…」
屋上の端に素早く移動し、マントを翻したかと思ったら、パラグライダーで空へ跳び去る。
何故、キッドがあの場所に居たのかは分からない。
また何処からか宝石を盗んだ帰りだったのだろうと、コナンは溜め息を吐く。
ちくしょ……。
目が…霞んできたぜ。
今回はマジでヤバいかもな…。
そしてコナンはキッドの腕の中でゆっくりと意識を失った。
月は妖しげな光りを放つ。
やがて二人は闇夜に姿を消す。
silver bullet
有り難うございました。
最後まで読んで頂き、感謝します。