走馬灯

これが君の愛情表現

愛しい日々たち

嗚呼、私は死ぬのか。
スローモーションのようにゆっくりと流れる景色を眺めながら、何故かそう思った。
目の前の光景は、どこかで見たことがあるような。
懐かしさに駆られて、思わず手を伸ばす。
けれど何も、掴めない手は。虚しく空振りで。
笑みがこぼれた。
とうとう、死んでしまうのね。
自分で自分を笑いながら、人生を辿ってゆく。
初めて2本の足で立った。歩いた。物に触れて、言葉を学んだ。喜んだ、怒った、哀しんだ、楽しむことを覚えた。感謝をし、謝罪もし、君に恋をして、愛を知り、愛おしみ、慈しんで。
そして。とうとう、死んでしまうのね。
意識がうすれていく。不思議と怖くはなかった。もう初めから、こうなることを知っていた気すらして。
崩れていく世界を眺めながらあれこれ考えているうちに、ついに終わりがきたようだった。
吹き出す赤に見惚れる。痛みは感じなかった。
意識の裏を、最期の思い出が駆け抜けていく。
君が
銃を
構え
その
顔には
笑み


背中に微かに衝撃がはしる。
コンクリートの冷たさに、身体が溶けていく気がした。
薄れていく天井を見つめながら思う。
嗚呼、もっと生きたかった。

走馬灯

うまれかわったらまた

走馬灯

最期に神様がくれる、人生を眺めるだけの時間のお話。

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2014-11-13

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