四月の吐息
彼が入院したと聞いたのは、午後の授業が終わった放課後のことだった。仲の良い友人の一人が、耳にした噂を回すように耳打ちしてきたのだ。私が驚くことを期待していたのか、私の反応を面白くないなあという顔で見ていた。私は鞄を持ち、友人に「ありがとう、先帰るね」とだけ告げて教室を出た。
彼というのは、クラスメイトの白木 憂のことだ。私は彼と特別仲がいいわけではなかったが、学級委員という肩書きを捏ねにお見舞いに行くことにした。学校を出る前、担任に聞いた住所を頼りに自転車のペダルを踏む。当然学校からは遠い、私の心に少し後悔の念が生まれる。
「学級委員も、大変ね」
自分を少しでも正しいと思い込むべく、独り言のように、言い聞かせるように呟く。太陽はもう真上だ。
四月の吐息