夢じゃなかった。

本当にお互いが想い合うなんてあるのだろうか。純粋な恋とか愛とか、みんなはしてるのだろうか。

「エロい夢を見た」
その言葉で目が覚めた
そこにはベッドに座り、勢いよく水を飲んでいる
中年男性が居た
知らない人ではない。ただ、一緒にホテルに居て
いい関係の人ではない
「私も見た」
そう言うしかなかった
服を着て崩れた化粧を直してホテルを出た
細野マキ25歳 公務員
彼とは、私が大学時代にアルバイトをしていた飲
食店に来ていたお客さん
常連のお客さんと従業員という関係だった
初めは楽しい人だなぁ、仲の良い夫婦で羨ましい
なぁとしか思っていなかった
そう、いつも夫婦でお店に来てくれていた
体格が良くて顔は少し怖いけど、明るくてすごく
優しい彼。お洒落で綺麗で気さくな奥様。二人は
いつも楽しそうに話していて誰が見ても仲の良い
お似合いの夫婦
彼は某建設会社の社長さんで接待でもうちのお店
を利用してくれていた
私が就職活動で忙しくなる為アルバイトを辞める
事になり、彼が送別会を開いてくれた
彼と奥様から花束とプレゼントを頂き
素敵なお客様と出会えて良かったと心から思った
それから一ヶ月経ち
私は就職が決まり、友達とBARで乾杯をしていた
就職活動からの解放でお酒が進み頭がボーっとし
ていた
「やっぱりマキさんだ!」
あまりにも大きな声で酔いが冷めた気がした
「久しぶりだね!元気だった?」
振り向くとそこには彼が両手を広げて立って居て
私はとっさに立ち上がり惹きつけられるように
ハグをした
就職が決まった報告と友達を紹介し、ついでに?
連絡先を交換した
就職祝いだと言ってご馳走してくれたので
帰ってからお礼のメールをした
私「マキです。今日はびっくりしました!まさか
あんな偶然があるんですね^_^ご馳走になってし
まい本当にありがとうございました!」
どんなメールするんだろう
ちょっとわくわくしてメールを待った
翌日
彼「メールありがとう!まさかだったね、友達
との時間邪魔してごめんな。会えてうれしかった
よ。そして就職おめでとう。今度改めてお祝いし
よう」
素直に嬉しかった。ただそれだけ
社交辞令だと思っていたお祝いは現実となった
また送別会の時のように奥様が花束持ってきて
くれるのだろうか
どこに飾ろうかななんて考えながら待ち合わせの
場所に着いた
黒いピカピカの車が目の前で止まり運転席の窓か
ら彼が顔を出した
「お待たせしました。乗って?」
私は助手席に誘導されて戸惑った
私「あれ?奥様は?」
彼「ん?今日は置いてきたよ。まずかった?」
私「えっと、、二人?大丈夫なんですか?」
彼「おじさんと二人嫌?ゆっくり話してみたかっ
たし」
こんなこと普通なのかな?私意識し過ぎかな?
(あぁそうだ。彼は45歳で子供がいなく、きっと
私を娘のように思っているんだ)
私はそう自分に言い聞かせてこの場を娘として
楽しもうと決めた
しかしそんな決断はすぐに破かれた
入った事のない高級そうなお店に連れてかれ
飲んだ事のない高級なお酒と
食べた事のない高級なお肉
そんな不慣れな私を優しくエスコートしてくれ
自然と彼と楽しむ事ができた
いつからだろう、私の方が娘ではなく女として
彼に接していた
でもわかってる
彼には奥様がいる
きっと今日家に帰って彼は奥様に私をどこどこの
お店に連れてってきたよと話すのだろう
余計な事を考えないように私はお酒を飲んだ
彼「僕の行きつけのお店で、マキさんを連れてい
きたいのだけどいい?」
私「行きましょう」
何にも考えずにそう答えお店に向かった
小さなお店だけどすごくお洒落で大人な雰囲気
マスターが来て
「あれ?一人じゃないの?どうしたのそんな
可愛い子連れて〜」
彼「彼女にぴったりのお店だから連れてきたくて
ね」
すごく照れた。でもすごく嬉しかった
彼との時間はすごく楽しくて、まだ一緒に居たい
時間が止まらないかな
なんて思ってしまっていた
時間はとまるはずもなく
「今日はすごく楽しかった!マキがこんな酒飲み
とは思わなかったよー」
彼との別れの挨拶で私をマキと呼び捨てにしてく
れた事にドキドキしてお礼を言い忘れていた
きっとこれで最初で最後
そう思っていた
しかし自然と彼と連絡を取るようになり次に会う
約束までしていた
彼に会うと幸せな気持ちになる
特別にされている気がして
私はもう彼を好きになっていた
その日の夜
「今日は朝まで一緒にいよう?」
私の気持ちが伝わってしまったのか
それとも下心でしかない言葉なのか
私はそんな事を考えながらも
「私も同じ事考えてた」
と彼に言った
彼の温もりを感じながらも
彼の奥様の事を考えて罪悪感でいっぱい
だった
翌朝彼は言った
「エロい夢を見た」

それから私と彼との関係が始まった
家の近くのコンビニに待ち合わせして
夜飲みに行ってホテルに泊まる
県外に旅行にも行ったりした
毎回思う
今日で終わりにしよう、と
私はずるい
「奥さんに悪いよ」
と言いながら

夢じゃなかった。

いけない事だと分かっていても
それはわかってるふりをしているだけで
結局は欲望に負けてしまう
みんな自分が一番可愛いから
自分に甘いから
人を傷つけてることにさえ
気がつかなくなってしまう

夢じゃなかった。

  • 小説
  • 掌編
  • 恋愛
  • 成人向け
  • 強い言語・思想的表現
更新日
登録日
2014-11-11

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  1. 本当にお互いが想い合うなんてあるのだろうか。純粋な恋とか愛とか、みんなはしてるのだろうか。
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