曇りガラス
恋って、なに?
小さな恋の話。
恋したんだ、なんて。
人の気をひいてみたかっただけかもしれなかった。
今更押し寄せる後悔からか、少女は送信したメールを何度も読み返す。
こんなメール送らなければよかった。
今にも消えてしまいそうなほど小さな声で呟いては、側にある、柔らかなベッドに顔をうずめる。
暖かさからか、まぶたを閉じると直ぐに微睡みはじめた。
もうどれくらいの時間、少女はそうしていただろう。いつの間にか強く握りしめていた携帯電話が鳴った。
メールが返ってきたのだ。
他愛のない返事だった。短い文が2つだけ。
けれど、少女にとってそれは何よりも大切な言葉だった。
あのひとからの、私だけに向けられた。
返事を考えるべく、少女の思考は切り替わる。そしていつものように、頭の中で思い浮かべるものは次第に移り変わっていく。
何よりも愛おしい時間だった。公園のベンチにあの人が待っている。それを見つけて、駆け寄って行って・・・・・・。
夢はそこで終わった。まぶたを開くと、直ぐに現実に引き戻される。
少女は大きなため息をつくと、布団にうずくまって時間をすごした。
もう眠る気にはなれなかった。未だに鳴らない携帯電話が、少女をいっそう孤独にする。
きっと好きなわけじゃないの、みんながああやって茶化したから気になっていただけで。
意味がないと分かっていても、何故だか自分に言い訳を繰り返す。
少女はとうとう涙を流した。
どうしてなのかもわからないまま、唯々泣き続けた。布団の暖かさだけが、心地よく感じた。
やがてメールの受信を告げる音が鳴る。
泣いて腫れぼったくなった目の少女は眠りについて、受け取った言葉に気づくことはなかった。
少女を笑うかのように部屋の曇りガラスがカタカタと揺れた。
曇りガラス
青春がしたいなぁ。