あの日あの日のあの時の

こんなはずじゃないんだけどな。
ため息と共に吐き出された想いは自分に向けた言葉。
だからと言って自分を「こんなはず」から脱出させるプランも持ち合わせていないし、そもそも脱出しようと考えたこともなかった。
面倒なのが一番の理由、続いて一部に不満を感じるだけで現状に満足していること。
それでも自分が幼い頃に描いていた未来と大人になった現在は大きく違っている。
ぼんやりとした頭でそんなことを考えながら歩いた。
冷たい風が顔を過ぎるたびに気持ちが良い。
熱が上がってきているのかもしれない。
またひとつため息をしてマスクを顎から戻した。
私の予定では車で誰かが病院まで連れて行ってくれるのに。ここがまたひとつ違うことだ。
もう何年も歩いていない道を進む。こんな道を歩くのは高校生以来かも。
通学路だった道も今では懐かしい。
何も変わっていない。狭い人通りの少ない道、古びた神社も酒屋も駐車場も何もかもが変わっていなかった。
遠い昔に舗装されたであろうアスファルトの道はボロボロと表面が砕け、足を進めるたびに石ころを蹴飛ばしてしまう。ただ長い一直線の道。車とすれ違うこともなく人の気配も感じない、並んだ家々には古いだけでは語れない哀愁や私の中にも残っているだろう歴史を感じた。
その中のひとつに酒屋はあった。
店名も表札もない。店の中にアルコール類が沢山並んでいるのと、ビールケースが店の外に積み上げられているのを覚えている。自動販売機も2台あり、アルコール専用が1台あったが今はもう残っていなかった。
自動販売機の足元にミルクティーの缶が置かれていた。
私が置いたのかと錯覚するほどに当時のままだ。
コートから小銭を出し温かいミルクティーを購入した。
「よっこいせ」
すぐ隣にある神社の石段に座り缶を開けた。
学校が終わると遅くまで友達と喋って過ごした。
甘いミルクティーが喉に染み込む。

あの日あの日のあの時の

あの日あの日のあの時の

  • 小説
  • 掌編
  • 青春
  • 恋愛
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2014-11-08

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