リング1

いつもと変わらぬ日常が、その日、特別になったんだ…

人の輪、虹の輪、ドーナツの輪、タイヤの輪、ヘアゴムにブレスレット…
たくさんの輪がある。

私にとっての輪とは一体なんだろうと、
秘書の補講を受けながら、ふと思った。

輪になるから繋がっている。
人と人との繋がりも輪なんだ。
身に着ける物から人間関係まで全部が輪となり繋がっている。
たくさんの輪たち。君たちの重要さが今になって分かる。
ようやく気付いた輪の大切さ…

これから私はどれだけの輪に出逢えるのだろうか。

未来の私は素敵な輪を見つけているだろうか?
一生涯を共にする輪を…
最初で最後の大切な輪を見つけたい。

カシスオレンジの空、栗色の木々たち、澄んだ紅色に染まる街中
そんな今日この頃。変わらない日常に秋がやって来た。
秋は季節の中で1番好きだ。落ち着いた雰囲気で穏やかな気持ちになる。
山もお化粧をしているみたいに綺麗だし、お洋服も可愛いと思うし、
食べ物はよりいっそう美味しく感じる。
ふらふらと街中を歩いていた私…
新たな発見や興味が泉のように湧き出してくる。
わくわくしながら散策していると、見知らぬ本屋がぽつんと建っていた。
他のお店とは何だが違う異様な雰囲気を放つそのお店に、ふと興味が湧いた。
気付くと、私はその本屋の前に居た。そっとドアを開けてみた。
”チリン’’
え?何の音だろう、と足元に目を移した。
『あっ!』
そこには、首元に赤いリボンを着けた小さな黒猫がいた。
黒猫がこっちを見て、にゃあと鳴いた。そして歩みだしては、後ろを振り返り…言葉が無くても、伝わって来た。
(こっちに来てと言っているの?)
私は黒猫の後をついて行った。オレンジ色の灯りを放つランプ、古いけど、丁寧に修復されている本たちの間を通りながら歩いていると、扉の前で黒猫が止まった。
『ココへ入れば良いの?』
黒猫は、カリカリと扉を引っ掻き、開けてと言っているようだった。
ギィー…と、古びた扉を開けた。そこには、地下へ続く階段があった。ランプが灯る階段を私はくるくると降りて行く。すると、目の前に光りが広がった。
『うわぁ〜』
そこには古風な本から洋風な本、現代の新しい本までズラ〜と並んだ本が壁一面に広がっていた。…なんて不思議な空間なのだろう。
『ようこそ、君は何をお探しなのかい?』
夕焼けのような髪に漆黒の瞳をした彼に話しかけられた。独特な雰囲気の彼…私は目を奪われた。天井が硝子張りなので、月明かりでキラキラとして、とても綺麗。
『君は、僕の最初のお客さんだよ。』
『私が?』
『そう。ココへ来るお客さんは、皆、探し物を見つけに来るんだよ。僕は2代目なんだ。
この店は、最近受け継いだんだよ。だから君が始めてなんだ。』
彼は、ニカっと笑った。なんだかとても嬉しそうな彼をみて、私まで心が明るくなっていくのを感じた。何故だか彼とは初めて会った気がしなかった。何処か懐かしい彼…
私は時が過ぎるのも忘れる程、話しに夢中だった。
あっとゆう間に日がくれて、夜空にキラキラと輝く満面の星が広がっていた。


『またね。(君は…)』
と、彼は言った。この時の私はこの言葉の深の意味を
まだ気付いていなかったんだ。

リング1

リング1

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2014-11-06

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