春と桜と約束の木

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二部

〜約束のこと〜

俺はお風呂に入りながら昔のことをできるだけ鮮明に思い出そうとしていた。結衣菜は俺との思い出を完璧に覚えてそうで怖かった。それでもし、俺が覚えてないとか言ったらまた、あの涙目で、、。いや、もうあの顔は見たくない、すごく心が痛むから。俺は必死に彼女と過ごした日々を遡っていた。しかし、思い出したのは、ほんの少しの情報だけだった。黒髪の似合う女の子、大人しい性格、頭は良くてでも、クラスのみんなとはあまり仲が良かったような思い出はない。そうだ、結衣菜は極度の人見知りだった。今考えたら、結衣菜と仲良くなれたのは奇跡のようだったのかもしれない。でも、昔の記憶を引っ張り出してくるほど今の結衣菜とは遠ざかっていく一方だった。人ってそんなに大胆に変われるものなのかな、、。なら、俺は結衣菜にとって昔のまんまの俺なのかな、、。それもと少しは変わって見えてるのかな、、。俺は全身を湯船に沈め、一旦考えをリセットさせた。
あの約束を結衣菜が覚えていたら、俺と結衣菜は付き合うのかな。でも正直、俺と結衣菜は付き合うに釣り合っていない状態だって事は自分でも理解できた。結衣菜はすごく、美人になって帰ってきた。俺と付き合っても気が引ける一方だろう。

「どうすりゃいんだよ、、まじで、、」

俺は湯船に肩まで浸かり、溜息をついた。そろそろ出ようと、湯船から立ち上がろうとした時、ガラガラっと浴室のドアが開き、タオル一枚を巻いた結衣菜が立っていた。

「入るよ!」

俺は急いで、湯船に再度浸かり結衣菜に言った。

「お、おい!ちょ、まてよ!俺が今入ってるだろ!?」

「えぇ~?いいじゃない?昔は良く一緒に入ってたんだから~」

「それは、昔の話だろ!?ちょ、まって!今から出るから!ちょっと、目をつぶってて!」

「えぇー!出ちゃうの??せっかく、おばさんからも一緒に入っちゃいなさいって言われたのに~!」

「あの、クソババァァァァ!とにかく!結衣菜は目をつぶってて!」

俺は、しぶしぶ結衣菜が目をつぶったのを確認すると急いで浴槽から飛び出て、颯爽とタオルを腰に巻いて、結衣菜を浴室に入れさせた。

「はぁはぁはぁ、結衣菜ぁ!うちのシャワーは初めて勢いがないけど、後々勢いがますから、あまりひねらないような!?」

はーいと、すりガラス越しに結衣菜の声が聞こえる。すりガラスには結衣菜のスラッとした完璧なボディがうっすらと形を映してた。ついつい、魅入ってしまう自分を薙ぎ払うかのようにもう一枚タオルを取り、頭を思いっきり拭いた。

「くっそぉ!俺はどんだけだめなやつなんだよぉ!」

えぇー?なにーー?と結衣菜の声が聞こえる。慌てて、なんでもない!と返した俺は身体を急いで拭いて、風呂場を後にした。

「もう、なんなんだよ、、」

俺は自室にある、掛け時計をベッドに横になり眺め呟いた。秒針は容赦もなく、一定のリズムで動いている。結衣菜のやつ、報告もなくこっちに帰ってきて、挙句のあてに俺の家に一泊するなんて、どうゆう神経しているんだろうか。俺も一応は男なんだし、、。まさか、俺は男に見られていない!?そ、そんな訳ないよなぁ、俺だって成長してるんだし。背は低いけどさ、、。でも、結衣菜は俺のことどう思っているんだろうか、、。この際、本人に直接聞いてみようかな、ついでにあの約束の事も、、、、。
ふっと意識がかえってきた。あたりはさっきと違い真っ暗になっている。眺めていた掛け時計も今は暗がりの中で瞬時に確認することは出来ない。

「あぁ、いつの間にか寝てしまってたか、、」

考え事をしていたらいつの間にか眠りに入っていたらしい。俺は大きな欠伸をし、上半身だけ起こすと、異様にベッドが狭いことに気が付いた。おかしいなと思い、目をこすり隣をみると、そこにはスヤスヤと気持ちよさそうに眠る結衣菜の姿があった。

「ん!?」

俺は、急いで結衣菜と密着していた身体を動かし、距離をとった。 おいおい!なんで俺の隣で寝てんだよ!? そ、そうか!また母さんが変なこと言ったんだな!まったく余計な事ばっかりしやがって!
俺は、結衣菜を起こすべく声をかけた。

「おい!結衣菜?起きろー!」

結衣菜は、寝返りを打つ。

「おーい!結衣菜?ちょっとー!」

ある程度、声をかけると結衣菜がスーッと上半身を起こし、目をつぶったまま、んー?と返事を返してきた。

「結衣菜?起きろって!ここは俺のベッドだぞ!?」

結衣菜は眠たそうに目をこすりながら、意識を徐々に戻してきた。

「んー?春?もう、朝?」

「いやいや、違うよ!朝じゃないけど、ここは俺のベッドって知ってる!?」

まだ、寝ぼけているのだろうか。結衣菜は大きな欠伸をして続ける。

「春のベッドでしょ?知ってるよ~」

「いや、知ってるって、、。なんで、隣で寝てるんだよ!?ってか、よく見たら下に布団しいてるじゃん!?」

「お布団かたいもーん」

結衣菜は駄々をこねる子供のように言った。

「かたいもーん、、じゃないだろ!?人様の家に泊まりにきといて文句いいます!?」

「えぇ~それに~」

「ん!?まだ、文句があるのか!!」

「春の隣で寝たかったんだもん、、」

「お、い、、。そ、そんなこと言うなよ、、。なんか、俺が悪いみたいなるじゃねーかよ、、」

春と寝たかったんだもんって可愛すぎるだろ!!くっそぉ!もう、怒れねーじゃねーか!

「ねー、いいでしょ、、?」

結衣菜は今にも眠りにつきそうな声で言う。
いや!まて!俺はこの状況の自分が信用できない!間違いを起こしたなんて親に知れ渡ったら、、。

「いや、もうさっきのことはもういいから、結衣菜はベッドで寝てくれ。俺は布団で寝るから」

「えぇー、春と寝たいよ~」

「いや、だめだ!俺と寝たいなら布団で寝ることになるぞ??」

「え、ならベッドで寝るよ~。んじゃおやすみなさーい」

結衣菜は起こしていた上半身をゆっくりとベッドに沈め、スースーと再度、気持ちよさそうに眠りについた。

「いや、ベッドとるんかい、、」

俺は心のツッコミをつい、口に出してしまった。少し期待した俺がバカだったか、、。
そういや、明日は結衣菜の引っ越しの手伝いだっけな、、。その前に、志乃にこの事について相談しとこうかな。この時間だけど、一応、志乃に連絡を入れとこう。
俺は、スマホの電源をつけ、志乃にメッセージを送った。

《遅い時間に悪いな。明日は、朝早くから公園で話ができないかな?ちょっと、相談したいことがあって。このメッセージを朝に気づいたらまた、日時をずらしてから相談するよ》

俺は、確実に寝ているだろうと思い。俺も目をつぶった。ずっとベッドで寝ていたらから、布団になるとやっぱり固いな、、。まぁ、寝りゃ一緒だろ。いざ、眠りにつこうとした時、スマホから着信音が聞こえた。

「え、志乃のやつ。起きてんのか」

俺はスマホを取り、画面を開いた。

《ほんと、遅い時間だね~。まぁたまたま起きてたらいいけど! 朝早くってどれくらい?私はいつも5時前に起きてるけど?それより早く?》

「いや、5時前に起きてるって早すぎるだろ志乃のやつ」

《悪い悪い!そんな早くなくていいよ。うーん、7時ぐらいはどう?》

すぐに既読がつく。

《7時??いいよー!公園っていつものでしょ?》

俺もすぐに既読をつける。

《ありがとう、そうそう、いつもの公園で7時に》

《おっけー!春から相談ってどんな内容なんだろうね~?》

《いや、まぁたいしたことじゃないこともないけど、、。まぁとりあえず詳しいことは明日話すよ》

《はーい!楽しみにしてるね~♪》

《それじゃ、おやすみ》

《おやすみなさーい!》

スマホの電源を切った。志乃やつ、こんな時間まで何してたんだろうな。まぁ志乃の事だから勉強してたんだろう、勉強に関しちゃ俺は志乃に迷惑かけてきたからなぁ~。まぁ明日はジュースでも買って行ってやるか、、。
そして、アラームを6時にセットし、眠りについた。

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更新日
登録日
2014-11-05

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