SS38 テレビショッピング

テレビを点けると、ショッピング番組が流れていた。

 十二時を回って帰宅した。
 しんとした室内にテレビを点けて音を満たす。

”今年のクリスマスプレゼントにお子さんそっくりの人体模型は如何ですか?
 人体の仕組みを学ぶ事は勿論、災害時には目が光って非常用ライトに早変わり。
 お子さんそっくりに仕上げますので、愛着が湧いて手放せなくなります。”
”これ、もしかして高田さんのお子さんですか?”
 司会の高田が隣に立つ、模型の頭を撫でながら答える。
”そうですよ。一足先に作って貰っちゃいました。かわいいでしょう?”
”え、ええ……すごく……。”
”そしてここ、ここをご覧ください。通常はオプションの二足歩行キットが何と今回標準装備!
 深夜、家の中をランダムに徘徊する事も可能なんです。そう、家の中でお化け屋敷が体験出来るんですよ。
 深夜トイレに起きて出くわせば、悲鳴を上げる事間違いなし。”
”きゃー!”
”パソコンに接続して、行動を設定する事も出来ます。つまりロボットのお勉強としても最適。
 最高のエンターテイメントをご満喫頂きつつ、電子工学を学ぶ事も出来ます。
 さあ、こんなお得なこの人体模型。今ご購入頂くと、もれなくもう一体プレゼント。
 お写真をお送り頂ければ、模型のお顔は職人が手作りで一体一体丁寧に仕上げます。”
”わあ、機能満載で、すごいお買い得感ですね。これならお子様も大喜び。”
”先着百名様限定。さあ、そのお値段は……”

 ついつい足を止めて見入ってしまったが、闇に佇むソレを想像して思わず身震いする。
 こんな物誰が欲しがるんだ……。
「怖過ぎるだろ……」

 ***

 こんな物誰が欲しがるのかって?
 どんな物でも勢いに任せて電話してしまう人はいるものさ。
 ほら、電話がひっきりなしに鳴っている。
 怖いね、こういう心理。

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テレビを点けると、ショッピング番組が流れていた。

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2014-11-05

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