『信頼のピットマン』

日本が世界でも誇れるもののひとつ、ロボット。



もっと先の未来では当たり前のものになっているかもしれません。


~午前6時50分~



「やっと完成した!!……おいピットマン。お茶を入れてくれ。」


「カシコマリマシタ。」



俺の名前は草野武。
こいつは、俺が今完成させた超人型ロボット。
姿が限りなく人間に似ているのが特徴だ。
名前はピットマン。
俺が昔好きだったマンガの主人公からとった。
自慢じゃないが、若くして大手の会社で、部長として勤めているから金銭的には大分余裕があるほうだ。
その助けも借り、このロボットには時間と大金をかなりつぎ込んだ。
特に気にしたのは外見。
人間の姿だが、モデルは社長。
会社では怒鳴られながら頭を下げ、家では敬語を使わせて働かしている。
なんとも言えない快感だ。



「あと、甘いものも用意してくれ。」


「ハイ、オチャデス。」


「甘いものは何かないのか?」


「……………。」


「あっ。ピットマン、甘いものを用意してくれ。」


「カシコマリマシタ。」



ロボットを作ったといっても、欠点はたくさんある。まず名前を呼ばないと、自分に言っていることではないと判断し、動かない。
さらに、こいつは誰のいうことでも聞く。



「それじゃ、仕事に行ってくるからピットマン、留守番を頼む。わかってるな、もし誰かきても、宅配便と回覧板以外は家の中に入れるなよ。あと、宅配便にサインを頼まれたらすること。わかったな」


「カシコマリマシタ。」


「それじゃ。行ってくる。夕方6時には帰ってくるからな。」


「イッテラッシャイマセ。ゴシュジン。」



~30分後~



「郵便でーす。草野さーん。いますかー?」


「……………。」



~1時間後~



「宅配便でーす。」


「ショウショウオマチクダサイ。イマカギヲアケマス。」


ガチャ!


「あれ?草野さんのお手伝いさんですか?」


「ドウゾナカニオハイリクダサイ。」


「え?いや、ここでいいですよ。この紙にサインを下さい。」


「カシコマリマシタ。」


「荷物はここに置いときますね。それじゃ。失礼しまーす。」



~2時間後~



「回覧板でーす!草野さーん!」


「ショウショウオマチクダサイ。イマカギヲアケマス。」


ガチャ!


「おっ。開いた。…………ふふ、騙されたな、おい!俺は銃を持ってるぞ!おとなしく俺のいうことを聞け!」


「ドウゾナカヘオハイリクダサイ。」


「は?」


「ゴシュジンニ、カイランバンハナカニイレロト、イイツケラレテイマス。」


「お前、草野じゃないな。誰だ?」


「……………。」


「おい!無視するな!撃つぞ!」


「……………。」


「この銃は本物だからな!返事をしろ!本当に撃つぞ!」


「……………。」


「最初から消すつもりだったがな……。」


バンッ!


「……………。」


「なに!??…死なない。いや、体が銃弾を弾いた…。」


「……………。」


「待てよ…。俺は少しならアレに詳しいから…。」


「……………。」


「やっぱりだ。こいつはロボットだ!」



~10分後~



「このロボット何か合い言葉がないと動かないとみた。あれから全く動かないからな。しかし俺のことは危険と思わないのか?」


「……………。」


「まあいい。草野のとか言うやつ、やはり大手会社の部長だけあって、金目のものはわんさかあるな。こんな趣味悪い顔のロボットに留守番まかせるなんてどうかしてる。ま、別にロボットはなにもしてこないし、俺はすぐにでも逃げるか。」


「……………。」


「あれ?これは……ピットマンのマンガじゃないか。逃げる前に少しだけ…。懐かしいなー。子供のころ見てたんだよな。ピットマン助けてーって言うと助けにくるんだったけ?」


「カシコマリマシタ。ナニヲタスケマショウ。」


「うわ!?ビックリした。なんで急にしゃべりだしたんだよ。」


「ハイ、ワタクシハピットマン。ワタクシノナマエヲヨンデイタダケバ、ナンデモイタシマス。」


「……そういうことか。合い言葉は好きなマンガの主人公か。しかし、このロボット本当に何でもするのか?…おい、ピットマン俺が来たことは誰にも内緒だぞ。」


「カシコマリマシタ。」


「えーと。何か他に金になりそうなものはあるか?」

「……………。」


「あっ。ピットマン、何か金目のものを出せ。」


「カシコマリマシタ。ショウショウオマチヲ。」


「ふふ。こいつは使えるぞ…。そうだ!こいつごと盗んで帰ろうか。」


「オマタセシマシタ。コチラハゴシュジンノタカラモノ、ジカイッセンマンエンノ、メイガカワノナガレデス。」


「お前最高だな!」


「……………。」


「こいつは絶対連れて帰る!でもあと少しだけ…。おい、ピットマン、この家でとびきり旨い酒を持ってこい!」


「カシコマリマシタ。ショウショウオマチヲ。」


「はは。楽しくなってきた。ここのやつは仕事もあるし、まだ当分帰って来ないからな。旨い酒だけ飲んでから帰ろう。それからでも遅くない。もちろん、あいつも盗んでな…。」


「コチラデス。」


「おっ。どれどれ…ゴクッ!……ウマい!!やっぱり高い酒はくそウマい!ピットマン、色んな酒どんどん持ってこい!」


「カシコマリマシタ。」



~1時間後~



「まだまだ、ヒック!おれはのぶぞ~!ヒック!う゛おいピットマン!なにがおもじろいごとしてみろ!」


「カシコマリマシタ。ダンスヲシマス。」


「いいぞ~!もっどもっど!やばいんだな。おれ、ろれつまわっでない。ま、いっか。ばはは!もっと飲ぶぞ~!」


「ヘンガオヲシマス。」


「ばははは!おもしろいだ~!……おい、はらがへっだ。ざけのつまみにもなるじ、ピットマン、うまいもんをたらふぐくわせろ~~!」


「カシコマリマシタ。」



~午後6時頃~



「ただいまーピットマン。」


「オカエリナサイマセ。ゴシュジン。」


「ふう、疲れたー。さて、お楽しみの酒で今日の疲れも吹き飛ばすか。」


「……………。」


「あれ?台所にいれてたはずの酒がない。ピットマン、ここにあった酒は?」


「リビング二アリマス。」


「リビング?なんでリビングなんかに………ん!?誰だこいつ!おい、ピットマン!誰なんだ、何で家に入れた!」


「ハイ、カイランバンヲモッテキマシタ。」


「おい、こいつ銃持ったまま寝てるぞ?しかも、金目のものばかりカバンにつめてる。泥棒か。俺の楽しみの酒を飲みやがって。食い物まで食い散らかして。ピットマン、話は後で聞くからな!とりあえず警察に電話してくれ!」


「カシコマリマシタ。」


「銃は奪ったからもう安心だけど……。あっ俺の宝物まで盗もうとしてるじゃないか。ピットマンのやつ、まだまだ改良が必要だな。……それにしても飲み過ぎだろこいつ。全然起きないし………ん!?!?まさか……!?おい!ピットマン!やっぱり警察に電話するな!」


「カシコマリマシタ。」


「ピットマン、救急車に電話してくれ!」


「カシコマリマシタ。」



このあと、この泥棒は死んだ。
死因は毒。
現場検証とアリバイがあるため、俺はもちろん無実になったが、なぜ俺が救急車を呼んだのか。
それは、机の上を見れば簡単ににわかった。
机の上には、高級食材である、タラとフグが調理されていない状態で、さらに食べかけでおかれていた。
べろべろに酔っていたのだろう。
調理されてない猛毒のフグを食べるなんて。
可哀想だが、ま、自業自得だな。
おかげでわかった。
ピットマンには改良が必要だな。
早いうちに。
一応俺は、ピットマンになぜ泥棒がフグを食べたのかを聞いてみた。



「ピットマン!家に入れたのはわかったけど、何であの泥棒は毒のあるフグを食べたんだ?」



するとこう答えた。



「ハイ、アノオカタガ、ウマイモンヲ、タラ、フグ、クワセロ~~ト、オッシャッタカラデス。」



こう答えたあと、ピットマンが一瞬悪魔のように微笑んだ気がした。




終わり

『信頼のピットマン』

みてくださって、本当にありがとうございます。


これからも良い作品づくりにつとめていきたいと思います。

『信頼のピットマン』

ちょっと未来の話。 あるひとりの男が、あるロボットを作りました。 それがすべての始まり。

  • 小説
  • 掌編
  • SF
  • コメディ
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2012-01-29

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