【義母特別編・早漏VS遅漏】

【義母特別編・早漏VS遅漏】

一話

【義母特別編・早漏VS遅漏】




【一話】



 グレー系のスカートの中、黒いガーターストッキングで両脚を包む良子は両手をテーブルの上に置いて全身を震わせ時折尻をキュッと締め付けていた。

 そして白いワンピースを内側から押し付ける豊満な胸がボタンを弾き飛ばそうと無造作に大きく揺れる時、スカートの中に頭を入れてガーターストッキングと肌の際を舐めつつ匂いを嗅ぐ義理の息子が正座した自らのスベンの真ん中を大きく膨らませていた。

「ああぁん! もう… もう堪忍してぇー!」
 黒いストッキングに染み込んだ良子の肌の匂いを嗅ぎつつ、露出した肌を舌先を使って舐めまわす義理の息子に良子は思わず両脚を硬直させた。

「はぁはぁはぁはぁ… いい… 匂いだ… 堪んねぇーよ! 義母(かあ)さん…」
 息子は良子のストッキングを吊るガーターベルトの吊り紐に沿って舌を下から上へと滑らせつつ、パンティーに染み込んだ良子の恥ずかしい匂いを嗅いだ。

 そしてその頃、勤め先の商社の喫煙室の中で同僚に再婚して二年経過しても尚、仲良しの母子自慢をする悲しい父親で亭主の総一郎がタバコを深く吸いつつ大きく煙を吐き出した。

 三年前、総一郎は中途入社してきた良子の教育係りとして知り合い、そこに愛が芽生え後に二人は結婚する何処にでもありそうな状態だったが、良子を始めて見た息子の潤一郎はそのグラマーで美しい顔立ちに心を奪われた。

 そして父親である総一郎が再婚して数ヵ月後に良子は義理の息子である高校一年生の潤一郎に犯されたが、当初は義理の息子に犯されたと言う事実に悲しみに耐えていた良子も、時と共にその事実に慣れ情事を終えても尚も何度も求めてくる若い肉体の潤一郎に魅かれて行った。

 結婚当初、早漏の総一郎は週一度のセックスで自分勝手に挿入して数分でイッてしまうことに不満を感じていた良子だったが、それとは対照的に遅漏の潤一郎は良子に女の幸せを心行くまで味合わせた。 挿入して数分で終焉する亭主の総一郎と挿入して一時間以上も持続する遅漏の潤一郎に、良子の気持ちは一気に傾き「許して!」と、言いつつも潤一郎からの誘いを断れない良子だった。

 そして総一郎と言えば、乳房を揉み吸い付きつつ陰部を指で弄り速攻で挿入するだけのセックスに対して、潤一郎の愛撫は二時間以上、それも良子の隅々までと言う高校三年らしからぬモノだったことで良子は身も心も潤一郎に傾いていた。

 再婚した良子と息子の潤一郎が男女の関係になっている等とは夢にも思わない総一郎は、良き主としてそして良き父親として他人(ひと)の嫌がる残業を買ってでつつ自宅に電話して残業を伝え、その連絡に良子と潤一郎は安心して互いの肌を擦れあい唾液を絡ませた。

「今夜、親父とのアノ日だろ。 股に力入れて速攻で終わらせるんだな♪」
 脱いだ下着と服を持って二階の自室から出る寸前、ベッドに横たわる良子をチラっと見た潤一郎はそのまま一回の風呂場へ向かった。

 そして残業を終えて帰宅した総一郎を寝ずに待っていたと言わんばかりの良妻ぶりを発揮する良子は、総一郎からカバンとコートを受け取りつつ深々と頭を下げた。

 リビングに入った良子はカバンとコートを片付けるとそのままダイニングへ入り、疲れた感じでソファーに座る総一郎はグッタリしつつ壁掛け時計を見て「もうこんな時間か…」と、呟いてダイニングへと席を立った。

 慌しく給仕する良子は笑みを絶やさず、総一郎は一家の主として一日の疲れをコップに注がれたビールで癒しつつ、良子の後ろ姿を足元から腰の辺りまで見流して黒いストッキングに包まれたフクラハギに見入った。

 その頃、二階の自室でベッドに染み込んだ良子の香りに包まれつつ時計を見た潤一郎は、父親のつまらないジョークに笑みを浮かべて楽しそうに振舞う良子を想像しつつ、良子の残して行った汚れたパンティーに顔を埋め咽るような匂いに自らの肉棒を扱いた。

 そしてそれから二時間後の一階寝室では挿入して数分後の総一郎の切羽詰まった「イクゥー!」と、言う声が暗闇に溶け込み同時に良子から素っ気無く離れた総一郎は良子に背中を向けるとそのまま寝入ってしまった。 出すモノを出したら後はどうでもいいと言う典型的なオッサンだったが、良子は使用済みのコンドームを結びつつ自らの陰部を拭いてコンドームを包んで屑篭に捨てた。

 良子はイビキをして寝ている総一郎の気配から遠ざかるように寝室を出るとそのまま風呂場へ直行し、汚物でも洗い流すかのように肌に染み込んだ総一郎の匂いを洗い流したが、身体の火照りの収まらない良子は頭から冷水を浴び、数分でイッてしまった総一郎を恨めしく思いつつ、我慢出来ないとばかりに自らの指で自分を慰めた。



【二話】

 

 

 
 主である総一郎を休日出勤へ送り出した後、待っていたとばかりに二階から降りてきた潤一郎は玄関の戸締りをしていた良子のフレアースカートを真後ろから捲くり上げると、慣れた手つきで良子の下半身を覆う黒いパンティーストッキングと白いパンティーを同時にヒザまで引き降ろし両脚を開かせ良子の恥ずかしい部分に硬くなったモノを捻じ込んだ。

「あんっ! い! 痛い!」
 ドアノブを頼りに尻を突き出さされた良子は突然の潤一郎の侵入に顔を顰めつつも、縦に硬いモノを擦り付ける潤一郎に恥ずかしい体液を割れ目に溢れさせた。

「んあ! 戻ってくるかも知れない! もう少し… もう少し時間を… あん! ちょ! ちょうだい! アヒィ!」
 真後ろから硬いモノを挿入してきた潤一郎に良子は甲高い小声を発しつつ擦れる肉棒に両膝をガクガクさせた。

 プリプリした弾力のある良子の尻を容赦なく下から突き上げる潤一郎の腰は激しく音を立て、ドアの向こう側から聞こえて来る近所の主婦の話し声に、良子は咄嗟に喘ぎ声を封じるように左手で自らの口元を塞いだ。

 潤一郎はそんな仕草をする良子を真後ろから見てニヤニヤ笑むと、服の中に左手を入れ肌伝いにブラジャーを上に摺り上げ豊満な左乳房を鷲掴みして乳首を指で弾いた。

 良子は自らの恥ずかしい体液をパンティーの当て布に滴らせつつ、弾かれる乳首をコリコリに硬くさせ身悶えを耐え鳴き声にも耐えてドア向こうの主婦達の話し声が遠ざかるのを待った。

 潤一郎の硬く長いモノは「ズン! ズン!」と、良子の奥へと侵入し上下に擦れ我慢も限界に達した辺り、ドア向こうの話し声が遠ざかり「ぅああああん!!」と、身悶えしつつ喉に溜まっていた鳴き声を外に吐き出した。


 パンパンパンパンパンパンパンパンパン!

 
 玄関に響く潤一郎と良子の肌の弾ける音が周囲の空気を揺らし、下駄箱の上の花瓶に生けた花がリズムよく揺れ、良子の恥ずかしい部分から伝わった愛液は潤一郎の肉棒を伝って筋肉質な潤一郎の陰毛に絡みついた。

 そして揉み回す豊満な乳房の中心にあるコリコリした乳首を潤一郎の指がキュッと摘むと、良子は思わず肉棒の入っている肉壁をギュッと締め付け擦り付ける肉棒からの強い刺激に潤一郎は顔を顰めた。

 
 い! いっちゃう! いっちゃうううぅ!!


 腰を回しながら硬い肉棒を斜め上下に運動する潤一郎は、その強い刺激と義母(おんな)の甘い香りに酔い痴れつつ良子は奥歯を噛み締めて自らの昇天に備えた。

 そして「イク」を、何度も連呼した後、良子は両膝を小刻みに震わせグラマーな全身(にくたい)を無造作に揺り動かし、その振動が潤一郎の肉体(からだ)にも伝えられた瞬間、乳首を摘んだ潤一郎の指が前側から良子の硬くなったクリトリスをキュッと回し摘んだ。


 いくうううぅぅー!!!


 良子は耐え難く燃え上がる快感に思わず甲高い声を発しながら恥ずかしい部分に「ぎゅうぅっ!」と、力を込めつつ全身をヒクヒクと硬直させ吐息を忘れたように止め果てた。

 だが遅漏の潤一郎は自らの昇天まで七割と言うところで尚も腰を振り続け、潤一郎がイクまでに良子は三度ものエクスタシーに達したが、潤一郎の熱い体液は寸でで良子の肉穴から脱してそのまま良子の白い腰に着弾した。

 潤一郎は熱い体液を撃ち放った後「ドックンドックンドックン」と、溢れて止まらない体液を良子のパンティーに滴り落とし良子の愛液と絡ませ溶け合った。

 その頃、乗客少ない電車に揺られながら会社を目指す父親であり良子の亭主の総一郎は、休日だと言うのに家に居てやれない自分に自己嫌悪に陥りつつ唇を軽く噛んで心の中で二人に詫びていた。

 だが時同じくして三連続してエクスタシーに導かれた良子は玄関で崩れ落ちその余韻に浸っていた。 そしてそんな良子を放置してシャワーを浴びる潤一郎は休日出勤してくれた父親に心ならずも感謝していた。

 


【三話】



 潤一郎の通う高校には古い仕来りで年に一度の父兄参観が有ったが、校舎の中は勿論のこと潤一郎の学級ではどよめきを隠せなかった。

 そしてその視線とどよめきの中心に目立たないようスーツスカートに薄化粧姿の義母である良子の姿があった。

 豊満な肉体に男女問わず見る者を目を奪う美しい顔立ちの良子の両側は、引け目を感じる女性達が一人分の間隔を取っていた。

 そして当然のことながら冷静にそのどよめきを感じつつも、心の中で優越感に浸る潤一郎が居た。

 潤一郎の同級生達は誰の母親だろうと詮索の目を右往左往に飛ばしつつ担任教師が入室して尚も、動揺を隠せなかった。

 そして同時に三度目を向かえた良子もまた周囲の空気の異変に気付きつつも冷静さを保っていたが、混雑する教室の後部に立ち並ぶ父母達の中で浮いた存在になっていた。

 そんな中、潤一郎は少し向こう側の担任教師の良子を見る鋭い視線に内心ニヤニヤしてもいた。

 優越感… 

 潤一郎はその優越感の真っ只中に居て同級生達の母親達がまるでゴミクズのようにも思えていつつ、授業は継続され心の中で帰宅したら抱いてやろうと決めていた。

 そしてそんな緊迫にも似た状況が続く中での父兄参観は終わりを告げたものの、あの美しい女性は誰の母親なのだろうと言う話題は途切れることなく先に校舎を出た良子と数十分遅れで出た潤一郎は顔に出さぬまま帰宅の途に着いた。

 そして帰宅した潤一郎を出迎えた良子を思わず抱きしめ濃厚な口付けをした潤一郎は、その興奮を一階のリビングで良子に求めた。

「だめぇ! 緊張して… だめぇ… 汚れてるのぉ!」
 潤一郎は夢中で良子のスカートの中に手を入れると、パンティーストッキングの上から良子の恥ずかしい部分を手の平で擦りつつ、はち切れそうなブラウスのボタンを慌しくそして慣れた手つきで外すと、スリップとブラジャーの肩紐を降ろし豊満な乳房に貪りついた。

「あひぃ! あああんっ! だめぇ… 許してえぇー!」
 身体の汚れを恥じる良子は抵抗する間もなく乳首を吸われ舌でコロコロ回されつつ自らの乳首が硬くなっているのを感じた。

 潤一郎の片手は良子からパンティーストッキングとパンティーを一度にスルスルと剥ぎ取り左脚に残しつつそのままスカートを脱がせた。

 良子は突然、右足(はだ)に感じる部屋の気温に、汚れて恥ずかしい部分を舐められてしまうと悟って両脚を閉じようとしたが、潤一郎の乳首攻めに身体の力が抜け意図も簡単に両脚を開かされた。

 潤一郎はそのまま良子の両脚の間に顔を入れ蒸れに蒸れた良子の恥ずかしい割れ目に舌を押し付け、その激臭に咽て咳き込みつつ舌を上下させ汚れを舐め取って飲み込んだ。

「あひいぃ! あひいいぃぃーー!!」

 良子は硬くなった両乳首を弄られつつ、汚れて恥ずかしい部分の中を滑る潤一郎の舌に赤面して激しく身悶えしてソファーを軋ませた。

 そして潤一郎は乱れに乱れきった良子の汚れの殆どを舐めとって飲み干すと、そのまま第二のツボである黄門にその舌先を滑らせ便臭漂う表面で舌先を回した。

「イヒィィー!! アヒィ! イヒィー!」
 恥ずかしい女の泣き声を奏でる良子を全身で感じる潤一郎は両手と舌を止めることなく愛撫だけで良子に潮吹きをさせその全てを自らの胸元で受け止め、良子の左脚に残されたパンストとパンティーは激しく揺れ振り回され豊満な乳房は潤一郎の両手を弾き飛ばすほど大きく揺れた。

「誰もが羨むこの義母(おんな)は俺だけのモノだ… その潮一滴たりとも無駄にはしねえ!」
 心の中で囁く潤一郎は潮吹く良子の肛門の汚れをきれいに舐め摂り飲み干すと、潮で塗れた良子の割れ目にムシャブリついてクリトリスを勃起させた。

 良子は割れ目にムシャブリついてクリトリスを舌で回し舐めする潤一郎の背中に爪を無意識に立てた。

「お願い! 来てぇ! 入って… 私に入って来てえぇー!!」
 勃起したクリトリスを唇で摘んで上下させていた潤一郎は良子の哀願に応じるように体位を変え、硬く聳えた肉棒を割れ目の窪みの中へと挿入した。


「ズブリユウゥゥー!!」
「ヒイイィィィーー!!」

 
 潤一郎の肉棒がヌルヌルした内肉に一気に根元まで入ると、良子は全身をヒクヒクと痙攣させて限界まで仰け反って激しい身悶えと共に自らも腰を振った。

 
「パンパンパンパンパン!!」


 潤一郎と良子の肌の弾む音は挿入から一時間以上続けられ良子はその間に数回のエクスタシーに達し、四度目のエクスタシーを迎えた瞬間、ドロドロした熱い白い液体が良子の口元(かお)に激しく着弾した。

 ドロドロと流れる白い液体は良子の口と鼻、そして閉じた両瞼から四方八方にヌルヌルと流れ落ちソファークッションを不気味に濡らし良子はグッタリとその場で首を横に倒した。

 そしてそれから数時間後、潤一郎の住む家は仕事から戻った父親である総一郎を暖かく迎えての夕飯に入っていた。

 父親である総一郎は仕事の話しは一切家庭に持ち込まず、通勤途中であった出来事や出張先であった面白くない冗談話を延々と続け、潤一郎も良子も笑顔でその内容に付き合うアットホームを演じていた。

 まさか自分の妻が息子と愛し合っているとも知らない総一郎は一家団欒の一時を過ごしていたのだった。



【四話】



 父親である総一郎の出張中、夜の営みを終えて朝を迎えた二階の潤一郎の部屋。 目を覚ました良子は潤一郎の姿がない事に気付いて時計を見て慌しく脱がされた下着類を持ちバスタオルで身を包んで一階へと降り立った。

 潤一郎は既にシャワーを終え、リビングのソファーに座ってテーブルの上に広げた新聞を見ていた。

「おい良子。 まただよまた! 鬼畜の美食家の新しい犯行! 全く酷いことするよな… 生きた女の肉を喰うなんてよ!」
 潤一郎はシャワーへ行く途中の良子を呼び止めた。

「怖いよね… その事件。 今年に入って数百件でしょ!? 他人事じゃあないわ!」
 下着類を腹に抱きしめる良子は新聞に見入る潤一郎に顔を並べた。

「おっぱいだの太ももだの尻だのって、異常だぜコイツら! 何が美味いんだ!?」
 新聞に見入る潤一郎から漂うシャンプーの香りに思い出したようにシャワーへと急いだ良子は背筋に寒さを感じて右手で自らの尻を撫でた。

 潤一郎はそんな良子の後姿を目で追ったが直ぐに新聞に視線を移動した。

『コイツ。 尋常じゃあねえな… 何が鬼畜の美食家だよ全く! 身体食われた被害者のこと考えたことねえのかよ!』
 タバコに火を点け一吸いするとその視線を新聞広告欄の印刷された女性に移した。

 そして潤一郎の視線はそのビキニ姿の女性の身体に釘付けになった。

『おっぱいってどんな味なんだろ… 内モモに尻か… おえぇー!』
 心の中で生きた女の肉の味を想像した潤一郎は突然込み上げる嘔吐感に新聞から視線を遠ざけた。

 そして社会面の半分を埋め尽くす鬼畜の美食家の犯行を一つ一つ見ては顔を強張らせた。

 三十分後。

「潤ちゃん! 直ぐに朝ごはんの用意するからね、待ってて♪」
 主である総一郎にも見せたことのないノースリーブにショーパン姿の良子は、全身をプルンプルンと震わせてキッチンへと足を急がせた。

 潤一郎は目を点にして鬼畜の美食家の犯行を見続け大々的に報じるメディアを心の中で批判していたが、被害女性たちの声を新聞に見た潤一郎は右手に拳を握った。

『全く、女は味わうもんで食うモノじゃないだろうに!』
 心の中で呟く潤一郎は半分まで燃え尽きたタバコの灰を灰皿に落とし新聞を畳んだ。

 そして朝食を摂りつつ目の前の良子に潤一郎は声をかけた。

「そういえば三擦半(オヤジ)は何時の帰りだっけ?」
「確か明日の夕方には戻るっていってたけど♪」
「そう言えば、お前も変わったよな… 初めて俺に犯られた時は相当、俺のこと憎んでただろ?」
「そうね… 確かに恨んでたけど、貴方も知っての通り総一郎(かれ)は三擦半だからね、結構ストレスは溜まってたから、今じゃ犯られて良かったって心底思ってるわ~♪」
「そっか…♪ まあ、そう思ってくれてんなら男冥利に尽きるってもんだぜ♪」

 照れくさそうに笑みする潤一郎はチラッと良子を見て早々に朝食を切り上げると、再びリビングに戻ってタバコを吸い始め、良子はシンクを前に洗いモノに専念したが、ショーパン姿の良子の後姿をダイニング越しにチラチラ見る潤一郎はその裏モモの揺れに『確かに美味そうだ…』と、心の中で思ってもいた。

 その頃、出張に行った総一郎は懸命に汗して顧客相手に商品説明をし、作り笑顔も痛々しいほどであった。

 息子のため妻のためと懸命に頑張る総一郎は大学受験を控えた潤一郎を時折思い出しつつ、寂しい想いをさせている妻の良子への申し訳なさに堪えていた。

 そして嫌な顧客に愛想を振りまきつつ頭をヘコヘコ下げて邪険な態度を取る顧客にも自らを投げ捨てて商品説明に汗を流した。

 愛する家族のためと毎回出張で使う安旅館の冷えた夕飯と、愛想の無い女将に気遣いして早々に食事を切り上げて夜の九時、いで湯を止められた温い風呂で汗を流した。

 だがその夜の九時過ぎ、家にいる潤一郎と良子は肌と肌を重ねあい互いの体液を交換するがごとくシッポリと濡れベッドを軋ませていた。

 そんなことになっているとは一向に知る由もない総一郎は、四畳半一間の裸電球の下で布団に腹ばいになって、営業報告書の作成にペンを急がせていた。

 そして良子が数回のエクスタシーに突入した頃、総一郎は一人寂しく一日の疲れを癒す缶ビールをすすり、寂しさを紛らわすためか良子を思い出してマスターベーションに専念していた。

 そんな夜十時過ぎ総一郎は就寝したが、自宅にいる良子と潤一郎は二階ベッドに持ち込んだノートパソコンで肩を並べて普段読んでいるネット作家の小説に見入っていた。

「今夜は此間の続きからだな。 縄奥。 性転換Ⅹとっ…」
 潤一郎が、ノートパソコンでお気に入りのページをクリックすると、パッと画面が変わって二人の前にその執筆が示されると二人は無言になって描写を想像しつつ読みふけった。

 男が性転換して女になって彼氏との恋愛感情をブツけ合う性転換シリーズを最初に見つけたのは良子だったが、最初はホモだと馬鹿にしていた潤一郎もチラチラと見るうちにすっかり縄奥のシリーズにのめり込んで行った。

 だが、同じ縄奥でも開けない「義母シリーズ」に、二人は罪悪感を消すため敢えて開こうとはしなかったが、内容は読んで字のごとく「義母」と、名の付くシリーズは潤一郎と良子の関係を容易に想像出来たからだった。

 そして深夜の零時、二人は縄奥を閉じるとパソコンを棚に乗せ、再び愛欲の中へと突入し良子は間を挟んで六度目のエクスタシーで失神し、疲れ果てた潤一郎は良子に重なってグッタリと目を閉じ、総一郎の自宅は日曜の朝十時を過ぎてもカーテンは開かなかった。


【五話】

 
 

 
 
 一週間の仕事を全うした総一郎は金曜の夜の夫婦の時間、有り得ないほど燃えていた。

 風呂上りの良子を待ちきれないとばかりに二階に居る潤一郎を気に掛けながらも、寝室のドアの前を行ったり来たりして今か今かと待っていた。

 そしてそれを事前に知っている潤一郎はわざと大きな音を立てて二階と一階を行ったり来たりして総一郎を大いに慌てさせ、それに気付いた良子もまた、わざとリビングで風呂上りの湯冷ましをして潤一郎と視線を重ねて薄ら笑みを浮かべた。

 総一郎(ちちおや)のあだ名は「三擦半」と、ニヤニヤして涼む良子を廊下の影から顔を出して冷やかす潤一郎は、父親である総一郎が燃えていることを察し「どうせ三擦半」だろうにと、寝室に聞こえるように廊下に音を立てた。

 そして廊下を通じて寝室に響く潤一郎の足音に「ビクンッ!」と、身体を震えさせつつ良子が来るのを待ったが、一向に来る気配のない事に総一郎は堪りかねて寝室を出てリビングへと足を急がせた。

「ああ、父さん! ごめんよ♪ ちょっとわかんないとこあってさ、今、お母さんに聞いてたとこなんだ♪」
 教科書とノートを持ってソファーに良子と並ぶ潤一郎は教科書を見せて笑みを浮かべた。

「ああ! いや! いい! うん! 勉強は大事だからな! じゃあ父さんは先に寝るがお前もソコソコにな!」
 父親である総一郎は父親の威厳を示しつつガウン姿の良子をチラッと見て寝室へ戻って行った。

「あっははははは♪ いっひひひひ♪ うふふふふふ♪」
 潤一郎と良子の二人は声を潜めて爆笑し、総一郎のがっかりしつつも父親の威厳を見せる顔を思い出した。

「三擦半のヤツ、相当焦ってたな♪ いっひひひひ♪」
「もおぅ、悪い子ねぇ♪ うふふふふふ~♪」

 そして時間も十一時を回った辺り、そろそろ勘弁してやろうかと潤一郎は良子の頬にキスをするとそのまま二階へと足音を大きくして戻って行った。

 だが、良子を待っていたはずの総一郎は待ちくたびれたのか良子が寝室に行くとベッドの上でイビキをして寝ていた。

『なんか可哀想だな…』
 心の中で総一郎を哀れに感じた良子は静かにベッドに入るとそのまま静かに寝息をたてた。

 そして翌朝、総一郎に求められる前に早起きした良子は早々に寝室から出て家中のカーテンを開き朝食の用意に取り掛かった。

 結局、一度も良子を抱くことが出来なかった総一郎は目覚めて時計を見て大きな溜息をつくと、良子の寝ていた辺りの匂いを嗅いでシコシコと自分を慰めた。

 その頃、示し合わせたように早起きしていた潤一郎は、父親の総一郎を待たずに良子の用意した朝食を摂っていたところへ、寝巻き姿の総一郎が起きてきた。

「昨日は遅くまで勉強していたようだが無理は禁物! 今夜は早く寝るんだぞ♪ 身体を壊したら元も子もないからな♪」
 父親らしく振舞う総一郎は朝食を摂る潤一郎に語るとそのままトイレへと移動した。

「プッ! ぷっははははは♪」
 夜、何も無かったことを事前に聞いて知っていた潤一郎は思わず吹いて大笑いすると、良子も釣られて声を殺して大笑いし潤一郎の肩にのしかかった。

 その頃、寝室で使い終えたテッシュをトイレに流し小便を終えた総一郎は「今夜こそ!」と、心に誓い水を流しそのままトイレから出て洗面所へと移動した。

 その足音を聞きつつ朝食を終えた潤一郎は、隣りの席で朝食を摂る良子のスカートに手を入れ右太ももをストッキング越しに触手してから席を離れた。

 そして潤一郎が二階の自室に移動すると入れ替わるように総一郎が入って来て席について食事を始めたが、触手されるかも知れないと察知した良子は総一郎と入れ替わるようにダイニングから出て庭の花壇に水撒きを始めた。

 一人、ダイニングに残された総一郎は、密かに良子へ触手してやろうと思った企てを失敗に終わらせ悔しがった。

 一方、二階の自室に居た潤一郎は二階の窓を開け花壇(にわ)に水遣りする良子を見下ろし、良子もまた潤一郎を見上げて笑みを通じさせた。

 ダイニングに一人で居た総一郎は再び「今夜こそ!」と、胸に誓いを立てリビングの大窓からチラチラ見える良子に下半身をジンジンさせつつ、一階の書斎に入ると中から鍵を掛け憮然として机を前に椅子に腰掛けると、花壇(にわ)に水遣りする音が換気口から聞こえた。

 総一郎はタイミングの合わない事に苛立ちもしたが何とかそれを沈めようとパソコンを立ち上げると、ブックマークしてあるニュースサイトに入り閲覧しようとマウスを走らせた。

『またか… 鬼畜の美食家』
 ニュースサイトの一番目に掲載されていた社会面の記事に視線を合わせた総一郎は握り拳で机の表面を軽く叩いた。

 記事によれば鬼畜の美食家と題されたボタンをクリックし内容に目を通すと、女子大生が両乳房を眠らせされて切断された内容だったが、犯人達がその場で切断した乳房を焼肉にして食べたと言う惨いものだった。

 手掛かりは依然として何もなく救急車に通報したのは皮肉にも犯人であると言う大胆不敵な手口にメディアは振り回されつつ被害者のことを書きまくっていた。

 総一郎は乳房を切り取られる場面を想像し且つ、それを炭火で焼いて食う犯人達に嘔吐感を表面化させた。

 だが次から次へと美しい女性を拉致出来る犯人を心ならずも羨む気持ちは隠せなかった。

 そしてニュースサイトを見ている内に証拠を全く残さずそして本人にも気付かれずに一体どうやってと言う壁にぶつかった。

 やはりメディアの言う通り犯人は医者なのか、それとも医術の心得のある者なのか。

 それ以前にどうやって犯人は誰にも気付かれずに女性達を拉致監禁したのか。

 総一郎の関心は高まりは止まることなくニュースサイトのリンクを転々とした。

 そして出てくる被害者の数の多さと切り取られた肉の部位にオゾマシサを感じた。

 内モモや尻、更には大陰唇や小陰唇を奪われた女性達の心境を考えた時、総一郎は握り拳で机を大きく叩きそうになった。

 だがそんな総一郎でも「一体どんな味がするんだろう…」と、馬鹿げたことをも同時に考える自分に疑心を感じた。

 そしてそんな総一郎の頭の中には常に「良子」の美貌(そんざい)があって、就寝時間が待ち遠しいとさえ思っていた。

 
「良子~ 今夜やらせてやれよ… どうせ三擦半だし。 但しゴムは使えよな! 生は俺だけだからな!」
 書斎に篭ったまま出てこない総一郎を哀れに思った潤一郎は、水遣りを終えた良子に玄関で耳打ちし良子は無言で頷いた。

 
 二人の会話など書斎に篭ってエッチな画像を見て股間をモミモミして自分を慰める総一郎には解からないことだった。


【六話】

  

 

 月曜の朝、会社に出勤した総一郎は部長に呼ばれ机の前で唖然としていた。

「いやあ、例の出張先の顧客が是非、君に全てを任せたいと強い希望を持っててね… 三ヶ月で大体は終わるだろうから君に頼めるかな?」
 総一郎は部長の前で我が耳を疑った。

 それは自分を嫌って邪険にしていたはずの顧客からの名指しの要望だったからであった。

「ついては三ヶ月の出張を終えた後、君の処遇なんだが課長代理として活躍して欲しいんだ…」
 総一郎は呆然として部長の言葉に呼吸を忘れた。

「か! 課長代理ですかあ!! た! たった三ヶ月の出張で!?」
 声を震わせ上ずらせる総一郎は口をポカンと開いたままぶちようの前に立ち尽くした。

「いや… 実は例の顧客は君も知っての通り商工会議所の役員をしているだろ。 我々が良ければ街の発展のために是非、君を中心にプロジェクトを立ち上げたいと…」
 タバコに火を付けた部長は俯き加減で総一郎の表情をうかがった。

「まあ、君もそろそろ万年係長から脱する時期だと会社としては考えているんだ!」
 呆然とする総一郎に部長の声が何度もこだまして聞こえた。


 そして数分後。


「ぜ! 是非!」
 総一郎は部長の机に両手を付いて深々と頭を下げた。

 だが、その話しを帰宅後に困惑しつつも良子と潤一郎に話した後、良子と潤一郎は黙りこんでしまった。

「三ヶ月も家を空けるんですか…? 潤ちゃんの受験も控えているのに…」
 顔色を真っ青にして声を上ずらせる良子は、ガックリと肩を落とす潤一郎をチラッと見て寂しげに俯いた。

「す! すまん! 部長からのたっての頼みで。 そ! それに出張を終えれば課長代理への出世も約束されているんだ! 寂しいだろうが是非頼む! この通りだ!」
 二人の様子に焦った総一郎はダイニングのテーブルの前、席から立ち上がって両手をテーブルについて頭を下げた。

「仕方無いよ… それが父さんのためなんだから………」
 肩を落として力無げに呟く潤一郎。

「潤ちゃん………」
 ガックリする潤一郎を見つめる良子はそのまま総一郎の方に視線を移動させた。

「す! すまん! 解かってくれ! 頼む!!」
 再び頭を下げる総一郎。

「解かったよ♪ 父さん♪ 頑張って部長さんの期待に応えて♪」
 突然、寂しげに作り笑みを浮かべる潤一郎は夕飯を早々に終えると無言のままダイニングを出て二階の自室へと向かった。

「良子! 潤一郎を頼む!」
 総一郎は心の奥から家を空けることを良子に詫びそして潤一郎のことを頼んだ。

「寂しいけど… 頑張ってちょうだい…」
 総一郎との視線を外した良子は無理して作り笑顔をして深く頷き口元を右手で押さえてその場を離れた。

 その光景は寂しさに耐え切れずに涙する良子だと総一郎は思った。

 だがトイレに入った良子は声を喉に溜め便座カバーに腰掛けると「万歳!!」と、両手を挙げて大喜びし、二階に元気なく上がった潤一郎は良子同様に声を枕で押し殺して歓喜に沸いた。

 何も知らない総一郎は一人、ダイニングで寂しいコップ酒を味わいその苦い酒に咽た。

 潤一郎は布団に包まり枕に顔を押し当て「ウオオォォーー!」と、声を押し殺し、良子はトイレから無言で出ると総一郎の方を見ずに寝室に入り無言で万歳してクルクルと踊りまわった。

『すまん… 良子… 潤一郎… だがチャンスなんだ… 解かってくれ…』
 苦いコップ酒を一気に飲み干した総一郎はテーブルの上で頭を抱えて二人に心から詫びた。

 そして数時間後、総一郎が寝室へ移動すると良子が居て出張の準備を終えた辺りだった。

「アナタ… 今夜は一人になりたいの……」
 良子は総一郎と合わせた視線を外すと服を着たまま客間へと移動し、それを黙って見送る総一郎もまた無言でベッドに入ると灯りを宿世に落とした。

 客間へと移動した良子は突然、顔を歪ませ枕に顔を押し付けると「ウオォー!」と、声を絞って雄叫びを上げた。

 そして翌日、普段は仕事では使わない車を車庫から出した総一郎は出張のための荷物をトランクに詰め込むと、家の前に立って俄かに周囲を見回して再び家へと移動した。

「すまんが潤一郎を頼むぞ良子。 お前だけが頼りなんだ!」
 スーツ姿の総一郎は真顔で良子を見ると、そばで無言で朝食を取る潤一郎を見据えた。

「潤一郎! 月に一度は帰るから寂しいだろうがお前も頑張れ! 父さんも頑張るから!」
 元気なく総一郎の言葉に頷く潤一郎。

「寂しいけど僕も頑張るよ父さん…」
 潤一郎は寂しげに小声を発するとそのまま家を出ようとした総一郎に後ろから声を掛けた。

 総一郎は目頭を熱くして玄関を出ると、振り向くことなく車に乗り込み見送る二人に開いた窓から手を振って車を発進させた。

 良子と潤一郎は車が見えなくなるまで元気ない表情をしていたが、車が見えなくなった瞬間、慌しくバタバタと家に入ると玄関で抱き合って二人だけの甘い生活を夢見て歓喜し飛び跳ねた。


【七話】



 
 いつもの安旅館に長期滞在を事前に申し入れていた総一郎は、旅館に着くなりいつもの部屋へ行こうとしていた。

「ああ、お客さん! 長期の部屋はこちらの六畳間になりますから」
 階段を上って左へ行こうとしていた総一郎に、いつもの無愛想な女将が一階から右側方向へ腕を伸ばして教えた。

「長期の部屋は全部空いてますから好きな部屋を使ってくださいませ」
 無愛想な女将にしては珍しく笑みを見せていた。

『短期より長期の方が儲かるのか…』
 総一郎は笑みして愛想よくする女将に頭を下げるとそのまま右側へと方向を変えドアを開いては部屋中を見て回った。

 部屋は全部で六つあったが窓を開けた景色の一番いい部屋を選んだ総一郎は荷物を床に置くと、窓を開けて一服とばかりにタバコに火を点けた。

 総一郎はいつもの四畳半より少し広くなった六畳間を座って見回すと心の中で『お世話になります』と、部屋に語った。

 そして天井を見た総一郎は、裸電球ではない白熱灯に『おお!』と、心の中で驚き気付けば灰皿までもが鉄板ではなく陶器になっていることに驚きつつ、部屋の角にある小机の設備に目を丸くした。

 四畳半の部屋には無い設備と格差、そして畳み一枚分の押入れに心を和ませた。

 
 その頃、総一郎の自宅では総一郎の長期出張を祝うかのように良子が腕によりをかけて潤一郎のためにご馳走の下準備をしていた。

 そして白いエプロンを着けた良子は、総一郎には見せたことのない潤一郎の好きな黒いボディコン姿に黒い網タイツを履いて直に帰宅する潤一郎を待っていた。

 そして潤一郎はと言えば、試験を終えて早々に学校から引き上げ帰宅の途に着いたものの、良子を独り占めできることにワクワク感を隠せずスキップする場面もあった。

 そんな中、六畳間に感動した総一郎は仕事道具を机に置き荷物をバックから取り出して押入れに仕舞いつつ、四畳半より豪華な六畳間を再び見回し喜びつつ、営業所への挨拶へと向かった。

 だが総一郎が小さな感動を覚えていた頃、総一郎の自宅では白いエプロンを外したボディコン良子と潤一郎が玄関で抱き合って口付けをしていた。

「なんか親父に悪いな♪ 俺らだけが幸せって感じでさ!」
 濃厚な口付けの後、良子から離れた潤一郎は着替えてくると言い残し二階自室へと向かった。

 良子は鼻歌をしつつ網タイツのズレを直しながら玄関に鍵を掛けると、そのままリビングを通り越してキッチンへと向かったが、慌しく降りてきた潤一郎は白いエプロンにボディコン姿の良子をキッチンに見つけると再び後ろから良子を抱きしめ右太ももに触手した。

「だめぇーん♪ 後でぇ~♪」
 後ろから抱きつく潤一郎に甘え声を発した良子は太ももを触手する潤一郎の手に、自らの右手を絡ませて外そうとしたが、潤一郎は盛りのついた雄ネコのようにその手を良子の恥ずかしい部分に滑らせた。

「あんっ! だめだってぇ~♪ もおぅ♪」
 網タイツの上からパンティー越しに手を滑らせる潤一郎はそのまま屈むと網タイツに包まれた良子の太ももの匂いを嗅ぎつつ唇を滑らせた。

「いい匂いだ……」
 潤一郎は黒い網タイツに染み込んだ良子(おんな)の匂いにウットリして頬擦りを始めつつ陰部に指を滑らせる。

「潤ちゃん… 濡れちゃうよおぅ~♪」
 陰部を弄られつつ網タイツ越しに擦れる潤一郎の頬の感触に両脚を閉じようとする良子はキッチンに体重を掛けるように両手をついた。

 その頃、出張先の営業所に出向き到着の報告をしている総一郎は、所長に翌日からの活動報告書を見せつつ、顧客リストと商品の推薦リストを比較していた。

 いつに無く真剣な総一郎に所長は勿論、他の所員達も俄かに緊張感を感じつつ視線の届かない総一郎に空気を同調させていた。

「内示はあったと思うが、今回のプロジェクトの主任として君には本社も期待しているからそのつもりで…」
 所長は隣りに座る総一郎を激励しそして歓迎し、総一郎は改めて今回の任の重さを実感した。

「なにせあの頑固親父の推薦だからな! 正直、俺らも手を焼いていたんだ。 この辺りの御意見番だからなあの親父は…」
 ペンで頭を擦る所長は総一郎に期待の大きさを素直に話すと、総一郎は固い表情を見せた。

 父親が出世をかけたプロジェクトのリーダーとして活躍しようとしている時、自宅の二人はそんな苦労も省みず破廉恥な姿で肉と肉を擦り合わせていた。

「おい、みんな聞いてくれ! 今回のプロジェクトリーダーを改めて紹介しておこう」
 所長の声に所員達は一斉に所長と総一郎の方に視線を向け席を立ち上がって拍手した。

 総一郎は直立で深々と周囲に頭を下げそして固い表情のまま営業所を後にした。

 その総一郎を待っていたのは機嫌のいい無愛想だったはずの女将だった。

「さっき、三か月分の宿泊料が会社から振り込まれましてねえ~♪ あと、お部屋の方を特別室に移しておきましたから♪」
 振込みに笑みする女将に頭を軽く下げて頷いた総一郎は、特別室の件に驚きつつ、その女将の後姿に他界した田舎の母親を見たような気がしていた。

 総一郎は特別室まで用意した会社の自分に対する期待の大きさに目を丸くして呆然と立ち尽くした。


【七話】



 
 いつもの安旅館に長期滞在を事前に申し入れていた総一郎は、旅館に着くなりいつもの部屋へ行こうとしていた。

「ああ、お客さん! 長期の部屋はこちらの六畳間になりますから」
 階段を上って左へ行こうとしていた総一郎に、いつもの無愛想な女将が一階から右側方向へ腕を伸ばして教えた。

「長期の部屋は全部空いてますから好きな部屋を使ってくださいませ」
 無愛想な女将にしては珍しく笑みを見せていた。

『短期より長期の方が儲かるのか…』
 総一郎は笑みして愛想よくする女将に頭を下げるとそのまま右側へと方向を変えドアを開いては部屋中を見て回った。

 部屋は全部で六つあったが窓を開けた景色の一番いい部屋を選んだ総一郎は荷物を床に置くと、窓を開けて一服とばかりにタバコに火を点けた。

 総一郎はいつもの四畳半より少し広くなった六畳間を座って見回すと心の中で『お世話になります』と、部屋に語った。

 そして天井を見た総一郎は、裸電球ではない白熱灯に『おお!』と、心の中で驚き気付けば灰皿までもが鉄板ではなく陶器になっていることに驚きつつ、部屋の角にある小机の設備に目を丸くした。

 四畳半の部屋には無い設備と格差、そして畳み一枚分の押入れに心を和ませた。

 
 その頃、総一郎の自宅では総一郎の長期出張を祝うかのように良子が腕によりをかけて潤一郎のためにご馳走の下準備をしていた。

 そして白いエプロンを着けた良子は、総一郎には見せたことのない潤一郎の好きな黒いボディコン姿に黒い網タイツを履いて直に帰宅する潤一郎を待っていた。

 そして潤一郎はと言えば、試験を終えて早々に学校から引き上げ帰宅の途に着いたものの、良子を独り占めできることにワクワク感を隠せずスキップする場面もあった。

 そんな中、六畳間に感動した総一郎は仕事道具を机に置き荷物をバックから取り出して押入れに仕舞いつつ、四畳半より豪華な六畳間を再び見回し喜びつつ、営業所への挨拶へと向かった。

 だが総一郎が小さな感動を覚えていた頃、総一郎の自宅では白いエプロンを外したボディコン良子と潤一郎が玄関で抱き合って口付けをしていた。

「なんか親父に悪いな♪ 俺らだけが幸せって感じでさ!」
 濃厚な口付けの後、良子から離れた潤一郎は着替えてくると言い残し二階自室へと向かった。

 良子は鼻歌をしつつ網タイツのズレを直しながら玄関に鍵を掛けると、そのままリビングを通り越してキッチンへと向かったが、慌しく降りてきた潤一郎は白いエプロンにボディコン姿の良子をキッチンに見つけると再び後ろから良子を抱きしめ右太ももに触手した。

「だめぇーん♪ 後でぇ~♪」
 後ろから抱きつく潤一郎に甘え声を発した良子は太ももを触手する潤一郎の手に、自らの右手を絡ませて外そうとしたが、潤一郎は盛りのついた雄ネコのようにその手を良子の恥ずかしい部分に滑らせた。

「あんっ! だめだってぇ~♪ もおぅ♪」
 網タイツの上からパンティー越しに手を滑らせる潤一郎はそのまま屈むと網タイツに包まれた良子の太ももの匂いを嗅ぎつつ唇を滑らせた。

「いい匂いだ……」
 潤一郎は黒い網タイツに染み込んだ良子(おんな)の匂いにウットリして頬擦りを始めつつ陰部に指を滑らせる。

「潤ちゃん… 濡れちゃうよおぅ~♪」
 陰部を弄られつつ網タイツ越しに擦れる潤一郎の頬の感触に両脚を閉じようとする良子はキッチンに体重を掛けるように両手をついた。

 その頃、出張先の営業所に出向き到着の報告をしている総一郎は、所長に翌日からの活動報告書を見せつつ、顧客リストと商品の推薦リストを比較していた。

 いつに無く真剣な総一郎に所長は勿論、他の所員達も俄かに緊張感を感じつつ視線の届かない総一郎に空気を同調させていた。

「内示はあったと思うが、今回のプロジェクトの主任として君には本社も期待しているからそのつもりで…」
 所長は隣りに座る総一郎を激励しそして歓迎し、総一郎は改めて今回の任の重さを実感した。

「なにせあの頑固親父の推薦だからな! 正直、俺らも手を焼いていたんだ。 この辺りの御意見番だからなあの親父は…」
 ペンで頭を擦る所長は総一郎に期待の大きさを素直に話すと、総一郎は固い表情を見せた。

 父親が出世をかけたプロジェクトのリーダーとして活躍しようとしている時、自宅の二人はそんな苦労も省みず破廉恥な姿で肉と肉を擦り合わせていた。

「おい、みんな聞いてくれ! 今回のプロジェクトリーダーを改めて紹介しておこう」
 所長の声に所員達は一斉に所長と総一郎の方に視線を向け席を立ち上がって拍手した。

 総一郎は直立で深々と周囲に頭を下げそして固い表情のまま営業所を後にした。

 その総一郎を待っていたのは機嫌のいい無愛想だったはずの女将だった。

「さっき、三か月分の宿泊料が会社から振り込まれましてねえ~♪ あと、お部屋の方を特別室に移しておきましたから♪」
 振込みに笑みする女将に頭を軽く下げて頷いた総一郎は、特別室の件に驚きつつ、その女将の後姿に他界した田舎の母親を見たような気がしていた。

 総一郎は特別室まで用意した会社の自分に対する期待の大きさに目を丸くして呆然と立ち尽くした。




【八話】

 
 
 
 十二畳の特別室に移った総一郎はソコソコ旅館並みの部屋の作りにドアの前に立ったまま唖然としていた。

「この安旅館にこんな部屋があったなんて……」
 景色を楽しめる窓際に置かれた竹椅子とテーブル、そして床の間風の作りにクローゼットに専用のテレビと冷蔵庫と、ネット回線の設備に総一郎は驚きつつ部屋へ足を踏み入れた。

「課長代理の椅子が掛かっているこの部屋で俺は務めを実行するぞおぉー!!」
 右の握り拳を天井に向けた総一郎は見つめた天井の中に愛する息子と妻の笑顔を思い浮かべた。

 そしてその日から特別室でプロジェクトの進行のスケジュール調整を手帳に書き込み時間を忘れて仕事に打ち込んだ総一郎が気付くと夕飯の時間を忘れていたことに気付いた。

『マズイ!! 急がなければ!!』
 慌てて部屋を出た総一郎は一路、食堂へ行くとソコには客は誰も居らず心の中で女将の無愛想な顔を思い出した。

 すると突然、奥から出て来た無愛想な女将は総一郎の顔を引きつらせた。

 それは別人のように愛想の良い女将だった。

「お食事の支度をしますから待っていてください♪」
 声を弾ませて頭を軽く下げ奥へ引っ込んだ女将を見た総一郎は呆然と立ち尽くした。

 普段なら「チッ!」と、言わんばかりの無愛想なのにと総一郎は短期と長期滞在、しかも特別室ではこうも違うのかと世の中の厳しさと優しさの両方を垣間見た気がした。

『どっちが本当の女将なのだろう…』
 給仕をしてくれる女将を見ていた総一郎は心の中で『この女将(ひと)も色々あるのだろう』と、自分の置かれた立場に彼女を重ねた。

 するとソコへ短期滞在の客が一人入って来たが女将は「遅くまでご苦労様です♪」と、愛想よく出迎えた。

 近くに来た女将に聞けば隣町から定期的に来ている内科医師だと言い、病院の無いこの街の診療所の医者も兼ねていると言う。

『この女将は相手を選んでいるのか? それとも滞在期間なのか?』
 総一郎は心の中で思いながら出された豪華な食事にも気付かずに口に運んで気付かぬまま出された日本酒を飲んで「フッ!」と、気付くと食べていたモノと酒に目を丸くした。

 そしてその頃、自宅では総一郎の長期出張を祝って良子自慢の料理に潤一郎は舌堤を打って新婚気分を満喫していた。

「食べきれねえよぉー♪ てか、余程嬉しいんだなお前♪」
 満腹感を感じつつ傍に立つ良子の尻を撫でる潤一郎は左下から良子を見上げた。

「ええ♪ 嬉しいわあ♪ でも、誰の所為なの!? 私の所為じゃないわ♪ 潤ちゃんの所為でしょ、うふふふふ~♪」
 椅子に左脚を乗せて潤一郎の肩にもたれる良子は潤一郎の左頬を右手でスッと撫でた。

 潤一郎は撫でていた尻の下へと手を移動させ愛し合って間もない良子の陰部をパンティーの上から擦った。

「あんっ! さっきしたばかりなのにぃー!」
 陰部を擦られる良子は両脚に力を入れて小刻みに震えさせると生脚の太ももがプリンのように大きく揺れた。

 潤一郎はパンティーの中で「クチュッ!」と、言う音を指先(はだ)で感じたが良子は首を仰け反らせ瞼を閉じていた。

「じゅ… 潤ちゃんもう… もうやめ… て… 我慢出来なくなっちゃう…」
 途切れ途切れの良子の言葉に、潤一郎は虐めてやろうと指を激しく擦らせると、パンティーの中は「クチュクチュ」と、音を立てた。

「だめぇ! ああんっ!」
 潤一郎はパンティーを太ももまで下ろすと直接、良子の部分に指を滑らせながら別の手で焼いた鳥モモを持って口に運んで食べた。

 モノを食いながら別の手の指は良子を食っていた潤一郎だったが、その頃、総一郎は滅多に使わない娯楽室に身を置いて隣りに座る医師を気にせずに新聞を読んでいた。

「まただ… また鬼畜の美食家だ… 人間の肉を喰うなんて人間じゃあないなコイツら!」
 思わず出た独り言に関心を示したかのごとく、隣に居た医師が言葉を返した。

「中国では人肉を食うと不老不死になると信じられていたらしいですよ…」
 落ち着いた口調で語った医師は、まるで鬼畜の美食家を否定しないような口調だった。

「ですが、人間の… しかも生きた人間の肉ですよ。 私には信じられないですよ…」
 医師に言葉を返した総一郎に医師が再び言葉発した。

「男性が美しい女性に魅かれるのはある種の食欲と似た性欲と言うモノなんですよ。 だから女性の肉を喰うと言うことはある意味、性欲を満たしているのと同じなんですよ…」
 総一郎は医師の言葉に妙な説得力を覚えた。

「まあ、私は一階の内科医ですから外科的なことは解かりませんが、殺して喰うとか痛みを感じさせて喰うとかではないですからね~」
 医師はそう言うと一礼してその場を立ち去って行った。

 総一郎は新聞の記事の中に、犯人の中に外科医が居るのではないかと言う文字にさっき隣に居た医師を思い出した。

『まさかな… あの人は内科医師だし… ボランティアで診療所にも来るような立派な人だしな…』
 他人を疑うことを知らない総一郎は新聞返却するとその場から部屋へ戻った。

「ああ。 潤一郎か。 父さんなあ。 今回からの部屋! 特別室を使わせて貰ってるんだ、 凄いだろ♪ ところで今何してる勉強か?」
 部屋に戻って特別室を自慢したくなった総一郎は携帯の向こう側の潤一郎の息遣いに疑問を感じた。

「はぁはぁはぁはぁはぁ… ああ、うん。 今、ベッドの上で運動中だよ。 勉強の疲れをさ! 取ろうと思って。 はぁはぁはぁはぁ…」
 ベッドの上でバックスタイルになった良子に後ろから入る潤一郎は左手で良子の腰を抑えつつ右手で会話していた。

「おお! そうかそうかそれはすまんかったな♪ ところでお母さんは元気か?」
 普段と変わりない潤一郎に安心した総一郎。

「はぁはぁはぁはぁ… お… お母さんは下でヨガのライオンのポーズとかしてんじゃないかな… はぁはぁはぁ… あうっ!」
 潤一郎の下にいて尻を突き出し両腕をベッドに投げ出す良子は、喘ぎ声を耐え早く電話を切るように右腕で潤一郎に合図を送った。

「おおそうか♪ そうだな♪ こんな時間だもんな♪」
 ヨガをやっている光景を思い浮かべた総一郎は安堵の表情を浮かべた。

「バシッ!」

「んっ!? どうした今の音は!?」

「ああ、頬に蚊が… はぁはぁはぁはぁ…」
 良子の催促に良子の尻肉を平手打ちした潤一郎は蚊の所為だと誤魔化した。

「お! そうか♪ 余り無理しない程度に頑張れよ♪」
 総一郎は潤一郎が忙しいと思い電話を終えようと潤一郎を激励した。

「ああ。 うん。 無理しないように… あうっ! が… 頑張るよ! あうっ!」
 早く電話を切るように陰部を締め付ける良子に思わず唸り声を上げた潤一郎は、父親からの激励に腰を大きく振って電話を切った。

 そしてその瞬間! 良子は激しく身悶えしヨガリ声を連発させてベッドを軋ませた。

 潤一郎は父親からの激励に感謝しつつ、良子の乳房を両手で揉みつつ腰を激しく振った。

 そして総一郎は勉強に運動にと死力する潤一郎を見習わなければと自らも腕立て伏せを始めた。



【九話】
 



 総一郎はレオタード姿でヨガをしている良子の姿を連想しつつ仰向け状態で布団の上、目を閉じてマスターベーションをしていた。

 そしてそこへ突然、旅館の女将が声をかけて部屋へ入って来たものの良子のことで頭が一杯の総一郎は女将の存在に気付くこと無く硬くなったモノを扱いていた。

「あらまあ!」
 目の前で自分の存在に気付かない総一郎の粗末な肉棒を見た女将だったが、旦那を亡くして久しく御無沙汰だった身体を突然火照らせ我を忘れその肉棒にムシャブリ付いた。

「ヒイイィィー!! や! やめてくれええぇー!!」
 突然の肉棒への舌の刺激に目を開いた総一郎は、小太りでトドのような女将から逃げようと必死にもがいたが、もがいた故にそれが強い刺激になって数十秒しないうちに女将の口の中に一度目の射精をしそして尚も硬くなったモノから更に数十秒後に二度目の射精をしてしまった。

 総一郎は呆然と二度の精液を飲み干して尚もムシャブリ付く女将の口の中に三度目の射精した後、余りのショックに失神してしまった。

 そして総一郎が次に目覚めた時、全裸の女将が全裸の総一郎の腕枕で眠っていた。

 総一郎は自らが犯した最大の不覚に恐れおののき腕枕で眠るトドのような女将を見て恐怖に顔色を青ざめさせた。

「浮気をしてしまった… しかもこんな醜い女将と……」
 総一郎は自らの股間にベットリと残された愛液に、失神している間に自分が犯されたことに気付いた。

「うわああああああーー!!」
 突然大声を発して飛び起きた総一郎に振り落とされた女将は、部屋の角で頭を両腕で抱える総一郎を見てニヤニヤと両膝たちして自らの陰部をティシッュで拭き始めた。

 総一郎は背中に氷を背負ったようにガクガクと全身を大きく震わせ、トドのような女将をチラっと見て今度は床に両腕で頭を抱えたまま顔を伏せた。

「お客さん… 私の中で十回もイッたよぉ~♪ それも眠ったままで♪ 私達はもう他人じゃないわね♪」
 三段腹の女将は陰部を拭き終えると屑篭にポイっとそれを捨て、蹲る総一郎を見てニヤリと不気味な笑みをして下着をそして着物を着始めた。

 総一郎はその状況下で再びそのままの体勢で眠るように気を失った。

 そして翌朝、布団の中で目覚めた総一郎は、頼んだ覚えの無い三段重ねの重箱に入った豪勢な朝食を目にして前夜の悪夢を思い出した。

 総一郎の出世を掛けた長期滞在の出張はこうして幕を開けた。

 その頃、総一郎の自宅では潤一郎の部屋がある二階のベッドの上、絡み合って眠っていた良子が目を覚ましそして潤一郎もまたあわせるように目を覚ました。

「今日から夏休みなんでしょう? もう少し寝てなさいよ♪ 疲れてるでしょ?」
 黒いスリップ姿の良子は脱いだ服をもって潤一郎の頬にキスをすると、そのまま一階へと部屋を出た。

 そして前日から数え切れないほどのエクスタシーを味わった良子はフラフラと階段を降りると、シャワー後の着替えを取りに寝室へと向かった。

 一時間後の午前九時、潤一郎が一階へ降りると良子はショーパンにノースリーブ姿で花壇(にわ)に水遣りをしていた。

 潤一郎はそんな良子の自然に揺れる全身(からだ)に見入りつつソファーに腰を下ろした。

 味わっても味わっても味わいきれない良子の肉体(からだ)を見ている潤一郎は「ふっ」と、鬼畜の美食家のニュースを思い出した。

「どんな味がするんだろう…」
 潤一郎はプリンのようにプルプルと揺れる良子の肉体(からだ)を見てそう思った。

 そして朝日に照らされてキラキラ光る水しぶきを眩しそうに眺める潤一郎は、時折、ダイナミックに揺れる良子の乳房と尻と太ももを凝視して「食べてみたい…」と、胸中にムラムラ感を俄かに感じた。

 潤一郎はテーブルの下に仕舞ってある新聞をテーブルの上に開くと、鬼畜の美食家のニュースを探しそして書かれている記事に再び目を通した。

 すると記事の中に「女性(にんげん)の肉は脂成分が強く美味と言うレベルではない」と、書かれていることに強い違和感を感じた。

「あんなに美味しそうなのに…」
 良子の内モモを凝視する潤一郎はその蕩けそうな柔らかさと弾力に喉をゴクリと鳴らした。

「何、馬鹿なことを考えているんだ俺は……」
 直ぐに新聞を畳んで元の場所に戻した潤一郎は歯磨きをし終えてダイニングに用意された朝食に貪りついた。

 そして潤一郎が朝食を終えた頃、外から良子が戻ると潤一郎は思わず良子のショーパンの裾付近を触手しその柔らかさと弾力を確かめた。

「なあぁ~に♪ 朝からあー♪」
 恥ずかしそうに照れる良子の太ももを触手する潤一郎は、良子を見上げた。

「なあ、お前。 何で親父なんかと結婚したんだ? よりによってあんな三擦半と~」
 良子の裏モモを触手しつつ自分の方へ引き寄せた潤一郎。

「何さぁ~♪ 突然~♪ 何でって… 正直、わかんないんだ… ひ弱そうで頼りなさそうなんだけど、多分、癒されたのかな~ 一緒にいると♪」
 口元をすぼめて考えつつ語る良子は頬を少し紅色に染めて恥らった。

「だけどお前くらいってか、お前ほどの女なら男なんて選り取り見取りだろ!」
 裏モモから尻に手を差し込む潤一郎。

「確かにねえ~ 言い寄る男は星の数ほど居たけど、身体が目当てなんだって解かる男ばっかりだったし… お父さんて、素朴って言うか、身体が目当てじゃないないって言うか♪ よくわかんないんだよね♪ 正直♪」
 両腕を後ろに組んで腰を左右に少し降り始めた良子は困惑しつつ応えた。

「確かにひ弱だし頼りないのは当たってるし万年係長だし… 今一、お前が何で親父と結婚したのかが解からん!」
 良子を見つめた視線を直ぐにテーブルへ向けて再び良子を見入った潤一郎。

「て、言うか~ どうでもいいんじゃない♪ それに今は… 今の生活は楽しいし~♪」
 潤一郎の左頬を右手の甲で撫でた良子。

「まあな♪ お陰で俺はお前を俺のモノに出来たんだからな♪ 親父のお陰だよ全く、あっははは♪」
 良子を抱き寄せて自らの膝の上に座らせ抱きしめた潤一郎は良子の太ももを触手した。

 その頃、総一郎はと言えば、頑固で偏屈で有名な商工会議所の副会長宅へと商用で向かって居たが、不可抗力とは言いながらも旅館の女将と浮気してしまったと言う事実が頭から離れなかった。

 自分よりも二周り以上も年の離れた、しかも小太りのトドのような女将に十発以上も抜かれた上にフェラチオまでされたと悔やんでも悔やみきれなかった。

 誰に相談できる話しでもないと諦めつつ仕事を終えて旅館に戻った時の女将との対面に苦慮していた。

 


【十話】
 
 



 出張し特別室に入って二日目の夜、仕事を終えて旅館に戻った総一郎を待っていたのは化粧の濃くなった女将(トド)と、有り得ない宴会のような部屋食の御馳走だった。

 総一郎は戦々恐々として三つ指付いて部屋中で出迎える女将(トド)を見て腰を引けさせた。

「旦那様。 お帰りなさいませ…」
 目の前で自分を旦那様と呼び頭を下げる女将(トド)に総一郎は息遣いを震えさせ壁に背中を向け壁伝いに奥へと移動した。

「本日は御疲れ様でございました…」
 女将(トド)は顔を上げるとそのままかしこまって立ち上がり、後ずさりするように扉の向こうへと立ち去った。

 総一郎は自分を旦那様と呼び目の前のテーブルに広がった豪勢な食事を目の前に、自らの人生が終わりを告げたかのごとく怯えた。

 そしてカバンを置いて怯えつつテーブルの上の料理の器のフタを取ってを見れば、ニンニク料理だのウナギだの精の付くモノで溢れていたことに、再び恐怖を感じた。

「南無妙法蓮華経! 南無妙法蓮華経!! 南無妙法蓮華経!!!」
 総一郎は全身を震わせ無意識にドアの方を向いて合掌して拝んでいた。

 すると。

「旦那様… お酒をお持ち致しました…」
 扉の向こうからの声に総一郎は声を失いそして後ずさりして窓辺へとゆっくり下がると、扉が開いて女将(トド)はゆっくりと盆に乗せた酒類をテーブルの上に置いた。

「旦那様… 本日の夜伽(よとぎ)は不肖、私目が御相手をさせて頂きますので安心して、おくつろぎ下さいませ…」
 女将(トド)は再び三つ指付いて和服姿で頭を下げるとそのまま後ろ向きで扉の外へと消えた。

「あわわわわわわ! あわわわわわわわ!」
 総一郎は顔を強張らせスーツ姿のままその場に崩れ落ち、三段腹の小太りの身体を思い出して大きな溜息をついた。

「夜伽(よとぎ)なんて… 江戸時代じゃあるまいし…… くそぉ! なんてこった……」
 総一郎はその場で木目の床を両手の平で数回叩きつけ悔しがった。

「あんな化物(おかみ)に獲憑(とり)かれるなんて…… なんてこった……」
 頭を左右にフラフラさせながらネクタイを外しワイシャツを脱いだ総一郎は、唖然と料理を見ながら浴衣に着替えた。

「くそ! 俺にはあんなに美しい良子が居ると言うのに… 第一、俺は妻子持ちだぞ! それを旦那様って何なんだよ!」
 総一郎はテーブルを前に豪勢な精のつく料理を見回して大きな溜息をついた。

 結局、悩みに悩んだ末、総一郎は目の前の御馳走に舌堤を打ち出された日本酒で喉を潤した。

 だが何れやってくるであろう、オゾマシイ夜伽(よとぎ)に飲んでも酔わない総一郎だった。

 総一郎は考えても考えても納得の行かない展開にヤケ食いのようにウナギの蒲焼をオカズにうな重を食べつつ、刺身にニンニク料理を腹に押し込めた。

 そして満腹を迎えた頃、総一郎は備え付けのシャワーで汗を流し再び飲んでも酔わないビールを何本も飲みつつ時計を見た。

 いつ来るのか九時か十時かと気を揉んでその恐怖に打ち勝とうと自分に「大丈夫だ」と、根拠の無い言葉を言い聞かせた。

 すると部屋の扉がノックされ総一郎は全身を震わせてギクリとすると、食事の後片付けの仲居だったことに安堵の表情を見せた。

 そしてとんでも無い事実を仲居から聞かされた。

「そ! そんな!! 何てこどあぁ!!」
 総一郎は仲居から総一郎を名指しで仕事に呼んだ商工会議所の副会長と旅館の女将が従妹(イトコ)であることを知らされた。

「何てこった…」
 仲居は後片付けをする間に廊下と部屋を何度も往復したが、その間、ずっと総一郎のことを異色の目で見つつ最後の頃に「フッ」と、笑みを浮かべた。

 総一郎は今夜も女将(トド)と男女の関係を継続するのかと観念しガックリと肩を落とした。

 女将(トド)の機嫌を損ねれば否応無しに副会長との交渉にも何らかの影響が出ると総一郎は懸念した。

 そして心の中で総一郎は自宅に残した良子に何度も詫びの言葉を繰り返し、犯してしまった罪の大きさに溢れる涙を堪えきれず床を塗らした。

 だが、無駄だと思いつつも総一郎は最後の手段を講じた。

『多分、無駄だろうが何もせずに無抵抗ではいられない…』
 心の中でそう呟いた総一郎はドアの内鍵をロックしてドアが開かないようにした。

 そして夜もふけ内鍵を掛けたことで小さな安心感を得た総一郎は仕事疲れもあって『眠ろう』と、部屋の明かりを消して十時、いつの間にか眠りに入った。

 ところが熟睡して数十分が経過した頃、突然ドアをノックする音に「ギクリッ!」と、目を覚ました。

「旦那様… ここを開けてくださいませ… トントン… 旦那様… 何故に内鍵など… 旦那様…」
 総一郎は身の毛がよだつ思いで布団の中にスッポリと頭を覆った。

 すると暫くして総一郎を呼ぶ声が途絶えたと思った十分後、悪夢は現実のモノとなった。

「旦那様~ 夜伽(よとぎ)に参りました~」
 合鍵でドアを開いた女将(トド)は和服姿でソロリソロリと部屋の中へ入るとドアの内鍵を掛けその場で着物の帯を外し始めた。

「ま! 待ってくれ! 頼む! 今夜は勘弁してくれ!! 仕事で疲れているんだ! 頼む!!」
 布団を頭からスッポリかぶった総一郎は部屋の隅に布団のまま逃げ出して固まると、薄暗い部屋の中で下着姿で幽霊のように立っている女将(トド)に絶句した。

「旦那様はただ横になっていれば良いのです… 後は私が全てを……」
 女将は布団に包まって怯える総一郎の傍へ近づくと一瞬にして総一郎から掛け布団を奪いとった。

「ヒイィィィィーー! 助けて! 助けてくれえええぇー!!」
 女将(トド)に右足を掴まれた総一郎は畳みの上を引きずられて敷布団へと移動させられた。

「怖がらないで… 旦那様…」
 敷布団の上に仰向けにさせられた総一郎の腹を跨いだ女将(トド)は、その三段腹を微かな光の中に見せ「ジイィー」と、総一郎を見下ろした。

「た! 助けてくれ! 頼む! 今夜は勘弁してくれぇ!」
 総一郎は声を震わせ驚愕の表情を浮かべたが、女将(トド)は微動だにせずその場でブラジャーをそして大きなパンティーを脱ぎ捨てた。

 そして数秒後、無言のまま総一郎から力任せにトランクスを剥ぎ取った女将(トド)は、開かせた総一郎の両足の真ん中に正座した。

 総一郎は「最早これまでか!」と、愕然として首を横に倒した瞬間、激しい快感がペニスから脳へと伝わった。

「はうぅ!」
 総一郎は縮み上がったペニスにネットリと舌が撒きつき思わず恥ずかしい息遣いを発した。

「あうっ! ああう!」
 両手で頭を覆う総一郎の粗末なペニスは突然、勃起して女将(トド)の餌として捕食されてしまった。

 勃起した粗末なペニスにネットリとした女将(トド)の舌が巻きつき上下に数往復した瞬間、総一郎は「あうううっ!」と、大きな吐息ともに「ジュッ!」と、体液を女将(トド)の口中に発射した。

 だが女将(トド)は直ぐにそれを飲み干し再び粗末なペニスに舌を巻きつけ数回上下に擦り上げると、総一郎は再び勃起したペニスから恥ずかしい体液を直ぐに発射し二度目の体液を吸い取られた。

「美味しい…」
 女将(トド)は独り言のように呟くと三度目、そして四度目と執拗に総一郎の粗末なペニスに貪りつき、総一郎は敏感になったペニスから刺激に女のように身悶えしてヨガリ声を薄暗い部屋に漏らした。

「はぁはぁはぁはぁ… もう! もう勘弁してくれえぇ~!」
 息も絶え絶えの総一郎は力を振り絞って女将(トド)に哀願した。

「旦那さま、私は旦那様のように速い殿方が大好きなのです…」
 女将(トド)は総一郎の哀願が聞こえないとばかりに、勝手な言い草を残すと五度目のフェラチオに移行した。

 総一郎はグッタリして動けない中で薄暗い部屋の中に延々と女のようなヨガリ、悶え声を漏らし続けそしてそれでも勃起するペニスは女将(トド)の体内にスッポリと収められた。

 そしてそれから総一郎は意識を喪失し気が付けばカーテン越しに朝日が室内を明るくし、付近に女将(トド)の姿はなかったが、総一郎の股間はキレイに拭き取られトランクスを履かされていた。

 



【十一話】


 総一郎が長期出張して一週間が経過した頃、潤一郎と良子の甘い新婚生活のような暮らしは落ち着きを取り戻したかのごとく、日に数回の交わりも一段落したように見えた。

 だが実際には回数こそ減ったものの潤一郎の性欲は減退することは無く、単に良子が体調を崩したことだった。

 一度の交わりに一時間以上を掛ける潤一郎の所為で良子の水分補給が間に合わず良子の身体は必死に水分を蓄積しようとしていた。

 普通の高校生なら数分も持たないであろう美しく豊満な良子との交わりも、潤一郎の遅漏はビクとするモノではなかった。

 そして気分が優れないと言う良子を案じつつも一向に衰えない潤一郎の性欲は、良子の使用済み下着をオカズとしたマスターベーションに切り替わった。

 普通の高校生なら数分から十分程度で終えるマスターベーションも潤一郎は一時間半を掛かってようやく終焉に達していた。

 その頃、長期出張を一週間終えた総一郎は小ダルマのような女将(トド)に、毎夜のごとく犯され続けヘトヘトになっていたものの仕事は副会長と従妹の女将(トド)の助言もあって上々の仕上がりを見せていた。

 そして最初の土曜日(やすみ)の朝、目覚めれば普段は消えていたはずの女将(トド)の姿がソコにあった。

 総一郎は「ギョッ!」と、して隣りで寝ていた全裸の女将(トド)から逃げるように布団から出ると、服を持って部屋から出ようとした総一郎は何かにつまずいて床に倒れた。

「うわあっ!! ドッスン!!」
 何故倒れたのか解からない総一郎の声に目を覚ました女将(トド)は、チラッと総一郎を見た瞬間、右手に握っていたロープをグイッと引き、総一郎の左足首に巻かれたロープが引っ張られた。

「何処へ行くの旦那様?」
 ギョッとしている総一郎を目で追いかけた女将(トド)は、ロープを両手で引いて自分が寝ていた布団ごと総一郎の足元に近づいた。

「うわああぁ! た! 助けてくれえぇ!」
 おもわず発した総一郎の言葉に女将(トド)は首を傾げて総一郎の足首を掴んだ。

「も! もう勘弁してくれえぇ!」
 服を持ったまま泣きそう声を発した総一郎を恨めしそうに見入る女将(トド)は、自らの身体を総一郎に重ねると、総一郎のパンツの上から粗末なモノを扱いた。

「あうぅっ! た! 助けてくれえぇ!」
 総一郎の言葉とは裏腹にパンツの中の粗末なモノはギンギンにいきり立ちトランクスにテントを張った。

「嫌だ嫌だも好きの内なのね♪ 旦那様~♪」
 女将(トド)はヨレヨレの総一郎を自らの方へ引き込むと、総一郎からトランクスを脱がし自らも豚のような豚足を大きく開くと、総一郎の尻をペチペチと軽く叩いて自らの入り口に近づけた。

 総一郎は心とは真逆の硬くなったペニスの先を女将(トド)の割れ目に挿入すると、濡れていた女将(トド)の肉穴はスルリと粗末なペニスを迎え入れた。

「さあ~ 旦那様~ お腰を振ってくださいまし…」
 自分の中に入った総一郎の尻を両側からペチペチと軽く叩いた女将(トド)を見た総一郎は、瞼を閉じた女将(トド)を見て「うわあぁ~!」と、顔をしかめさせて腰を前後に振った。

 そして数秒後、総一郎は「イクウゥー!」と、ヨガリ声を発して生理り終わったであろう女将(トド)の中に、朝の一本を発射した。

「さあ~ 旦那様。 もう一度~」
 女将(トド)は中に入って縮もうとしていた粗末なペニスを「キュッ!」と、締め付けると総一郎の粗末なペニスは瞬時に硬くなった。

 総一郎を中に迎えた女将(トド)はその後、総一郎が十数回イッて尚も総一郎を挟んだまま中に入れて放さなかった。

「もう… もう疲れた! 勘弁してくれぇ!」
 総一郎の嘆願も聞く耳持たぬ女将(トド)は、ひ弱な総一郎を下にすると今度は自分が上になって腰を上下に動かし始めた。

 すると総一郎は数秒に一度の間隔でイクを何度も連呼して仕舞いには一滴の体液もでないままに数時間も女将(トド)に犯され続け、そして気を失って果てた。

 女将(トド)はイッてもイッても機敏に硬くなる総一郎で、何度かのエクスタシーを手に入れ満足げに失神した総一郎を残して部屋を立ち去った。


 その頃、潤一郎はセッセと体液を放出するために自らの肉棒を扱いていたが、汚れた下着を手にしているところを良子に見つかり取られてしまった。

「くそ! あともう少しだったのに!」
 扱き始めてから一時間半を経過していた潤一郎は、放出出来ぬまま擦り切れそうな肉棒に薬を塗りこんだ。

 潤一郎はイケなかった苛立ちを良子にぶつけた。

「だったら! 相手してくれればいいだろう! 俺だってパンツでマスなんてしたくねえんだ!!」
 一階に降り立った潤一郎はショーパン姿で掃除機を掛ける良子に背後から怒鳴った。

「だからあぁ!! 毎日毎日、貴方の都合で何度も何度も出来ないんだってばあ!!」
 掃除機の電源を切って振り向きざまに潤一郎に言い返す良子。

「何言ってんだよ! 俺の腕の中でアンアンヨガッてるくせに!! お前こそ身勝手だろう!!」
 両手を広げて良子に顔をしかめた潤一郎。

「デリカシーの無い子ねえ!! そんなこと今、言うべきことじゃないでしょう!! それに私の身体が変になったのは貴方の遅漏の所為でしょう!!」
 掃除機の柄を右手に持って言い返す良子。

「くそお! 遅漏だとおおー!! 遅漏のお陰で毎日毎日、満足してんのはお前のほうだろ!! 俺なんか一回コッキリなんだ!!」
 気にしている遅漏を言われた潤一郎は顔を真っ赤にして吠えた。

「そうよ! 貴方の遅漏のお陰で楽しいわよー! でもねー! 限度ってものがあるでしょう! こっちだって我慢してんのよ! アンタの遅漏には!!」
 吠える潤一郎に吠え返した良子はクルリと背を向け再び掃除機の電源を入れ潤一郎から離れた。

 潤一郎は遅漏、遅漏と繰り返されたことで悔しそうな表情を浮かべつつその場は引き下がり、再び二階自室へと移動した。

『俺だって好きで遅漏になってんじゃねええぇー!! 畜生!!』
 ベッドに身を投げた潤一郎は枕を顔に当てて大声で吠えた。

 その頃、一階に居て掃除をし終えた良子は『言い過ぎたかな…』と、反省しつつ花壇(にわ)の水遣りに家を出た。

 そして窓の向こう側から聞こえる水遣りの音に誘われた潤一郎は、枕から顔を引き離すと窓辺に移動して歩くたびに「プリンプリン」と、揺れる良子の太ももに視線を向けた。

『言い過ぎたな… 俺…』
 無表情で水遣りする良子に心の中で詫びる潤一郎はノートを破り「ゴメン」と、書いた紙飛行機を窓から良子に向けた。

 そして紙飛行機を受け取った良子は二階の窓辺に身体を向けると手を振ってVサインで笑顔を見せた。


【十二話】

 


 出張して二週間ほど経った頃、総一郎は毎夜の女将(トド)との交わりにも慣れ「される側」から「する側」へと、態度を変えた。

 それは仕事相手である商工会議所の副会長への女将(トド)からの申し入れが功を奏していたことへの感謝の印でもあった。

 女将(トド)なくしては成し得なかった仕事もトントン拍子に事が運び、総一郎は営業所長の目にも本社の目にも高く評価された。

 総一郎のある意味、恩返しとでも言うべきか、総一郎は女将(トド)への感謝の印とばかりに早漏の身でありながら、抜かずの十発で女将(トド)を喜ばせ続けた。

 そして女将(トド)は、自分の気持ちがようやく総一郎に伝わったと勘違いしつつも、毎夜の抜かずの十発に時には涙さえ浮かべていたが、女将(トド)を抱く総一郎はいつの間にか女将(トド)の上で少しだけ早漏が直った気がしていた。

 今まで相手が女将(トド)であっても治らなかった三擦半が最大で二分持つこともあって、総一郎はそれなりに「俺も、やる時はやる男だぜ!」と、自信をつけてもいたが平均で一分半程度だった。

 そして今夜もまた女将(トド)相手の交わりで総一郎が「イクッ!」と、感じた瞬間、思い切り目を大きく見開いて下にいる女将(トド)の醜さを見れば「イクッ!」から「イカない!!」と、瞬時に気持ち萎えた。

 それは総一郎の早漏が直ったのではなく女将(トド)の、醜さ故の成せる技であったことに総一郎は気付いてはいなかった。

 そして、イキそうになる度に見る女将(トド)の醜さに最大で三分の持続に総一郎は益々の自信を付けて行った。

「出張が終わったら良子をイカせてやる!!」
 三分の持続で自信を持った総一郎は仕事にも一層の磨きがかかっていた。

 そしてその夜もまた女将(トド)が尋ねて来るのを待っていた総一郎は、入って来て着物を脱いだ女将(トド)を見て恐怖におののいた。

『何て醜い姿だああああぁ……』
 心の中で呟いた総一郎の目の前には、黒いガーターベルトに黒ストッキングと同色のスキャンティーそして透け透けのキャミを着けた超醜い女将(トド)が立っていた。

「どお~♪ 似合う~♪」
 女将(トド)の一言に背筋を凍らせる総一郎は心の中で『うわああああー!』と、叫びつつも「ああ、似合うよ」と、うそぶいた。

「うっふ~ん♪」
 短く太った豚のような足を包む黒いガーターストッキングを見せ付けられた総一郎は、恐怖の余り言葉を失いそのまま目を閉じて受身に転じた。

「そう~! 今夜は旦那様が下なのね~♪」
 女将(トド)は囁くように声を柔らかく発するとも目を閉じて動かない総一郎からトランクスを剥ぎ取って、フニャフニャの粗末なペニスに貪り付いた。

「あうっ! はうぅ!」
 突然のペニスへの強い刺激に、腰をビクンとさせて声を漏らした総一郎をチラッと見た女将(トド)は、ニヤリと笑みを浮かべて今夜のコスチュームが成功したと勘違いした。

 総一郎は目を閉じたまま頭の中で良子を思い出していたが、いつの間にかその想像を掻き消すように出てくる女将(トド)に、総一郎はイクにイケない状態が数分間続いた。

 女将(トド)はいつもなら数秒でイク最初の総一郎が、今夜は随分と長持ちしているとに疑問を感じながら粗末なペニスに舌を絡ませていた。

 総一郎は目にしてしまった女将(トド)の超醜い姿で頭を一杯にさせ四分ほどで一発目を発射、二発目は五分と新記録を達成、女将(トド)もまた今夜は楽しめそうだと喜んだ。

 
 その頃、時同じくして自宅の二階ベッドでは潤一郎の目の前に、美しく魅力的な良子が黒いガーターベルトと黒いストッキング、そして黒いミニスリップ姿で立っていた。

「良子、何かまた親父からつまらねえ電話来そうなんだが、こっちから先に電話して安心感を買うか!?」
 潤一郎の言葉に無言で頷いた良子と視線を合わせた潤一郎は、携帯を手に総一郎に電話した。

「ああ、父さん♪ 元気?」
 良子をチラッと見る潤一郎。

「はうぅ! ああ、う、うん元気だ…」
 粗末なペニスをしゃぶられる総一郎は腰を仰け反らせた。

「今、何してんだ? 変な声だして?」
 総一郎の妙な息遣いに首を捻る潤一郎。

「ああ、う! う、運動してたんだ…」
 腰を元に戻して刺激に耐える総一郎は女将(トド)の頭を押して引き離そうとした。

「ああ運動かあ~ 俺もこれから軽く運動しようと思ってた♪」
 何も知らない潤一郎は退屈そうに足組してベッドに腰掛ける良子をチラッと見た。

「はうっ! ああ、そ、そうか! お… お互い親子だなあ~♪」
 引き離されまいとしてペニスの根元までシャブラれる総一郎。

「なんだよお~♪ また変な声だして、あっはははは♪」
 総一郎の喘ぎ声に驚きつつ、自分の立派なペニスを良子にシャブレと言う合図をする潤一郎。

「か! 片手で腕立てしてるからだ♪ あは、あはははは♪ あうっ!」
 潤一郎の突っ込みに思わず慌てて笑ってみせる総一郎。

「へぇ~ あうっ! あああうっ! と、父さん片手で腕立て出来るようになったんだ!」
 チラリと潤一郎を見た良子の舌が突然絡みついた。

「お! お前こそ、な、何だ今の声は! はうぅっ! あうっ!」
 潤一郎の妙な唸り声に驚きつつ自らも腰を振って悶えた総一郎。

「お… 俺も運動を始めたんだ♪ あっ! うんっ! はうっ!」
 総一郎からの問いにギョっとして声を慌てさせた潤一郎。

「そ! そうか! お前も運動を始めた、はうぅ! のか! あうっ!」
 潤一郎の妙な唸り声に心配しつつ、女将(トド)を引き離そうとしつつ悶える総一郎。

「う! うん! じゃあ! はうっ! き、切るね♪ あうっ! お互い頑張ろうね! 父さん」
 久々の良子の舌使いに悶える潤一郎。

「あうっ! そ! そうだな♪ もう! もう切ろうか、はふっ!」
 離れない女将(トド)に諦めを感じた総一郎は慌てて携帯を切った。

 二人の親子は似た状況で久々の会話を早々に終え、夫々に運動を始めた。



【十三話】



 慣れと言うのは実に恐ろしいモノで、総一郎が女将(トド)と肉体関係を持って三週間が過ぎようとした頃、総一郎にとって女将(トド)は特別恐怖を抱く存在では無くなっていた。

 それどころか、毎夜のごとく訪れる女将(トド)に総一郎はある種の感謝にも似た想いを寄せるようにもなっていて「今夜は後ろから攻めて見ようか…」と、考えるほどだった。

 仕事は女将(トド)の助言のおかげでトントン拍子に進み、三ヶ月の出張も二ヶ月に短縮されるのでないかと言う話しも営業所では出始めていた。

 そして総一郎は一躍、時の人として営業所では高い評価を受けてその噂は本社にも届いていたが、部長は総一郎を課長代理としてではなく課長への推薦も考え始めていた。

「この分だと猶予期限の三ヶ月も必要ないかも知れんな!」
 営業所長を前に嬉しそうに照れる総一郎は、心が躍る思いで周囲の社員の視線に胸を熱くさせた。

 だがそれを喜びつつも複雑な思いをしている者もいた。

「二ヶ月!? ど! どうして!?」
 仕事を終え旅館に帰った総一郎の部屋に来ていた女将(トド)は、総一郎の口から衝撃的なことを聞かされた。

「お前のおかげだよ♪」
 布団の上にゴロンと横になった総一郎は和服姿で傍に星座する女将(トド)に嬉しそうに語ると、女将(トド)は作り笑顔をしつつも心の中で何かを考えていた。

 
 そして数日後、仕事は暗礁に乗り上げた…

 
「突然、商工会議所の副会長から!」
 突然持ち出された無理難題に顔を顰める営業所長は顔色を変えて総一郎にその旨を伝えた。

「そ! そんなまさか… ここまで来て…」
 総一郎はトントン拍子に進んでいた仕事が暗礁に乗り上げた経緯が女将(トド)の策略だと気付いてはいなかった。

『仕事が上手く行かなければ旦那様は……』
 総一郎の仕事中、仕事場である旅館に居た女将(トド)は無用の進言をしたことに後悔しつつも、心の隅っこで総一郎に詫びていた。

「と、とにかく副会長に会って来ます!」
 総一郎は血相を変えて営業所を飛び出すと車に飛び乗った。

 だがこの日、総一郎の副会長とのプロジェクトの話し合いは平行線を辿った。

「何でなんだ! くそ! 今になってあんなことを言い出すなんて! くそ!!」
 総一郎は副会長の冷たい態度と邪険な話し方に苛立ちを覚えつつ、出先から直接旅館へと帰った。

 そしてそんな総一郎の顔色を窺う女将(トド)が奥のほうに居たが、何も知らない総一郎は顔を曇らせて自室に戻るとパソコンを開いてプロジェクトの内容を振り返った。

「何処にも落ち度は無い! 間違っているのは副会長の方だ! 大体今更変更たって……」
 浴衣に着替えた総一郎は何度見ても誤りのない段取りに苛立ってテーブルを叩いた。

 するとそこへ女将(トド)が入って来た。

「お帰りなさいませ。 旦那様…」
 女将(トド)は総一郎が苛立っているのを察知しつつも、平静を装っていつも通り丁重に挨拶をして見せた。

「酒だ! 女将! 酒をくれ! メシは下で食うから酒をここに頼む!」
 総一郎は仕事の苛立ちを女将(トド)に八つ当たりするかのごとく、荒い口調で酒を注文した。

 大きな溜息をつく総一郎を見た女将(トド)は複雑な心境でその場から立ち去り、数分後に仲居が酒を届けた。

 総一郎は酒が届くとトックリの酒をオチョコではなくコップに注ぐと一気に喉に流し込み、それを見た仲居は普段とは違う総一郎に只ならぬモノを感じつつ部屋を後にした。

「女将さん、特別室のお客様が…」
 総一郎の様子を女将に知らせた仲居は、女将の無表情に驚きを隠せず俯いて別の仕事に移動した。

 仲居は何かあったのだろうかと勘ぐったものの、女将の策略を見抜くことは出来なかった。

 だが、そんな中で酒に酔ってフラフラと食堂へ降り立った総一郎の一言が女将(トド)の耳に入った。

「もう駄目だあ~! 仕事辞めて戻ろうか~!!」
 酔い口調で愚痴を漏らした総一郎の言葉を聞いた女将(トド)は、自分が確実に総一郎を追い詰めているのだと悟った。

 このままでは総一郎は帰ってしまう。

 そう思った女将(トド)は慌てて奥へと移動すると『どうしよう!!』と、強い不安感に駆られた。

「もう駄目だ! 今回の取引は白紙撤廃だあ~!! 全く! 何が何だかさっぱり解からん!!」
 テーブルの上に両肘付いてグタグタになる総一郎はテーブルの上に乗せたアゴを前後に揺らしてピタリと声を止めた。

 女将は総一郎の声に耳を手で塞ぐと自分のしたことに激しい怒りを覚えた。

『何もしなければ少なくとも二ヶ月は暮らせたのに、あんなことしたばっかりに旦那様は帰ってしまうかも知れない…』
 女将はイトコの副会長に会って別の画策で話しが上手くなる方法を考え始めた。

 だが総一郎は既に失敗を本社に告げ帰省することを考えていた。

 その頃、潤一郎はと言えば親戚の法事に行ってきた喪服姿の良子に、ムラムラと男の性(さが)を燃やし玄関で塩をかけて直ぐにリビングのソファーに良子を抱き倒した。

「はぁはぁはぁはぁ… 堪んねぇ! この匂い!! ハフハフハフハフ!!」
 黒いガーターストッキング越しに良子の太ももの匂いを嗅ぐつつ、唇をストッキングに滑らせた。

「ちょっと! 潤ちゃん駄目だってぇ! シワになっちゃぅー!」
 良子は喪服に付くシワを気にしつつ状態を起こしスーツを脱いで再びソファーに身体を倒しつつ、ストッキングに滑る潤一郎の唇の心地よさにウットリしていた。

 潤一郎は捲り上げたスカートの中に顔を入れ、良子の太ももに抱きついて頬擦りしつつ匂いを嗅いだ。

 良子は匂いを嗅がれるという恥ずかしさに無意識に両脚を閉じようとしたが、匂いに興奮している潤一郎の両腕は全力でそれを阻止した。

「ああん! だめえぇーん!」
 再び開かせられた両足に思わず良子は潤一郎の両肩を押して引き離そうとした。

「ジッとしてろ!」
 ガーター紐の匂いを嗅ぐ潤一郎はそのまま鼻先を良子の着けていた黒いスキャンティーへと両足を開かせた。

「ゲッホゲッホゲッホ! 効くうぅー♪ 物凄い匂いだぁー♪」
 スキャンティー越しに良子の恥ずかしい匂いを嗅いだ潤一郎は咳き込みながらもその凄まじい臭気に歓喜した。

「駄目、駄目、駄目ー! 汚れてるから駄目えぇー!」
 良子は汗とオリモノで汚れたスキャンティーの匂いを激しく嗅ぐ潤一郎の両肩を再び押し返そうと試みた。

「畜生! 煩せえなあー!! こうしてやる!!」
 潤一郎は傍にあった手ぬぐいを持つと、良子の上半身を起こし後ろ手に良子の腕を縛り上げた。

「ちょっと! 何するのお! やだぁー! やあーだぁー!」
 両腕を後ろに縛られた良子はソファーの上で腰を振って抵抗したものの、潤一郎の両手は良子の黒いブラウスのボタンを手際よく外し、大きく広げるとスリップとブラジャーの肩紐を引き降ろした。

「うわあぁーん!」
 潤一郎は目の前に大きく揺れる豊満な乳房を見た瞬間、夢中で乳首に吸い付きそして無造作に乳房を揉んだ。

 良子は激しい快感(しげき)に身悶えしつつ瞼を閉じて首と腰を仰け反らせた。

 潤一郎は良子の乳房の間に顔を埋め左右に振っては乳首に吸い付き、口中で勃起した良子の乳首を甘噛みして良子に鳴き声を上げさせた。

「あひぃー! はひはひはひぃー!!」
 首を左右に振って刺激に耐える良子のスキャンティーは、内側から溢れる透明なヌルヌルした液体が染み込んだ。 

 潤一郎の両手は良子の乳房が壊れんばかりに激しく揉み、赤子のように勃起した乳首を無心に吸い続けると片手でガーター紐をストッキングから外した。

 そして良子の身体から黒いスキャンティーを剥ぎ取ると、良子を前にヌルヌルした液体の付着するスキャンティーの匂いを嗅ぎ「臭せえぇ!!」と、発しそしてペロリと舐めた。

「臭せえ! 臭せぇ! 臭せええぇー!!」
 言葉で良子を辱める潤一郎は空かさず良子の両脚の真ん中に顔を埋めるとペロリと出した舌を陰毛に覆われた割れ目に押し付け舐めた。

「はひ! はひ! はひいぃぃーー!!」
 恥ずかしい部分の匂いを嗅がれつつ舐められた良子は身悶えして腰をそして首を限界まで仰け反らせた。

「臭せえ! 生臭せえぇー! しょっぺえぇー!! ゲホゲホゲホッ!」
 潤一郎は汚れと液体の絡み合った何とも言えない味の汁を舐め取るとそれを飲み込んで咽て咳き込んだ。

 良子は言葉の辱めが激しい快感に変わり、舐められる快感(しげき)を何倍にも増大させ良子の脚のつま先はギュッと閉じられた。

「ハフハフハフ… 臭せぇ臭せぇ臭せえぇー!!」
 荒い息遣いで舐めまわしつつ言葉で良子を辱める潤一郎は、両手で持ち上げた黒いストッキングに包まれた太ももの感触にウットリし続けてもいた。

 そして良子にとって最大の恥ずかしい部分である肛門に舌先が伸びた時、良子は頭の中を真っ白にして全身から力を抜きその身を潤一郎に任せた。

 潤一郎は良子の臭い肛門を舐めながらズボンとトランクスを脱ぎ捨てると。そのままガチガチに硬くなって聳える肉棒を良子の中へ「ズブリウウゥゥーーー!!」と、沈めた。

 その頃、父親である総一郎は食堂で夕飯を早々に済ませると、仲居に酒を頼んで部屋へフラつきながら戻って行った。


【十四話】



 夜の十時。 総一郎の部屋を尋ねた女将(トド)は勧められるままに酒を飲んでいた。

「今まで色々と世話になったし面倒掛けたが、そろそろ暇(いとま)することになるかも知れない♪」
 総一郎はお膳を差し向かい女将(トド)の持つオチョコに酒を注ぎつつ作り笑顔を見せた。

「旦那様! もう少し! もう少し頑張られたら如何ですか!? 副会長さんは旦那様を気に入っておりますから!」
 女将(トド)は自分が仕組んだことは控えつつも不安そうに総一郎を励ました。

「いや… もう駄目だろ… 最近は副会長も俺には邪険だし…」
 総一郎はスッパリと仕事から手を引くような言葉と同時に厳しい表情を見せた。

「………」
 女将(トド)は何んて言って引き止めれば良いのか途方に暮れつつ『何とかしなければ』と、心の中で考えていた。

「女将! 今日は少し飲むからな~ どうせもう駄目なんだからスパッと諦めるぞ♪」
 作り笑顔が痛々しい総一郎から視線を女将(トド)は反らした。

「そんな顔すんな♪ 正直、今回の仕事には俺の昇進が掛かってたんだ… 俺のあだ名。 万年係長♪ 課長代理への昇進も消えうせた♪」
 元気ない女将(トド)を気遣う総一郎に心の中で申し訳ないと詫びる女将だった。

「明日! 明日、私が副会長に話して見ます! 何とかならないかと!」
 勢いよく返す女将。 

「いや~ そんなことしないでくれないか~ これ以上は迷惑はかけられん♪」
 謙遜する総一郎。

「御存知かとは思いますが私は副会長とは親戚… 私の話しなら聞いてくれると思います!」
 丁重に話す女将、

「すまんな! 本当にすまん…… だがもう諦めたんだ……」
 申し訳なさそうな総一郎。

「兎に角、やるだけのことはやってみます…」
 心の中で詫びる女将。

「今夜はこれで帰ります…」
 女将(トド)は三つ指ついてお辞儀するとそのまま無言で部屋を後にした。

 残された総一郎は営業職(しごと)のプロとして複雑な想いで独り酒を喉に流し込んだ。

 そしてこの夜、総一郎は一人で就寝し翌日、仲居に用足しと言い残し朝早くに車で何処かへ出かけたことを知った。

『俺なんかのために…』
 総一郎は朝食を摂りつつ、女将(トド)の行動に感謝した。

 そして朝食を摂り終えた総一郎は近くの娯楽室でタバコに火を点けつつ辺りを見回して椅子に腰掛けた。

『また事件か……』
 総一郎は鬼畜の美食家の犯行と思われる事件を新聞の中に見つけた。

 鬼畜の美食家の餌食になったのは女子大生で、尻と内モモの肉を切り取られ気絶中に喰われたと出ていた。

 幸い命に別状はなかったものの通報したのは鬼畜の美食家であると掲載されていた。

『どうなってんだコイツら! 生きた人間から肉を切り取って喰うなんて!』
 総一郎は新聞に書かれていた犯行現場に残された炭火セットと聞いて、女子大生の肉を焼いて食ったのだと苦々しい顔をしてお茶を飲んだ。

 そして新聞を元の場所に戻した総一郎は辺りを見回すと新聞置き場横のスペースにあった旅館の歴史と言うパンフを手に取った。

 旅館の歴史と言う資料的なパンフレットを手に足組してページを捲った。

『この旅館て歴史の古い旅館だったんだな… 今の女将で八代目か… うん!? 待てよ! これ誰だ!? 誰かに似てるなあ~』
 捲ったページには歴代の女将たちの初々しい姿が写真で掲載されていたが、その中に見覚えのある顔が総一郎の目を引いた。

 総一郎は歴史パンフを持ってじっくりとその顔を見ていると、仲居が灰皿を取替えに来た。

「ああ、それは今の女将さんの前の大女将さんですよ♪ ホラ、こっちに今の女将さんが女将さんになる前の写真が出てるでしょ♪」
 総一郎は仲居の指を目で追った。

「えっ!? まさか!? これが今の女将かあ!?」
 総一郎は仲居がビックリするような声を発した。

「女将さんは若い頃は随分モテたらしいですよ~♪ 女将さん目当てに通うお客さんも居て♪ ああ、でも旅館を経営してた旦那さんを亡くしてからの女将になって随分と気苦労もあって気付けば今の体形に… あははは♪ 私が話したことは内緒ですよ♪ それに亡くなった旦那さんにお客さん、そっくりだから♪ 瓜二つってこのことだわ~♪」
 総一郎は自宅に残してきた良子とも引けを取らない女将(トド)の美しさに唖然した。

『これがあの女将(トド)なのかあー!? そして俺が女将(トド)の旦那に瓜二つ…!? なんてこったぁ!!』
 仲居が立ち去った後、総一郎はデブになる前の女将を見て目を見開いたまま固まった。

『あのデブがこんなに美しい女性だったなんて……』
 衝撃の余り総一郎は背筋を凍らせた。

『だから俺を旦那様と呼んでいたのか…』
 総一郎は女将が気の毒に感じていた。

 総一郎は毎夜のごとく部屋に現れては、夜伽(よとぎ)してくれる女将(トド)にふびんを感じずには居られなかった。

 その頃、副会長の自宅に出向いていた女将は話し元に戻すよう作意を持って話を纏めていた。

 副会長も女将の話しに『なるほど!』と、手を打って納得し、総一郎にプロジェクトを推進させることを女将に約束した。

 元はと言えば総一郎の出張を長引かせるための作意が逆に作用するとは夢にも思っていなかった女将だけに、副会長の返事に身震いして心の中で歓喜していた。

『これで旦那様は期限まで居てくれる…』
 女将は心の中で喜び車を旅館に向けて走らせた。

 そして仕事に出かけた総一郎の耳に営業所長からの思わぬ知らせが舞い込み、営業所の社員達は一同拍手で立ち上がった。

 総一郎は人知れず心から女将に感謝した。



【十五話】



 
 総一郎の手がける仕事は順調すぎるほど順調に進み出張も四週間目を迎えた。

 この頃になると総一郎は女将を心の中で「トド」とは呼ばず「女将」と呼び、時には「美奈子」と、実名で呼ぶこともあった。

「なあ美奈子… 今更なんだが、お前ダイエットする気は無いか~」
 美奈子との夜伽(よとぎ)を終えタバコを吸う総一郎は、毛布で全裸を包む女将を見ずにうつ伏せ両肘立ててささやいた。

「………」
 女将は黙ったまま総一郎を見ずに総一郎の吸っているタバコを取って一吸いして戻した。

「いや… いいんだ… すまん……」
 女将の沈黙に詫びた総一郎はチラッと女将を見た。

「旦那様のお望みなら……」
 総一郎に背中を向ける女将は小声を発した。

「いや… その… 旅館のパンフ見たんだ… それでさ… いや、すまん…」
 自分の言った言葉に言い訳する総一郎。

「痩せたら… 痩せたら私のことを愛してくれますか…?」
 背中を向けたままの女将。

「ああ… うん……」
 女将からの質問に良子の存在を知りつつも軽返事を返した総一郎。

「承知致しました… 痩せたら私を… 私だけを愛して下さい……」
 突然、総一郎の方に向きを変えた女将。

 この日を堺に女将は辛い食事制限と苦しいウォーキングを始め、総一郎は自分の吐いた軽返事に心を強張らせた。

 だが痩せることを条件にした「愛」に総一郎はある種の「罪」をも感じていた。

 そして出張が終われば自宅に帰らなければならない総一郎は、後々の責任をどう取れば良いのか解からなかった。

『痩せないで欲しい…』
 心の中でそう呟く総一郎は残された月日を仕事に打ち込むことで、そのことを忘れようとしていた。

 そして女将である美奈子がダイエットを始めて一週間が経過した頃、美奈子は一回り身体のサイズを小さくしたが、毎日見ている総一郎にはそれが解からなかった。

 女将である美奈子は毎朝のウォーキングをジョギングに変え二週目には顔つきから丸みが消えたが、総一郎は女の執念の恐ろしさに気付いてはいなかった。

 その頃、自宅に残してきた妻の良子と息子の潤一郎は、恋人以上の関係を維持していて総一郎の居ない生活をフルに満喫していた。

 そして女将である美奈子がダイエットと運動を始めて三週目を迎えようとしていた頃、突然、総一郎に本社から呼び出しの連絡が入った。

 総一郎は女将である美奈子に二~三日の帰宅を告げ慌しく本社へと車を走らせたが、女将である美奈子は執念で昔の美貌を取り戻そうと総一郎が留守の間もダイエットを続けた。

 本社に呼び戻された総一郎は帰宅することなく直接本社へ出向き部長との会談に臨んだ。

「今回、君に与えたプロジェクトは略、完了したが顧客側からの要望で引き続き管理も君にやって欲しいと要請が来た。 約束通りではないが本日を持って君を課長代理ではなく正式に課長への昇進を人事が決めた。 取敢えず残りの一ヶ月だが管理の方へ力を注いで貰いたい…」
 部長は真剣な眼差しで総一郎を見ると総一郎は真摯にそれを受け止め深々と机の前で一礼した。

「取敢えず、二日間の休暇を認めるから帰宅してゆっくりと羽を伸ばせ♪ いいな課長♪」
 笑みを零す部長に総一郎も釣られて笑みを浮かべた。

 総一郎は部長室を出ると誰も居ない廊下で両手に拳を握りガッツポーズを決め、その足で営業部へと向かうと壁に総一郎宛の辞令が張られていた。

「おめでとうございます課長!!」
 係長時代の部下達が一斉に総一郎を取り囲んで祝いの言葉に盛り上がった。

「課長昇進おめでとう♪ 同期の中でお前が一番遅いから心配してたんだが、これでようやく俺達の仲間入りだな! 頑張れよ課長!」
 同期で既に課長職になっていた数人が総一郎を暖かく激励した。

 総一郎は飛び跳ねたい歓喜を堪えつつも部署と同期に深々と一礼し報告をと部署を出て一階のロビーへと身体を移動させた。

「ああ、良子か。 俺だ。 遂にやったぞ!! 俺は今日から課長になったぞ!! 課長代理じゃなく課長だあー♪」
 声を裏返して良子に連絡した総一郎はその喜びを良子に伝えた。

 だが良子は二日間の帰宅と休日という話しを聞いた瞬間、ガックリと肩を落とした。

「お父さん… 帰って来るそうよ二日間も…」
 電話を切った良子はソファーに寝転がる潤一郎に悲報を伝えた。

「マジかよ~ いっそのこと単身赴任でもしてくれりゃあいいのに… ああ~ だるぃ~ 良子、着替えて来いよ地味な服によぉ~」
 黒いネットストッキングにデニムのショートパンツ姿の良子の太ももを撫でた潤一郎は、ガバッと起き上がると寝室へ立ち去ろうとした良子の尻をポンッと軽く叩いた。

「そうね… 地味になってくるわ……」
 気だるそうに寝室へ向かった良子は、総一郎向けのロングのグレー色したホームドレスに着替えストッキングを脱いで素足にした。

「親父のヤツ、溜まってるから今夜は我慢しろよ良子~」
 寝室の入り口で着替え終えた良子に声を掛けた潤一郎は、背中を壁に押し付けつつそのままズリズリと尻で床に着地した。

 そんな潤一郎を跨いでリビングに移動した良子は時計を見て大きな溜息をついた。

 そして帰宅した満面の笑みした総一郎を出迎えた良子と潤一郎達もまた、満面の作り笑顔でアッホームを演出した。

 総一郎は帰宅し久々の我が家の匂いと景観に喜びを込み上げさせた。

「潤一郎! 父さんな、今日から課長になったんだ♪ 課長だぞ課長♪」
 ネクタイを外しつつ満面の笑みでソファーに座る総一郎は、ソファーの横で良い子供を演じる潤一郎に視線を向けた。

「やったあー♪ 父さんおめでとう♪ わぁーいやったぁー♪」
 万歳してクルクル身体を回す潤一郎はまるで小学生のように目をキラキラさせ歓喜して見せた。

 そして良子もまた、床に正座して「アナタ! おめでとうございます♪」と、満面の作り笑顔で頭を下げた。

「今夜はお父さんの帰宅と昇進をお祝いしましょうね~♪」
 良子は子供のように歓喜する潤一郎に視線を向けニッコリと母親らしい笑みを浮かべた。

 総一郎は久々のアットホームに目頭を熱くさせ涙ぐんだ。

 そしてこの日の夕飯は寿司とフライドチキンで、父親である総一郎を満面の笑みで祝った良子と潤一郎だった。



【十六話】



 総一郎は良子と出張以来の夫婦の時間を過ごしていたが、俄かにセックスへ入ろうとした総一郎を大問題が襲った。

『起たない… 何故だ!?』
 総一郎は心の中でペニスが勃起しないことに急激な焦りを感じた。

 総一郎は薄暗い寝室、ベッドの上で何とか起たせようと自らの手で、良子に気付かれないように扱き続けたもののペニスは一向に起つ気配は無かった。

 恐らく良子への裏切り行為が原因であると考えた総一郎だったが、いつもなら自然に勃起していたペニスは全く役に立たないことで、総一郎は隣りに寝ている良子から身体を少し引き離した。

「すまん良子! つ、疲れているから今夜は普通に寝よう…」
 良子に背中を向けた総一郎は良子への罪の意識と良心の呵責にペニスが立たないのだと悟りつつ瞼を閉じた。

 そして翌朝、いつものように朝食作りにベッドを静かに抜け出した良子は『どうしたんだろう…』と、心の中で前夜のことを考えていた。
 
 いつものなら確実に抱いてくるはずの総一郎が全く何もしなかったことに疑問を感じた良子だったが、まさか総一郎が浮気などしているとは夢にも思わなかった。

 そして良子が洗顔と歯磨きを終え朝ごはんの準備に入る頃、目を覚ました総一郎は廊下の物音に注意しながら仰向けでペニスを扱いて見た。

『起った! 起つじゃないか!! くそ! やっぱりかぁ~!!』
 総一郎はベッドに染み込んだ良子の甘い香りを嗅ぎつつ、マスターベーションをしてみたものの、良子の香りに勃起していたペニスは急激に縮んだ。

『そ! そんな馬鹿な!! くそ! くそ! くそおー!』
 縮んだペニスを再び起たせようとした総一郎は全く起つ気配の無いフニャチンに苛立ちと焦りと怒りを覚えた。

『畜生! 女将の所為だ! あのトドの所為で!』
 総一郎はトランクスを履いてベッドの上に腰掛けると、ガックリと肩を落とした。

 そしてその頃、起きてきた潤一郎に良子は昨晩の異変を話していた。

「まさかとは思うけど… オヤジのヤツ、浮気してんじゃないだろうなあ~! それしか考えられないだろ!?」
 冗談のつもりで出た言葉に潤一郎は元より、聞いた良子も唖然とダイニングで立ち尽くした。

「う… 浮気って… あの人に限って……」
 表情を変えずに呟いた良子はクルリと身体を台所の方へ向けると、そのままシンクへ歩き再びクルリと身体を潤一郎の方へ向けた瞬間「ニヤァ~♪」と、思わず満面の笑みを潤一郎に見せ潤一郎もまた「ニヤァ~♪」と、不適な笑みを浮かべた。

「良かったじゃん♪ それならそれで♪ 今夜も何も無かったに確実に浮気してるな♪」
 シンクに背を向ける良子に近づいて軽いキスをした潤一郎は、良子は抱き合って喜んだ。

 そんなこととは知らない総一郎は寝室で大きな溜息をしつつ服を着ていたが、潤一郎と良子の思った通りこの日の夜も総一郎は起たないペニスに苛立ちつつ、良子に触れることなく就寝した。

 翌日。

「もう父さん向こうへいっちゃあのか… 何か寂しいな…」
 朝食を終えた総一郎に潤一郎は寂しそうに呟いた。

「潤ちゃん! 駄目よ。 お父さんだって辛いんだから…」
 潤一郎の言葉に間髪入れずに叱りつけた良子。

「すまんな潤一郎… 寂しい想いをさせて… だがそれもあと一ヶ月だ! 一ヶ月を終えれば帰れるから辛抱してくれ♪」
 潤一郎と良子の顔を見回して作り笑顔する総一郎。

「俺… 我慢するよ… 課長さんだし仕方ないもんな♪」
 寂しいげな演技をする潤一郎は作り笑顔をしているような演技を見せた。

「良子もすまんな… 今の仕事が終わるまでだから…」
 良子に心から申し訳ない表情を見せる総一郎。

「家のことは安心して♪ しっかりやってきて頂戴♪」
 目を潤ませ涙を零す良子は口身とを押さえ差の場から逃げるように立ち去った。

「潤一郎! お母さんのこと頼むな! もう少し居てやりたいんだが早めに出発するからな…」
 潤一郎の肩をポンと軽く叩いた総一郎は頭を軽く下げた。

 そして一時間後、総一郎は二人に見送られて車を走らせた。

「やったあぁー♪ あっははははは♪ 浮気だ浮気だあー♪ ところでさっきの涙の演技! どうしたんだ!?」
 総一郎を送り出した二人は玄関に入ると鍵を掛け抱き合って大喜びした。

「あれはねえ~♪ アナタの演技があんまり臭すぎたのと、嬉しくて噴出しそうになったのを堪えたのよおー♪」
 喜んでネタばらしをする良子。

 潤一郎と良子は手を繫いでリビングに戻ると、さっきまで総一郎が座っていた場所で抱き合って口付けを交わした。

 そんなこととになっているとは知らない総一郎は心の中で『すまん! 良子… 潤一郎!!』と、呟いていた。

 そして総一郎が詫びている間、良子は地味な服装から潤一郎向けの明るい服装に着替えをしていた。

「へぇ~♪ 相変わらず似合うな~♪」
 ワンレンボディコン、肩だしの白いミニスカに黒い網タイツを履いた良子は、潤一郎に尻を撫でられながら飲み物を取りに台所へ向かった。

 その頃、総一郎の到着を待つ旅館の女将である美奈子は、極端なダイエットと毎日のジョギングで体調を崩し奥の座布団を枕に横になっていた。

『何としても痩せてやる!』
 凄まじい執念も体調の崩れには勝てず、とは言いつつも美奈子は誰もが驚くほど急激に痩せていた。

 その一時間後。

『今日は旦那様が戻ってくる日だと言うのに…』
 女将の美奈子は痩せた所為で着られなくなった大きな和服を仕舞い、昔着ていた和服を箪笥から出すとそれで身を包んだ。

 その頃、旅館を目指して車を走らせる総一郎は高速道路のパーキングで遅めの昼食にありついていたが、ホテルや旅館の宣伝ポスターを見て「フッ」と、女将の美奈子を思い出した。

『ダイエット、まだやってるのかな…… 何か悪いこといっちまったな……』
 総一郎は女将に勧めたダイエットのことを後悔していた。

 だが、どうせ無理だろうと思いつつも、万一ダイエットに成功していたらと責任の重さを痛感してもいた。

 総一郎は万一、美奈子がダイエットに成功していたら出張期間を延長しなければならないのではないかと案じてもいた。

 そんな総一郎は美奈子のダイエットが失敗してくれれば良いと思っていた。


 


【十七話】



 気温三十三度、無風状態の田舎町に到着した総一郎はその足で営業所へと向かおうとしたが、特別休暇だったことを思い出し街中を車でドライブすることにした。

 何も無い田舎町とは言いつつも数年前に出張で始めて来てから一度も目的地以外の所へは行ったことの無い総一郎は、街の名所を探してみようと駅を訪ねた。

 駅に行けば大抵はあるであろう街中の案内図の看板を思いついた総一郎は、この田舎町に公園沼があることを案内図で知り旅館からそう遠くないことに気付いた。

『旅館へ戻って歩いて行ってみるか…』
 総一郎は車を旅館に向けて走らせること二十分、たった二日空けただけの旅館が妙に懐かしく思えた。

『そう言えば旅館の周りすら見たこと無いんだな…』
 総一郎は旅館の駐車場へ車を止めると、荷物を降ろすことなく背広を車内に置いたまま古びた木造旅館の周囲を歩くことにした。

 そして旅館の半分が松林に覆われていることや獣道のようなクネクネした草むらがあることを発見し、歩いてみることにした。

『結構、長いなこの道…』
 クネクネとクルりながら旅館から遠のくこと十五分で開けた広場を見つけた。

『小川か~♪』
 傍に近づいて片手を水に浸すと気温三十三度で熱くなった身体から一気に熱が奪われるほど冷たくて気持ちいい流水だった。

 そして周囲を再び見回すと小さな池があって近づくと、池の底から俄かに水が沸き上がっている様子を目にした。

『久ぶりだな… 心が和む…』
 小さな砂が底から舞い上がってはフワフワと底へ沈んでいく光景に総一郎はホッとした気持ちに満たされた。

『何度も泊まっている旅館の周りにこんな綺麗な場所があったなんて…』
 総一郎は池の土手に座ると時折舞い込む涼しい風に表情を和らげた。

 そしてフッと駅にあった看板を思い出した。

『待てよ… もしかしたらこの道って沼公園に繋がってる?』
 総一郎は立ち上がるとネクタイを緩めて再びクネクネした獣道を歩き出した。

 そして歩くこと十分、差ほど遠くない所に田舎とは思えないほど整備の行き届いた沼公園を見つけ心を躍らせた。

『何てこった! 旅館の傍にこんな綺麗な公園があったなんて!』
 喜ぶ総一郎の足は知らずのうちに早まった。

 そして喉の渇きを癒すべく自販機と沼公園の案内図を見つけた総一郎は、自販機で飲み物を買いつつ案内図の看板の前で喉を潤した。

『ヒョウタン沼って言うのかあ~♪』
 総一郎は案内図に書かれていたヒョウタン沼の由来をジッと見つめ、その昔、飢饉に見舞われたこの土地を救った湧き水が、溜まって出来た沼であることを知った。

 そして清掃の行き届いたベンチに腰掛けると平日だと言うのに周囲に人影が多いことに気付いた。

『ここなら絶好のデートコースだな♪』
 総一郎はタバコに火を付けると青々と茂る木々や草の香りと一緒に煙を吸い込んだ。

『何て美味い空気なんだ~♪』
 そして再び案内図を見ると少し離れた場所に駐車場があることに気付いた総一郎は自宅に残した二人も連れて来たいと思った。

 三十分後、休憩を終えた総一郎はネクタイを外しワイシャツのポケットに入れると、沼を回って戻れば一時間は掛かることを知り来た道を戻ることにした。

 そして旅館に着く頃には総一郎のワイシャツは汗でグダグダになっていた。

「いやぁ~ 旅館の周り歩いてたら綺麗な湧き水の池と絶景な沼公園見つけてさ~♪」
 玄関で総一郎を出迎えた仲居に笑顔で語る総一郎は思い出すように語った。

「ああー♪ アソコは遠方からもお客さんたちが来て休みの日なんかは結構な人出で賑わいますよ♪」
 総一郎のカバンを運ぶ仲居は歩きながら語った。

 総一郎は気になっていた女将(みなこ)のことを口に出すことができなかったが、部屋に入って間もなく気になっていた女将が特別室を尋ねた。

「お帰りなさいませ…」
 声を掛けて部屋に入った女将は俯き加減でテーブルの前に三つ指付いて頭を下げた。

 その女将を見た総一郎は口を開いて呆然とした。

「お、お前…… か!? 本当にお前なのか!?」
 パンフレットの写真で見た通りに変貌した美しい女将(みなこ)に、総一郎は声を強張らせた。

「はい、美奈子でございます…」
 小柄ながら細身の美奈子の姿に総一郎はその表情を硬くした。

「………」
 呆然とする総一郎の湯飲みにお茶を入れる女将の美奈子はトドから良子に引けを取らぬ美人へと変貌していた。

「あ、ああ… お前のお陰でな! 俺、課長代理を飛び越えて課長に昇格したんだ♪ 全てお前のお陰だ♪ この通り礼を言うよ♪」
 美しく変貌した女将の美奈子にテーブルに両手を着いて頭を下げた総一郎は、カラカラに乾いた喉にお茶を流し込んだ。

「え!? おめでとうございます♪ それは何よりでした♪ 私も旦那様のお陰でこの御覧の通りです♪」
 総一郎の背広をハンガーに吊るしクローゼットの中に仕舞う女将の美奈子。

「綺麗になった… ああ、す、すまん! つい…」
 声を上ずらせる総一郎は自らの胸が高鳴っているのを感じた。

「今夜は部屋食になさいますか? されとも食堂ですか?」
 テーブルの前に再び星座した女将の美奈子は綺麗だと言われたことに嬉しそうに聞いた。

「あ… ああ、そ、そうだな… お前と一緒に部屋で食いたいな…」
 美奈子の変身ぶりに度肝を抜かれた総一郎は声を時折詰まらせた。

「お食事に誘って頂けるの? まぁー♪ 嬉しいーです♪」
 初めて食事に誘われた女将の美奈子は頬を紅色に恥ずかしそうに顔を斜め下に向けた。

「うん♪ だから二人分、頼むよ♪」
 美奈子の恥ずかしそうな表情を見た総一郎は早く夜にならないか胸中をドキドキさせた。

『こんな美人とセックスしてたなんて……』
 総一郎は心の中で感無量とばかり家族があることを忘れていた。

「取敢えず下で一番風呂を貰うよ♪ 散歩して汗んいたからな♪ 晩飯はお前の都合のいい時間に合わせるから心配すんな♪」
 総一郎は夕飯の後の夜伽(よとぎ)のことを考え鼻の下を伸ばしていた。

「ところで、聞き辛いんだがお前、何歳なんだ!?」
 一回り以上は年上だと思っていた総一郎は聞き辛そうに女将である美奈子に聞いた。

「え!? 私!? 私はまだ旦那様と同い年ですよ♪ 何歳だと思ってらしたの?」
 突拍子も無いことを聞かれたと思う女将の美奈子は首を傾げた。

「あ! ああ! い、いや、その何となく聞いただけだ♪ 気にすんな♪ うんうん♪」
 自分の思っていた年齢と違っていたことで突然安堵した総一郎は慌てた。

 そして女将の美奈子が部屋を出た瞬間、総一郎は床にゴロンと横になってゴロゴロ回って全身で歓喜した。

【義母特別編・早漏VS遅漏】

【義母特別編・早漏VS遅漏】

  • 小説
  • 中編
  • 成人向け
更新日
登録日
2014-11-01

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